ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
ISO14001 環境改善取組みの論理
(その2. 論理に対応した要求事項)
ISO9001/14001
規格の論理   <6>
33b-01-06
ISO 14001
1. ISO14001の環境改善取組みの論理
  ISO14001規格は1992年の地球サミットをきっかけとして作成された、組織の地球環境問題取組みの在り方の国際標準である。規格序文によると、その環境問題取組みの論理は、世界の各組織が経営の課題として環境問題に取組み、組織が経済的、技術的に可能な最大限の努力を以て利害関係者のニーズと期待に応える環境影響の改善と管理を継続して行うことによって、環境改善と事業の発展が両立する持続的発展可能な社会を確立することを目指すというものである。
 
 
2. 経営の課題としての環境問題取組みに係わる規格要求事項
(1) 環境に関する経営管理活動
  ISO14001が組織が環境問題に経営として取組むための要件を規定していることは、規格標題もそうであるが規格要求事項を規定する4章の標題が『環境マネジメント システム 要求事項』となっていることで明らかである。『マネジメント システム(management System)』の“management”は日本語では「経営」ないし「経営管理活動」であり、“system”は「体系」ないし「体制」「枠組み」である。つまり、『環境マネジメント システム』とは「環境に関する経営管理活動の枠組み」の意味である。規格が『環境マネジメント システム』を『組織のマネジメントシステムの一部』であると定義(3.8項)していることからも、規格の環境問題取組みが組織の経営管理活動の一部であることは明白である。
  
  規格の4章は、組織の地球環境問題取組みの国際標準としての在り方を、組織の「環境に関する経営管理活動の枠組み」の要件として規定しているということである。
  
(2) PDCAサイクルに則った経営管理活動
 環境問題を経営の課題として取組むということは、組織の事業の維持発展のためにどのような環境影響をいつの時点でどの程度に抑制することが必要か、そして、可能かということを経営判断として決定し、必要な設備投資等の資源を投入し、日常の事業活動において発生する環境影響を定めた水準に低減又は維持するよう業務実行を管理することである。このような経営管理活動の手法は普通、PDCAサイクルの考えに則って理解され、体系づけられる。
 
  このように経営管理活動を体系的で組織的に行うことを、規格は『環境マネジメント システムを確立し、文書化し、実施し、かつ、維持し、継続的に改善しなければならない』と表現している(4.1項)。そして、環境問題取組みを経営管理活動の一環として行うよう、経営管理活動の在り方を実務的なPDCAサイクルに則って規定している。主要な規定は次の通りである。
 
@ 経営方針、経営目標
  事業経営の実務では、P(計画)たる経営課題の取組みの狙いや方向は経営方針、経営目標の形で明確にする。この経営方針、経営目標の中の環境問題取組みに関する方針、目標は規格では『環境方針』であり(4.2項)、『環境目的及び環境目標』である(4.3.3項)。
 
A 日常業務管理
  事業経営の実務では、D(実行)たる日常業務を経営方針に沿って、経営目標の達成を図るように実行を管理する。これは実務的には、P(計画)で確立した手はずに則って業務が実行され、所定の結果が出ることを確実にするように業務実行と結果を管理することである。このため、業務実行条件と発生した環境影響を監視測定し、問題があれば正し、必要なら再発防止対策を講じる。
 
  規格では、日常業務管理は『運用管理』であり、C(点検)の活動が『パフォーマンス、適用可能な運用管理、並びに、組織の環境目的及び目標との適合を監視する』ことであり(4.5.1項)、問題に対しては『顕在及び潜在の不適合に対応する』及び『是正処置及び予防処置をとる』こと(4.5.3項)でなければならないと規定している。
 
B 期末総合評価
  経営管理活動のPDCAサイクルは一般に歴年又は会計年度を単位として回される。その期末には実績と事業上の必要とを総合的に見直し、必要なら経営方針や経営目標を変更し、或いは、次年度の取組み課題と対応を決定する。このA(処置)の活動は規格では『マネジメント レビュー』である(4.6項)。その意義は『レビューは、環境方針、並びに環境目的及び目標を含む環境マネジメント システムの改善の機会及び変更の必要性の評価を含むこと』である。組織は『マネジメント レビュー』の結果に基づいて、次年度の環境問題取組みを決め、中長期の取組みの方向を再確認ないし変更する。
 
