ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§1
品質保証規格‐ISO9001 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-01
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

     
規定要件 ⇔ 規定要求事項$1-2-6p;   顧客要件 ⇔顧客要求事項$1-2-2;
      製品サービス ⇔製品及びサービス
§8.1;   必要条件 ⇔要求事項$1;    品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;
      品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム
$19-1-1;   品質体制 ⇔ 品質システム$19-1-2p;
      品質要件 ⇔ 品質要求事項
$1-2-6p;
 要件 ⇔ 要求事項$1
 
  
§0.3  目 次

§1.1 品質保証規格の歴史
§1.2 品質保証と顧客満足
 
 
§1.1 品質保証規格の歴史
  ISO9001規格は基本的に品質保証規格であり、1987年に英国の品質保証規格を基礎としてISO規格として発行された。品質保証規格とは、顧客がその想いに反する不良品や欠陥品を受け取ることのないことを確実にするための、組織の製品製造と引き渡しに係わる業務の在り方の標準を示すものである。組織が、規格の規定に則って業務を行えば、顧客に不良品や欠陥品を引き渡して、顧客に迷惑や損害を与え、或いは、不興を買い、取引関係に悪影響が生じるというようなことを最小限にすることができる。なぜなら、品質保証で実績のある多くの組織の業務方法と原理を整理してまとめたものが規格の内容であるからである。
 
@ 品質保証規格の誕生 MIL-Q-9858規格
  品質保証規格の始まりは1959年制定の軍需産業に対する米国の規格MIL-Q-9858(軍事仕様書:品質取組み要件)と言われる。これは国防省が戦地で使用され、文字通り命に係わる問題としての兵器の品質を確保するために調達先に課した品質保証活動に関する規範であった。日本語では規格というよりは、国防省の購買基準という性格のものであり、調達先にその兵器製造に係わる業務で規定遵守を求めた。
 
  規格の規定は、兵器製造方法に関する規定ではなく、不良兵器の納入を無くするための兵器の設計から製造、出荷関連の業務の管理の在り方を定めたものである。規定の管理要素は、品質計画、文書化、記録、不良品管理、是正処置の他、購買管理、設備管理、製造管理など、今日の品質保証の管理要素とほとんど合致する。ISO9001初版と比較した文献では、ISO9001初版の規定の管理要素の内でMIL-Q-9858にない管理要素は、文書管理、製品トレーサビリティ、計器の校正、内部監査、教育訓練、付帯サービスだけと分析されている
(33)
 
  国防省は、兵器供給者に対してこの規格MIL-Q-9858の規定の遵守を要求し、その遵守を購買基準とし供給者を選定し、選定した供給者の遵守状況を国防省が行う二者監査によって監視することで、不良兵器が納入されることの防止を図った
(33)
なお、国防省の購買基準としてのこの規格は、ISO9001規格の94年版の発行後にこれによりと置き換えられて、1996年に廃止され、以降は購買基準にはISO9001が用いられている。
 
A 品質保証規格の欧州での拡大
  この品質保証規格の考えかたは、米国では航空宇宙局(NASA)の品質保証規格作成に繋がり、北大西洋条約機構(NATO)の兵器の品質確保の手段として欧州に移植され、NATOの品質保証規格として調達先へ遵守を求め、調達先の選定と管理の手段として規格順守の二者監査が実施された。
 
  日本製品に刺激されて市場における品質の重要性が高まる1970年代、欧州諸国では購入製品の品質確保のために各顧客企業が独自に制定した品質保証活動規範を用いた二者監査が拡がった。この状況の中で供給者が多数の顧客からそれぞれ異なる規範の遵守を求められ、それに基づく監査を受けるという非効率さを回避するために、各国では顧客企業別の規範を統一、標準化するために品質保証規格がそれぞれに制定された(35)。
 
  この中で、英国政府は、同国の単独の品質保証規格の作成の方針を決め、1971年に電子産業用の品質保証規格BS9000、1974年にはBS5179(品質保証体制の維持と評価)を発行した。さらに、1979年には、日本のものづくりの管理、或いは、品質重視経営の手法を採り入れたと言われた汎用品質保証規格BS5750(品質体制)を作成し、大企業に独自の品質保証規範の代わりにこれを用いることを要請した
(39)。なお、この規格で教育訓練の必要の規定が初めて導入された。
 
