ISO9001/14001 コンサルティング・研修
測定機器の校正又は検証
  − 測定値の正当性が保証されなければならない場合
とは
(ISO9001:2000;   7.6  監視機器及び測定機器の管理)
測定値の正当性が保証されるために必要な場合 の意
英語で読み解く
ISO9000/14000
(22)
32-02-22


1. 測定機器の校正又は検証(7.6項)
    ISO9001 7.6項では、測定機器の管理に関する要求事項 a)〜e)項を定めており、JIS和訳では、「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」これらを「満たすこと」とされている。このa)項が「校正又は検証をすること」であるから、測定機器の校正や検証は「測定値の正当性の保証」のためには必ず行わなければならないということである。
 
この英原文は、
● Where necessary to ensure valid results, measuring equipment shall be calibrated or verified ….
である。  JISでは valid results を「測定値の正当性」とし、Where necessary to ensure 〜 を「〜が保証されなければならない場合には」と訳していることになる。 この英文解釈には2つの問題があるが、前者は別途(No.25)で検討し、ここでは後者について検討する。
 
   
2. 従属接続詞 Where と省略
  規格には Where appropriate という同様の構文が他の部分(7.4.2, 7.5.3項)にもあり、そうすることが適切という意味で「必要な場合には」と和訳されている。また、ISO14001にも Where necessary(4.4.7項), Where practical(4.4.7項) があり、それぞれ「必要に応じて」、「実行可能ならば」と和訳されている。
   
  ここに Where は in a case, situation in which …(M-W) (〜の場合に、〜の状況で)の意味に使用されている従属接続詞であり、文法上、Where 以下の文節は shall 〜 (〜すること) との表現で要求事項を規定する主節に対する従属節である。
規格の構文では、従属節の主語たる主格の代名詞と助動詞が省略されているが、この省略は主節との関係から省略しても意味がはっきりするから(S)である。すなわち、Where の後の it is が省略されており、この it は従属節に引続く又は先立つ主節全体を指すものと考えられる。 例えば Where necessary なら、主節の内容が「必要な場合には」、その内容の「〜すること」を遵守しなければならないという意味である。  「そのことが必要な場合には、・・・・・すること」、又は「・・・・することが必要な場合には、その・・・・をすること」と訳すとわかり易い。
 
   
3. 不定詞の形容詞的用法と名詞的用法
   ところで、 it is を加えた規格条文の
● it is necessary to ensure valid results
においては、不定詞 to ensure の用法に関係して文法上2つの解釈が可能である。
 
   ひとつは副詞的用法であり、この場合はto ensure は形容詞 necessary を修飾するから、it (それ) が「必要」で、なぜ必要かというと to ensure 〜、つまり「〜を保証するために」である。この意味のWhere節と主節と組合わせは、規格の他の部分の Where 節と構文と意味において同じである。
   
  もうひとつは名詞的用法であり、この場合は it は to ensure を指す形式主語であるから、「必要」なのは to ensure 〜、つまり「〜を保証すること」である。JIS和訳は、まさしくこの構文解釈に依っている。しかし従属節の意味をこのように解釈する場合には、その「〜を保証する」の主語は「組織」であるから、主節の主語の monitoring equipment (測定機器)との間には、「主語と助動詞が省略された分詞構文の従属節と主語を明確にした主節との間の主語の不一致」という文法上の過ち(3)を犯していることになる。
   
  従って、本条文の場合は、主節と従属節の主語の一致の原則から、名詞的用法はあり得ず、従属節の不定詞は副詞的用法でなければならない。 すなわち、原英文は、「それが測定値の正当性を保証するために必要な場合には、測定機器は校正又は検証されなければならない」という日本文になる。
 
 
4. 英語圏解説書の説明
  この条文の意味を条文と異なる文章で明確に表現したものの例として、次の説明が挙げることができる。英語圏で書かれた解説書であるから条文解釈の技術的な面には異論があり得るとしても、英文解釈の点ではまず正しいと考えてよいと思われる。
 
@ Care for measuring equipment in the following ways as needed to ensure sufficient accuracy: a) Calibrate inspection and test instruments …….(4)
  − 必要な測定精度を確保するための必要に応じて、次のような方法で測定機器を管理すること: a) 検査及び試験機器を校正すること
 
A ISO9001 requires that measuring equipment is subjected to calibration and/or verification, where this is necessary to ensure valid results.(5)
  − ISO9001では、測定値の正当性を保証するためにそれが必要な場合には、測定機器を校正や検証に供することが必要である。
 