 
3. 環境改善取組みに係わる規格要求事項
 規格の環境問題取組みは、持続的発展可能な社会を確立することを究極の狙いとした継続的な環境改善の取組みである。この原則は、組織が経済的、技術的に可能な最大限の努力を以て利害関係者のニーズと期待に応えるよう、組織に起因する環境影響を継続的に低減し管理することである。
  
@ 著しい環境側面(4.3.1項)
  規格は環境影響の原因となる業務の要素のことを、その業務の環境影響に係わる側面という意味で「環境側面」と呼ぶ。環境影響を管理するとは実際には、その原因の業務実行の条件を管理することであるから、規格では「環境影響の管理」と言う代わりに「環境側面の管理」という表現が用いられている。
  
 『著しい』は、環境影響が著しいとの誤解を招くJISの誤訳であり、「重要な(significant)」である。「重要な」とは、利害関係者がその低減を必要とし期待している環境影響であるという意味で組織の事業推進にとって重要なのである。組織がその管理を放置すれば最悪の場合には組織の事業活動の死命を制されることにもなる。逆に、これに適切に応える環境改善取組みを行えば、例えば事業所の立地や活動の許容、製品の購入、取引の開始、有利な融資、官庁検査の緩和など、利害関係者から組織の事業への支持を得ることができる。
  
 規格は『環境マネジメントシステムを確立、実施、維持する上で著しい環境側面を確実に考慮に入れること』として(4.3.1項)、環境改善取組みの対象を明確にしている。『著しい環境側面』なら環境影響が甚大な又は深刻であるから対応するという公害型の、また、事後的な対応ということになる。英文を適切に和訳して「重要な環境影響」と読むことによって、組織の経営としての、将来を先読みしての対応という規格の論理の環境改善取組みの原則に合致したものとなる。
  
 組織は、組織が原因の環境影響を特定し、その中から、その低減を利害関係者が必要とし又は期待している環境影響を「重要な環境影響」として見極めて決めなければならない。これを規格は『活動、製品及びサービスについて………環境側面を特定する』こと(4.3.1 a)項)、及び、『環境に著しい影響を与える又は与える可能性(すなわち、著しい環境側面)を決定する』こと(同 b)項)として規定している。
  
A 環境方針(4.2項)
 組織の事業に起因する環境影響の中から利害関係者のニーズと期待に関係する「重要な環境影響」の全般的、中長期的な観点での低減についての組織の考え方を示すのが環境方針である。環境方針には、社会のニーズや法規制の将来をも見据えてどのような環境影響をいつまでにどの程度に抑制するかということに関するその時点での経営の想いであり決意であり、利害関係者に対する公約である。
  
 規格の環境改善取組みは、組織が経済的、技術的に可能な最大限の努力を以て利害関係者のニーズと期待に応えるものでなければならない。環境方針は『組織の活動、製品及びサービスの性質、規模及び環境影響に対して適切である』こと (4.4 a)項)という規格要求事項は、このような的を射た精一杯の環境影響改善取組みでなければならないということを意味している。的を射た精一杯の努力かどうかは、同業同種同規模の組織の環境改善取組みと比較して判断するのが実務的であるということである。
 
B 環境目的、環境目標(4.3.3項)
  このJIS和訳も適切ではなく、それぞれ「環境目標」「環境個別目標」である。前者は組織の環境影響の包括的な低減目標であり、後者は一定期間の個々の環境影響の個々の環境側面での低減到達目標である。いずれも低減の対象としてとりあげるのは「重要な環境影響」である。これを規格は『環境目的及び目標を設定しレビューするに当たって、組織は………著しい環境側面を考慮に入れること』という表現で明確にしている(4.4.3項)。また、両目標は、経営の想いであり公約である環境方針の環境影響低減を具体化するための、その時々の到達状態の目標である。このことを規格は『目的及び目標は…….環境方針に整合していること』と表現している(4.4.3項)。
 
