ISO9001/14001 コンサルティング・研修
要員の適格性確認 とは
(ISO9001:2000  7.4.2   購買情報:−供給者の要員の業務能力の管理−
 
要員に必要な業務能力 の意

英語で読み解く
ISO9000/14000  (51)
32-02-51
1. 要員の適格性確認
  JISQ9001 7.4.2項(購買情報)では、組織が明確にすべき購買製品に関する情報として「要員の適格性確認に関する要求事項」が含まれると規定されている。従来から親会社が子会社に要求していた従業員の教育訓練や親会社の資格認定の取得などがこの条項に相当するものと解釈されている。しかし、これらが『適格性』なるものを『確認』することを『要求』していることになるのか、日本語としては無理がある。
 
  条文の日本語を疎かにして、こうだこうだと勝手な解釈をし、それでも当たらずと言え遠からずの結果となっている典型の解釈である。JIS和訳は英語解釈を誤ったことによる誤った和訳であり、一般化した解釈には原文に示されている規格の意図との繋がりが明確にされておらず、登録証と引き換えに多くの組織で無駄な形式の実践が強要されている。
 
 
2.英語“qualification”の意味
  この「適格性確認」の原文は“qualification”である。“qualification”は種々の意味を持つが、規格の趣旨に関係するのは次の3種類である(1)。
 
イ) 合格した試験、又は、履修した教科*1
  英和辞典 (6) (7)で これに対応する日本語には、「(認定された)資格、資格証明書、免許状」などがある。
 
ロ) 特定の業務又は活動に必要な専門性、又は、経験の種類*2
  英和辞典 (6) (7)でこれに対応する日本語には、「資質、技能、能力」などがある。英語では「昔の教職の経験がこの仕事に必要な経験となる*4」や「最高の専門性を持った申請者*5」というように使われる。
 
ハ) ある仕事をするのに又はある競争に参加するのに必要な、試験に合格した、又は、教育訓練の課程を履修した、又は、一  定の水準に達した、という事実*3
  英和辞典 (6) (7)でこれに対応する日本語には、「必要条件、条件、(〜を行なうことが出来るという意味での)資格」などがある。英語では、「訓練中の看護師は試験に合格すれば雇用されることが保証されているべきである*6」「この試合に勝つことがワールドカップに出場する資格を持つ*7」「会員になるための条件*8」
 
3.規格条文の趣旨
  7.4.2 b)項は、供給者が組織の必要な製品を確実に製品実現するために必要不可欠な特定の業務能力を購買条件として要求するというのが趣旨である。すなわち、この場合の“qualification”は、上記のロ)の意味に解するのがよく、専門性や職務経験で表される特定業務の実行に必要な業務能力の意味である。従って『適格性確認』ではなく、「必要な業務能力」である。特定の要員にこの業務能力、つまり、職務遂行力、或いは、職務能力があるかどうかは、規格では学校教育、職業訓練、専門性、職務経験によって判断される。職務能力のあることは“competent”であり、JIS和訳で『力量がある』と表現される(No.7)。
 
  規格の趣旨では、供給者が決められた品質の製品をきちっと作り、組織に不良品を納入することがないようにするには、供給者は組織と同じくISO9001規格に則って業務を行うことが必要であり、その一貫として供給者の製品実現業務を行なう要員はそれぞれの業務に対する『力量』を持っていなければならない。しかし、業務を供給者に委託する以上、この『力量』の管理の在り方まで組織が要求したり管理することは、業務委託の狙いから合理的でない。この業務を行なう要員だけにはどうしても必要な特定の『力量』を持って業務を行ってもらわないと不良品が納入されることに繋がるというような場合には、組織はそれを購買情報として供給者に要求する必要がある。
 
  従って7.4.2 b)項の場合の“qualification”は、一般に「資質、技能、能力、適格性」という日本語が当てられる「特定の業務又は活動に必要な専門性、又は、経験の種類」という意味で用いられていると考えられる。つまり、『適格性確認』ではなく「必要な業務能力」である。業務委託したとしても組織は必要なら、特定業務に必要と考えられる特定の職務能力を持った要員が業務を行うことを確実にしなければならない。この場合は、この「必要な業務能力」とその管理の方法と責任を明確にして購買情報に含めなければならない。
 
4.JISの英語解釈の問題点
  JIS規格の巻末解説では、“qualification”が「規定要求事項が満たされていること実証するプロセスを経て、基準に適合している状態」を意味するので、人に関しては「適格性確認」、ものについては「承認」を当てたと説明している(2)。また、用語の定義の規格の“qualification process”に対して94年版では『適格性確認プロセス』と『資格認定プロセス』の2つの訳語が当てられており(3)、00年版では『適格性確認プロセス』と和訳されている(4)。英語の意味が『適合している状態』であるならば「適合性」であり、人に関しては『適格性』というのも適当な和訳かもしれない。しかし、「適合性」の意味だと解説しながら、「確認」「承認」といった和訳をしているのは矛盾である。
 
5.まとめ
  JIS和訳『要員の適格性確認』は「要員に必要な業務能力」であり、『要員の適格性確認の要求事項』とは「要員の業務能力に関する必要条件」が正しい和訳である。組織が良品納入の確保のために必要と考えるなら、特定の業務を担当する供給者の要員が持つべき業務能力とその管理の要件を明確にして購買情報に含めなければならないというのが、7.4.2 b)項の“qualification”を含む条文の意図である。
 
 
引用文献
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) JISQ9001:2000、巻末解説、3.2 p)
(3) JISZ9901:1998 参考 2.13
(4) JISQ9000:2006 3.8.6
(6) EDグループ:英辞郎、PDIC for Windows
(7) 海野文男他: 実用英語大辞典、日刊アソシエーツ、1998.6.26

英文
*1 an exam that you have passed or a course of study that you have successfully completed
*2 a skill or type of experience that you need for a particular job or activity
*3 the fact of passing an exam, completing a course of training or reaching the standard necessary to do a job or take part in a competition
*4 Previous teaching experience is a necessary qualification for this job(1)
*5 the applicant with the best qualification(2)
*6 Nurses in training should be given a guarantee of employment following qualification(1)
*7 A victory in this game will earn them qualification for the World Cup(1)
*8 a qualification for membership(2)
*9 process to demonstrate the ability to fulfil specified requirements
H24.3.5
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