ISO9001/ISO14001
コンサルティング・研修

解説
   実務の視点 による  規格要求事項の解釈
このセクションでは、ISOマネジメントシステム規格(ISO9001/ISO14001)の要求事項を
実務の視点で、様々な角度から読み解き、解説します。
目  次
MSS 共通テキスト
定義・上位構造
13
2015年改定の要点
ISO9001
14 2015年改定の要点
ISO14001
英語で読み解く
ISO9000/14000
規格の論理
ISO9000/14000
実務の視点による
ISO9001の解説
よく見られる
誤った取組み
ISO9001/14001
この方がよくわかる
ISO14001:2004
実務の視点による和訳
規格と認証の利用
ISO9001/14001 事例研究
改定の要点
ISO14001:2004
10 改定の要点
ISO9001:2000
11 改定の要点
ISO9001:2008


規格条項別  目次
共通テキスト
5.  リーダーシップ
5.1 関連する管理層の役割を支援

 
規格条項別  目次
JISQ 14001
* 全 般
6.マネジメント
4.ジェネリック マネジメントシステム
序 文
40. 社会経済的ニーズ
4.1 一般要求事項
1. 要求事項

49.マネジメント システムの実施
4.2 環境方針
17. トップマネジメント
47..環境影響
27. 汚染の予防
10. 約束、コミットメント、責務
3.目的、目標設定の枠組み
20. 組織で、組織のために
4.3.1 環境側面
12. 著しい環境側面
14. 管理でき、かつ、影響が
4.3.2 法的、その他要求事項
31. 適用可能な法的要求事項
4.3.3 目的、目標、実施計画
30. 環境目的及び環境目標
4.4.1 資源、責任及び権限
18. 管理責任者
4.4.2 力量、教育訓練、自覚
15. 教育、訓練、教育・訓練
7.力量と能力
16. 受けていることを要求
4.4.3 コミュニケーション
35. 外部コミュニケーション を行なう
4.4.4 文書類
44. 関係する文書の参照
4.4.5 文書管理
45. 変更、現在有効版の識別
4.4.6 運用管理
36. 運用管理
38. 著しい側面に伴う運用

41. 方針に整合して特定
4.5.1 監視及び測定
47..環境影響
50..鍵となる特性
4.5.3 不適合、是正・予防
24. 必要な変更を文書に反映
4.6 マネジメント レビュー
2.マネジメント レビュー
32.改善の機会

34. 決定及び処置

規格条項別  目次
JISQ 9001
* 全 般
4.ジェネリック マネジメントシステム
1.1 適用範囲 一般
9.規格使用の目的
4.1 一般要求事項
1. 要求事項
46. プロセスと適用の明確化
49.マネジメント システムの実施
4.2.2 品質マニュアル
44. それらを参照する情報
4.2.3 文書管理
45. 変更、現在有効版の識別
4.2.4 記録の管理
43.読易く、識別可能、検索可能
5.1 経営者のコミットメント
17. トップマネジメント
10. 約束、コミットメント、責務
5.3 品質方針
11. 要求事項へ適合のコミットメント
3.品質目標設定の枠組み
5.4 計画
5.それぞれの部門、階層
8.品質マネジメントシステムの計画
5.5.2 管理責任者
18. 管理責任者
5.6 マネジメントレビュー
32. 改善の機会
34. 決定及び処置
6.2 人的資源
48. 活動のもつ意味、関連性
37. 教育・訓練の有効性
15. 教育、訓練、教育・訓練
7.力量と能力
7.1 製品実現の計画
52. 組織の運営に適した形式
7.3.4  設計・開発の レビュー
53. 問題の明確化と処置の提案
7.4..2 購買情報
50. 要員の適格性確認
7.5.1 製造、サービス提供の管理
26. 適切な設備を使用
23. 作業手順が利用できる
7.5.2 プロセスの妥当性確認
19. 妥当性確認
33. サービス提供後に顕在化
7.6 監視、測定機器の管理
28. 監視機器及び測定機器
25. 測定値の正当性の保証
22. 保証されねばならない
8.2.1 顧客満足
29. 影響に対する適切な処置
8.24  製品の監視及び測定
39. サービス提供を行なわない
8.3 不適合の管理
42. 実施状況の測定のひとつ
8.5.2 是正処置
21. 実施した活動のレビュー
 
規格条項別  目次
JISQ 9000
3.2.4 品質方針
13. 一般に方針と整合する
3.2.6 マネジメント/運営管理
6.マネジメント

 
英語で読み解く ISO9000/ISO14000 32
   JISQ9000/14000 シリーズ規格は、"ISO規格と内容的に全く同一な翻訳規格"であることは、各規格序文で明確にされている。これは、和訳文の日本語を一人歩きさせてはならず、最終的には英原文に立ち戻ることが必要であるという、規格解釈の原則を示すものである。(詳しくはこちら<32-02-00>) 
  然るに日本では、ほとんどの規格解釈が JISの日本語の意味を根拠としており、JIS和訳文にある多くの誤訳や不適切な翻訳とあいまって、日本に独特の、或いは、顕著な形式的或いは非論理的解釈が育まれている。
  英文法上、また、規格の意図の点で、更には、日本語表現として、問題のあるJIS和訳について検討し、規格の適切な理解の一助としたい。                 
目 次
<最新号>
54. 関連する管理層の役割を支援するとは(H25.1.3)
53. 問題を明確にし、必要な処置を提案するとは
(H24.6.19)
52. 組織の運営方法に適した形式とは(H24.3.15)
51. 要員の適格性確認とは(H24.3.5)

  <規格条項別 目次>
共通テキスト
(規格協会仮訳)
JIQ 14001 JISQ 9001 JISQ 9000
 
<規格別 目次>

   共通テキスト  (規格協会仮訳) a51
 54. 関連する管理層の役割を支援する とは
 
JISQ 9000/14000 共通
 49. マネジメント システムを実施する とは
 46. 必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする とは
 45. 文書の変更の識別、現在有効な版の識別を確実にする とは
 34. 決定及び処置 とは
 32. 改善の機会及び変更の必要性 とは
 18. 管理責任者とは
 17. トップマネジメントとは
 15. 教育と訓練と教育・訓練の違い
 .力量(ISI9000)と能力(ISO14000)とは
 .ジェネリックマネジメントシステム(GMS)とは
 .品質目標、環境目標設定の枠組みとは
 .マネジメントレビュー(経営層による見直し)とは
 . 要求事項とは
JISQ 9001
 53. 問題を明確にし、必要な処置を提案するとは
 52. 組織の運営方法に適した形式とは
 51. 要員の適格性確認とは
 48. 自らの活動のもつ意味及び重要性とは
 44. それらを参照する情報とは
 43. 読みやすく、容易に識別可能、かつ、検索可能であるとは
 39. 決めたことが完了するまではサービス提供を行なわないとは
 37. 教育・訓練の有効性の評価とは
 33. サービス提供の後でしか顕在化しない不具合とは
 29. 品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定のひとつとは
 28. 監視機器及び測定機器 とは
 26. 適切な設備を使用しているとは
 25. 測定値の正当性が保証されなければならないとは
 23. 必要により作業手順が利用できる とは
 22.
測定値の正当性が保証されなければならない場合にはとは
 21. 是正処置において実施した活動のレビュー
とは
 19. プロセスの妥当性確認
とは
 11. 「要求事項への適合に対するコミットメント」
とは
 10. 約束、コミットメント、責務
とは
 .ISO9001の適用範囲(規格使用の目的)

 .品質マネジメントシステムの計画
とは
 
.品質目標を設定する部門、階層とは
JISQ 14001
 50. 運用の鍵となる特性 とは
 47. 環境影響 とは
 44. 関係する文書の参照
とは
 
42. 不適合による影響に対して適切な処置をとる とは
 41. 方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面
とは
 40. 社会経済的ニーズとバランスをとる とは
 38. 著しい環境側面に伴う運用を明確にするとは
 36. 運用管理とは
 35. 外部コミュニケーション を行なう とは
 31. 適用可能な法的要求事項 とは
 30. 環境目的及び環境目標とは
 27. 汚染の予防とは
 24. 必要な変更を文書に反映するとは
 20. 組織で働く又は組織のために働く人々 とは
 16. 要員が訓練を受けていることを要求すること とは
 14. 管理でき、かつ、影響が生じると思われる環境側面 とは
 12. 「著しい環境影響」「著しい環境側面」 とは
JISQ 9000
 13. 一般に品質方針は組織の総合的な方針と整合するとは
 6.マネジメント(運営管理活動)の定義


54. その他の関連する管理層の役割を支援する
xxxマネジメントシステム管掌トップマネジメントの責任の範囲
(共通テキスト 5.1 リーダーシップ及びコミットメント)
  本項の英文解釈は取り消します。(H26.10.25)
<理由>
 SL共通テキスト作成JTCGの概念文書(16)の公表(H26.10)により、“their”が“topmanagement”ではなく“relevant management roles”を指すことがはっきりと説明され、これを含む同文書の記述から、“top management”が品質経営<品質マネジメント>のトップマネジメントではなく、組織全体の経営管理<マネジメント>のトップマネジメントであること、及び、“management”が経営管理<マネジメント>の意味ではなく「管理層」の意味であることが明確になった。さらに、規定の意図が、組織内の管理者、監督者が狙いの顧客満足の状態を実現に向けて品質経営<品質マネジメント>に関して委ねられた職責を積極的に果たすことを促す組織風土や環境を創造するというトップマネジメントの責任を規定していることが明らかにされた。。
 
  原文: “supporting other relevant management roles to demonstrate their leadership as it applies to their areas of responsibility”

このページの先頭へ 詳しくは<H25.1.3>

53. 問題を明確にし、必要な処置を提案する
     起き得る問題を特定し、必要な処置を企画し決める
設計・開発の レビュー の役割
(JISQ9001 7.3.4  設計・開発の レビュー)
 ISO9001では設計開発の効果的実行を管理するための、設計開発活動の実行と結果を評価する『レビュー』『検証』『妥当性確認』の要件を規定している。この中の『レビュー』は、所定の期限内に必要な結果を出すという観点で効果的に設計開発活動が実行されるよう、設計開発活動の節目節目で設計開発活動をそのまま計画の通りに進めてもよいかどうかを評価し、設計開発活動を方向づける活動である。
  
  これに関する規定をJISは、次のように和訳しているが、b)項は原文の意図を正しく日本語で表すという観点から如何にも安易な和訳である。
a) 設計・開発の結果が、要求事項を満たせるかどうかを評価する。
b) 問題を明確にし、必要な処置を提案する。
  
 『問題を明確にし、……提案する』では『レビュー』は、それまでの設計開発活動と結果の問題点を明らかにし、問題解決の対策を提案するという単なる問題調査の活動を意味する。『レビュー』は、設計開発活動の目標達成の障害となり得る問題を抽出し、これに対して必要な処置をとり、以て計画通りの期日に所定の結果が出るようにするために行われるのであり、それが『レビュー』の参加者に課せられた責任であるが、このJIS和訳では参加者の気楽な意見具申の活動となってしまう。
  
 『問題を明確にする』の原文は“identify any possible problems”である。『明確にする』は“identify”であり、こんな問題であると中味を明確にするのでなく、問題を見つけることを意味する。『問題』も“possible problems”であるから、今の問題点ではなく、このまま設計開発活動を続けた場合に将来に起きるかも知れない問題である。つまり、このまま設計開発活動を計画の通りに進めても、所定の期限で所定の設計開発結果を出すのに支障となるような問題が将来起きることはないのかどうかを評価し、すべての起きる可能性のある問題を見出し、特定するというのが原文の意味するところである。
  
 『必要な処置を提案する』の原文は“propose necessary actions”であり、『提案する』は“propose”である。この英語は一般に「提案する/提議する」と和訳されるが、「計画する/企てる/目論む/画策する/〜に乗り出す」というような日本語をあてるのが適当な意味でも用いられる英語である(108)。『提案する』なら誰に提案するのかが明確でないと日本語にならないが、JIS和訳はこれを明示できていない。つまり、この場合の“propose”は「企てる/企画し決定する」という日本語をあてるのが適当である。見つけた起きる可能性のある問題の内で、それが起きないようにする必要があれば、その問題を防止、緩和、回避する処置を検討し、決定しなければならないというのが、原文の意味である。こうして、所定の結果が間違いなく出るように、設計開発活動を方向づけるのである。
  
  正しい和訳は「起き得る問題を特定し、必要な処置を企画し決める」である。
この英文解釈が適切であるということは、ISO/TC176商業本*1がこの部分を次のような表現で解説していることでも明らかである。すなわち、「もし『レビュー』で問題が露呈したなら、これに対応するためにとるべき処置を決める必要がある。(If the review reveals problems, you will need to decide what action are to be taken to deal with these.)」のである。
 
*1: ISO/TC176: ISO9001 for Small Businesses, ISO中央事務局、2002;
このページの先頭へ <H24.6.19>

52. 組織の運営方法に適した形式 とは
     組織の事業活動の態様に合った形態 の意
製品実現の計画の結果の在り方に関する要件
(JISQ9001 7.1 製品実現の計画)
  JISQ9001の7.1項には、『製品実現の計画』活動の『アウトプット は、組織の運営方法に適した形式でなければならない』という規定がある。これは08年版で改められたJIS和訳であり、00年版では『アウトプットは、組織の計画の実行に適した様式であること』であった。
 
  『製品実現の計画』活動とは、受注又は成約した製品の仕様と品質を決め、これを実現するのに必要な業務とそれらの順番と相互関係、各業務の実行と管理の手順を決める活動である。『アウトプット』とはその結果であり、条文はこの結果がどのようでなければならないかということを言っている。しかし、JIS和訳文では結果を文書化するらしいことをうかがわせるが、その文書の書式や形が『計画の実行』『運営方法』に『適した』ものでなければならないということの意味がわからない。
 
  この原文は00年版も08年版も同じで、“The output of this planning shall be in a form suitable for the organization’s method of operation”である。
 
  まず、“form”は様々な意味があり、日本語でも「形、形状、形態」「姿、影、体つき、概観」「方法、形式、様式、やりかた、決まった手順」「記入要旨、用紙、ひな型」など多様である。“in a form”は一般には「〜の形(様式)で」であるが、“in a suspended form”“in a soluble form”“in a serial form”はそれぞれ「懸濁した」「水溶性の」「連載で」と和訳される。これらの“in a form”は「〜の形態、状態で」の意味である。
 
  次に“method of operation”の“method”はこの場合「秩序、順序、計画、体系」であり、“operation”はこの場合は「事業活動」の意味である。“method of operation”は、事業活動の秩序、決まった形態、やり方、態様という意味である。
 
  更に、“suitable for”は「〜に合った」、“planning”は「計画活動」という意味であるから、条文全体は「この計画活動の結果は、組織の事業活動の態様に合った形態でなければならない」である。
 
製造業中心に書かれていた94年版では『製品実現の計画』の結果を『品質計画書』に表す必要が規定されていたが、すべての業種業態を対象とする00年版では様々な態様の『製品実現の計画』があり、その結果も様々な形態をとり得る。組織は自身の業種業態に最も合った方法で『製品実現の計画』活動を行い、最も合った方法で結果を以降の業務に適用すればよいのである。
このページの先頭へ 詳しくは<sub32-02-52>

51. 要員の適格性確認の要求事項 とは
     要員に必要な業務能力のこと の意
供給者の要員の業務能力の管理
(JISQ9001 7.4.2 購買情報)
  JISQ9001 7.4.2項(購買情報)では、組織が明確にすべき購買製品に関する情報として『要員の適格性確認に関する要求事項』が含まれると規定されている。従来から親会社が子会社に要求していた従業員の教育訓練や親会社の資格認定の取得などがこの条項に相当するものと解釈されている。しかし、これらが『適格性』なるものを『確認』することを『要求』していることになるのか、日本語としては無理がある。
 
  この『適格性確認』の原文は“qualification”であり、種々の意味を持つ英語であるが『適格性を確認する』という意味はない。JIS規格巻末解説でも、「規定要求事項が満たされていること実証するプロセスを経て、基準に適合している状態」を意味すると解説されている。『適合している状態』なら「適合性」であり、人に関しては『適格性』という和訳はあってもよいが、和訳『適格性を確認する』はこの解説と矛盾する。
 
  規格の趣旨では、供給者が決められた品質の製品をきちっと作り、組織に不良品を納入することがないようにするには、供給者もISO9001規格に則って業務を行うことが必要であり、その一貫として供給者の要員もそれぞれの業務に対する『力量*』を持っていなければならない。しかし、業務委託とは『力量』も含めて供給者の業務実行の管理を供給者の責任に委ねることである。この業務を行なう要員だけにはどうしても必要な特定の『力量』を持って業務を行ってもらわないと不良品が納入されることに繋がるというような場合には、組織はそれを購買情報として供給者に要求する必要がある。これが7.4.2 b)項の趣旨である。
 
  従って、この場合の“qualification”は、一般に「資質、技能、能力、適格性」という日本語が当てられる「特定の業務又は活動に必要な専門性、又は、経験の種類」という意味である。7.4.2 b)項の“qualification”は「必要な業務能力」の意味で用いられている。職務能力のJIS和訳『力量』を用いると『必要な力量』である。
 
  JIS和訳『要員の適格性確認』は「要員に必要な業務能力」であり、『要員の適格性確認の要求事項』とは「要員の業務能力に関する必要条件」が正しい和訳である。組織は良品納入の確保のために必要と考えるなら、特定の業務を担当する供給者の要員が持つべき業務能力とその管理の要件を明確にして購買情報に含めなければならないというのが、7.4.2 b)項の“qualification”を含む条文の意図である。
このページの先頭へ 詳しくは<sub32-02-51.html>

50. 運用の鍵となる特性 とは
     業務の不可欠な特性 の意
著しい環境影響の管理のための業務実行の監視測定
(JISQ14001 4.5.1 監視及び測定)
  ISO14001は、4.5.1項(監視及び測定)で、組織が『著しい環境影響を与える可能性のある運用のかぎ(鍵)となる特性を監視及び測定する』ことの必要を規定している。この中の『運用のかぎ(鍵)となる特性』とはどういうことなのか、日本語としては問題ないのだが、環境マネジメント システムの要件としての意味するところがすっきりしない。
 
  原文は“to monitor and measure the key characteristics of its operations that can have a significant environmental impact”である。『著しい環境影響』とは、組織にとって重要な『環境影響』のことであり(No.12参照)、『環境影響』は「環境への影響」のことである(No.47 参照)。また、『運用』の原文は“operation”であり、「組織化された活動」の意味の「業務(上の活動)」のことであるから、『運用』ではなく、実務的には組織の日常業務のことである(No.36 参照)。また、『著しい環境影響を与える可能性のある運用』とは、組織が管理しなければならない重要な環境影響が生じ得る、或いは、発生させている業務のことである。
 
  さらに “characteristics”は「あるものを同種の他のものと区別する何か」「あるものが持っている固有の特徴又は性格」である(2)から「特徴」である。日本語ではそれぞれの観点からの「特徴」は「特性」と呼ばれるが、英語ではこの場合も“characteristics”である。そして、何の特性かというと“characteristics of its operations”であるから「組織の業務(上の活動)の特性」である。環境マネジメントであるあるから、業務の特性とは、業務が発生させる環境への影響の観点での特性であり、「環境保全特性」とも呼ぶべき特性である。規格の付属書Aの例示では、水処理業務には廃水放出という環境側面があり、この業務の環境保全特性は排水の汚濁度であり、これを表す特性値は、排水の生物学的及び化学的酸素要求量や温度、pHなどである。
 
