ISO9001/14001 コンサルティング・研修
− 方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用 とは
方針、目的及び目標に整合するように“運用”を計画する の意
(ISO14001:2004;   4.4.6  運用管理)
英語で読み解く
ISO9000/14000  (41)
32-02-41
<4.4.6項>
   ISO14001 4.4.6項の「運用」とは組織の日常業務のことであり(No.36)、同項は、組織の多くの業務の中から著しい環境側面に関係する業務がどれであるかを特定し(No.38)、それらの業務の実行を管理することを規定している。
 
  この著しい環境側面に関して、JIS和訳は 「環境方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面」 であるとしている。 規格の環境マネジメントシステムにおいては、組織はその活動、製品及びサービスに係わる環境側面を特定し、これらの中から著しい環境側面を決定することになっている(4.3.1項)。 しかし、4.4.6項のJIS和訳の文面では、著しい環境側面は、環境方針、環境目的、目標を判断基準として決めなければならない。 著しい環境影響をどのように低減するかが、環境方針、環境目的、目標であるはずであるから、これでは著しい環境側面の決定が先か、方針、目的、目標の決定が先か、堂々めぐりである。 このため、4.4.6項の文書化された手順を、著しい環境影響低減の環境目的、目標の実施計画が定める手段の手順として受けとめる考えさえ存在することになる。
 
<英原文と正しい英文解釈>
  この堂々めぐりは、英原文を文法に従って解釈すれば解消する。 すなわち、原英文は、次の通りである。
 
  “The organization shall identify and plan those operations that are associated with the identified significant environmental aspects consistent with its environmental policy, objectives and targets
 
 これは、「組織は、特定された著しい環境側面に関係する運用環境方針、目的、目標と整合するように、それらの運用を特定し、計画すること」 という意味である。 つまり、著しい環境側面の特定が先であり、組織は、この特定された著しい環境側面に関係する運用環境方針、目的、目標と整合するように実行、管理しなければならない。
 
<JIS和訳の文法上の誤り>
  JIS和訳の「環境方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用」 は、次の部分の英文解釈に2ケ所の文法上の過ちがあり、全く別の"identified" と "consistent with"とを関連させて 「・・・整合して特定された・・・」とする過ちを犯している。
 
  “identified significant environmental aspects consistent with its environmental policy, objectives and targets.
 
  ひとつは、JIS和訳は「方針、目的、目標に整合して特定された……」として、“consistent with”を 「整合して」 と副詞として扱い、動詞の 「特定するidentify)」 を修飾させている。  しかし、“consistent” は形容詞であり、文法上、動詞を修飾することはない。  もうひとつは、「整合して特定された」 の “identified” は 「著しい環境側面」の “significant environmental aspects”の前にあり、「に整合して……」 の “consistent with……” は後にある。 このように両者は遠く離れており、これをくっつけて「……に整合して特定された……」というような意味をもたせることはできない。
 
<特定された著しい環境側面>
  “identified" は、”identified significant environmental aspects”であるから 「特定された著しい環境側面」である。 この「特定された著しい環境側面」とは、4.3.1項の 「a) 環境側面を特定し(identify)、 b) 著しい環境側面決定する(determine)」 との要求事項に従って決定した著しい環境側面のことである。 従って、正確には“determined significant environmental aspects”であり、「特定された著しい環境側面」 ではなく 「決定された著しい環境側面」 と表現されるべきである。 しかしこれは、単に、他にもある規格内表現の食い違いのひとつと考えればよい。 ISO9001執筆者のひとりは、規格の文中の“determine”と“identify”の違いを説明する中で、英語では両者に大きな違いがないと説明している。
 
  「特定された著しい環境側面」 というのは英語ではよく見られる表現である。 規格の他の部分でも、 例えば、4.2, 4.3.1 a)項では、「環境マネジメントシステムの定められた適用範囲の中で」 とあり、この 「定められた」 は、4.1項の 「組織は、その環境マネジメントシステムの適用範囲を定めること」 という要求事項によって 定められた適用範囲を指す。 この英文では次の通りである。
 