   いずれも、「測定値の正当性を保証するために校正又は検証が必要な場合には、その校正又は検証を行うこと」という解釈である。
 
 
5. 結論
  上記の検討ではJIS和訳の通り「測定の正当性を保証する」を用いてきたが、原文の“to ensure valid results”は「妥当な測定結果を確保する」である (No.25) 。 従って、本条文は全体として「それが妥当な測定結果を確保するために必要な合には」「測定機器は校正又は検証されなければならない」等である。 英原文の意味は、「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」でなく、「測定値の正当性が保証されるために必要な場合には」であり、そのような場合には測定機器を校正、検証することが必要であるということである。
   
  規格は、本条文に先立って、監視測定の必要条件と合致する方法で監視測定が行なわれるようにしなければならないということを規定している。 測定機器について言えば、使用によって性能や機能に変化を生じる測定機器もあり、「妥当な測定結果を確保する」とは一貫して監視測定の必要条件を満たした測定が行なわれること、例えば必要な精度で測定値が得られることという意味である。 しかし、測定値の正当性を確保するのに校正や検証が必要にならない測定機器、つまり、物差しや錘など使用によっても狂いようのない測定機器がある。 そのような測定機器には校正や検証は不要である。 
 

JISQ9001
ISO9001 規格の意図
7.6  監視機器及び測定機器の管理
 
 測定値の正当性が保証されなければならない場合には、測定機器に関し、次の事項を満たすこと。
 a) ・・・校正又は検証する
7.6  Control of monitoring
     and measuring devices

 
  Where necessary to ensure valid results,  measuring equipment shall ..........
 a) be calibrated or verified .....

7.6  監視機器及び測定機器の管理
 
  妥当な測定結果を確保するために必要な場合には、測定機器は次の事項を満たすこと。
a) ・・・校正又は検証する

 

<where と where節> 
@ 従属接続詞  
(M-W)
   *
in a case in which 〜, in a situation in which 〜
  (〜の場合に、〜の状況には)
   * 
at the place, in the place, to the place at, to the place in 〜  
(〜では、〜のところでは)
A
where の用法  (海)
  * 
This cooling method is employed where higher humidities can be tolerated
      (この冷却方法は、湿度が高めでも許される場合に採用される)

 *
Some mocroprocessor-controlled machines are used where a high degree of precision is needed
      (高い精度が要求されるところには、マイコン制御の機械が一部使われている)

B 主語(代名詞)と助動詞を省略した where 分詞節  
(英辞郎)
 *
where agreed contractually (契約上の合意がある場合には)
  *
where appropriate  (適切な場合には、必要に応じて)
  *
where necessary   (必要ならば、必要に応じて)
  *
where required   (状況によっては)
   
<規格の他の Where>

@ Where appropriate(7.4.2)
   Purchasing information shall……, including where appropriate: a)〜c)
     −購買情報では・・・・・、必要な場合には、次の事項を含めること。
A Where appropriate(7.5.3)
   Where appropriate, the organization shall …….
     −必要な場合には、組織は・・・・・・すること。
B Where necessary(ISO14001 4.4.7)
   The organization shall ..…, when necessary, revise its emergency preparedness ….
     −組織は、緊急事態への準備・・・・を必要に応じて改訂すること。
C Where practical(ISO14001 4.4.7)
   The organization shall …..where practicable.
     −組織は、・・・・、実施可能な場合には、・・・・すること。

   
 
<Where従属節の省略された it is と 不定詞 to ensure の用法>


下記以外の引用文献
(3) 日向清人: ビジネス英語雑記帳、(続)Dangling modifier
(4) L.B.Beaumont: The Standard Interpretation,Third Edition; p.101
(5) C.MacNee 他: Transition to ISO9001:2000, BSI Pubication; p.44

引用文献:  (W) Webster's Encyclopedia of Dictionary;   (M-W) Merriam-Webster's;   (広) 新村:広辞苑;
            (実) 海野:実用英語大辞典(日刊アソシエーツ);   (S) M.Swan/金子他:現代英語用法辞典(桐原書店);
翻 訳:  英文辞書、ISO規格の和訳は著者による。また、JIS規格の文章でも*印は、JISと異なる著者の和訳
論 点:  (黒字) 著者の見解;  (茶色) 著者の問題提起;  (青色) 規格の条文;   (紫色) 文献(辞書)の引用 
H18.6.29(修 H20.6.29)
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