  そこで『鍵となる特性』であるが、原文は“key characteristic”であり、この“key”が『鍵となる』と和訳されている。ここに、日本語で『鍵となる』は「事を解決するのに必要な」の意味であり、「これさえあればよい」とか「それで物事の成否が決する」という程に絶対に必要であるいう場合に用いられる。しかし英語の“key”は、「最も重要な、必須の、決定的に重要な意味を持つ、絶対に必要な」という意味であるから、「これがなければならない」という観点から必要なということである。“key characteristic”は直訳すると「不可欠な特性」であり、規格の意図ではこれは「監視測定が不可欠な特性」であり、「特性」は「日常業務実行の環境保全に係わる特性」である。
 
  条文の趣旨の監視測定は、環境マネジメントの業務の実行管理のためである。この管理は、利害関係者のニーズと期待の高い重要な環境への影響の程度を、設定された『環境方針』『目的・目標』の管理基準内に維持し、それを逸脱することのないようにすることが目的である(4.4.6項)。監視測定が不可欠であるのは、重要な環境への影響の管理のために絶対に必要であるということであり、これを欠いて他の特性を監視測定しても当該の重要な環境への影響を効果的に管理できないからである。つまり、「不可欠な業務の特性」とは「業務実行の的確な指標となる特性」と言い換えることが適切である。条文の意図を明確にするには、「重要な環境への影響を生じ得る日常業務実行の的確な指標となる環境保全特性」がよい。
このページの先頭へ 詳しくは<sub32-02-50.html>

49. マネジメント システムを実施する とは
   
 経営管理の業務体系を履行すること の意
ISO9001/14001 規格の基本要件のひとつ
(JISQ9001 4.1/JISQ14001 4.1  一般要求事項)
  ISO9001/14001両規格の基本要件は『組織は、この規格の要求事項に従って、品質/環境マネジメント システムを確立し、(文書化し)、実施し、維持し、(その有効性を)継続的に改善しなければならない』である(4.1項)。
 
  『マネジメント システム』は「経営管理の業務体系」であり、経営管理を行う枠組みのことを指し、実体は例えば、業務実行のために用意された様々な手順と資源、作業環境、仕組みや決まりの集まりである。従って、『確立』『維持』『改善』は問題ないが、『マネジメントシステムを実施する』は違和感を覚える日本語である。
 
  『実施する』の原文は、“implement”であり、これは、「公式に決められていたことの実行又は使用を開始する*1」(1)、「定められた義務又は契約を完遂する*2」「〜に効力を与える*3」の意味(2)である。TC176指針(3)では「(決定や計画)に効力を与える*3」と定義されている。単なる「実行」ではなく「決められた通りに実行する」「用意されたことを実行に移す」という意味である。英和辞書では「(計画・政策などを)実行、実施、実践、履行、遂行、成就、施行、執行する」「実行に移す」である(4)。
 
  また、『確立』『実施』『維持』『改善』は、事業の維持発展に必要な経営目標の確実な達成を図る経営管理(マネジメント)のPDCA/プロセスアプローチ サイクルに基づく実行を表している。このサイクルでは『実施』は『確立した』経営管理の枠組みに則って、或いは、用意された手順、資源、作業環境、仕組みや決まりの通りに業務が行われるDo の段階に相当する。
 
  『マネジメント システム』を業務の枠組みと捉えて「マネジメント システムを運用する」という表現もよいが、これでは決められた手はずの通りに業務を行うという感じが甘い。従って、日本語を当てるとすれば、債務の履行、条約の履行、方針の履行などとして使われる「履行」がよいと思われる。「品質/環境 マネジメント システムの履行」と和訳することによって、これが、品質/環境 マネジメント システムとして整えられた手はずの下で、確立した手順に則り、用意された資源を使用して、確実に定められた結果を出すように業務を行なうことであることが明確になる。
  
*1 to make sth that has been officially decided start to happen or be used;
*2 to fulfill an obligation or contract which has been entered into;
*3 to give effect to; put (a decision or plan) into effect;
 
辞書
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) J.G Allee:Webster’s Encyclopedia of Dictionaries, Ottenheimer Publishers, Inc, 1981
(3) ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、17 May 2001, N526R
(4) EDグループ: 英辞郎、PDIC for Windows
このページの先頭へ H23.8.23

48. 自らの活動の意味及び重要性 とは
   自らの活動の組織の品質目標の達成との関連性と重要性 の意
要員が持つべき認識
(JISQ9001 6.2.2  力量、教育・訓練及び認識)
   ISO9001 6.2.2 d)項は、要員に職務の認識をもたせることの必要を規定している。
そのJIS条文は次の通りであり、何か釈然としない。
組織の要員が、自らの活動のもつ意味及び重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らがどのように貢献できるかを認識することを確実にする。
原文は、次の通りである。
its personnel are aware of the relevance and importance of their activities and how they contribute to the achievement of the quality objectives
  “relevance”は、どの辞書でも「関連性」であり、付随的に「妥当性」「適切さ」が挙げられている(108等) 。『活動のもつ意味』は「活動の関連性」である。 何との関連性であるかわからないので、『活動のもつ意味』と和訳されたのかも知れない。
 
  これは、原文の構文解釈の誤りのせいである。つまり、文末の“to the achievement of the quality objectives(品質目標の達成)”は、“relevance and importance of their activities(活動の関連性と重要性)”と“how they contribute(どのように貢献するか)”の両方につながるのである。
 

  つまり“relevance”は自らの活動が品質目標の達成とどのように関連しているのかという意味で「関連性」であり、『重要性』は自らの活動の品質目標達成に対する『重要性』である。
  条文は「自らの活動の、品質目標達成との関連性及び重要性、並びに、品質目標達成にどのように寄与するかを認識する」である。
 
  この構文と解釈は文法的には必ずしも適切でないかもしれないが、規格にはこの種の表現が他にも見られる
 
このページの先頭へ H23.6.19

47. 環境影響 とは
        「環境の影響」ではなく「環境への影響」のこと
環境への影響の管理
(JISQ14001 4.2  環境方針/4.5.1 監視及び測定)
  JISQ14001 4.4.2項(訓練、自覚及び能力)では、JIS規格では“environmental impact”を『環境影響』と和訳しているが、これが規格理解とこれを正しくせんとする規格解説における表現を難しくしている。
 
  “impact”とは、“あるもの”が“他のもの”に対して持つ強い効果、よく効く効果*3という意味であり、その結果として生じた“他のもの”の変化を意味する(1)。日本語では、〜への劇的効果、強い影響、であり(2)、影響(力)、反響、効果、である(3)。ここに日本語の「影響」は「他に作用が及んで反応・変化が現れること、また、その反応・変化のこと」を意味する(4)から、“impact”である。 “environmental impact”では、形容詞“environmental”は名詞“impact”がどのようなものかを説明するのが役割であるから、環境に係わる影響という意味である。例えば、“environmental impact of tourism” は「観光客による環境への影響」であり、観光客が歩き回って植栽を踏みつけ、自然環境へ影響を及ぼすことである。このように原文の意味は、環境への影響であり、その結果の環境が受けた影響の意味である。
 
  一方、例えば、放射線が人の健康に影響することを、人の健康への「放射線影響」が認められる、と言う。他にも「異常気象影響」「森林伐採影響」「原油高影響」というような表現があるが、いずれも、異常気象、森林伐採、原油高が何かに影響するのである。例えば「異常気象の影響」と「の」を付けたのと同じ意味である。日本語表現の一般原則ではでは『環境影響』は「環境の影響」のことであり、環境が何かに影響することを意味する。
 
  普通の日本語表現では例えば、干ばつや豪雨の多発は、温暖化した地球環境が気候に及ぼした影響、すなわち、「環境影響」「環境の影響」である。しかし、JISQ14001では、地球が温暖化したことが『環境影響』である。『環境影響』は誤訳であり、4.2 a)項は、組織の活動、製品及びサービスの『環境影響』ではなく、「環境への影響」と読み替え、4.5.1項は、著しい『環境影響を与える可能性のある』運用ではなく、「環境への影響を持ち得る」と読み替えなければ、規格の意図を理解できない。
 
  但し、環境基本法を受けた環境影響評価法では、「環境に及ぼす影響」を定義する中で、「以下単に “環境影響”という」と規定している。従って、JIS和訳が「環境への影響」を『環境影響』と表現するのは、法律で用いられている用語にならったということかもしれない。しかし、これも「環境」に係わる「影響評価」から「環境影響を評価する」という表現が作り出されたと考えられるから、日本語を軽んずる軽はずみな行為であった。それにしてもJIS和訳が『環境影響』を用いなければならない必要はないから、誤訳の言い訳にはならない。
このページの先頭へ 詳しくは<sub32-02-47>  H23.3.4

46. 必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする とは
       必要な業務とその実行主体を決める の意
組織的で体系的な業務の実行管理の要件のひとつ
(JISQ9001 4.1 一般要求事項)
  原文: determine the processes needed for the quality management system and their application throughout the organization
 
  JISQ9001 4.1項の第2節では、a)項では『必要なプロセス及びそれら組織への適用を明確にする』と規定されており、引続くb)項の『これらプロセスの順序及び相互関係を明確にする』の規定と合わせて、いわゆる品質保証体系図の作成が求められているとする解釈が一般に受け入れられている。
 
  品質保証体系図が必要とは、『〜を明確にする』という和文条文から、「図に表して明らかにする」という解釈に至った結果と想像される。しかし、『〜を明確にする』の原文は“determine”であるから、日本語では「決める」であり、「あいまいなことを明らかにする」という意味ではない。JIS和訳の『必要なプロセスを明確にする』とは「どの業務(プロセス)とどの業務(プロセス)が品質マネジメントシステムに必要であるかを決める」という意味である。00年版では“identify”であり、他の部分では「識別する」「特定する」と和訳されているのに、なぜか『〜を明確にする』と和訳されていた。原文の意図に基づくなら「〜を決める」と和訳するべきであった。
 
  次に『それらの組織への適用を明確にする』であるが、『それら』は必要と決めたプロセスのことであろうが、「必要なプロセスを組織に適用する」という文章は日本語になっていない。この原文は“their application throughout the organization”である。“application”は使用や運用、適用の意味であるから、『プロセスの適用』とは日本語で言えば「業務の実行」のことである。また、“throughout”は「至るところに」の意味であるから、『プロセスの組織への適用』とは、業務が組織内のいろいろな部門で実行されることを意味する。つまり、必要であるとして決めた各業務が組織内のどの部門で行なわれるのか、又は、分野横断的業務としてどの部門とどの部門を通して行なわれるのかという意味であり、“determine”であるから、このようなことを決めなければならないということである。原文を日本語で表現するなら「それら業務の組織内での実行の主体を決める」であろう。
   
  「品質マネジメントシステムに必要な業務、及び、それらの組織内での実行の主体を決定する」と和訳すればよくわかる。組織が組織的で体系的な品質マネジメントの業務の枠組みを確立せんとするなら、まず、どれどれが品質マネジメントシステムに必要な業務であるかを決め、それら業務の実行の責任をどことどこの部門に担わさせるかを決めなければならない。
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45. 文書の変更の識別、現在有効な版の識別を確実にするとは
   どこが変わったか、最新の改訂版は何版かが見分けられるようにする の意
文書管理の要件( c)項)
(JISQ9001 4.2.3 文書管理/14001 4.4.5 文書管理)
原文は“to ensure that changes and current revision status of documents are identified”
 
(1) 識別 (identify)
“identify”には、次のa),b),c)のような意味#1があるが、この場合はc)の「見分けることができる」である。
a)「見分けて、誰であるか又は何であるかを言うことができる*1」であり、日本語では「特定する」「〜と確認する」である。
b) 「誰か又は何かを見つける、発見する*2」であり、日本語では「同定する」「特定する」である。
c) 「誰であるか又は何であるかを見分けることができる*3」であり、日本語では「見分けることができる」「識別することができる」である。「服装によって人々が属する特定の社会的階層を見分けることができる*4」というように使われる。
日本語の「識別」は「見分けること」の意味であり、JIS和訳文では「文書が変更されたことを見分ける、現在有効な版がどれかを見分ける」という意味になり、この項は組織又は要員の行為、行動についての規定となる。
しかし実際には、「文書が変更されたことが見分けられる、現在有効な版がどれかを見分けられる」と言う意味に解釈されている。原文の趣旨は、文書の状態についての規定であり、「識別する」でなく「見分けられる」である。
規格の意図に沿った解釈をするためにJIS和訳の日本語や日本文をねじ曲げて解釈せざるを得ない、数ある不適切なJIS和訳の典型である。
 
(2) 文書の変更の識別 (changes of documents are identified)
「文書の変更が見分けられる」が正しい和訳である。
94年版では「可能ならば、変更の本質がその文書中又は適当な添付文書の中で見分けられること*5(著者和訳)」と規定されていた。
従って「文書の変更」とは、どこが変わったのか、何が変わったのかという意味である。
 
(3) 現在有効な版の識別 (current revision status of documents are identified)
“status”は、日本語では一般に「状態」「身分、地位」であるが、この場合の“status”は「ある情勢における状況又は状態*6」とか#3、「進行中の特定の時期における状況*7」の意味#2である。
“revision status”であるから改定に係わる状態であり、初版か改定版か、改定何版かというようなこと意味する。
その現状が“current revision status”であり、直訳すると「文書の改定に係わる現在の状態」である。つまり、改訂の最も進んだ現在の版は改訂第何版であるかという意味である。
 
*1:to recognize 〜 and be able to say who or what they are;  *2:to find or discover 〜; *3:to make it possible to recognize who or what sb/sth is;  *4:In many cases, clothes people wear identify them as belonging to a particular social class;  *5:Where practicable, the nature of the change shall be identified in the document or the appropriate attachments;  *6:state or condition with respect to circumstances;  *7:the situation at a particular time during a process;
 
1: S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
#2: Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc
#3: Merriam-Webster Inc: OnLine Search,Thesaurus, www.m-w.com
このページの先頭へ H22.9.9

44. それらを参照する情報関係する文書の参照とは
    それらを記載する文書名関係する文書名 の意
品質/環境マニュアルに記載する事項
(JISQ9001 4.2.2  品質マニュアル/14001 4.4.4 文書類)
  JISQ9001 4.2.2項(品質マニュアル)では、a)〜c)項を記載する品質マニュアルの作成の必要が規定されており、そのb)項は「品質マネジメントシステムについて確立された”文書化された手順”、又は、それらを参照する情報」である。条文の通して読むと、品質マニュアルには「”文書化された手順”を参照する情報」を含まなければならない、ということが趣旨である。
 
  「参照」とは、照らし合わせて見ること、引き比べて参考にすること、という意味(広辞苑)である。つまり、「”文書化された手順”を参照する」というような使い方をされる言葉である。JIS和訳条文では、”文書化された手順”を何かと照らし合わせるということであり、この何かが「情報」であるということになる。日本語として違和感のある表現であるだけでなく、実際にその「情報」とは何を指すのか思い浮かばない。
 
.  「それらを参照する情報」の原文は  “reference to them”である。 構文から“them”は、“文書化された手順”のことである。 “reference”には種々の意味があり、「参照」の意味もあるが、この場合は、「書籍のなかの特定の情報がどこから来ているか示す註釈」の意味*と受けとめるのがよい。
 
  すなわち、 原文の意味するところは、「“文書化された手順”がどの文書に記述されているかの註釈」である。“文書化された手順”を品質マニュアルに文書化する(手順を記述する)ことをせずに、品質マニュアルにはその概括を記述するだけの場合が一般的である。この場合は、その“文書化された手順”が実際に記述されている文書、つまり、手順書を、文書名や文書番号で指し、示すことである。
 
  JIS和訳「それらを参照する情報」の正しい和訳は「それらを記載する文書名」である。
4.2.2 b)項は、「品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”、又は、それらを記載する文書名」である。
 
 なお、JIS14001 4.4.4項(文書類)では、“reference to related documens”であり、「関係する文書の参照」と和訳されている。何となく意味がわかるような気がするが、「関係する文書の参照を含む」というのはやはりおかしな日本語であり、厳密な日本語解釈では条文の意図を読むことができない。正しい和訳は、「関係する文書名」である。
 
 * reference <Oxford Advanced Learner's Dictioanary>
: (7) a note in a book that tells you where a particular piece of information comes from    
このページの先頭へ H22.7.1

43. 読みやすく、容易に識別可能、かつ、検索可能である とは
読み取ることができ、何の記録か難なくわかり、迅速に取出すことができるの意
記録の保管の方法
(JISQ9001 4.2.4  記録の管理)
  JISQ9001 4.2.4項(記録の管理)では、記録の管理の要件として「記録は、読みやすく、容易に識別可能、かつ、検索可能でなければならない」と規定している。この和訳文には、2つの点で違和感を覚える。この原文は、次の通りである。
“Records shall remain legible, readily identifiable and retrievable”
 
 第1の違和感は、JISが“remain”(〜のままである)を無視した誤訳であるからであり、「記録は〜の状態を維持する」ように管理しなければならないというのが英文の意図である。
 
 第2の違和感は、JISが単語“legible”“identifiable”“retrievable”に、誤解を生む日本語や原文と異なる日本語を当てて和訳しているからである。すなわち、
「読みやすい」の原文“legible”は「書かれたり印刷された文字が読み取ることができるのに十分に明瞭である」という意味である。例えば文章が簡潔で「読みやすい」のではなく、紙に汚れがなく、文字が鮮明でよくわかるという意味であるから「読み取ることができる」である。記録作成後の時間経過や繰り返し使用によっても、こんなことにならないように記録を保管しなければならない。
「容易に識別可能」の原文は“readily identifiable”である。この場合の“identity”は「特定する」の意味であり、 “identifiable”は「特定できる」である。“readily”は「迅速で困難なく」の意味で「容易に」である。どのような記録であるかが難なくわかるという意味であり、このような状態を保つには例えば、文書や記録を綴じたファイルの背表紙に収納される文書、記録の名称を表示するようにする。
「容易に検索可能」の原文は“readily retrievable”である。“retrieve”は日本語では、取り出す、取り戻す、回収する、取ってくるであり、「検索」は誤訳である。これが“readily”であるから、迅速にであり、また、“remain”である。英文の意図は必要な程度に迅速に取り出すことができるような状態で保管することであり、例えば、倉庫に箱詰めの記録を保管する場合も、該当する記録がどの箱に収納されて、その箱はどこに置いてあるかがわかるようになっていなければならない。
 
  4.2.4項(記録の管理)のJIS和訳「読みやすく、容易に識別可能で、かつ、検索可能である」とは、「中味を読み取ることができ、何の記録かが難なくわかり、迅速に取り出すことができる」であり、記録はこのような状態を維持するような方法で保管されなければならない。
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42. 不適合による影響に対して適切な処置をとる とは
     不適合の影響に合った処置をとる の意
引渡し後又は使用開始後に不適合製品が検出された場合には
(JISQ9001 8.3 d)  不適合製品の管理)
  JISQ9001 8.3 d)項(不適合製品の管理)では、顧客で検出された不適合製品に関連して「その不適合による影響又は起こり得る影響に対して適切な処置をとる」ことの必要が規定されている。
 
  この和訳規定では、不適合による影響又は起こり得る影響に対して処置をとることが趣旨であると解釈される。不適合による影響であるから、例えば顧客が購入品を使用できない、必要な購買品が不足して生産活動に支障を生じているなどの状況のことであり、これに対してとる適切な処置とは代品との交換、代品の緊急納入、再検査再納入などの処置である。
 