  利害関係者のニーズや期待の大きい「重要な環境影響」を的確に把握したとしても、その環境影響の低減には、投資の必要や業務コストの増大を伴うから営利企業には財務上の制約があり、一般に技術的にも制約がある。環境方針に示される環境改善取組みの狙いは、「重要な環境影響」のすべてを直ちに利害関係者の想いの水準にまで低減することではない。組織が経済的、技術的に可能な最大限の努力を以て利害関係者のニーズと期待に応えるという継続的な取組みである。
 
  環境改善取組みでは、その時々における環境影響の実態と利害関係者のニーズと期待との差異の大きさと組織の可能な経済的負担と持っている技術力を勘案して、「環境目標」「環境個別目標」を決定することが規格の意図である。これを規格は『環境目的及び目標を設定しレビューするに当たって、技術上の選択肢、財務上、運用上及び事業上の要求事項、並びに、利害関係者の見解も考慮すること』という表現で明確にしている(4.4.3項)。
 
C 運用管理(4.4.6項)
  原文は“operational control”であるから「業務実行管理」であり、規格の意図は組織の日常業務で発生する環境影響を管理する活動、つまり、規格の表現では組織の活動の環境側面を管理する活動である。
 
  規格の経営管理活動としての環境改善取組みは利害関係者の組織への支持を繋ぎ止めることが目的であり、利害関係者のニーズと期待に応えて「重要な環境影響」の継続的な低減を図ることと、日々の事業活動と製品で利害関係者の意に反する環境影響を発生させないよう管理することとの二本立てである。
 
  後者は実務では日常業務の管理であり、規格では『運用管理』である(4.4.6項)。利害関係者の意に反する環境影響を発生させないように日常業務の実行を管理とは、重要な環境影響に関係する業務が決められた方法と条件で実行され、発生する環境影響が定められた水準内に留まるようにすることである。規格の表現では日常業務の環境影響が『環境方針』『環境目的』『環境目標』を逸脱することのないように、「重要な環境側面」を管理することである。
 
  規格はこのような『運用管理』の狙いを、「組織は、重要な環境側面に関連する業務実行を特定し、それらの業務実行が『環境方針』『環境目的』『環境目標』と整合するように、また、………(そのように)定められた条件下で業務実行されることが確実になるように、業務実行の手はずを整えなければならない」と、回りくどい表現で規定している(4.4.6項)。但し、JISはこの条文を原文に沿って正しく翻訳しておらず、規格の意図を反映した文章となっていない。
 
D 外部コミュニケーション(4.2 g),4.4.3項)
  組織が現に環境影響を大なり小なり発生させている中で、精一杯の努力をしているからとして利害関係者の支持を確保するためには、組織の環境改善取組みを可能な限り利害関係者に知ってもらうことが大切である。
 
  環境方針を『一般の人々が入手可能である』ことを確実にしなければならないという規格要求事項(4.2 g)項)は、これが目的である。また、組織は利害関係者からの苦情を誠意を以て受付け、対応しなければならず(4.4.3 b)項)、また、環境報告書や環境ニュースの発行、地域会合への参加、ウェブサイトでの広報などの手段で環境改善取組みについての情報発信を行うことが大切である(4.4.3項)。
 
  組織がISO14001規格に従って環境改善取組みを行っていることを証明することは、組織が経済的、技術的に可能な最大限の努力を以て利害関係者のニーズと期待に応える環境改善取組みを行っていることを、利害関係者に訴え、納得してもらうことに繋がる。規格適合性を第三者の認証機関が保証する認証制度はこのためにある。規格序文(第9節)は認証制度の狙いについて『この規格をうまく実施していることを示せば、組織が適切な環境マネジメント システムをもつことを利害関係者に納得させることができる』と説明している。また、規格適合性を組織自身が自己宣言するという外部コミュニケーションの方法があり得ることを、同じ節において示唆している。
H24.5.23 
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