ISO9001/14001 コンサルティング・研修
環境影響 とは
( ISO14001:2004  4.2 a) / 4.5.1 )

「環境の影響」ではなく、「環境への影響」のこと
英語で読み解く
ISO9000/14000  (47)
32-02-47
   規格要求事項へのJIS規格では“environmental impact”を『環境影響』と和訳しているが、これが規格理解とこれを正しくせんとする規格解説における表現を難しくしている。
 
1. 原文
   “impact”とは、“あるもの”が“他のもの”に対して持つ強い効果、よく効く効果*3という意味であり、その結果として生じた“他のもの”の変化を意味する(1)。日本語では、〜への劇的効果、強い影響、であり(2)、影響(力)、反響、効果、である(3)。ここに日本語の「影響」は「他に作用が及んで反応・変化が現れること、また、その反応・変化のこと」を意味する(4)から、“impact”である。“environmental impact”では、形容詞“environmental”は名詞“impact”がどのようなものかを説明するのが役割であるから、環境に係わる影響という意味である。例えば、“environmental impact of tourism” は「観光客による環境への影響」であり、観光客が歩き回って植栽を踏みつけ、自然環境へ影響を及ぼすことである。このように原文の意味は、何かによって環境が変化する、一般には悪化することを意味するから、環境への影響であり、その結果の環境が受けた影響の意味である。
 
2. 環境影響
  一方、日本語表現の一般原則では『環境影響』とは、環境が何かに影響することを意味する。例えば、放射線が人の健康に影響することを、人の健康への「放射線影響」が認められる、と言う。ウェブで検索すると、『環境影響』のような「〜(名詞)影響」なる言葉は多くないが、いずれも「〜の影響」「〜が影響する」ということを意味する。例えば、「異常気象影響」「森林伐採影響」「原油高影響」である。「の」をつけると「紫外線の影響」「円高の影響」「飲酒の影響」と数多くあるし、先の例でも「異常気象の影響」「森林伐採の影響」「原油高の影響」の方がよく使われる表現である。日本語では『環境影響』は「環境の影響」のことであり、環境が何かに影響することを意味する。
 
  日本語では「影響」と同じ意味であるが、主として好ましい影響の場合に使われる「効果」がある。この「効果」は、「ビタミンC効果」「教育効果」『品質改善効果」など「の」を付けずに用いられることが多い。この場合でもビタミンCが健康に良い効果を持ち、教育が道徳心の涵養に効果があり、苦情低減に対して品質改善の効果があったということである。「環境効果」と言うなら、環境が何かを良くする効果があることを意味する。
 
  このように普通の日本語感覚で『環境影響』「環境効果」と聞くと、『環境の影響』「環境の効果」と直感し、環境が何かに及ぼす影響であり、環境が何かのためになる効果であると考えてしまう。従って、干ばつや豪雨の多発は、温暖化した地球環境が気候に及ぼした影響、すなわち、「環境影響」であり、温暖化という「環境効果」で干ばつや豪雨が多発している。しかし、JISQ14001では、地球が温暖化したことが『環境影響』である。『環境影響』は規格の意図に照らして正しい日本語ではなく、誤訳である。この誤訳のために、規格を読む度に、また、ISO14001に関係する仕事をする度に、『環境影響』という言葉を使いながら、これは「環境の影響」ではなく「環境への影響」ということだと思い直さなければならない。例えば、4.2 a)項*1は、組織の活動、製品及びサービスの『環境影響』ではなく、「環境への影響」と読み替え、4.5.1項*2は、著しい『環境影響を与える可能性のある』運用ではなく、「環境への影響を持ち得る」と読み替えなければ、規格の意図を理解できない。
 
3. 環境影響評価法
  但し、環境基本法では「人の活動により環境に加えられる影響」と表現されているが、この法律を受けた「環境影響評価法」では、「環境に及ぼす影響」を定義する中で、「以下単に “環境影響”という」と規定している。従って、JIS和訳が「環境への影響」を『環境影響』と表現するのは、法律で用いられている用語にならったということかもしれない。しかし、もともと「環境影響評価」という言葉は、公共事業がもたらす影響の評価という「影響評価」が新しい概念であったのであり、何が対象かということで「環境」に係わる「影響評価」と呼ばれたと思われる。これを定める「環境影響評価法」の中で「環境影響を評価する」という表現が生まれたとすれば、日本語を軽んずる軽はずみな行為であった。それにしてもJIS和訳が『環境影響』を用いなければならない必要はないから、こんな和訳はするべきでなかった。

 
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) 佐々木達:新コンサイス英和辞典、三省堂、1980.9.15
(3) EDグループ:英辞郎、PDIC for Windows
 
*1: environmental impacts of its activities, products and services
*2: its operation that can have a significant environmental impact
*3: powerful effect that something has on something/somebody
H23.3.4
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サニーヒルズ コンサルタント事務所