  しかし、この原文は“taking action appropriate to the effects, or potential effects, of the nonconformity”であり、「不適合による影響又は起こり得る影響に合った処置をとる」である。すなわち、“appropriate”は「特定の状況に合っている、適当な、正しい」の意味であり(1)、とるべき処置(action)は「影響に対する処置」ではなく「影響に合に合った処置」である。とるべき処置が不適合の影響に合っていなければならないのである。
 
  不適合による影響に処置をとるのは当たり前であり、どんな処置でもいいということではないのはもちろん、顧客の要求に応じているだけでも十分とは限らない。顧客満足の向上を目指す効果的な品質マネジメントでは、その処置が不適合による影響に合った処置、つまり、不適合製品によって顧客が被った損害の状態やその大きさ、或いは、損害の拡大の防止や必要な損害回復の速さや程度に見合う処置であることを確実にしなければならない。規格の意図では、JIS和訳の「適切な処置」とはこのような処置を意味する。
 
  規格条文の主意は「不適合による影響に対して処置をとらなければならない」ことではなく、「処置が不適合による影響に合ったものでなければならない」ということである。顧客で不適合製品が検出された場合、顧客の再検査や引取りの要求に応じているだけでは十分ではなく、それも含めて不適合製品が検出されたことにより生じた、また、これから生じるかもしれない顧客への影響を最小限にするように必要な処置を自主的にとらなければならない。これが顧客重視を社是とし、顧客満足向上を追求する組織がとるべき行動である。
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41. 方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用 とは
    方針、目的及び目標に整合するように“運用”を計画する の意
環境方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画する
(JISQ14001 4.4.6  運用管理)
<4.4.6項>
  ISO14001 4.4.6項の「運用」とは組織の日常業務のことであり(No.36)、同項は、組織の多くの業務の中から著しい環境側面に関係する業務がどれであるかを特定し(No.38)、それらの業務の実行を管理することを規定している。
 
  この著しい環境側面に関して、JIS和訳は「環境方針、目的及び目標に整合して特定された著しい環境側面」であるとしている。 組織はその活動、製品及びサービスに係わる著しい環境側面を決定し(4.3.1項)、それらをどのように低減するかが、環境方針(4.2項)、環境目的、目標(4.3.3項)である。JIS和訳では著しい環境側面の決定が先か、方針、目的、目標の決定が先か、堂々めぐりである。
 
<JIS和訳の文法上の誤り>
  原英文は、次の通りであり、次の部分の英文解釈に2ケ所の文法上の過ちを犯している。
 
“The organization shall identify and plan those operations that are associated with the identified significant environmental aspects consistent with its environmental policy, objectives and targets”
 
  ひとつは、JIS和訳は「方針、目的、目標に整合して特定された……」であるから、形容詞の“consistent”を副詞として扱い、動詞の「特定する(identify)」を修飾させていることである。 「……特定された」の“identified”は “significant environmental aspects”の前にあり、「に整合して……」の“consistent with……”は後にある。 遠く離れた両者をくっつけて「……に整合して特定された……」というような意味をもたせることはできない。和訳は、形容詞の用法を誤り、無関係な2つの単語を結びつけ、文章の意図を誤って伝える結果となっている。
 
 
<S+V+O+C>
  この文章は、英語の5つの基本文型の内、S+V+O+C に属する。すなわち、 関係代名詞“that”以下は先行詞“operations”を修飾しているだけである。 S(主語)は「組織(organization)」、V(述語動詞)は「特定し計画する(identify and plan)」、O(目的語)は「それら“運用”、つまり、業務(those operations)」、C(目的格補語)が形容詞たる「整合した(consistent ……)」である。 文法上、目的格補語は名詞か形容詞であり、目的語が何であるか、どんな状態であるかを表す。
 
  目的語諸業務(operations)」が、「環境方針、目的、目標と整合する(consistent ……)」のである。 「諸業務」とは「特定された著しい環境側面に関係する諸業務」であり、「特定された著しい環境側面に関係する諸業務が、環境方針、目的、目標と整合する」のである。 従って、条文は、「組織は特定された著しい環境側面に関係する諸業務が環境方針、目的、目標と整合するようにそれらの諸業務を特定し、計画すること」である。
 

  環境方針は、組織の著しい環境側面をどのように管理するのかの考え方を示し、環境目的、目標は一定の期間に特定の環境影響をどのように低減するのかの到達点を示す。 各著しい環境側面に関係する業務は、この環境方針、目的、目標に整合するように実行されなければならない。 規格条文の意図は、「4.3.1項に則って特定された著しい環境側面に関係する諸業務を特定し、それら諸業務が環境方針、目的、目標と整合するように、それらの諸業務を計画すること」である。 だから「環境方針、目的、目標を逸脱するかもしれない状況を管理するために、…….」という第二節の要求事項が必要なのである。
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40. 社会経済的ニーズとバランスをとる とは
    社会的ニーズと経済的ニーズのバランスをとる の意
ISO14001の全体的な狙い
(JISQ14001  序文)
   ISO14001の序文には、規格作成の背景や規格の狙いと論理の説明が含まれている。 規格の条文の正しい解釈には、この理解が不可欠である。 例えば、序文の中で規格はその狙いについて、「この規格の全体的なねらいは、社会経済的ニーズと バランスをとりながら環境保全及び汚染の予防を支えることである」と説明している。 つまり、規格の狙いは、環境保全と汚染の予防を社会経済的ニースとの バランス を図りつつ進めるということである。 この「社会経済的ニース」という日本語は、社会的及び経済的ニーズの意味に受けとめられるが、この2種類のニーズと組織の環境改善努力との バランス を図るという意味が理解できない。
 
  この部分の英原文は、次の通りである。
“The overall aim of this International Standard is to support environmental protection and prevention of pollution in balance with socio-economic needs”
 
  JIS和訳「社会経済的ニーズ」は原文では“socio-economic needs”である。この“socio-economic$1とは、「社会的要素と経済的要素の組み合わせの、又は、に関連する、又は、を伴う」という意味であり、“socio-economic needs”とは「社会的ニーズと経済的ニーズ」を意味する。 規格序文は、「厳しさを増す法規制、環境保全を促進する経済的政策、環境問題及び持続可能な開発に対する利害関係者の関心の高まり」と、環境保全の必要性の高まりを説明しており、これが社会的ニーズである。 経済的ニーズは同じ序文に記されている「経営上の必要事項」「経済上の目標」などの言葉を引用するまでもなく、環境保全にかかる費用を最小限にしたいという事業組織の経営上のニーズである。 原文の意図は、「この規格の全体的なねらいは、社会的ニーズと経済的ニーズの バランスをとりながら環境保全と汚染防止(No.27)の推進を図ることにある」である。
 
  規格が意図する組織の地球環境保全への取り組みは、環境改善のニーズと組織の経営上、技術上の能力との バランスを図りながら継続的に、着実に進めるということである。 この理解がないと、4.3.3項(目的、目標及び実施計画)の中の、目的及び目標を設定するための条件に関する「〜を考慮すること」と「また、〜も考慮すること」の意味がわからない。 考慮しなければならない前者は社会的ニーズであり、後者は経済的ニーズである。 この両ニーズのバランスをとりながら精一杯の環境改善を進めている組織であるということを、ISO14001の登録証は社会に保証している。
 
$1 socio-economic (1):
   of, relating to, or involving a combination of social and economic factors
 
(1) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
このページの先頭へ H20.7.9

39. 決めたことが完了するまではサービス提供を行なわない
        決めたことが完了するまではサービス引渡しを行なわない の意
品質保証のための製品の検証に関して
(JISQ9001 8.2.4  製品の監視及び測定)
   ISO9001 8.2.4項(製品の監視及び測定)では、製品の出荷や顧客への引渡し前には検査や試験など製品の検証を行なうことを規定している。  どのような検証を行なうか、そのために必要な監視測定、また、合否判定基準は、製品実現の計画(7.1 c)項)で定められており、 また、梱包や包装、取扱い説明書の封入、さらに検査報告書の発行など製品の出荷や顧客への引渡しに必要な事項も決められている。 これら「個別製品の実現の計画で決めたことが問題なく完了する」までは、製品をリリースし、又は、顧客に引き渡してはならない。
 
  これをJISは、「〜するまでは、製品のリリース(出荷)及びサービス提供は行なわないこと」と記述している。 規格で「サービス提供」とは、7.5項の標題「製造及びサービス提供(production and service provision)」でも明白なように、有形の製品の“製造”と同じ概念であり、サービス という製品を生み出す活動である。  “サービス提供”して実現した“サービス”が、製品実現の計画で定めた通りかどうかを客観的証拠で証明するのが製品たるサービスの検証である。 サービスの検証を行なってからでないと、“サービス提供”活動にとりかかれないというのは矛盾である。 実際、この部分の英原文は“Product release and service delivery shall not proceed until …. ”であるから、「〜するまでは、製品の出荷及びサービス引渡しを行なわないこと」である。 サービスは検証してから顧客に引渡すことが必要であるとの趣旨である。 サービス提供とサービス引渡しが同時であるサービスであるなら、サービス提供プロセスの妥当性確認(7.5.2項)など別の適切な検証方法を決めなければならない。

   JIS和訳は、明白な誤訳であるが、背景には“サービス提供(service provision)”と“サービス引渡し(service delivery)”との区別に関する無理解があるのではないだろうか。 なお、サービスも製品の1種として、すべて“製品”で押し通している規格では、製造/サービス提供のみが、“サービス”を前面に出した用語である。 その他は、サービス業に限定すれば、サービス実現、サービス提供、サービス リリース、サービス引渡しという表現が適切であることを示唆しつつ、製品実現、製品リリース、製品引渡しのように、“製品”で“サービス”を含むすべての類型#1の製品を一括表現している。 記述の統一性からは本項の「製品の出荷及びサービス引渡し」は「製品のリリース又は引渡し(product release or provision)」の方が適切であるように思えるし、JISの誤訳も避けられたと思われる。
   
参照: No.33 サービス提供の後でしか顕在化しない不具合-
   
#1: ISO9000, 3.4.2、参考1
このページの先頭へ H20.6.12

38. 著しい環境側面に伴う運用を明確にする  
    著しい環境側面に関係する業務を特定する
著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画する
(JISQ14001 4.4.6  運用管理)
  ISO14001 4.4.6項には、『著しい環境側面に伴う運用を明確にすること』との要求事項が規定されている。 これは、英原文ではThe organization shall identify those operations that are associated with the significant environmental aspectsであるから、これに忠実に和訳すると、組織が管理すべき「著しい環境側面に関係する業務がどれであるかを特定すること」である。
 
 すなわち、operationは、事業活動のことであり*2、日々に組織で行なわれている業務であり、経営管理(マネジメント)業務に対する日常業務である(No.36参照)。正しい条文理解にはまず、この『運用』を「業務」に置き換える必要がある。次にJIS和訳「〜に伴う」の“be associated with”は、「〜と関係する、〜と関連する、〜と係わり合いをもつ」という意味*1であるから、『〜に伴う』を「〜に関係する」に置き換えることが必要である。 これらにより『著しい環境側面に伴う運用』は、「著しい環境側面に関係する業務」となる。 つまり、『著しい環境影響』を発生させる原因となる業務という意味である。環境マネジメントは、組織で行なわれている業務が発生させる『著しい環境影響』を管理する活動であり、このために例えば、加熱炉の燃焼ガスの排出業務や鍍金ラインの汚染水の排出業務を管理する。これらが「著しい環境側面に関係する業務」である。 因みに、例えば、排ガス浄化装置の運転業務や水質調和業務は、燃焼ガスの排出、汚染水の排出という組織の活動の「著しい環境側面に関係する業務」の一部である。
 
  更に、IS和訳『明確にする』はidentifyであるから「特定する」である。『著しい環境側面に伴う運用を明確にする』は、「著しい環境側面に関係する業務を特定する」ことである。 規格の環境マネジメントシステムは、組織が地球環境保全責任を全うするための環境管理のあり方を示すものである。 組織は、利害関係者のニーズと期待の強い、従って、組織にとって重要な環境影響(著しい環境影響)を、その原因である業務の「環境側面」の管理を通じて継続的に低減を図る。 そのような管理すべき業務が「著しい環境側面に関係する業務」であり、組織は何を「著しい環境側面」とするかを決定した(4.3.1 b)項)なら、その環境影響の低減管理のために、著しい環境側面に関係する業務、或いは、著しい環境影響を発生させる作業を含む業務を「特定すること」が必要である。 そして、本4.4.6項の要求事項を満たすようにそれらの業務を実行しなければならない。
 
*1 EDグループ:英辞郎、PDIC for Windows
*2 S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
このページの先頭へ H20.5.26(修H23.3.2; 3.4)

37. 教育・訓練の有効性の評価
    教育・訓練という力量充足処置の有効性の評価 の意
c) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する
(JISQ9001 6.2.2   力量、認識及び教育・訓練)
   ISO9001 2000年版では、教育・訓練が要員に必要な業務遂行力、規格では「力量」、を持たせるための手段であることが明確に記述されている。 これに関して、6.2.2項では、b)項で「必要な力量がもてるように教育・訓練し、又は、他の処置をとる」とし、c)項で「教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する」と規定されている。 このことから、実施した教育訓練について有効であったかどうかの評価の方法が議論になっている。この議論は、実施した教育訓練の内容が習得されたことをどのように評価するのかの方法論が中心であり、試験か、自己評価か、指導者の採点かなどの適否が論じられている。 また、教育訓練の結果で資格認定をするという形で、b)、c)項が適用される場合も少なくないからなおさら、要員が教育訓練の内容を習得したかどうかに、c)項が理解される。 認証審査でも、大抵は実施した教育訓練の有効性をどのように評価したか、また、評価の記録があるかについて確認される。
 
  このc)項の英原文は、“evaluate the effectiveness of the actions taken”であるから「とられた処置の有効性の評価」である。 この「とられた処置」とは、b)項の「教育・訓練し、又は、他の処置」であり、これは 必要な「力量」を持たせるための「処置(action)」のことである。 従って、「有効性」は「教育・訓練」という行為又は活動の有効性ではなく、「教育・訓練」という処置、つまり、必要な「力量」の充足の対策、の有効性である。
 
  a)項の「製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする」とは、品質マネジメントの効果的実行のために不足する、すなわち、充足が必要な「力量」が何であるかを決定( determine)することである。 不足する「力量」を充足するために「教育・訓練などの処置」をとり(b)項)、その処置によって必要な「力量」が本当に充足されたのかどうかが「とられた処置の有効性」である。この「有効性」は、教育訓練の内容を要員が習得したかどうかではなく、「製品品質に悪影響」を及ぼしている、又は、及ぼしかねない要員の「力量」の不足が解消されたかどうかである。すなわち、特定の、特定機能の、特定の職場の要員の「力量」の特定の分野、水準の状況が、品質マネジメントの効果的な実行に支障となっていたことに対して、教育・訓練などの処置をとった結果、品質マネジメントが効果的に実行されるようになったかどうかということが、「とられた処置の有効性」である。
 
  このc)項の英原文の「とられた処置」は、b)項の「教育・訓練し又は他の処置をとる」を意味するから、c)項JIS和訳の「教育・訓練又は他の処置の有効性」という意訳はある意味で適切ではある。しかし、結果的には「教育・訓練の有効性」と読まれ、実施した教育訓練という行為ないし活動の有効性であるとの誤解を生むこととなった。
このページの先頭へ H20.5.16

36. 運用管理
    日常業務の管理 の意
(JISQ14001 4.4.6  運用管理)
  ISO14001 4.4.6項の標題は「運用管理」であり、「著しい環境側面に伴う運用を明確にし、計画すること」との要求事項が規定されている。日本語では「運用」は、「うまく機能を働かせ用いること」「活用」であり*2、資金の運用、法律の運用などと使われる。この4.4.6項では「著しい環境側面に伴う運用」というだけで、何を運用するのかが明らかでない。 そこで、なんとなく「環境マネジメントシステムの運用」と受けとめ、この「環境マネジメントシステムの運用」とは「環境マネジメントシステムを実施すること」を管理することと受け止められているようである。しかしこれであると、条文は「著しい環境側面に伴う環境マネジメントシステムの実施」ということになり、『著しい環境側面に伴う』という修飾語が余計である。すっきりしない日本語である。
 
  この疑問は原文の英語を見ると簡単である。 つまり、「運用」は“operation”であり、「運用管理」は“operational control”である。 96年版では、JIS和訳は「運用及び活動」であり、原英語は“operations and activities”であった。“operation”とは「異なる事を行なう複数の人々を巻き込んだ組織的活動」*1であり、事業組織の“operation”とは、事業活動であり、日々に行なわれている業務のことであり、経営管理(マネジメント)業務に対する日常業務である。 “operation”も“activities”も同じような意味であるので、2004年版では“operation”になったのではないかと思われるが、 規格では「活動及び製品・サービス」という表現をしているから、“operation”でなく“activity”を採用してもよかった。
 
  「運用」は「日常業務」の意味であり、「運用管理」は「日常業務管理」の意味である。 海外の解説書では、operation(日常業務)の具体例として、例えば「製造、設計、購買、エンジニアリング、建設、保全、経理」*3とか、「設計及び エンジニアリング、生産、保全、購買、営業、顧客サービス、設備の設置」*4を挙げている。
 
  著しい環境側面とは組織が管理しなければならないと判断した組織が出す環境影響の原因のことである。 4.4.6項は、これら環境側面に関係する日常業務を管理することの必要を規定している。
 
*1 S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6
*3 J.Kanholm: ISO14001 REQUIREMENTS, AQA Co., 1998; p.94
*4 S.L.Jackson: The ISO14001 Implementation Guide, John Wiley & Sons, Inc.,1997; p.144
このページの先頭へ H20.4.14(修H23.3.2)

35. 外部コミュニケーション を行なう とは
    外部へ情報発信する の意
著しい環境側面について外部コミュニケーションを行なうかどうかを決定する
(JISQ14001 4.4.3  コミュニケーション)
  ISO14001 4.4.3項(コミュニケーション)では、「内部コミュニケーション」と「外部コミュニケーション」との2種類のコミュニケーションを取り扱っている。 ここに、コミュニケーション の原英語は、communication であり、「人々に情報を与える行為」の意味*1である。 あるグループや組織の内部の多数の人々がそれぞれの情報を伝える状況は「情報の交換」であり、 ISO9001では、内部コミュニケーション(5.5.3項)に関する communication は「情報の交換」と定義されている*2
 
  ところで、ISO14001の「外部コミュニケーション」は同じ4.4.3項で、表現を少し変えて、その要求事項が2ケ所に分かれて記述されている。 そのひとつは、「外部の利害関係者からの関連するコミュニケーション」である。 これは、それを「受け付け、….、対応する」と規定されているから、組織が外部からの情報を受信して、それに応える情報を発信するという情報交換であることが明白である。
 
  しかし、もうひとつは、「著しい環境側面についての外部コミュニケーション を行なう」と記述されているだけである。 これを「情報交換」と受けとめると、先の「外部からのコミュニケーション」の規定も著しい環境側面に関係する情報の交換であるから、こちらの情報交換と重複する。
 
  この原英文を見ると、
   to communicate externally about its significant environmental aspects
であり、「著しい環境側面について外部へ情報を与える」である。 つまり、組織から外部の利害関係者への一方通行の情報発信である。規格書の付属書A「この規格の利用の手引き」は、この「外部コミュニケーション」の方法について、例えば、年次報告書、ニュースレター、ウェブサイト、地域での会合があると説明している(A.4.3)。 従って、「外部コミュニケーション を行なう」より、「外部に情報を発信する」という和訳の方が、規格の意図を的確に表し、わかり易い。
 
