ISO9001/14001 コンサルティング・研修
教育と訓練と教育・訓練
(JISQ9000 6.2/JISQ14001 4.4.2)
教育は学校教育、訓練と教育・訓練は業務遂行能力に関する組織の教育
英語で読み解く ISO9000/14000  (15)
32-02-15


1. 教育と訓練と教育・訓練
   規格要求事項へのJISQ9001(6.2項)では、「教育」「訓練」「教育・訓練」と3つの類似の日本語が使用されている。これらの原英語は、education と training であり、training が 「訓練」とも「教育・訓練」とも和訳されている。 ISO9001の94年版(4.18項)では training だけだったが、JISZ9901 では「教育・訓練」と訳されていた。 training は2000年版でも基本的には「教育・訓練」である。原文で「education, training,....」と併記されている箇所(6.2.1, 6.2.2 e)) のみ、「訓練」と翻訳されている。「教育、教育・訓練、・・・・」との少々まぎらわしい表記を避けるのが「訓練」を用いた理由のようである(JISZ9901:解説 3.2 u))。 つまり、JISQ9001 の「訓練」と「教育・訓練」とは同じことを指している。
 
   ISO14001(4.4.2項)では training は常に「訓練」と翻訳されているので混乱はない。英原語によると、JISQ14001 の「訓練」と JISQ9001の「教育・訓練」「訓練」が同じことを意味していることになる。
 
   
2. 教育(education)と訓練(training)の違い
  education と training の意味の違いに着目して各種辞書で調べると、凡そ次のようである。端的に言って education は学校教育、training は職業訓練とかなり明確に区別されることがわかる。

<Cambridge Advanced Learner's Dictionary>
educate: 誰かを教えること。特に学校、大学など正式の制度を用いて教えること。
train:   技能の習得、及び/又は、精神の又は肉体の練習によって、仕事、活動、スポーツに備えること、また、準備できていること。
<Oxford Advanced Learner's Dictionary>
education:知識と技能の向上のために、特に学校や大学で、教える、訓練する(train)、学ぶ過程。
training: 仕事をするのに必要な技能を学ぶ過程。
<Merriam-Webster Online Dictionary>
educate: 学校教育を受けさせること。精神、意欲、美意識を向上させること(特に指導によって)
train:   指導、鍛練、教練によって身に付けること。教えて、何かに適う、適格となる、堪能とならせること。
 
   規格には ISO9001の training に関してのみ定義が定められている。 すなわち、特の技能、専門性、業務等に関して又はのために、指導する、又は、受ける行為、過程」(ISO/TC176/SC1/N526R)であるから、やはり、職業訓練の類である。
 
   日本語では教育は「人を教えて知能をつけること」(広辞苑)であり、学校教育の他、教育学、家庭教育、成人教育などの熟語となり、訓練は「実際に或る事を行なって習熟させること」(同)で、職業訓練の他、避難訓練、訓練場、軍事訓練などの熟語となる。どちらかというと、知識の習得が「教育」で肉体的能力の習得が「訓練」という風に受け取られる。
 
   しかし、規格の training は組織の業務遂行に係わる要員の能力向上の教育のことであり、技能に限らず、知識も認識/自覚も対象としている。 この意味で、JISZ9901やJISQ9001では「教育・訓練」という日本語が充てられたものと思われる。 訓練(training)は、組織の中で行なわれることが多いが、組織外の研修や資格取得の講習も training である。 これに対して、高校、大学、専門学校など公式の学校教育制度の下での教育のことが 教育(education) である。
 
   
3. 教育と訓練の意義
   企業では、人を新たな仕事につける際には、その人の力量(JISQ9001)又は能力(JISQ14001)を評価して、必要な教育訓練を施すのが普通である。 その時にはまず、学歴と履修科目が大きな目安となる。新卒者の場合は事実上これだけである。 また、社内異動の場合は職歴や役職、中途採用者なら前の会社でどのような仕事をしてきたかが、その人の力量/能力を評価する最も有効な尺度である。特別な技能や専門性の有無を測るにはその人が所持する国家資格や免許が有力な証拠となる。 規格はこれらをそれぞれ、「教育」、「経験」、「技能」(ISO9001のみ)と呼んでいる。これらの尺度でなお新業務を委ねるには問題がある(力量/能力がない)場合は、組織はその人を教育訓練して必要な力量/能力をもたせるようにする。これが「訓練(training)」である。 訓練(training)という組織の施策は力量/能力に関する他、認識(JISQ9001)又は自覚(JISQ14001)についての組織の人々への働きかけにもしばしば活用される。重大災害を起こした後の再発防止決起大会や続発するクレームに歯止めを掛けるための関係者による原因追求会議などがこれである。 ISO14004では、幹部全員が環境方針遵守を決意することで一体となるようにする啓発目的の訓練(training)を例に挙げている。
   
