ISO9001/14001 コンサルティング・研修
運用の鍵となる特性 とは
(JISQ14001 4.5.1  監視及び測定)
−著しい環境影響の管理のための業務実行の監視測定−
業務の不可欠な特性 の意
英語で読み解く
ISO9000/14000
(50)
32-02-50
1. 運用の鍵となる特性の監視及び測定
  規格要求事項ISO14001は、4.5.1項(監視及び測定)で、組織が『著しい環境影響を与える可能性のある運用のかぎ(鍵)となる特性を監視及び測定する』ことの必要を規定している。この中の『運用のかぎ(鍵)となる特性』とはどういうことなのか、日本語としては問題ないのだが、環境マネジメント システムの要件としての意味するところがすっきりしない。
 
  原文は“to monitor and measure the key characteristics of its operations that can have a significant environmental impact”であるから、「重要な環境への影響が生じ得る業務の不可欠な特性を監視測定する」を意味し、その意図は「重要な環境への影響を生じ得る日常業務実行の的確な指標となる環境保全特性を監視測定する」である。
 
2. 関連用語
  まず、『著しい環境影響』とは、それを組織が管理することに対する顧客や消費者を含む利害関係者の必要や期待が高い「環境影響」であり、組織にとって重要な『環境影響』のことである(No.12参照) 。また、『環境影響』は「環境への影響」である(No.47 参照)。
 
  次に、『運用』という日本語からは「環境マネジメントシステムの運用」というようなことが頭に浮かぶが、原文は“operation”である。“operation”は、『運用』ではなく、「組織化された活動」の意味の「業務(上の活動)」のことであり、実務的には組織の日常業務のことである(No.36 参照)。また、『著しい環境影響を与える可能性のある運用』とは、組織が管理しなければならない重要な環境影響の原因となる、或いは、発生させている業務のことである。
 
3. 特性
  『特性』の原文は、“characteristics”である。これは「何か又は誰かが持つ特徴、又は、性格*3」であり(1)、「あるものを同種の他のものと区別する何か*2」である(3)から「特徴」である。ISO9000(3.5.1)では「際立った特徴(distinguishing feature)」と定義されている。日本語ではそれぞれの観点からの「特徴」は「特性」と呼ばれるが、英語ではこの場合も“characteristics”である。例えば、金属材料の重さや熱膨張性などは「物理特性(Physical Characteristics)」であり、強度や延性は「機械特性(Mechanical Characteristics)」である。また、「特性」は「性質(property)」とも呼ばれ、例えば、上記の重さや熱膨張性は「物理的性質」、強度や延性は「機械的性質」とも呼ばれる。これら「特性」「性質」の水準や程度を表すのが「特性値」であり、例えば、上記の特性に関する特性値はそれぞれ、密度や比重、熱膨張係数、引張り強さや硬さ、伸びや絞りである。これを試験によって求めた場合は「試験値」である。
  
 この場合の“characteristics”を『特性』と和訳することは適切である。そして、何の特性かというと“characteristics of its operations”であるから「業務(上の活動)の特性」である。日本語では「物の特性」とは言うが、「業務の特性」とはあまり言わない。業務の特性とは例えば、業務の労働安全、効率、安定実行、自動化などの観点での特徴である、安全性、生産性、生産安定性、自動化度である。これらの特性は例えば、けがの発生率、時間当たり生産数量、ライン稼働率、生産量当たりの要員数などの特性値によって、その水準や程度が表される。
  
 この場合の業務の特性は、業務が発生させる環境への影響の観点での特性であり、「環境保全特性」とも呼ぶべき特性である。規格の付属書Aの例示(A.5.1)では、水処理業務には廃水放出という環境側面があり、この業務の環境保全特性は排水の汚濁度であり、これを表す特性値は、排水の生物学的及び化学的酸素要求量や温度、pHなどである。
  
4. 鍵となる特性
 
そこで『鍵となる特性』であるが、原文は“key characteristic”である。この“key”が『鍵となる』と和訳されている。ここに、日本語で『鍵となる』は「事を解決するのに必要な」の意味(2)であり、「これさえあればよい」とか「それで物事の成否が決する」という程に絶対に必要であるいう場合に用いられる。しかし英語の“key”は、「最も重要な、必須の、決定的に重要な意味を持つ、絶対に必要な*1」という意味(1)であるから、「これがなければならない」という観点から必要なということである。従って、和訳『鍵となる特性』は原文の意図に合っていない。 “key characteristic”は直訳すると「不可欠な特性」である。
  
5. 条文全体
  条文の趣旨は、環境マネジメントの業務の実行管理のために『著しい環境影響を与える可能性のある運用の鍵となる特性』を監視測定しなければならないということである。この監視測定は、利害関係者のニーズと期待の高い重要な環境への影響の程度を、設定された『環境方針』『目的・目標』の管理基準内に維持し、それを逸脱することのないようにする管理する(4.4.6項)のためである。
 
 この趣旨では、「不可欠な特性」とは「監視測定が不可欠な特性」であり、監視測定が不可欠であるのは、重要な環境への影響の管理のために絶対に必要であるということであり、これを欠いて他の特性を監視測定しても当該の重要な環境への影響を効果的に管理できないからである。つまり、「不可欠な業務の特性」とは「業務実行の的確な指標となる特性」と言い換えることが適切である。ここに、「特性」は「環境保全に係わる特性」であるから、条文の意図を明確にするには、「重要な環境への影響を生じ得る日常業務実行の的確な指標となる環境保全特性」がよい。

 
引用文献
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6日
(3) Merriam-Webster Inc: OnLine Search,Thesaurus, www.m-w.com
 
原文
*1: most important, essential, critical, vital
*2: sth that sets apart an individual from others of the same kind
*3: typical feature or quality that sth/sb has.
H23.8.31
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