:*1 Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、17 May 2001, N526R
このページの先頭へ H20.3.16

34. 決定及び処置 とは
       判断及び処置 の意
マネジメントレビューからのアウトプット に含めることが必要な事項
(JISQ9001 5.6.3/JISQ14001 4.6   マネジメントレビュー)
  ISO9001, 14001両規格は、それぞれのマネジメントシステムが「引き続き、適切で、妥当で、かつ、有効であること」を確実にするために、マネジメントレビューを行うべきことを規定している(5.6項/4.6項)。 規格は、トップマネジメントがこれを行うのに必要な情報をそれぞれ規定しており、トップマネジメントはこれら情報を評価、検討して、結論を出さなければならない。結論は、それぞれのマネジメントシステム の問題点とその対応についてであり、ISO9001の場合は具体的な3つの観点も明確にしている(5.6.3 a)〜c)項)。このトップマネジメント が下すべき結論、つまり、「マネジメントレビューからのアウトプット」には、それぞれの マネジメントシステム に必要な変更に関する「決定及び処置」を含まなければならない(5.6.3項/4.6項)。
 
  この“決定”と“処置”であるが、トップマネジメントは変更のための“処置”を“決定”するということなら、日本語としての意味が通ずる。 しかし、英原文も any decisions and actions と両語を並列に並べている。 “処置の決定”以外に“決定”する何かがあるのかと考えても、マネジメントレビューの結論としての“決定”としては思いつかない。 「決定及び処置」とは違和感を覚える日本語であり、よく考えると意味が通じない、おかしな日本語である。
 
  英語の decision は確かに「決定」であるが、これには2種類の意味がある。 ひとつは、「何か重要なことを決定する行為」であり、この意味の場合は不可算名詞として使われる。 もうひとつが、「何が最善かを考え、討議した後に下す選択又は判断(choice or judgement)」の意味であり、この意味で用いられる場合は可算名詞となる*1。 規格は decisions と複数形であるから、「選択又は判断」である。 別の辞書*2も、「決定する行為」と「考慮した後に到達した決定」の2つを挙げており、後者には同義語として「conclusion (結論)」が挙げられている。
 
  decisions and actions は、「判断及び処置」という意味である。 情報を評価して情勢や問題をどのように判断したのか、そして、問題対応のための処置を決定したならその処置と合わせて、マネジメントレビューの結論にしなければならないという意味である。 原英文には anyが付いており、これをJISQ14001は「あらゆる」と和訳し、JISQ9001は日本語に含めていない。 これは トップマネジメントの結論として「あれば、そのすべてを」という意味であり、マネジメントレビューを行っても常に問題が見つかる訳ではないことを示唆している。 JIS和訳の「決定」も“決定する”という意味ではなく、結論としての“決定”という意味で使用されているものと思われるが、「決定及び処置」では「決定」の意味がぼけてしまう。 JIS和訳には、条文の意図をどう伝えるかでなく、何か機械的に日本語を当てはめているかの和訳が少なくないが、これもその典型である。
 
(1) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc
このページの先頭へ H20.1.28

33. サービス提供の後でしか顕在化しない不具合 とは
     サービス引渡しの後でしか顕在化しない不具合 の意
プロセスの妥当性確認を必要とする プロセスに関して
(JISQ9001 7.5.2  プロセスの妥当性確認
  ISO9001 7.5.2項(製造及びサービスの提供の妥当性確認)は、“プロセスの妥当性確認”の在り方を規定している。 同じ条項で規格は、“プロセスの妥当性確認”を行う必要のある場合を「製造及びサービス提供の過程で結果として生じる アウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合」とし、検査や試験をしなくとも不良品又は不良サービスを顧客に流出させないための管理が“プロセスの妥当性確認”であることを明確にしている。
 
  そして、「製品が使用され、又は、サービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないような プロセス」も、“プロセスの妥当性確認”を行わなければならないプロセス に該当すると規定している。  しかし、この場合の「サービスが提供されてから」の原英語は、“after the service has been delivered”であるから、「“サービスが引渡された”後に」である。
 
   ISO9001では、プロセス(業務)の結果は製品#1であり、 サービスも製品の一種#2である。サービス以外の製品を生み出すプロセス を規格は“production (製造)”と呼び、サービス を生み出すプロセス を“service provision (サービス提供)”と呼ぶ。この「製造又はサービス提供」が、7.5項の標題となっている。 すべての業種に適用する汎用規格として、「製品」「製品実現」と1本で押し通されている表現も、この場合だけ“製造”と“サービス提供”との2つの用語を使用せざるを得ない。さらに、製品を顧客に引渡すことは、“delivery (引渡し)”#3、又は、“release(リリース)”#4である。 ここに、“release”は、組織の手元から離すという意味#5で、 また、“delivery” は顧客の手元にもたらすという意味#5での、“製品の引渡し”である。 すなわち、“サービス”という製品は、“サービス提供”というプロセス で生み出され、顧客に“サービス引渡し”される。 なお規格では、この“サービス引渡し”も“製品引渡し”として一括して表現されていることが多い。
 
  ISO9001は、製造やサービス提供によって発生する「不具合」を顧客に引き渡さないための活動、つまり、品質保証の規格である。 規格の文脈では “サービス”という製品のどんな「不具合」も、“サービス提供”によって発生し、或いは、“顕在化”する。 JIS和訳のように「サービスが提供されてからでしか不具合が顕在化しないようなプロセス」に「プロセスの妥当性確認」を行なうというのでは、“サービス”製品ではすべてのプロセスは妥当性確認が必要となる。 JIS和訳は、要求事項を誤解しており、また、 ”service provision” と ”service delivery” を混同した誤訳である。
 
  自動車車体外傷修理というサービス業では、修理するという“サービス提供”の後の外観検査でサービスの不具合は検証できるが、輸送というサービス業で届けた冷凍食品の品質の維持状況、つまり、サービスの不具合は、顧客の手元に届けて受領印をもらったという“サービス引渡し”の時点ではわからず、“サービス引渡し”の後に顧客が食べてみないとわからない。 後者のサービスの場合は、“サービス提供”のプロセスの妥当性確認によって、不具合のあるサービスが“サービス引渡し”されることのないようにしなければならない。
 
#1: ISO9000, 3.4.2;  #2: 同, 参考1;  #3: 7.5.5項;  #4: 8.2.4項;
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
このページの先頭へ H19.12.20(修 H20.6.11)

32. 改善の機会 及び 変更の必要性 とは
    改善の余地 及び 変更の必要性 の意
マネジメントレビュー における マネジメントシステムの評価
(JISQ9001 5.6.1/JISQ14001 4.6  マネジメントレビュー)
   JISQ9001、JISQ14001両規格のマネジメントレビュー は マネジメント活動のPDCAサイクルの A に相当する活動である。 これをJISQ9001は「このレビューでは、品質マネジメントシステムの改善の機会の評価、品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行うこと」(5.6.1項)、JISQ14001は「レビューは、環境方針、並びに環境目的及び目標を含む環境マネジメントシステムの改善の機会の評価及び変更の必要性の評価を含むこと」と規定している。なお。両日本文は微妙に異なるが、英原文は quality と environmental の違いだけで、全く同じ文章である。
 
   いずれにせよ、両JIS規格とも マネジメントレビューが「マネジメントシステム の改善の機会と変更の必要性」を評価する活動であると説明している。 ここに「改善の機会」というのは、わかったようでわからない日本語である。「改善の機会」と「変更の必要性」も同じことのようでもあり、違うならどのように違うのかがわからない。
 
   「改善の機会」の原英語は、 opportunities for improvement である。 opportunity は、「特定の状況が何かを行う又はなし遂げるのを可能にする時機*1」、「状況、時機、及び、場所の好ましい組み合わせ*2」という意味(1)(2)である。確かに「何かをするのに好都合な時機」の意味(3)の日本語の「機会」であり、これを以てJIS和訳は「改善の機会」としているのであろう。
 
   しかし、opportunity の語意(4)は「好ましい状況の組合わせに基づく可能性*3」であり、類義語としては chance, occasion(2)(4) やbreak(4)の他、 opening(成功の見込み)(2)(4), や、room(余地)(2), possibility, possibleness(可能性) (4)が挙げられる。英和辞典(5)でも、「機会、好奇、時機、しおどき」と共に、「可能性、見込み、自由度」が挙げられている。つまり、opportunity は、時機という意味の「機会」だけではなく、可能性という意味の「機会」として使われる英語である。従って、opportunities for improvement は「改善の機会」ではなく、「改善の余地」「改善の可能性」という和訳の方が適当である。実際、インターネットで opportunities for improvement を検索すると、書籍や論文の標題としてしばしば用いられている。この場合、大体は「改善の可能性のある事項」という意味であり、「(可能な)改善点」という和訳があてはまる。
   
   このように、JIS和訳「改善の機会」は「改善の余地」の意味である。 トップマネジメントは、マネジメントレビューで情報を吟味して、品質、環境マネジメントシステム をその狙いや意図の達成に適当で適切で有効なものとして維持するために、方針や目標を含む業務の在り方、つまり、手順や資源について、改善できる点はあるか、また、変更の必要な点があるかを評価しなければならない。どちらもマネジメントシステムの手順や資源の変更であり、改善が目的であるが、前者は現状より適当、適切、有効なものに出来る可能性があるという意味であり、後者はそのようにしなければ現状または将来には適当、適切、有効でなくなってしまうという意味での、変更、改善である。規格の意図は、「改善の機会及び変更の必要性」ではなく、改善できる点と改善しなければならない点という意味での「改善の余地及び変更の必要性」である。
 
原文
*1 a time when a particular situation makes it possible to do or achieve something.
*2 a favorable combination of circumstances, time, and place
*3 a possibility due to a favorable combination of circumstances
 
辞書
(1) Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) Merriam-Webster’s Online Thesaurus, Merriam-Webster Inc
(3) 広辞苑、第3版、新村 出、岩波書店、昭58年12月6日
(4) The American Heritage Dictionary of the English Language, Houghton Mifflin Co.
(5) 実用英語大辞典、海野文男他、日刊アソシエーツ、1998.6.26

このページの先頭へ H19.9.17

31. 適用可能な法的要求事項 とは
    適用される法的要求事項 の意
法的及びその他の要求事項の特定 / 順守の定期評価
(JISQ14001 4.3.2 法的及びその他の要求事項 / 4.5.2 順守評価)
  JISQ14001の4.3.2項(法的及びその他の要求事項)では、組織が「適用可能な法的要求事項」と「適用可能なその他要求事項」を特定しなければならないと規定されている。また、4.5.2項(順守評価)でも、組織が「適用可能な法的要求事項」と「適用可能なその他要求事項」の順守を定期的に評価することを規定している。両条項の意図に鑑み、また、日本語表現として、「適用可能な」には違和感を覚えさせられる。
 
   これは、英原文の applicable が単純に「適用可能な」と和訳されているからであるが、この単語を含む英文の正しい意味は「適用される法的要求事項」「適用されるその他要求事項」である。
 
   すなわち、各種の英語辞書で applicable を調べると、OALD*1は通常は名詞の前では使われないとの註釈の下に applicable to 〜 を「〜の場合には真実と言える」という意味であるとし、同義語として relevant (関連する)を挙げている。M-W*2は同じく同義語として relevant を挙げて、「適用されるのに必要な能力、資質がある」「適用されるに適切な」を意味すると説明している。更に、Webster*3 では「あてはまる(suitable)」「適合した(adapted)」である。またM-Wは用法例に statutes applicable to the case (この訴訟に適用される法令) を挙げている。 capable が「可能な」を意味するとしても、applicable は適用が可能か不可能かの「適用可能」ではなく、「適用される」「該当する」の意味であり、「適用され得る」という意味である。
 
   英和辞書でも、新コンサイス英和辞典*4は「適用できる、応用できる」と「(用途、目的に)あてはまる、適う、適切な」の2種の意味を挙げ、英辞郎*5は「適用できる、適切な、応用できる、適用される、当てはまる」と和訳している。また、英辞郎には、applicable を含む英語の実務的な翻訳事例が多数掲載されている。例えば、適用される梱包仕様書 (applicable packing specifications)、適用しうる法定耐用年数 (applicable statutory useful life)、適用規格 (applicable standard)、適用基準 (applicable criteria)、関連文書 (applicable documentation)、関係法令 (applicable laws and regulations)、当該期間 (applicable time limit)であり、いずれも applicable に対して「適用可能な」ではなく「適用される」の意味に解釈した日本語が当てられている。
 
   「適用可能な法的要求事項、その他要求事項」ではなく、「適用される法的要求事項、その他の要求事項」と和訳することが、原英語 applicable の正しい翻訳であり、日本語表現としての違和感を抱かせない、また、規格の意図を正しく反映した日本語文面である。
 
*1 Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary, Merriam-Webster Inc
*3 Webster’s Encyclopedia of Dictionaries, New American Edition
*4 佐々木達:新コンサイス英和辞典、三省堂、1980.3.1
*5 EDPグループ:英辞郎、PDIC for Windows
このページの先頭へ H19.8.7

30. 環境目的及び環境目標 とは
    包括環境目標及び個別環境目標 の意
環境目的と環境目標の設定、実施、維持
(JISQ14001 4.3.3  目的、目標及び実施計画)
   JISQ14001の4.2.3項(目的、目標及び実施計画)は、組織が「文書化された環境目的及び目標を設定し、実施し、維持する」べきことを規定している。日本語では「目的」は「達成を図る事柄」、「目標」は達成の「目印」*2である。 つまり、何かを行う計画では"何のために"が「目的」であり、"何を、どこまで"が「目標」である。環境影響の継続的改善を図る規格における「実施計画」は環境影響改善の計画であろうから、その目的が「環境目的」であるなら「環境目的」とは環境影響の改善であるに決まっている。計画策定に当たり今更「目的」を設定するというのは奇妙である。
 
   しかし、英原文では、「環境目的」は environmental objective であり、「環境目標」は environmental target である。 例えば 英辞書*1ではobjective を「達成しようとしているもの」とし、target を「達成しようとする結果」と記述しているから、どちらも同じ意味で「目標」である。JISQ9001は quality objective を正しく「品質目標」と和訳している。
 
   この同じ「目標」である “objective” と “target” の違いを、規格はその定義で明確にしている。すなわち、“objective”の「環境目的」(3.9項)とは、『「環境実績に関する全体的な意図及び方向づけ*」である「環境方針」(3.11項と整合する「全般的な環境到達点(overall environmental goal)」』である。 一方、“target”の「環境目標」(3.12項) は、この『「環境目的」を「達成するために設定し、満たす」ことが必要な「環境実績についての詳細な条件(detailed performance requirement)」』である。つまり、包括的又は概略の目標が“objective”の「環境目的」、それを構成要素に分けてそれぞれの目標にしたのが“target”の「環境目標」であるということである。
 
   ISO14004の実践の手引き(4.2.5項)でも、「環境目的」が「製造作業のエネルギーの削減」、「環境目標」が「燃料と電気の単位生産量当たり対前年比10%削減達成」として例示されているから、「環境目的」は「目的」ではなく、「環境目標」の上位の概念の包括的目標という意味合いである。すなわち、多様な環境影響とそれぞれに多くの環境影響発生原因(環境側面)を抱える組織が、どんぶり勘定に陥らず着実に改善を進めるには、2段階で目標を設定することが効果的であるというのが規格の意図である。
 
   従って、「包括環境目標」と「個別環境目標」が規格の意図に沿った和訳であるが、JIS9001が objective に「目標」をあてているので、規格の使用に混乱を招かないために environmental objective を「環境目標」とし、 environmental target を「環境個別到達点」とするのもよいと思われる。
 
*1 Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6日
このページの先頭へ H19.3.30(修 4.14)

29. 品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の測定のひとつ とは
     品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の尺度のひとつ の意
顧客満足に関する情報の監視
   (JISQ9001 8.2.1 顧客満足)
   ISO9001の8.2.1項(顧客満足)では、組織は「顧客要求事項が満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているか」つまり、顧客満足の達成状況についての「情報を監視する」ことを規定している。JIS和訳はこれを、「品質マネジメントシステムの成果を含む実施状況の‘測定’のひとつとして」行うとしている。“測定”のひとつとして“監視”するというのはおかしな日本語である。
 
   「・・・の測定のひとつとして」の原英文は、 as one of the measurements of … であり、 measurements が「測定」と和訳されている。 measure や measurement は“測定”を意味する英語であるが、measure には、動詞で「何かの重要性、価値、効果を判断すること」、名詞では「何かの大きさ又は強さの印」「何かを判断、測定する方法」や「判断基準、尺度」という意味もある。動詞形の measure の名詞形であるmeasurement に、“判断基準”“尺度”というような意味を直接的当てている辞書はないが、「何かの大きさ、長さ、量」や「測定により得られた数、程度(extent)、量」という表現で、それと近い意味のあることを示唆している。
 
   翻訳者用辞書“英辞郎”は performance measurement の和訳として、“測定”の他に(行政の)業績“指標”を挙げている。これに関連する米国の「政府業績成果法(Government performance and results Act)」に関する情報をインターネット上で検索すると、行政府の業績評価に関して performance measurement を業績“指標”の意味で用いており、measurement をmeasure と同じ“判断基準”“尺度”の意味で使っている文例が散見される。 実用的な英語で、measurement は “判断基準”“尺度”を意味するという左証である。
 
   そして、欧米の規格解釈において、このas one of the measurements に関連する説明では、しばしば、 measurement ではなく、measure が使われている。例えば、ISO/TC176 は2000年版発行に際する声明で、この顧客満足に関する情報の監視について、as a measure of system performance と表現し、D.Hoyle氏やTC176の商業本の説明でも measurement でなく measure を用いている。英米の専門家は measurement を“測定”ではなく“尺度”の意味に受けとめている。
 
   このように、8.2.1項の as one of the measurement は、「“測定”のひとつとして」ではなく、「“尺度”のひとつとして」である。品質マネジメントシステムは、組織が顧客満足向上を目指し達成するための業務の体系である。組織は、品質マネジメントシステムの実績を評価する“尺度””指標”として、「顧客要求事項が満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているか」という「顧客満足」に関する情報を監視しなければならない。
このページの先頭へ 詳しくは<sub32-02-29>

28. 監視機器及び測定機器 とは
     監視及び測定の手段 の意
製品の適合性実証に必要な監視機器及び測定機器の決定
(JISQ9001 7.6 監視機器及び測定機器の管理)
   ISO9001の7.6項は、製品の適合性を実証するために行う監視及び測定に使用する「監視機器及び測定機器」の管理について規定している。この「監視機器及び測定機器」は、原英文では、 monitoring and measuring devices であるから、 device が「機器」と和訳されていることになる。
   
   device は、「装置、機器、半導体素子、デバイス、仕掛け(仕組み、機構、道具)、工夫(計画、案、対策、手段)」であり*1、「特定の仕事をするように手はずされたもの(an object)又は装置(a piece of equipment)」「特定の結果又は効果を生み出す何かを行う方法(a method)」である*2。 形のある“機器”だけでなく、仕掛け、機構、対策、手段、計画、対策などをも意味する用語である。
   
   規格作成者のひとりであるC.MacNee氏ら*3は「すべての種類の手段(tools)及び手はず(arrangements)であり、アンケート調査の質問票のようなものも含まれる」と説明しており、D.Hoyle氏*4は、装置(hardware)に限らず広く、情報を捉えるソフトウェア、方法(method)、感応子(sensor)を意味し、人の感覚、認識、面談、質問票、態度、知識を含むと説明している。
   