  4.2, 4.3.1 a)項:“within the defined scope of its environmental management system”
  4.1項:“The organization shall define the scope of its environmental management system”
 
<S+V+O+C>
  この条文の文章は、英語の5つの基本文型の内、S+V+O+C に属する。すなわち、 関係代名詞“that”以下は先行詞“operations”を修飾しているだけであるから、これを省略すると、次のようになる。
 
  “The organization shall identify and plan those operations consistent with its environmental policy, objectives and targets
 
  ここに、S(主語)は「組織(organization)」、V(述語動詞)は「特定し計画する(identify and plan)」、O(目的語)は「それら運用(those operations)」、C(目的格補語)が形容詞たる「整合した(consistent ……)」である。 文法上、目的格補語は名詞か形容詞であり、目的語が何であるか、どんな状態であるかを表す(1)。例えば、次のようである。
 
  He got his feet wet (彼は足を濡らした = 足がぬれている)(1)
  She considered herself lucky (彼女は自分を幸運だと思った = 自分が幸運)(2)
 
  本条文の場合は、「それら運用operations)」が、「環境方針、目的、目標と整合するconsistent ……)」のである。 JIS和訳 「運用」 は"operation"であり、ここでは組織の業務のことを指している。 「それら運用」 とは 「特定された著しい環境側面に関係する業務」であり、「特定された著しい環境側面に関係する業務が、環境方針、目的、目標と整合する」のである。  

  従って、条文は、「特定された著しい環境側面に関係する諸業務環境方針、目的、目標と整合するようにそれらの諸業務特定し、計画すること」 である。 環境方針は、組織の著しい環境側面をどのように管理するのかの考え方を示し、環境目的、目標は一定の期間に特定の環境影響をどのように低減するのかの到達点を示す。 各著しい環境側面に関係する業務は、この環境方針、目的、目標に整合するように実行されなければならない。 規格条文の意図は、「4.3.1項に則って特定された著しい環境側面に関係する諸業務を特定し、それら諸業務が環境方針、目的、目標と整合するように、それらの諸業務を計画すること」 である。 だから「環境方針、目的、目標を逸脱するかもしれない状況を管理するために、…….」 という第二節の要求事項が必要なのである。
 
<英文解説書>
  英文解説で本条文と異なる表現で本条文の意図を説明したものには、次の事例がある。いずれも、上記の英文の解釈の正しさを裏付けている。
 
@ 組織は、特定された著しい環境側面に関係する諸業務を特定し、計画し、それら諸業務が環境方針、目的、目標に整合することを確実にする必要がある。(The organization needs to identify and plan those operations associated with identified significant environmental aspects and ensure they are consistent with its environmental policy, objectives and targets)(3)
 
A 4.4.6項の目的は特定した著しい環境側面に関係する業務の手順を開発し、維持し、文書化することである。この項は、組織の使命、方針、目的、目標が達成されるように管理が行なわれることを確実にする。(This element ensures tjat controls are implemented so that mission, policy directives, objectives and targets are met) (4)
 
<事例>
  また、本条文と同じように、S+V+O+Cの文型の目的格補語として“consistent with ……”を用いた文章を インターネッットで調べると、次の事例を見つけることができた。
 
米国、カナダ、メキシコの3国は、北米地域の牛肉及び肉牛貿易が国際獣疫事務局指針に沿って正常化することの重要性を認識することで一致した。= 牛肉及び肉牛貿易が国際獣疫事務局指針と一致する ( The United States, Canada and Mexico mutually agreed on the importance of normalizing beef and cattle trade in North America consistent with the guidelines established by the World Organization for Animal Health. )(5)
(1) 清水周裕: 新英語、数研出版梶AH4.4.10;
(2) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(3) iema: Revision to ISO14001:2004, Dec. 2004
(4) DRMS-Instruction 6050.2: EMS Core Instruction, February 2, 2008
(5) 米国農務省: www.usda.gov
H20.8.1(追 8.9)  修(H21.12.4)
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