 
4. ISO9004/ISO14004 における教育(education)
   奇妙なことに、ISO9004,ISO14004両規格においては、教育・訓練又は訓練について記述する部分に「教育及び訓練(education and training)」という表現が、前者ではしばしば、後者は1ケ所だけ見られる。その条項の標題は、「認識及び教育・訓練」(6.2.2.2)、「知識、技能及び訓練」(4.3.2.5)と、いずれも training である。両規格とも文中で「教育」と「訓練」の違いを窺わせる記述はなく、文脈から学校教育を意味する「教育」がそこに記述されなければならない必然性は乏しい。 従って、これらの記述の場合は上記の意味の training を指しており、座学或いは知識習得が中心の「訓練」を education、技能習得中心の「訓練」を training と呼んでいるのかも知れない。
 
   
5. まとめ
    規格では、要員がその仕事に力量/能力があることを「適切な教育、教育訓練、経験、技能(ISO9001のみ)」を根拠として判断すべきことを規定している。対象を、ISO9001が「製品品質に影響する業務を行なう要員」、ISO14001が「著しい環境影響を起こし得る作業を行なう要員」に限定しているのは、それぞれが品質、環境マネジメントシステムの規格であるからである。どのような仕事をする人もその仕事に関して力量/能力があることでなければならないのは、組織のマネジメントの常識である。 ここに規格の「教育」は学歴や履修専門学科、「訓練」「教育・訓練」は組織が主体となって行なう人々の業務遂行の意識と知識、技能に関する教育訓練のことである。このような力量を判断する方法も組織のマネジメントの実務と合致している。この点、審査で普通に要求される「マニュアルや手順書の教育」は、規格が「訓練(training)」で意図しているものとは思えない。
   
★ ISO14001:2004改定
  JISQ14001:2004では4.4.2項の表現がISO9001(6.2項)と同じようになったが、翻訳では educationは「教育」と不変だが、training には「訓練」と「教育訓練」が用いられるようになった。



*印は筆者の訳

JISQ9001/14001
ISO9001/14001 規格の意図
JISQ9001 6.2.1
関連する教育訓練、技能及び経験を判断の根拠として力量があること
JISQ9001 6.2.2 b)
必要な力量がもてるように教育・訓練すること
   
JISQ14001 4.4.2
適切な訓練を受けていることを要求していること
JISQ14001 4.4.2
適切な教育訓練及び/又は経験に基づく能力をもつこと
ISO9001 6.2.1
shall be competent on the basis of appropriate education, training, skills and experience
ISO9001 6.2.1 b)
provide training to satisfy these needs
   
ISO14001 4.4.2
shall require that all personnel have received appropriate training
ISO14001 4.4.2
shall be competent on the basis of appropriate education, training and/or experience
◆ 教育
学校教育

◆ 訓練、教育・訓練
組織が主体となって行なう、要員の業務遂行能力に関する教育訓練
<規格の定義>   (ISO/TC176/SC1/N526R, ISO9001,9004で用いられる用語に関する指針)
Traing: the act or process of providing or receiving instruction in or for a particular skill, profession, occupation, etc.
(特定の技能、専門性、業務等に関して又はのために、指導する、又は、受ける行為、過程)
   
 
<Cambridge Advanced Learner's Dictionary>
educate: to teach someone, especially using the formal system of school, college, university
(誰かを教えること。特に学校、大学など正式の制度を用いて教えること)
train:   to prepare or be prepared for a job, activity or sport, by learning skill and/or by mental or physical exercise
(技能の習得、及び/又は、精神の又は肉体の練習によって、仕事、活動、スポーツに備えること、また、準備できていること)
   
<Oxford Advanced Learner's Dictionary>
education: a process of teaching, training and learning, especially in schools or colleges, to improve knowledge and develop skills
(知識と技能の向上のために、特に学校や大学で、教える、訓練する、学ぶ過程)
training:  the process of learning the skills that you need to do a job
(仕事をするのに必要な技能を学ぶ過程)
 
<Merriam-Webster Online Dictionary>
educate: to provide schooling for (学校教育を受けさせること)
            to develop mentally, morally or aesthetically, especially by instruction
            (精神、意欲、美意識を向上させること(特に指導によって))
train:   to form by instruction, discipline or drill (指導、鍛練、教練によって身に付けること)
             to teach so as to make fit, qualified or proficient
             (教えて、何かに適う、適格となる、堪能とならせること)
 
 
<広辞苑>
教育:  教え育てること。人を教えて知能をつけること。
       教育を受けた実績。
訓練:  実際に或る事を行なって習熟させること。
      一定の目標に到達させるための実践的教育活動

   
   
<環境マネジメントシステムの教育訓練(環境訓練)>  (ISO14004 4.3.2.5)
教育及び訓練は、従業員が法規制、社内標準、組織の方針と目標に関する適切で最新の知識を確実に有するために必要である。
組織が実施する環境教育の種類には次のような例がある。
◆ 環境マネジメントの戦略的重要性に関する認識の向上(幹部対象)
◆ 環境問題への一般的な意識の向上(全従業員)
◆ 技能、専門性の向上(環境責任を有する従業員)
◆ 遵法精神(環境規制に係わる業務を行なう従業員)
 
引用辞書: (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;  (M-W) Merriam-Webster's;  
              (広) 新村:広辞苑;   (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ); 
              (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);
翻訳: 英文辞書、ISO規格の翻訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の翻訳
論点: (黒字) 著者の見解; (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;  
(紫色) 文献(辞書)の引用 
H16.4.20(追:H17.7.4)
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