   さらに、通常の計測器など「計器、ソフトウェア、測定標準、標準物質、補助装置」は規格では、measuring equipment (同;3.10.4)であり、そして、7.6項の校正や検証の要求事項を含む a)〜e)も、 measuring equipment に対する要求事項である。 JISはこれも「測定機器」和訳している。因みに、ISO14001(4.5.1項)の「監視及び測定機器」も equipment である。
 
   規格における監視及び測定の対象は、製品の特性だけでなく、顧客満足や手順の遵守、計画の進捗、業務の効果的実行など品質マネジメントシステムに係わる種々の行為、出来ばえ、状況、状態である。因みにこのようなものもすべて“特性”で表現される(ISO9000;3.5.1)。そして、製品も伝統的な工業製品だけでなく、ソフトウェア や サービス を含むから、工業製品に伝統的な計測機器では監視や測定のできない種類の特性が多くある。 監視及び測定の device は規格の意図では、「機器」に限定されるものではなく、監視及び測定の「手段」という意味である。
 
   JIS和訳は、device も equipment も「測定機器」である。このことが、7.6項で標題や第1節で用語 device を、第3節では用語 equipment をと、それぞれ異なった用語を使用している規格の意図をわかりにくくしている。すなわち第1節の「製品の要求事項への適合の証拠を提供するのに必要な『監視機器及び測定機器』を明確にすること」の『監視機器及び測定機器』は、「監視及び測定の手段」の意味である。組織は監視、測定が必要と判断したなら、検査機器や計測器を使用するのか、計算機で判定するのか、目視観察、判断か、データ照合かなど、監視、測定の対象の特性に対してふさわしい「手段」を決めなければならない。そして第3節の趣旨は、「監視及び測定の手段」のひとつである「監視機器」については、必要なら校正や検証を行わなければならないということである。
 
  なお、ISO14001の「監視及び測定機器」(4.5.1項)は、monitoring and maesurement equipment であるから、「機器」で問題 ない。
 
*1: 海野文男他: 実用英語大辞典、日刊アソシエーツ、1998.6.26
*2: S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*3: C.MacNee他: Transition to ISO9001:2000, BSI Publications,2001; p.44
*4: D.Hoyle: ISO9000 Quality systems Handbook,Butterworth-Heinemann,2001; p.513
 
[追記]
 ISO9001:2008年版で、"equipment"に"device"が含まれるという乱暴な理由で、“device”も“equipment"と表現されることになり、はからずもJIS誤訳は解消した。この変更の趣旨は日本の国内委員会でも説明しており、“device”と“equipment"の違いも説明しているからされている*5 から。結果としてこれまでのJIS誤訳を認めたことになる。しかし、英語が"equipment"になってしまったから、今後はJIS誤訳のような誤解が世界に拡がることになる。
 
*5: 品質マネジメントシステム規格国内委員会:ISO9001の2008年版改訂について、H20.8; p.3 
このページの先頭へ H19.1.17(修: 1.18)(追: 2.7)(追記:H21.3.13)

27. 汚染の予防 とは
     汚染の防止 の意
環境方針に含む トップマネジメント の コミットメント
 (JISQ14001 4.2 環境方針)
  ISO14001は組織が環境パフォーマンス、つまり、環境に関する組織の業績を改善していくことが狙いである。これを規格は「汚染の予防」と呼び、これについて トップマネジメントが環境方針で誓約することを求めている。
 
  「汚染の予防」の原英語は、prevention of pollution であり、prenventive action が「予防処置」(3.18項)と和訳されたのと同じように、JISではこちらの prevention も「予防」と和訳された。 preventionは、「何かが起きないように前もって処置をとる」という意味(1)であり、辞書には擬古的用法としての「何かが起きるのに備えている」という意味も挙げられている(2)から確かに「予防」かもしれない。 「防止」とは何かが起きることを防ぐことであるから、前もって処置をとって「予防」することである。この意味で「防止」は「予防」であり、これら辞書の表現はこれを意味したものである。しかし、一般に「予防」は、特定の予想される問題への対応という、現実には存在しない問題に対する「前もっての処置」に力点をおいた使い方がされ、「防止」と「予防」は異なる概念である。
 
  prevent も、例えば(4)、「カメラのぶれを防ぐ(prevent cameras shake)」「〜の折れ曲がりを防ぐ(prevent 〜 from becoming crimped)」などは、「予防」ではなく、「防止」でないと意味が通じない。 また、prevent を「誰かが何かをするのを止める」「何かが起きるのを止める」という表現で説明して、「前もって防ぐ」という意味を殊更に強調しない辞書(3)もある。 preventive action の場合は、その定義から「予防処置」という和訳が適切であるが、prevent は必ずしも「予防」ではない。
 
  ここに「汚染の防止」とは、「有害な環境影響を低減するように、あらゆる種類の汚染物質又は廃棄物質の生成、排出又は放出を回避、低減又は制御する、工程、方法、技術、材料、製品、サービス又はエネルギーの使用*」と定義(3.18項)されている。要するに、環境汚染物質を組織の外へ出さないようにする活動のことである。 現実には組織の事業活動に付随して環境汚染物質は組織の外に出てしまっている。 既に事業を行なっている組織が、この環境汚染物質を組織の外に出さないように、或いは出す程度を軽減するように対策をとることがISO14001の狙いである。 既に出している環境汚染物質を放っておいて、これから出るかもしれない環境汚染物質を出さないように前もって処置をとるというのは無責任であり、理屈にあわない。トップマネジメント は、組織の事業活動と製品に付随して地球環境に出している環境汚染物質を、事業が成り立つ範囲で精一杯、着実に継続的に減少する取り組みを行なうことを誓い、職を賭して実行し成果をあげなければならない。
 
  規格のprevention of pollution に「予防」の意味が含まれることは間違いないが、規格の意図は、起きていない汚染を「予め防ぐこと」(5)ことを含むが、現実の汚染を「防止」することである。訳語としては「汚染の予防」でなく「汚染の防止」であるべきである。
 
引用文献
(1) Merriam-Webster Inc: OnLine Search,Thesaurus, www.m-w.com
(2) Merriam-Webster Inc: Collegiate Dictionary
(3) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(4) 海野文男他: 実用英語大辞典、日刊アソシエーツ、1998.6.26
(5) 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6日
このページの先頭へ H18.12.27(改H21.3.18)
 
26. 適切な設備を使用している とは
     製品実現の計画で定められた設備を使用する の意
管理された状態での製造及びサービス提供
 (JISQ9001 7.5.1 製造及びサービス提供の管理)
   ISO9001 7.5.1項(製造及びサービス提供の管理)では、製造及びサービス提供を管理された状態で実行するための要件を規定しているが、このひとつが「適切な設備を使用している」(同 c) 項)である。 これは the use of suitable equipment の和訳であり、「適切な」の原英語は suitable である。これは目的や状況に適っている*1ことを意味する言葉で、規格も「目的、状況、人の性格などに合っている又は適切である」と定義*2している。「合っている」という意味であるから、日本語では「適当な」の方に近い*3
   
   94年版では4.9項(工程管理)で、工程を管理された状態で実行するための要件として設備に関しては、「適切な設備の使用」(同 b)項)、「必要に応じて設備の承認」(9同e) 項)、及び、「工程能力を継続的に維持するための設備の適切な保全」(同 g) 項)を規定していた。このいずれの「適切な」も原英語は suitable であり、b) 項は use of suitable equipment と2000年版 7.5.1 c)項と同文である。
   
   所定の結果を出すのに十分な設備を導入し、その能力を維持することに関するe)項とg)項は2000年版では、「製品要求事項への適合を達成するのに必要なインフラストラクチャーを決定し、準備し、維持する*」との規定(6.3項)に引き継がれて いる。 残るb)項の「適切な設備の使用」が表現も同じでそのまま、7.5.1 c) 項のJIS和訳「適切な設備を使用している」になったと考えるのが自然である。
   
   すなわち、7.5.1 c) 項の「適切な設備を使用している」とは適切に保守、保全された設備を使用するという意味ではなく、目的に適った設備、合った設備を使用するという意味である。組織は注文を受け、製品に対する顧客のニーズと期待を決定し (7.2.1項)、これを製品の品質目標とその他の要件(7.1 a)項)として展開し、その達成のための手順と資源(同 b) 〜d) 項)を定め、準備し、そのような製品実現の計画の通りに製造又はサービスの提供が行われるように管理する(7.5.1項)。 7.5.1 c) 項の「適切な設備」つまり「合った設備」を使用するとは、製品の品質目標達成のために必要として製品実現の計画で定めた設備を使用するということであるから、 「定められた設備を使用する」或いは「所定の設備を使用する」という意味である。
 
*: 筆者の和訳
*1: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
*2: ISO/TC176: ISO9001/9004:2000の用語に関する指針、N526R
*3: 新村 出: 広辞苑、岩波書店、S61.10.6
このページの先頭へ H18.12.8

25. 測定値の正当性が保証されなければならない とは
    妥当な測定結果を確保すること の意
測定機器の校正又は検証
 (JISQ9001 7.5.6  監視及び測定機器の管理)
   ISO9001 7.6項では測定機器の管理に関して、JISは「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」として、「a) 校正又は検証をすること」など a)〜e)項の要求事項を定めている。 この和訳の後半部分「・・・・が保証されなければならない場合には」が、「・・・が保証されるために必要な場合には」の意味であることは、先に(No.22)で明らかになった。
 
   一方の「測定値の正当性が保証されなければならない」も、測定機器の管理の実務上から、また、これに先立つ要求事項の記述との関連からも、腑に落ちない要求事項である。  この部分の原文は“to ensure valid results”である。“valid results” が「測定値の正当性」に、“to ensure” が「保証される」と和訳されているのであるが、どちらの和訳にも無理がある。
 
   “valid” は、法的や公式に又は理に適ったという意味(1)で、「有効な、妥当な、正当な、根拠のある、である(2)。「正しく道理にかなっている様」を表す日本語(3)である「正当な」とは違う。 JISは規格の他の箇所で“valid”の名詞の“validation” を「妥当性確認」( 7.3.6,7.5.2項など)と和訳し、同じ7.6項の“validity”を「妥当性」、“invalidate”を「無効にする」と和訳している。 ここだけを「正当性」と和訳している。 また、正当性と言えばJISは“justification”(4.2.2項)を「正当な理由」と和訳している。 “valid results”は、測定の妥当な結果という意味であり、「妥当な測定結果」である。
 
   また、“ensure”は、「ある事が間違いなく起きるようにする、又は、間違いないものとなるようにする」であり(1)、規格にしばしば登場する用語だが、常に「〜を確実にする」と和訳されている。 ここだけが「保証する」である。“ensure”は、一般に「確かなものにする」とか「確実に〜する」と和訳され(2)、「保証」と訳されることもあるが、 日本語の「保証」の「大丈夫だ、確かだとうけあうこと」の意味(3)の「保証」ではない。
 
   “to ensure valid results”を「正当性の保証」と和訳することは、各単語の持つ意味から無理があり、規格の他の部分の “valid”と“ensure”の訳語からもずれている。 この原文の意味は「測定値の正当性が保証される」ではなく、「妥当な測定結果を確保する」である。 7.6項ではこの条文の前に、「監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できること」との規定がある。 これは測定機器に関しては、必要な測定の誤差や精度にふさわしい測定能力を持った測定機器を使用することを意味する。 つまり、精密な測定には高い測定精度の測定機器を使用しなければならず、粗い精度の測定値でよければ相応の低精度の測定機器でよいということである。 このように必要な精度の測定機器で測定された結果の測定値でないと、この測定値を用いる検証や妥当性確認の判断を狂わしかねない。 測定値は、測定の目的に対して妥当な、有効なものでなければならない。 「測定値の正当性が保証される」ではなく、「妥当な測定結果を確実にする」であり、「妥当な測定結果を確保する」という意味である。
 
   冒頭に記したように、「・・・・が保証されなければならない場合には」は、「・・・が保証されるために必要な場合には」である。 本要求事項は全体として、「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」でなく、「妥当な測定結果を確保するために必要な場合には」である。 そのような場合には「測定機器の校正、検証」が必要である。 計量法に基づく検定証印や形式承認の表示があっても、使用することによって測定値に誤差や偏りが生じる測定機器がある。 そのような種類の測定機器によっても一貫して妥当な測定結果を確保するためには、一定期間毎に校正して実際の測定値と新の値との相違を明らかにし、読み取り値の適切な補正を行なうことが必要である。 定規や分度器など、損傷や破損、著しい摩耗のない限りは使用によっても性能が変化しない測定機器もある。 組織の実務では、この種類の測定機器は日常点検で測定機能に異常のないことをしっかり確認することが、妥当な測定結果の確保につながる。 このような場合は、決まった間隔で校正をするような無駄はしない。
 
  「正当性」の反対の「不当」は「当を得ない、道理にはずれた、不法、無法」を意味し、法や規則、契約、約束に背く悪意の行為を思い起こさせる言葉である。「測定値の正当性」とは、測定値に悪意の法違反や契約違反がないという主張に相当する。 「保証されなければならない」も、「組織によって」「顧客に対して」というようにしか受けとめられないから、組織が顧客に「測定値には法や契約違反がありません」ということを保証するということである。 そして、「保証されなければならない」のだから、顧客の要求があり、組織が合意したのであろう。 日本の計量法は、商取引に使用する特定計量器は検定証印か形式承認に係わる表示のある計量器をその有効期間内に使用することを規定しているから、JISはこのことを念頭において無理な和訳をしたのかもしれない。 実際、このJIS和訳を以て、「正当性が保証されなければならない」測定値を製品品質に直接関係する測定値のことであるとする解釈が行なわれている。 しかし「保証する」なら、例えば宣誓の署名を付して測定値を顧客に提出するなど具体的な行為が必要である。 しかし、この解釈は日本語「保証されなければならない」が意味することに言及していない。ご都合主義の解釈である。
 
$1 測定値の正当性(valid results)
(イ) “valid” の意味は、@ 法的又は公式に受入れられ得る(that is legally or officially acceptable)、A 論拠のある、又は、真実に基づいた(based on what is logical or true)。 用法としては例えば、@は、有効な旅券(a valid passport)、1ケ月有効な定期券 (a bus pass valid for one month)、補償を要求できる権利 (a valid claim to compensation)などであり、Aは、提案を支持する合理的理由 (valid reason for not supporting the proposal)、指摘は全く妥当である (The point you make is perfectly valid)などである(1)。
(ロ) “ensure”は、ある事が間違いなく起きるようにする、又は、間違いないものとなるようにする (to make sure that sth happens or is definite)である。 “ensure”は規格で多用されているが、「〜を確実にする」と和訳している。 一般には「確保する、確かなものにする、守る」「確実に〜する」と和訳され(2)される。「保証する」との訳語が用いられることがある(2)が、日本語の「保証」の「大丈夫だ、確かだとうけあうこと」の意味(3)ではない。
 
引用辞書
(1) S.Wehnmeier他: Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
(2) 海野文男他: 実用英語大辞典、日刊アソシエーツ、1998.6.26
(3) 新村 出: 広辞苑、第3版、岩波書店、昭58年12月6日
このページの先頭へ H18.10.22(H20.6.27 改)

24. 必要な変更を文書に反映する とは
     文書の必要な変更を実施する の意
是正及び予防処置の文書化
(JISQ14001 4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置)
   JISQ14001:2004の 4.5.3項では、不適合と是正処置、予防処置の手順についての要求事項を規定した後に、「組織は、いかなる必要な変更も環境マネジメントシステム文書に確実に反映すること」という規定をしている。 この文章では、「必要な変更」というのは是正、予防処置のための必要な手順の変更を指していると想像されるが、それなら手順の変更はすべて文書化しなければならないという意味になる。 しかし、「プロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実に実施するために必要な」手順のみ文書化すべきとの規定(4.4.4 e)項)で示されているように、すべてを文書化するには及ばないとするのが規格の文書化の原則である。
 
   この部分の英原文は、次の通りである。
  any necessary changes are made to environmental management system
  documentation.                  ・・・・・・・(1)
この changes are made to ….documentation が、「変更を文書に対して行う」と解され、「変更を文書に反映する」という和訳文があてられたのであろう。
 
しかし、この英文は意味の上では、次の文と同じである。
  any necessary changes to environmental management system
  documentation are made.       ・・・・・・・(2)
ここに、change to 〜 は change in 〜と同様に、「〜の変更」の意味*であるから、(2)は「文書の必要なすべての変更を行う」という意味であることがわかる。
   
  ただし(2)のような構文では主部が述部より長くてバランスが悪いので、同じ意味を表す場合は(1)のような構文が用いられるのが普通である。 例えば change is made to 〜 を含む文章をインターネットで拾うと、次のように枚挙の暇がない。
 ◇ A change was made to this Notice on April 19,2006 (本通告の変更は2006年4月16日に行われた)
 ◇ A change was made to the database upgrade code (データ更新用コードの変更が実施された)
 ◇ A change was made to the statement regarding the use of weapons in security operations. (治安活動での武器使用に関する声明が変更された)
 ◇ When a change is made to the page, the chart goes out. (ページに変更を加えたところ、図が消えた)
 
  従って、この条文は原英文に則ると、「変更の文書への反映」ではなく「文書の変更の実施」の意味であり、 「是正、予防処置のために手順を変更する場合、その手順が文書化されているなら、『組織は、文書の必要なすべての変更を行うことを確実にしなければならない』」という意味になる。
 
  なお、同趣旨の条文は96年版にもISO9001の94年版にもあったが、原英文の表現が(1)と異なっているためか、適切に和訳されていた。
<ISO14001:1996, 4.5.2項>
組織は、是正及び予防処置に伴う文書化した手順のあらゆる変更を実施に移すこと
−The organization shall implement any changes in the documented procedures resulting from corrective and preventive action.
<ISO9001:1994, 4.14.1項>
供給者は、是正処置及び予防処置に伴う手順書の変更をすべて実施すること。
−The supplier shall implement any changes to the documented procedures resulting from corrective and preventive action.

* Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
このページの先頭へ H18.9.20

23. 必要により作業手順が利用できる とは
     必要により作業手順書が利用できる の意
製造、サービス提供の管理された状態での実行
(ISO9001 7.5.1 b)  製造及びサービス提供の管理)
<作業手順>
  ISO9001 7.5.1 b)項では、「製造、サービス提供を管理された状態で実行すること」とした上で、「管理された状態には、『必要により作業手順が利用できる』ことを含む」と規定している。この原英文は、 Controlled conditions shall include the availability of work instructions, as necessary である。 instruction は、「あるものをどのようにするのかについての詳細な情報」(OALD)であるから、 work instruction は、作業の方法に関する詳細情報という意味になる。
 
<work instruction>
   英語では work instruction は、このような内容の文書の名称となっていることが少なくない。実際、ISO9001においても、work instruction は作業の手順を規定した文書という意味である。すなわち、ISO/TR10013:2001(品質マネジメントシステムの文書類に関する指針)では、「品質マニュアル」「手順書」と共に、「指示を与えないとそれによって悪影響が発生する可能性のある仕事全てについて記述した」文書として work instruction を挙げている。 この旧版のISO10013:1995(品質マニュアル作成の指針)の階層化された文書体系の中にも、「品質マニュアル」「品質システム手順書」に続く第三階層文書の「他の品質文書」として work instruction が「書式」「報告書」と共に例示されていた。更に、TC176作成の支援文書のひとつISO/TC176/SC2/N525R(13 March 2001)でも、規格が規定する「文書化された手順」以外の「プロセスの効果的な計画、運用、管理に必要な文書」として work instruction, test instruction が挙げられている。
   
<作業手順書>
このように、ISO9001においては work instruction は「作業手順書」のことを指す。 なお、この他の部分の文書としての work instruction は、JISは「作業指示書」と和訳している。 7.5.1 b)項は「作業手順が利用できる」ではなく、「作業手順書が利用できる」である。製品の製造或いはサービス提供が組織の意図したように間違いなく実行されるためには、作業手順が確立しているだけでは十分でなく、作業手順が文書化されていることが必要な場合があるということを指摘した規定である。 これに関連して規格は、プロセスの効果的な計画、運用及び管理を確実にするために必要であるとの文書化(4.2.1 d)項)の意義を明確にし、製品実現の計画(7.1 a)項)では当該製品にどのような文書が必要かを決定すべきことを規定しており、これら文書が必要な時に必要なところで使用可能な状態にするような文書管理(4.2.3 d)項)も規定している。このような文書が 7.5.1 b)項の作業手順書である。
 
(OALD): Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press
このページの先頭へ H18.8.21

22. 測定値の正当性が保証されなければならない場合には とは
    測定値の正当性が保証されるために必要な場合には の意
測定機器の校正又は検証の実施
(ISO9001 7.6   監視機器及び測定機器の管理)
<測定機器の校正又は検証>
  ISO9001 7.6項では、測定機器の管理に関する要求事項 a)〜e)項を定めており、この中で「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」「測定機器を校正又は検証をすること」等の規定がある。この英原文は、“Where necessary to ensure valid results, measuring equipment shall be calibrated or verified ….” である。JISは“valid results” を「測定値の正当性」、Where necessary to ensure 〜 を「〜が保証されなければならない場合には」と和訳している。 この英文解釈には2つの問題があるが、前者は別途(No.25)で検討し、ここでは後者について検討する。
 
<従属接続詞 Where と省略>
  他の項にも“Where appropriate”(7.4.2, 7.5.3項)、ISO14001にも“Where necessary”(4.4.7項), “Where practical”(4.4.7項) という同様の構文があり、「〜の場合には」などと和訳されている。 この“Where”は「〜の場合に」の意味の従属接続詞であり、“Where”に始まる文節は、対になる主節に対する従属節である。本条文の場合は、主節は“measuring equipment shall be calibrated or verified …(測定機器は校正又は検証されなければならない).”であり、従属節が“Where it is necessary to ensure valid results”であり、従属節の“it is”が省略されている。
 
<不定詞の形容詞的用法と名詞的用法>
  この従属節は、不定詞“to ensure”の用法、つまり、名詞的用法か副詞的用法により2種類の異なる解釈が可能である。 名詞的用法では、“it”は“to ensure”を指す形式主語であるから、「〜を保証すること」が「必要である」という意味になる。 JIS和訳「測定値の正当性が保証されなければならない場合には」は、この構文解釈に依っている。 しかし、条文の文脈から「保証する」の主語は暗黙的に「組織」でなければならず、主節の主語の「測定機器(monitoring equipment)」との関係で文法上の「分詞構文の従属節と主節の主語の一致」の原則に反する。従って、ここでは名詞的用法であることは文法上あり得ない。
 
  次に副詞的用法では、“to ensure” は“be necessary”を修飾するから、“it (それ)”が「必要である」であり、なぜ必要かというと「〜を保証するために (to ensure 〜)」である。 そして、この“it (それ)” は主節全体を指す。規格の他の部分の“Where”節はすべてが、この構文である。 すなわち、「それが測定値の正当性を保証するために必要な場合には、測定機器は校正又は検証されなければならない」という日本文になる。
 
<英語圏解説書の説明>
  英文解釈の点ではまず正しいと考えられる英語圏の解説書の本条文の説明の例を挙げるが、いずれも「測定値の正当性を保証するために必要な場合には」である。
@ 必要な測定精度を確保するための必要に応じて、次のような方法で測定機器を管理すること (Care for measuring equipment in the following ways as needed to ensure sufficient accuracy)
A ISO9001では、測定値の正当性を保証するためにそれが必要な場合には、測定機器を校正、検証に供することが必要である( ISO9001 requires that measuring equipment is subjected to calibration and/or verification, where this is necessary to ensure valid results)
 
<結論>
  上記の検討ではJIS和訳の通り「測定の正当性を保証する」を用いてきたが、原文の“to ensure valid results”は「妥当な測定結果を確保する」である (No.25) 。 従って、本条文は全体として「それが妥当な測定結果を確保するために必要な合には」「測定機器は校正又は検証されなければならない」等である。 規格は、本条文に先立って、監視測定の必要条件と合致する方法で監視測定が行なわれるようにしなければならないということを規定している。 測定機器について言えば、使用によって性能や機能に変化を生じる測定機器もあり、「妥当な測定結果を確保する」とは一貫して監視測定の必要条件を満たした測定が行なわれること、例えば必要な精度で測定値が得られることという意味である。 使用によっても性能や機能が変化しない測定機器も沢山あるから、そのような測定機器には校正や検証は不要である。
このページの先頭へ 詳しくは(32-02-22)

21. 是正処置において実施した活動のレビュー とは
    実施した是正処置をその後に見直す の意
効果的な是正処置に必要な手順
(ISO9001 8.5.2 是正処置)
   ISO9001 8.5.2 f)項は是正処置の手順に関する要求事項のひとつとして、「是正処置において実施した活動のレビュー」を行うことを規定している。これについて同項の後にISO原文にはないJISだけの「参考」が付され、「f)における”是正処置において実施した活動”とは、a)〜e)の一連の活動のことである」との註釈が加えられている。
 
   しかし、ISO9001の原英文は単純で、reviewing corrective action taken であるから、「とられた是正処置をレビューする」である。つまり、レビューする対象は「是正処置において実施した活動」ではなく「是正処置」そのものである。JISの「参考」の表現に則すると、レビューの対象は「a)〜e)項の一連の活動」ではなく「d)項で決定し、実施した処置」である。
 
   ここに「レビューする」とは review であるから、「見直し」であり、「注意深く再調査又は再検討する」「過去の事象を顧みる」の意味*2である。規格では名詞形の review を「対象事象がその目標の達成に適当か、適切か、有効かを決定するために行われる活動*」(ISO9000 3.8.7項)と定義し、効率的かどうかを決定する場合もあると「参考」で付記している。しかし、「適当で、適切で、有効であることを確実にするためにレビューする」(5.6.1項)という表現があるし、ISO14001:2004では「有効性をレビューする」(4.5.3 e)項)となっているから、動詞形の review に名詞形の場合の定義をそのまま適用することは適切でない。元々 review はISO9000の定義のように特定の観点で見直すということではないから、規格の動詞形のreview の場合には、それぞれの場合に必要な観点で物事を「見直す」という意味として解釈するのがよい。
 
   そこで、8.5.2 の手順では、d)項で再発防止に「必要な処置を決定し、実施」し、e)項で「とられた処置の結果」を記録しているから、その処置が効果的であること、つまり、是正処置であるに足ることを確認して、その証拠を残している。従って f)項の「とられた是正処置のレビュー」とは、この是正処置をとってしばらく経過した後に、その処置が適当か、適切か、効果的か、効率的かどうかを再調査、検討することを意味する。この再調査、検討を マネジメントの実務から考えると、再発防止に力点を置くため是正処置は一般に過剰処置気味となるから、問題の鎮静化した時点でコスト、能率、安全など他の要素に対して問題を起こしていないかなどの観点を含めて見直しをして全体として最適な内容に修正することに相当する。
   
   なお、予防処置(8.5.3 e)項)の「予防処置において実施した活動のレビュー」も「とられた予防処置のレビュー」である。また、ISO14001:2004では「とられた是正処置及び予防処置の有効性をレビューする」と原英文に忠実に和訳されている。なお、この「有効性」にはISO9000の定義(3.2.14項)「計画した活動が計画通りに実行された程度及び所定の結果が達成された程度」を直接あてはめることには マネジメントの実務としては問題がある。この「有効性」とは再発防止だけでなく全体最適という観点での「有効性」と解すべきである。
 
*1 Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary
*2 Oxford Advanced Learner’s Dictionary
*3 Webster’s Encyclopedia of Dictionaries
*4 The Free Dictionary.com

[追記]
 ISO9001:2008年版では原英文の変更がないのに、JIS和訳が「とった是正処置の レビュー」と原文により忠実な日本文に変えられた。しかし、JIS独自の註釈である「訳注」は「f) における“とった是正処置”とは、a)〜e)のことである」と趣旨を変えていない。なお、2008年版では「是正処置の有効性のレビュー」と「有効性」が追加され、規格自身が正しい規格解釈を阻むものとなった。  
このページの先頭へ H18.5.29(追記:H21.3.13)

20. 組織で働く又は組織のために働く人々
    組織の従業員又は他組織(供給者)の従業員の意
環境マネジメントシステムの下で働人々
(ISO14001 4.2, 4.4.2項)
   組織の環境マネジメントシステムの下で働く人々を表す用語として、96年版の従業員(employees;4.2章)、要員(personnel;4.4.2項)、従業員又は構成員(employees or members;4.4.2項)の各用語が、「組織で働く又は組織のために働く人々」に統一された。
   
  この原英語はpersons working for or on behalf of the organization である。ここに、
work for 〜 は、
* 働いている(to have a job)*2
* 雇われている(to be employed)*3
* 賃金をもらって仕事をしている(to perform work regularly for wages)*1
の意味であり、
* 広告会社に勤めている(He works for an advertising company)
の用法のように、一般に会社員など組織に雇用されている従業員を意味する。
 
work on behalf of 〜 の on be half of は、
* 〜の代わりに (instead of )*2
* 〜の為になって(in the interest of )*1、
* 〜の代理で(as a representative of )*4
の意味であり、
* 妻がA氏の代わりに賞状を受け取る( His wife will accept the prize on behalf of Mr.A)の用法のように、誰かに代わって何かを行うと意味である。
 
   JIS和訳の「組織のために働く」の ”〜のために” というのは “〜の代わりに” と言う意味での “ために” であって、”〜の利益のために” の “ために” ではない。 つまり、「組織に代わって働く」という意味であるから、組織の従業員の仕事を代わって実施するということである。すなわち規格では、組織に製品、サービスを提供する供給者の人々を指す。
 
   JIS和訳の「組織で働く又は組織のために働く人々」は、組織に雇用される従業員であれ、別組織の従業員であれ、組織の環境マネジメントシステムの適用範囲で組織の環境影響に係わる業務を行う人々はすべてということを表す表現である。
 
   本事項の表現を巡り、「組織で働く ”又は” 組織のために働く」が ”又は” であることを理由として、「組織のために働く人々」が組織に雇用される者と別組織の者の両方を含むとする解釈は、on behalf of の英語の意味を無視した誤った解釈である。ISO9001 の94年版まで存在したA and/or B (A 及び/又は B) の表現が使われなくなった以降は、A and Bなら 「AもBも」であり、A or B なら 「AかBのどちらか」でなければならないとする硬直的解釈は成り立たなくなっている。同じ2004年版のISO14001でも、規格の意図を勘案して柔軟に解釈すべき and, or は多くあり、実際にほとんどは適切に解釈されている。
このページの先頭へ 2000.3.31

19. プロセスの妥当性確認  とは
  所定の製品・サービスを生むという観点で プロセスが妥当なことを明らかにすることの意
監視、測定による製品品質の検証が不可能な場合
(ISO9001 7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認)
    ISO9001 7.5.2項の標題は 「製造及びサービス提供に関する『プロセスの妥当性確認』」であり、 同項では、「結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合には、その製造及びサービスの該当する『プロセスの妥当性確認を行う』こと」 が規定されている。
   
   これら「妥当性確認」に係わる原英語は、前者が validation、後者はvalidate である。 この英語に関しては、形容詞が valid であり、これは、根拠があり、又は適法であるが故に 「妥当な、有効な」という意味である。 valid の用法例としては、「有効期間内の旅券(valid passport)」、「(提案反対の)正当な理由(valid reasons)」、「証明された理論(valid theory)」がある。
   
   validate は 「valid にする (to make valid)」 という意味の動詞である。 例えば、「理論を証明する(to validate a theory)」、「契約を法的に有効なものとする(to validate a contract)」 のように、「それを立証できるような形で妥当なもの、有効なものとする」、 「妥当(有効)なことを明らかにする」という意味である。 「validation は名詞で 「valid にする行為、活動 (an act or process of validating)」であるから、「妥当(有効)性の明確化」であろう。
 
   また、規格の定義(ISO9000 3.8.5)によると、validation は 「客観的証拠を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に関する要求事項が満たされていることを『確認』すること」 である。 この「確認」の原英語は confirmationであるから、「確かめる」という当人の認識や理解に関する行為ではなく、 証拠を示して他人に認識や理解を得る行為であり他人の認識や理解に関する行為である。 規格[TC176/N526R]でも confirm は、「公式合意によって valid にする (make valid by formal assent)」 「〜を実証する(ratify)」と定義されており、「確かめる」ではない。 また、confirm と validate は同義語であり、confirm が 「疑いを除去すること」、validate が 「妥当であることを一般に承認させること」に力点を置く場合にそれぞれ用いられるという違いだけである。
 
  従って、規格の validation は、「客観的証拠を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に対して妥当又は有効であることを『明らかにする』こと」 という意味である。 7.5.2項の「プロセスの妥当性確認を行う( validate any processes for …..)」とは、そのプロセスの結果の製品・サービスが監視、測定によって要求事項を満たしていることを実証出来ないのなら、「プロセスが間違いなくそのような製品・サービスを生むという観点で妥当(有効)なものにして、そうであることを客観的証拠で示す」 ということである。
   
   同項は引続き、「validation は、これらプロセスが所定の結果を達成する能力を有することを実証することでなければならない」と規定して、規格の意図する validation が 「確しかめる」ではなく「証拠によって明らかにする(実証する)」であることを明記している。また、validationの定義(ISO9000 3.8.5)の 「客観的証拠を『提示する』ことによって、・・・・・・を『確認』する」 というJIS和訳も日本語として奇異であるが、これも confirm を「確かめる」と解釈した誤りの結果である。
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18. 管理責任者 とは
     トップマネジメントに代わって、日々の品質又は環境マネジメントを行う人 の意
管理責任者の任命と責任及び権限の付与  
(ISO9001 5.5.2項/ISO14001 4.4.1項)
  ISO9001,ISO14001両規格ともトップマネジメントが「管理責任者」を管理層の中から任命し、本来の責任及び権限にかかわりなく品質又は環境マネジメントシステムに関して特別な責任及び権限を委ねる必要を規定(5.5.2項/4.4.1項)している。
 
  「管理責任者」とは management representative のJIS和訳である。 固有名詞としての management representative は諸文献の中に見当たらないし、ISO9001,14001でも定義していない。 従って、単語2文字から成る普通名詞として解釈してよいと思われる。 普通名詞としての management representative は英文法上、ふたつの名詞から成る群名詞である。 ここに management は 「マネジメント(活動)」であり、 representative は 「本人(当事者)の有する権限を与えられて、代理人、補佐人、代役、受託人として他人(組織)を represents する者」であり、 represent は 「ある事に関して〜に代わる」 である。 群名詞として解釈すると、management representative とは、「権限をトップマネジメントから与えられた代理人として、トップマネジメントに代わってマネジメント(活動)を取り仕切る者」という意味になる。
 
  management には「管理層」という意味にも使われるが、「管理層」の中から任命された「管理責任者」が「管理層に代わって管理層の業務をとりおこなう」というのは奇妙なことだから、この management は 「マネジメント(活動)」 と解釈すべきである。このような representative の用法には例えば、米国の会社の役職名のSales Representative(営業課長), Customer Service Representative(顧客サービス課長)があるが、これらは、トップマネジメントから権限を与えられた代理人として或いは会社を代表して営業や顧客サービスの活動を行う人である。 また、政府の機関の通商代表部(Office of the U.S. Trade Representative)の長の役職名は U.S.Trade Representative(米国通商代表)であり、日米貿易摩擦でしばしば登場した同代表は、大統領に代わって米国政府を代表して各国との貿易交渉という活動を行うのが役割である。
 
  組織の「最高位でマネジメントを行う*」(ISO9000 3.2.7)のがトップマネジメントである。管理責任者(management representative)は、トップマネジメントに代わって品質又は環境マネジメントを行う責任と権限をトップマネジメントから与えられた人のことである。 管理責任者は、いわゆるスタッフの立場ではなく、トップマネジメントと通常の組織構造の部門長との間に立つラインの責任者として日々の品質又は環境マネジメントを取り仕切る。 このことを規格は 「マネジメントシステムに必要なプロセスを確立、実施及び維持」(5.5.2 a)項)、「マネジメント システムを確立、実施及び維持」(4.4.1 a)項) と表現している。 しかし、管理責任者は代理人であるから、マネジメント活動の状況や問題点を適宜トップマネジメントに報告し、問題対処の意見を具申し、必要な決定を求め、指示を仰ぐことが必要である。 これが規格の 「マネジメント システムの実施状況及び改善の必要性の有無についてトップマネジメントに報告」(5.5.2 b)項)、 「レビューのために改善の提案を含む マネジメントシステムの パフォーマンスを報告」(4.4.1 b)項)である。
 
  トップマネジメントは、組織全体のマネジメント、すなわち規格の表現では 「全体マネジメント(overall management)」 又は 「組織のマネジメント(organizational management)」 を取り仕切るのが業務であるが、それ故にその一部の例えば品質又は環境マネジメントの活動の詳細にまで目を行き届かせることが困難な場合がある。 このような場合には、トップマネジメントはその次席者又は補佐役職者、或いは、品質又は環境問題を主管する機能部門の長に、それら個別マネジメントの日常を取り仕切らせるのが普通である。 マネジメント実務のこのような立場の人を擬したのが、規格の「管理責任者」である。
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17. トップマネジメント とは
    組織の管理層の最高位で品質又は環境マネジメントを行う人 の意
   ISO9001,ISO14001両規格とも「トップマネジメント(top management)」の責任、役割を規定している。
 
   management は、「事業、組(チーム)、組織をとりしきり、管理すること」、つまり、マネジメント又は運営管理という意味である。 同時にマネジメントを行う人々をも意味し、その場合はJIS規格では「管理層」と和訳されている。管理層の一人一人は manager(管理者)である。管理層は一般に、トップマネジメント(top management)、ミドルマネジメント(middle management)、ロアマネジメント(lower management)の3階層(2)から成る。
 
   株式会社では株主が会社の「経営」を担う取締役を選定し、取締役会がトップマネジメントを雇用して、会社の日々の活動をとりしきらせる。 トップマネジメントは日本語では「最高経営層」(1)とも呼ばれ、一人一人は top manager である。 トップマネジメントの行うマネジメント(活動)も英語では top management である。  経営活動(business administration)とtop management活動との区別は実際上あいまいで、日本では、トップマネジメントをしばしば「経営」、「経営者(層)」と呼ぶ。
 
   ほとんどの組織は機能別、階層別組織構造で事業活動の実行と管理を行っているが、トップマネジメントの意を体してこの各部門の業務をとりしきるのがミドルマネジメントであり、日本語では「中間管理層」である。 ミドルマネジメントの指揮下で部門内のそれぞれの業務の実行を直接的に管理するのが ロアマネジメント であり、これは supervisory management(監督者層*)、first-line management(第一線管理層*)とも呼ばれる。
   
   規格のトップマネジメントはマネジメントを「最高位で行う個人又はグループ*」(ISO9000 3.2.7)と位置づけされているから、実際の組織では会社の社長など「最高経営層」に相当する。 品質、環境マネジメントを副社長、専務などの別の業務執行取締役の責任としている場合にはその取締役も規格のトップマネジメントになる。 さらに規格で「組織」とは、「会社、法人、共同事業*、企業、団体、慈善団体、個人事業者、協会、若しくはこれらの一部又は組合せ」(同 3.3.1 例)であるから、トップマネジメントは経営者(層)である必要は必ずしもなく、例えば会社の一部たる特定の事業所を「組織」として、品質又は環境マネジメントシステムを確立、運用する場合には、事業所長が経営層に属さなくともトップマネジメントとなる。
 
   両規格の品質又は環境マネジメントシステムにおけるトップマネジメントの役割は、組織の管理層の最高位で品質又は環境マネジメントを行うことである。 規格でもトップマネジメントはマネジメント業務を直接取り仕切るのではなく、業務を分担するいくつかの部門から成る内部組織を構築し責任と権限を定めて(ISO9001 5.5.1/ISO14001 4.4.1)、各中間管理層に業務を依託する。 依託した業務がトップマネジメントの意図の通り実行されているかどうかは基本的には、内部コミュニケーション(5.5.3/4.4.3)や管理責任者からの報告(5.5.2 b)/4.4.1 b))などで日常的に、また、内部監査(8.2.2/4.5.5)で体系的に監視する。
   
   このような業務の実行と管理に関して規格は、「組織は・・・・すること」と表現している。しかしトップマネジメント自身が実行しなければならない業務は「トップマネジメントは・・・すること」と規定し、また、実行を中間管理層に委ねるがその日々の管理はトップマネジメント自身で行う必要がある業務は「トップマネジメントは・・・・を確実にすること」と規定している。
 
(1) 吉田和夫他: 基本経営学用語辞典、同文館、H6.3.30
(2) 兼子春三: マネジメントの基礎、多賀出版、1996.10; p.148-149
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16. 組織は要員が訓練を受けていることを要求すること とは
    組織は要員に訓練を受けさせるようにすることの意
要員に対する教育訓練
  (ISO14001:1996 4.4.2 訓練、自覚及び能力)
   JISQ14001 4.4.2項(訓練、自覚及び能力)では、「組織は、(中略)すべての要員が、適切な訓練を受けていることを要求しなければならない」と規定されている。 「組織は要求しなければならない」と言われても、「すべての要員が適切な訓練を受けていること」を誰に要求したものか理解に困る。 本来、要員の訓練を行なうべきなのは組織自身であるからである。 だから一般には、この日本語を重視しないで「組織はすべての要員は訓練を受けているようにしなければならない」というように解釈されている。そしてこれは、怪我の巧妙か正しい原文解釈である。
 
   この意味不明な日本語条文の原因は、ISO14001だけでなくISO9001を含めて規格の規定のことを意味する requirement を「要求事項」と呼ぶことにも関係する、原英語の require の問題のある和訳にある。 すなわち、この require なる英語は、
   to claim as by right (権利として要求する)
と共に、単に
   to need (必要とする)
という意味を持っている。 従って例えば、
   I reqire to go to school today.
は、「私は学校へ行く必要がある」とか「私は学校へ行かなければならない」という意味である。
 
   4.4.2項の原英文は、require が shall(〜しなければならない)と共に用いられ、
   The organization shall require 〜
であるから、「組織は、すべての要員が適切な訓練を受けていることを "必要としなければならない"」という意味である。 つまり、「組織はすべての要員が適切な訓練を受けているようにしなければならない」であり、このように和訳すれば容易に意味が通ずる。
   
  requirement は an essential condition (必要条件)の意味であるのに、「要求事項」と和訳されたことから、規格の「〜しなければならない」を審査合格のための規格の「要求」であるかの解釈が広く行なわれている。 4.4.2項は requirement が「要求」ではなく「必要」の意味であることを裏付ける傍証でもある。
 
★ ISO14001:2004改定
 
ISO9001との整合化のための条文記述の変更により、上記表現はなくなった。
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15. 教育と訓練と教育・訓練      (JISQ9000 6.2/JISQ14001 4.4.2)
    教育は学校教育、訓練と教育・訓練は業務遂行能力に関する組織の教育
の意
  JISQ9001では、「教育」「訓練」「教育・訓練」と3つの類似の日本語が使用されているが、原英語は、education と training であり、「訓練」も「教育・訓練」も training である。 ISO14001では training は常に「訓練」と翻訳されているから、JISQ14001 の「訓練」と JISQ9001の「教育・訓練」「訓練」は皆同じである。
 
   education と training の意味の違いに着目して各種辞書で調べると、education は学校教育、training は職業訓練の意味で使い分けられていることがわかる。例えば Oxford Advanced Learner's Dictionary では、education は「知識と技能の向上のために、教える、訓練する、学ぶ過程(特に学校や大学で)」であり、training は「仕事をするのに必要な技能を学ぶ過程」と区分は明確である。
 
   日本語ではどちらかというと、知識の習得が「教育」で肉体的能力の習得が「訓練」という風に受け取られる。 しかし、規格の training は組織の業務遂行に係わる要員の能力向上の教育のことであり、技能に限らず、知識も認識/自覚も対象としている。 訓練(training)は、組織の中で行なわれることが多いが、組織外の研修や資格取得の講習も training である。 これに対して、高校、大学、専門学校など公式の学校教育制度の下での教育のことが 教育(education) である。
 
   企業では、人を新たな仕事につける際には、その人の力量(JISQ9001)又は能力(JISQ14001)を評価して、必要な教育訓練を施すのが普通である。 その時には学歴と履修科目(「教育」)、職歴や役職、前の会社での仕事(「経験」)、或いは、国家資格や免許が証拠となる特別な技能や専門性(ISO9001のみ「技能」)が判断の基準となる。これらの尺度で新業務を委ねるには問題がある場合は、必要な力量/能力をもたせるように教育訓練する。これが規格の「訓練(training)」である。 訓練(training)は、認識(JISQ9001)又は自覚(JISQ14001)に関して管理者の人々への働きかけにもしばしば活用される。
 
   規格では、要員がその仕事に力量/能力があることを「適切な教育、訓練、経験、技能(ISO9001のみ)」を根拠として判断すべきことを規定している。 ここに「教育」は学歴や履修専門学科、「訓練」は組織が主体となって行なう人々の業務遂行の意識と知識、技能に関する教育訓練のことである。「マニュアルや手順書の教育」は、規格の意図の「訓練」であろうか。
 
★ ISO14001:2004改定
  JISQ14001:2004では4.4.2項の表現がISO9001(6.2項)と同じようになったが、翻訳では educationは「教育」と不変だが、training には「訓練」と「教育訓練」が用いられるようになった。
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14. 管理でき、かつ、影響が生じると思われる環境側面(旧JISQ14001 4.3.1)
管理できる環境側面、及び、影響力をもつ環境側面 の意
    「組織は、(中略) 組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる、活動、製品又はサービスの環境側面を特定する手順を確立し、維持しなければならない。」(4.3.1項)は、ISO14001の中でも重要な規定である。 しかし、「組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる(中略)環境側面」とはどのような環境側面のことなのか、わかりにくい表現である。 しかし、原英文で見ると次のように簡単で明解な構文である。
  the environment aspects (中略)
    that it can control
     
and
   
over which it can be expected to have an influence
 
    即ち、it(組織)が「control」する環境側面とit(組織)が「have an influence over」すると期待される環境側面の2種類が接続詞「and」で結ばれている。 ここに、「influence」とは、「間接的に或いは目に見えない方法で 、ある効果をもたらす力又は能力」あるいは「影響を及ぼすもの」の意味(Merriam Webster's)であり、「influence on〜」の場合は「影響、感化、作用」、「influence over 〜」の場合は「人を左右する力、勢力、権勢」の意味となる(新コンサイス英和辞典)。  従って、2つ目の環境側面は、組織は直接管理できないものの影響力は行使できると思われる環境側面という意味である。「and」は、規格の他の部分の多くの「and」と同様に「及び」でよく、敢えて「且つ」と訳さなければならない必然性は見当たらない。
 
   英原文を読めば規格の意図は、「かつ」や「影響が生じる」ということではなく、組織が「管理することができる」環境側面 と 組織が「影響力を及ぼすことが期待され得る」環境側面 という2種類の環境側面を指し、その両方を特定する手順を確立するということであることが明確である。 この部分の和訳に対する疑義は多くの人々が解説書などで指摘している。そして、TC207の活動に連動する日本のISO14001解釈委員会の報告書(2000年4月28日)では JIS日本文に触れないまま、「組織が直接的に管理しているものに加えて、組織の活動などが客観的に見て何らかの影響力を行使できると判断される範囲のものであります。」と説明されている。
 
★ ISO14001:2004改定
 
原英文が、the environmental aspects ....... that it can control and those that it can influence ...とと誤解(誤訳)の余地のないものとなった。
このページの先頭へ H16.1.23(追;H17.7.4)

13. 一般に品質方針は組織の総合的な方針と整合する  (JISQ9000 3.2.4)
         
 「一般に」
ではなく 「全体として」 の意味
   マネジメ-ントとは「組織を指揮、管理する体系的活動」である。 組織全体のマネジメントは「全体マネジメント」とも呼ぶことができ、品質マネジメントも環境マネジメントもその一部である。 トップマネジメントは、組織の置かれた状況の下で追求しなければならない事業(経営)課題を設定し、その取組みを方針として明確にすることが必要である。 これは規格では「組織の総合的な方針」、又は、「全社的方針」と呼び、その内の品質(顧客満足向上)に関するものがISO9001の品質方針で、環境保全に関するものがISO14001の「環境方針」である。方針の元となる経営(事業)の目的のことは「組織の目的」と呼ばれる。
   
   従って、ISO9001 5.3項の「品質方針は組織の目的に対して適切である」との規定至極当然である。 一方、品質方針の定義に関連しては、 「一般に品質方針は、組織の総合的な方針と整合している」(JIS9000 3.2.4 参考1.)と記されている。 「一般に」であるから、通常は整合しているが整合していなくともよいという意味になる。 これでは、 品質方針と総合的な方針との関係に関する上記の理解に反する説明となる。
   
  しかし、ここで「一般に」と和訳されている元の英語は 「generally」 である。これは、「個々には違いはあっても、全体としては」、「規則、法則としては」 という意味での 「一般的に」である。 従って、総合的な方針と整合しない品質方針があり得るということではなく、部分的に、あるいは、枝葉末葉に係わる点では食い違いはあっても、全体的な狙いや方向は一致していることでなければならないという意味である。「一般的に」ではなく「全体として」の日本語の方が規格の意図をより適切に伝えるのではないかと思われる。
   
  「generally」は、JISQ9001では「一般に」「通常」と和訳されているが、これには「全体として」という日本語を当て、「品質方針は全体として、組織の総合的な方針と整合している」とする方が規格の意図をより適切に示す翻訳となる。 品質目標についても「通常」と訳されているが、「全体として、組織の品質方針に基づいている」が、適切である。

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12.  「著しい環境影響」 「著しい環境側面」とは  (JISQ14001; 3.3)
組織の事業課題として「重要な」環境影響、環境側面という意味
   ISO14001に基づく環境マネジメントは、「著しい環境側面」の管理が活動の中核である。「著しい環境側面」とは「著しい環境影響」の原因の環境側面のことである。 「著しい」であるから、一般に公害型の「甚大な環境影響」が「著しい環境影響」と考えられており、多くの解説書でも、影響の量的、質的、頻度上、時間的、空間的な「甚大さ」を尺度として「著しさ」を評価することを説いている。
   
  しかし、「著しい」は「significant」が原英語である。これは「効果がある或いは気付かれるに十分なほど、大きい又は重要な」とか、「影響又は効果がある、或いはありそうな(=重要な)」「目立つほどに又ははっきりと、量の多い」いう意味である。つまり、「はっきりわかる」と共に「重要な」という意味である。 英語の解説書では「著しい環境側面」の説明の中で「important(重要な)」がしばしばが使われている。「著しい環境影響」は良いとして、「著しい環境側面」となると日本語として違和感を覚える。 JIS翻訳の責任者の吉澤 正氏さえ「著しい環境側面というのは日本語としてどうも変である」と指摘している。 これは「重要な」という言葉に置き換えるとすっきりする。
   
  そこで、ISO14001は環境保全のための規格であるから当然、地球環境にとって「重要な」ということである。そして 組織はその環境影響に利害を有する顧客や地域住民など利害関係者のニーズと期待に応えるように、しかし、経済的技術的に可能な最大限の環境影響低減の取り組みを図ることで、組織の存続と発展に不可欠な利害関係者の支持を得ることができるというのが、ISO14001規格と審査登録制度の狙いである。組織の環境影響の低減への取組みが組織の存立、発展にとって必要不可欠であるかどうか、利害関係者の支持を得るのに必要不可欠であるかどうかが、「重要な」かどうかの判断基準である。「甚大な環境影響」は大抵の場合「重要な環境影響」であろうが、甚大でなくとも組織の存立に「重要な」環境影響がある。
   
  このように「著しい」は「重要な」の意味であり、組織の事業課題として「重要な」という意味である。 規格(4.3.1項)は「影響をもつか、もち得る環境側面を"特定(identify)"」し、「著しい環境側面を"決定(determine)"」することを求めている。 影響があるか或いは甚大かどうかは科学的な評価で答えが得られるが、重要かどうかはトップマネジメントの戦略的な判断で決定される。
このページの先頭へ 詳しくは<32-02-12>

11. 品質方針の「要求事項への適合に対するコミットメント」とは
                                  (JISQ9001:2000; 5.3 b)
品質マネジメントシステムの要求事項への適合 の意
    JISQ9001 5.3項(品質方針)はその b)項で、品質方針には「要求事項への適合及び品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む」ことと規定している。ここで規定されている2つのコミットメントの内、 前段の「要求事項への適合に対するコミットメント」については、何の要求事項に対する適合のことかあいまいである。 しかしこの問題は原英文に立ち返ると論争を呼ぶようなことはない。すなわち、原文は、
  (イ) a commitment to comply with requirements (中略)
      of the quality management system
であるから、要求事項とは「品質マネジメントシステムの要求事項」のことである。
 
   ただ、(イ)の (中略) の部分は次の(ロ)ような英文であるから、文章全体としては「requirements(要求事項)」と「effectiveness(有効性)」の両方で1つの「of the quality management system(品質マネジメントシステム)の」を用いていることになり、英語としてやや不自然にも感じられる。
    (ロ) and continually improve the effectiveness
これは、例えば 4.1項(一般要求事項)が、「品質マネジメントシステム維持する」と「その有効性を改善する」と明確な表現となっていることと好対照である。
しかしながら、0.2項(プロセスアプローチ)にも、1つの品質マネジメントシステムを「実施する」と「有効性を改善する」の両方に使用させる表現があるから、5.3 b)項の表現は必ずしも特異とも言えない。
   
   
それに、規格の論理から「要求事項への適合」の意味を考えても結論は同じになる。 なぜなら、規格は 5.1項で、トップマネジメントが「品質マネジメント システムの構築及び実施、並びにその有効性を継続的に改善することに対して」コミットすることと規定しており、その証拠のひとつとして 同 a)項で「品質方針を設定する」ことを求めている。そして、5.3項(品質方針)の b)項で「コミットメント」に触れ、「要求事項への適合」に対するコミットメントが規定されている。当然、5.1項と5.3 b)項の「コミットメント」は同じものである。  ここで、5.1項は、 「品質マネジメントシステムの構築及び実施」と「品質マネジメント システムのの有効性の継続的改善」の2つのコミットメントを規定している。そこで、両項に共通する「品質マネジメントシステムの有効性の改善」の他のもうひとつの「品質マネジメントシステムを構築し実施する」(5.1項)と「要求事項に適合させる」(5.3 b)項)とが 同じ内容であることになる。 すなわち、要求事項への適合」は、「品質マネジメントシステム構築、実施」と同じ意味であり、「品質マネジメントシステム要求事項への適合」を意味する。
   
   このように、 5.3 b)項の「要求事項への適合」とは、英原文の構文解釈の点でも規格の論理の点でも、「品質マネジメントシステムの要求事項への適合」である。この「品質マネジメントシステムの要求事項への適合」について、 8.2.2項(内部監査)がもう少し詳しく説明している。すなわち、@ 個別製品の実現の計画への適合、 A 規格の要求事項への適合、B 組織が決めた品質マネジメントシステム要求事項への適合 である。
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10.約束、コミットメント、責務 とは
                  (JISQ14001;4.2 b),c)/JISQ9001:2000; 5.1)
揺るぎない決意で如何なる困難をも克服し実行するという約束、誓約
   JISQ14001は、環境方針に継続的改善及び予防に関する「約束」と法規制遵守の「約束」を含めることを必要としている。JISQ9001:2000では、トップマネジメントは品質マネジメントシステムの構築、実施と継続的改善に対する「コミットメント」の証拠を示すことが必要であり、品質方針でその「コミットメント」を表現しなければならない。ISO9001の94年版の品質方針も、品質に対する経営者の「責務」を含むべきことが求められていた。  
   
    これらはいずれも、"commitment" の和訳である。"commitment" は、「何かをすることの約束(誓約)」「約束(誓約)したこと」「自ら進んですること」など の意味であるが、ISO9000では "an obligation" と定義されている。そして、この "obligations" は、「約束や契約によって何か特定の行為に自分自身を縛りつける行為」「公式の約束」と定義されている。   "commitment"とは、何かをするという他人への単なる約束ではなく、自分自身の心に対する誓いであり、揺るぎない決意に基づいた、その後の自身の行動を縛ることになる約束である。 すなわち、約束するだけでなく実行することを合わせて、"commitment" であると考えることができる。
   
   松本道弘氏は、「"promise" は破ることのできる (許される)約束」であり、「"commitment" は破ることが許されない責任」で、 法的責任を伴う"公約"ともいえるものであると、その重さを説明している。  一方、TC207文書はISO14001とEUが製造業に課しているEMAS(エコマネジメント及 び監査制度)との違いに関して、EMASの規定である「法規制遵守に必要な手段を とること」に対して、ISO14001の「遵守に対する"約束"(commitment)」の方が 「より緊急性が薄いということを示唆している」と説明している。そして、ISO14001登録取得組織がEMASの認証を申請する場合には「法規制遵守の手段をとったということを実証すること」が必要であるとして、「遵守すること」と「遵守の "約束"」の違いを説明している。
   
    米国のISO14001国内委員会の"規格意図明確化のための質疑"の「法規制遵守の"commitment"の意味」によると、結論的には「法規制遵守の経営公約(top ma- nagement commitment)を満たすことのできる明確なシステムを運用する」ことである。また、常時100%の遵守である必要はないが、発生した不適合には是正処置を実施し、実際に法的不適合を生じていなくともシステムの不適合を発見すれば 是正しなければならない、と説明されている。
   
   以上のように、規格の "commitment" とは、顧客満足の向上(ISO9001)、環境保全(ISO14001)に向けて、組織をそれぞれの規格に従って運営管理するという公約である。そして、公約を規格要求事項に従って品質方針や環境方針に表現するだけではなく、それを目的、目標はじめ諸業務の実行と管理に反映させて、是正処置はじめ問題解決を確実に行い、公約の遵守と実現に対して継続的な最大限の努力の行動をすることを意味する。両規格とも "commitment" は、経営公約(management commitment)の意味であり、トップマネジメントに対する要求事項である。トップマネジメントは確立した各マネジメントシステムが確実に効果的に運用されるよう、公約違反の訴追の「恐怖感」(松本道弘氏)を感ずるほどの意識で以て行動しリーダーシップを発揮しなければならない。 "commitment"するとは、単なる約束でなく、如何なる困難をも克服して実行するという約束であり、自分自身に対する誓いである。審査において発見されるシステム運用不適合でトップマネジメントのリーダーシップの存在が確認できない場合は、"commitment"に対する不適合に相当することにもなろう。
 
★ ISO14001:2004改定
   英原文は commitment で変わりはないが、JIS翻訳は「コミットメント」に変わった。
このページの先頭へ H15.10.31(追:H17.7.4)

.ISO9001の適用範囲(規格使用の目的) (JISQ9001:2000; 1.1)
a) 顧客満足向上の実証 と b) 顧客満足向上の追求
   規格第1章の標題は「適用範囲」で、原英文では「Scope」である。これは「行為、目的、意図の範囲、程度」と定義されているから、規格が意図する範囲、つまり、どのような場合に規格を使用するのかということであり、規格を使用する目的というような意味でもある。そして 1.1項には、規格には a)項と b)項の2つの場合のための品質マネジメントシステムの要求事項が規定されている、と規格使用の目的が規定されている。
 
   a)項は、「組織が顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力をもつことを実証する必要がある場合」である。ここに、「顧客要求事項」は「顧客に関する必要事項」の意であり、顧客の「ニーズ若しくは期待」であり、「顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を向上させる」ことが規格の基本概念である。 規制要求事項も基本的に顧客要求事項のひとつの要素である。従って a)項は製品の品質保証ではなく、顧客満足の製品を提供することに関係する。また、「一貫して」の consistently は、規格の意図においては時代の変化や事業環境の変化にもかかわらず常に、というような意味である。a)項は、組織がいつの時代にも顧客満足の製品を提供することができるよう品質マネジメントを実施している状況を前提に、組織が現にそのような能力を有していることを実証する場合に規格をその判断基準として使用することができる、という意味である。
 
   b)項は「組織が顧客満足の向上を目指す場合」であるから、規格使用のもうひとつ目的は明確である。これからシステムを構築する、あるいは、システムを運用する組織にとって規格が指針となる、という意味である。しかし、JIS条文 は、「システムの効果的な適用、並びに 顧客要求事項及び適用される規制要求事項への適合の保証を通して」と、顧客満足の向上を目指す2本の道筋を示唆している。これを原英文に沿った表現に修正すると、前者は 適合を確実にすること」である。更に英原文の構文に忠実な解釈を加えると b)項は、「品質マネジメントシステムの継続的改善のプロセスと顧客及び規制要求事項への適合を確実にするプロセスとを含む、システムの効果的な運用を通じて顧客満足の向上を目指す場合」という意味になる。
 
  1.1項のa),b)項共、顧客満足を取り扱っている。 両者の違いは各文末の「・・の能力をもつことを実証する場合」と「・・を目指す場合」にある。b)項は顧客満足の向上を目指して品質マネジメントシステムを構築し運用しようとする場合、a)項はそのような品質マネジメントシステムを現に効果的に運用していることを実証する場合、のことである。規格は、このような2種の場合に遭遇した組織によって使用されるためにある。
このページの先頭へ 詳しくは<32-02-09>

.品質マネジメントシステムの計画とは (JISQ9001;5.4.2)    
質目標の達成の手はずを整えること
<5.4.2項>
JIS和訳は、標題が「品質マネジメントシステムの計画」で、その a)項は「トップマネジメントは、品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画が策定されることを確実にすること」である。ここに、「品質マネジメントシステムの計画」、「策定される計画」、「4.1項満たすための計画」の意味や中身に関して解釈が別れている。
 
  この英原文は、Top management shall ensure that
the planning of the quality management system is carried out in order to meet the requirement given in 4.1, as well as the quality objectives
 
<計画が策定される>
  「計画」は原文では動名詞の「planning」であるから「計画すること」の意味である。規格では、計画活動が実行された結果が名詞の plan(計画)で、その文書も plan であり、例えば、quality plan(品質計画書)である。「planning is carried out」は「計画する行為、活動が実行される」であるから、「計画書の作成」の意味ではない。
 
<品質マネジメントシステムの計画>
  動詞 plan は「将来やりたい事を詳細に手配すること」の意味で、規格も「(活動、予定の行動の)手はずを予め整える」と定義している。日本語の「計画する」は「物事を行うに当たって、方法、手順などを考え企てること」であるが、plan は企て且つ実行の手はずを整えることである。「品質マネジメントシステムを計画する」とは、どのように品質マネジメントを行うのかを決め、いつでも実行に移せるよう準備を整えることである。実務的には業務の手順を定め、設備、要員など必要な資源を用意し、関係者に手順を周知させることである。
 
<品質目標 及び 4.1の要求事項を満たす>
  JIS和訳の「及び」は原英語ではA as well as B の構文であるから、「BだけでなくAも」の意味であり、Bつまり品質目標に重きが置かれる。従って、「品質目標だけでなく 4.1項も」というのが条文の意図である。
 
<満たすための計画>
  「ために」の原英語は「in order to」であり、「人の目的、又は、あることを行う理由」を表す熟語である。これは、「〜のために」の他、しばしば「〜となるように」という意味で用いられる。4.1項という抽象的な一般条件を「満たすために計画する」では意味が通じないが、「4.1項を満たすように計画する」というのが条文の趣旨である。
また、JIS和訳では「満たす」の主語が記されておらず、「組織が〜を満たす」と読み取られるが、「満たす」の「meet」の主語は文法上「planning」であるから、「計画活動が〜を満たすように、計画活動が実行される」の意味である。
 
<まとめ>
  条文の趣旨は「品質目標及び4.1項の要求事項を満たすために品質マネジメントシステムの計画が策定される」ではなく、「品質マネジメントシステムを計画する場合は、品質目標だけでなく4.1項の要求事項も満たすように行わなければならない」であり、品質マネジメントシステムの計画活動がこのように行われることを「トップマネジメントは確実にしなければならない」である。
このページの先頭へ 詳しくは<32-02-08>

.力量(JISQ9000)と能力(JISQ14000)
優秀かどうかではなく、その仕事ができるかどうか
   要員の教育訓練に関連して、JISQ9001(6.2.1)では「要員は力量があること」、旧JISQ14001(4.4.2)では「要員は能力をもたなければならない」と規定されている。
   
   日本語の「力量」は、「人の能力の大きさの度合い。また、その大きいこと」であるから、「力量がある」とは「優秀」と同義語にもなる。「能力」とは、「物事をなし得る力。はたらき」であるので直接的には「優秀」に結びつかないが、「能力がある」はしばしば「優秀」という意味で用いられる。 このため、日本語に依拠して規格を読むと、規格が優れた要員に作業を担わせるよう規定しているかの解釈が生まれ、教育訓練の目的が優秀な要員を育てることにも解される余地がある。
 
   しかし、「力量がある」も「能力をもつ」も原英文では「competent」であり、ISO9000ではその名詞形の「competence」が「力量」と和訳されている。この「competent」は「適切な」とか「不可欠の又は適切な、能力又は品質を備えている」という意味である。「優秀」ではなく「適切」の意味であるから、「〜にふさわしい」とか「〜をする能力がある」という日本語を当てるのが適切である。
 
   ISO14050には定義がないが、ISO9000では「力量(competence)」を「明確に示された、知識と技能を使用する能力」(筆者訳)と定義しており、「力量がある」とはそのような能力があるという意味である。
   
   すなわち、規格で「力量がある」「能力をもつ」とは、その仕事をすることができる、そのような力を持っている、ということが明白であるという状態を意味する。そして、「力量がある」「能力をもっている」ことを明確に示す証拠は、学校教育の履修状況(education)、組織で行なう教育訓練(training)、職務経験(experience)、当人の技芸を行なう腕前(skill)、であるということである。
 
   規格の「力量」も「能力」も、人事評価における優秀かどうか、仕事をうまくこなすかどうかとは異なる概念である。そして、高い低いではなく、あるかないかの判断なのである。
   
★ ISO14001:2004改定
   原英語には変化はないが、JIS翻訳はJISQ9001と同じく「力量」と変更になった。
このページの先頭へ 詳しくはこちら<32-02-07>

.マネジメント(運営管理活動)の定義    (ISO9000/ISO14000)
「組織を指揮、管理するための活動ではなく「指揮、管理する活動
  「マネジメント」は management であり、組織の運営管理活動のことである。これを JIS の定義では「組織を指揮し、管理するための調整された活動」としている。しかし、マネジメントは「管理の活動」であり、「作業活動を指揮、管理する活動」であるから、JIS 定義は、「指揮、管理する活動(マネジメント)のための活動」と言う意味にも受けとめられ、違和感を覚える。
   
  この英原文は「 coordinated  activities  to  direct  and  control  an  organaization 」である。 activities  to  direct  and  control  が 「指揮し、管理するための」と翻訳されている。 英文法では to + 動詞 は不定詞であり、名詞、代名詞の後に不定詞が置かれる用法は一般に 、形容詞的用法であり、不定詞はその名詞(代名詞)を修飾し、ある物がどう使われるか、どんな効果をもつのかを言う場合に用いられる。 上記英原文では、to  direct  and  control が activities を修飾し、意味上は activities が主語で direct, control が動詞となる。従って、activities が 組織を direct し、control するという意味合いで、「組織を指揮し、管理する調整された活動」とするのが、正確な翻訳である。不定詞を「・・ために」と訳すことができるのは、副詞的用法における 人の目的をあらわす場合である。
   
   英文法に従えば指揮し、管理するための活動」ではなく、「指揮し、管理する活動」である。 「指揮し、管理する」のは、経営の目的実現のため、或いは、事業の繁栄、発展のためである。マネジメント自身は目的ではなく経営の手段である。また、direct は「方向づけること」であり、control は その目標の範囲に入るように「制御すること」であり、 coordinated の「調整された」を「統制された」に置き換えると、マネジメントとは「組織の目的(ISO9001 5.3 a))を実現するために、組織の諸業務を方向づけ、制御する統制された活動」である。
   
   なお、JISQ9000の定義に関しては、形容詞的用法の不定詞の翻訳に「・・ために」が充てられている場合が他にもある。マネジメントシステム、継続的改善、手順、力量の定義でもそうであるが、いずれも「ために」を除いて読むとよくわからなかった意味がはっきりする。
このページの先頭へ 詳しくはこちら<32-02-06>

.品質目標を設定する部門、階層         (JISQ9001;5.4.1)
品質目標は すべての 部門、階層で設定する必要はない
  ISO9001の2000年版はマネジメント(運営管理)の規格であり、その方法論は、方針を定め目標を設定して、その達成を図るというPDCAを廻すことである。 規格の 5.4.1項(品質目標)では、この品質目標が「組織内のそれぞれの部門、階層」で設定されなければならないと規定している。
   
  しかし、「それぞれ」と和訳されている原英語は、relevant である。 これは、「関連がある」という意味であり、それも「論理的に間違いなく関連している」という意味での「関連している」である。 relevant には、「それぞれ」とか「すべて」の意味はない。  品質目標の定義の参考2では、「品質目標は通常、組織内の関係する部門及び階層で規定される」と relevant を「関係する」と訳し、 環境マネジメントシステムの環境目的、環境目標に関しては、each relevant function を「関連する各部門」と訳している。 また、94年版の品質方針に関しては、relevant は「対応する」と訳されている。JISQ9001の 5.4.1項だけが「それぞれ」と訳されているのである。
     
   品質目標は、品質方針の特定期間における到達点であるから、「品質目標は品質方針と整合」がとれていなければならないし、「全般として*、品質方針に基づいている」はずである。 組織の各部門の機能や役割の分担からして、特定の部門が設定された品質方針に係わる業務を行っていないことはあり得るので、すべての部門が品質目標をもつことにはならない。 規格は、品質方針の実現に関係のある部門で品質目標を設定することを規定しているのである。 階層に関しては、品質目標の実行責任を組織のどの階層に負わせるかという問題であり、品質目標をどの程度細目に分割して掲げるか、組織の中の各階層の機能、権限によって変わる。すべての個人が品質目標を持つということは、あっても差し支えはないが、規格がそれを意図している証拠はないし、考えられない。
 
[追記]
  ISO9001:2008年版では原文は不変で“relevant”であるが、JIS和訳が「しかるべき」に変えられた。
このページの先頭へ 詳しくはこちら<32-02-05>(追記:H21.3.13)

.ジェネリックマネジメントシステム(GMS)とは (ISO9000/14000)   
「統合マネジメントシステム」ではなく、「汎用マネジメントシステム」の意
    ISO9001 と ISO14001の両者を登録取得する組織が増え、両システムを結合した「統合マネジメントシステム」の考え方が話題となっている。この統合マネジメントシステムが、ISO/TC176、TC207 両委員会を含む国際的な関心事であるとの説明のために、ジェネリックマネジメントシステムまたは GMS という用語が引用されることが多い。
   
  GMS は、Generic  Management  System の略とされているが、generic とは、「個々ではなく全体として; 特定とか特殊でない」というような意味の形容詞であるので、「一般的な; 総称的な」と訳される。そして、ISO規格の用法においては、ISO9000、ISO14000 両シリーズ規格はそれ自身が「 generic 」な規格である。ここで generic とは「規模の大小、サービスかどうかも含めて製品の如何を問わず、また、どのような産業にも、営利事業か公的組織、行政機構かにもかかわらず、すべての組織に 同じ規格が適用できるという意味である」と、ISO文書で明確に説明されている。
   
   generic が、語意上も規格の用語上でも「統合」を意味しないことは明白である。  規格で「統合」に相当する概念には integrate という用語が用いられている。しかし、今日話題の「統合マネジメントシステム」は、ISO対応の品質マネジメント システムと環境マネジメントシステムの両システムをひとつに結合することを意図するものであるから、integrated ではなく combined  system、joint  system というのが適切と思う。       
このページの先頭へ 詳しくはこちら<32-02-04>
関連情報:「TC207の議論」はこちら<sub51-32>

.品質目標、環境目標 設定の枠組みとは(JISQ9000/14000)
「設定の仕組み」ではなく、「設定の骨組」の意
 「方針は、目標の設定及びレビューのための枠組みを与えること」 (ISO9001 5.3c)、ISO14001 4.2 d))と規定されている。これを受けて、品質方針、環境方針の声明書に、品質目標あるいは環境目的、目標の設定、追跡の責任、権限などの仕組みが記述されている例が少なくない。
   
   原文の framework が 枠組み と和訳されたものであり、日本語の「枠組み」には、枠を組むこと、枠、の他、物事の仕組みという意味があるので、このような解釈となったものと思われる。
   
 しかし、framework は、基礎的な概念の体系、あるいは、骨格、骨組みを意味するものである。憲法の枠組み( framework  of  the  constitution )、国連気候変動枠組み条約( UN  Framework  Convention  on  Climate  Change)などのように、物事の骨格、あるいは、内容を規制するもの というような意味であって、「仕組み」とはちょっと違う。ISO/TC176 用語の指針においても、framework の定義は、結合された部品から成る構造 であるから、骨格 という意味である。
     
 方針が目的、目標の設定の枠組み( Framework )を与える とは、 方針が理念のようなものであったり、抽象的で組織が何を目指すのかわからない、というようなものであってはならず、方針からその期間に組織が何を達成しなければならないかという、目的、目標がわかるような、具体的で明確な内容、表現でなければならないということである。            
このページの先頭へ  詳しくはこちら<32-02-03>

.マネジメントレビュー とは   (JISQ9000/14000)
マネジメント(経営管理活動)を見直す こと
  マネジメントレビューは、management review である。 94年版(4.1.3)では 『経営者による見直し』とも規定され、JISQ14001(4.6)でも『経営層による見直し』である。
 
 規格ではmanagement(マネジメント)は、経営管理活動と経営層の2つの意味で使われているが、人を意味する場合は「トップマネジメント」など何らかの修飾語を付けて用いることが約束である。review は[再び見る」であり、見直し、再検討、評価などの意味である。
 
  英文法では、2つの名詞を組合わせた名詞は群名詞と呼ばれる。群名詞では第2語だけが名詞として使われ、第1語は形容詞の働きをしている。また、第2語が主語的で第1語は目的語的な意味で使われ、特に第2語が行為を表す名詞の場合は、第1語はその行為(を表す動詞)の直接目的語に相当する使われ方が一般的である。 群名詞の用法に従うと、management review の意は「経営層が見直す」ではなく「経営管理活動を見直す」である。規格の経営管理活動は、方針を定め目標を設定してその達成を図るPDCAの活動であり、マネジメント・レビューはこのA(処置)に相当する活動である。
 
  規格はマネジメント・レビューの意味について、『品質マネジメントシステムの改善の機会と変更の必要性の評価』と規定 (5.6.1)されている。正に、「経営管理活動の見直し」である。 実施するのは当然ながら経営管理活動の実施責任者たるトップマネジメントであり、規格もこれを要求事項に明確にしている。
 
  なお規格には、マネジメント・レビューと同様に群名詞の用法を誤った翻訳が他にもある。管理責任者、経営者の責任、経営者のコミットメントなどである。。
   
★ ISO14001:2004改定
   
2004年版では、management review がJISQ9001 と同じく 「マネジメントレビュー」と和訳されている。
このページの先頭へ 詳しくは<32-02-02>    論理と用語解説<sub33b/S306> 
 
.要求事項 とは         (JISQ9000/14000)   
「要求される事項」でなく、「必要な事項」 の意
  要求事項の英原文は、Requirement である。この英語には、demand(要求)と need (必要)の2つの意味がある。大方の辞書によると 動詞 require の場合は「権利や権限として要求する」という意味が真っ先に挙げられているが、名詞 requirement の意味は「必要なもの」とか「条件」であり、「要求する事項」の意味は挙げられておらず、「要求する行為」を挙げる辞書がわずかにある。
   
  「要求事項」はISO9001の94年版では定義されておらず「品質要求事項」の定義(ISO8402:2.3項)から「ニーズ」の意味と窺われただけだが、2000年版では「ニーズ又は期待」と明確に定義されている。従って、規格に関する限り requiremnet を「要求」と解釈する余地はない。「要求事項」とは必要事項や必要条件の意味であり、効果的な環境又は品質マネジメントの業務の実行に必要な事項、条件のことである。
   
   また、「・・・すること」等で表現される「規格の要求事項」とは、「規格の規定」のことである。ISO規格作成の基準では規定(Provision)を、その性格から「要求事項(requirement)」、「推奨事項(recommendation)」、「表明事項*(statement)」に分類し、「要求事項」とは、「適合性の主張のための合否判定基準を伝える文書の内容に関する表現」であると定義している。すなわち、規格の規定の内、単なる情報伝達、推奨ではなく遵守すべき事項というような意味の規定が要求事項である。更に、ISO14001:1996の標題は「仕様」である。2004年版やISO9001の標題の「要求事項」と「仕様」とはISOでは相互互換的に使われる。
 
   なお、規格には、「顧客要求事項」等々の種々の名詞を冠した「要求事項」があり、「要求」ということから「顧客要求事項」を「顧客の要求事項」と誤解したり、或いは無理な解釈が行われている。これらは英文法上は二つの名詞がつながる群名詞(nouns in groups)であり、requirement を必要事項と解した上で群名詞の用法に基づいて種々の○○要求事項を解釈することが正しい。
このページの先頭へ 詳しくはこちら<32-02-01>

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