B 品質保証活動の指針としての品質保証規格
  このような性格の品質保証規格を企業の品質競争力の向上の手段として活用したのは英国のサッチャー首相であるとされている
(33)。すなわち1982年、英国政府は英国の品質保証規格BS5750の適用を企業に求め、同時に企業がこの規格に適合していることを第三者が監査して登録する制度を推進した(35)。これにより不良品を出さないという品質競争力を英国の企業が確立し、そのような業務能力を有することを第三者監査で海外の顧客に示し、英国製品の輸出を促進しようとした。これが今日のISO9001の認証制度の原点である。
 
C 品質保証の国際規格 ISO9001
  一方、欧州市場の統合や国際貿易の拡大という状況に対して品質保証規格の国際的標準化の必要の認識が高まり、1979年にISOに品質保証分野の標準化を担当する専門委員会TC176が設けられた。TC176は、BS5750を元にして、適用範囲を3つに分けてISO9001,2,3の3規格を発行した。
 
  これらISO90001シリーズは当初、契約当事者間の二者監査に供せられることを目的としたものであった。しかし、英国の第三者認証制度に倣ったISO規格の認証及び審査登録制度の国際的枠組み確立に関する1989年のISO適合性評価委員会年次総会の決議(25)を背景に、1994年改訂版では第三者監査への適用が明確にされた。これは、国際貿易において障害となる見知らぬ供給者から受取る製品の品質への疑念は、有効性を広く認められた品質保証規格とそれへの適合を確実にする、これも有効性を広く認められた適合性評価制度によって解消できるという考え方によるものである。
 
D 第三者認証制度用の品質保証規格としての消長
  ISO9001シリーズ規格の第3回改訂作業は、1980年代での日本流の観点を取り入れた品質重視経営によって世界的に初歩的不良品がなくなり、また、ISO9001シリーズ規格に基づく第三者認証が拡がる1990年代に行われた。この時代背景を基に2000年版は、効果的な品質保証活動であるための要件を規定する規格をISO9001に一本化し、同時にそれまでの機械工業など製造業を対象とした規定記述を、すべての業種業態に適用できる汎用的表現に変更し、狙いを従来の品質保証を超えた顧客満足の保証に拡げた。
 
  これにより、一般消費者向けのサービス業が、認証を実質的な目的として規格を導入するようなことを含み、ISO9001の適用と認証登録が広い産業に拡がった。同時に、製造業でも、系列二次、三次企業の品質保証体制の確立と親企業による二者監査の第三者認証制度による代替という形でISO9001の適用と認証登録が拡がった。このような状況の中で、規格適用が認証登録と一体視される傾向が年々強まっていき、規格が品質保証規格であり、認証審査では不良品を出さないために規格適合性を審査されるという原点が忘れられているかの風潮が拡がっていった。
 
  役に立たない認証制度への不満の高まりと規格の価値が軽んじられる状況を反映して認証登録数が減少に転じる中で、規格を認証制度の用具とみる意識は益々強くなっている。ISOの規格作成規定
(17)に基づく5年毎の改訂検討の結果で00年版改訂が企図されたが、規格条文の要点の明確化とISO14001との規定表現の整合化だけで、「改訂版」ではない「追補版」としての08年版の発行となった。
 
  さらに、この直後から開始された次の「改訂版」づくりの検討作業が進められる中で、多数のいわゆる「マネジメントシステム規格」の規格構造と規定文章を統一する共通テキスト
(14)が2012年に発行され、事実上、共通テキスト化が主目的の改訂15年版が作成された。この改訂作業では認証関係者が主導的役割を果し、改訂解釈を主導したように見受けられる。
 
 
§1.2 品質保証と顧客満足
  「品質保証」は、94年版では「あるものが品質に関する要件を満たすだろうという十分な信頼感をもたらす活動」と定義され
#55-1、00年版、15年版では「品質要件が満たされるだろうという信頼感をもたらすことに焦点を合わせた活動」と定義されている#55-2
 
  すなわち、この組織の製品サービスは買っても品質は大丈夫だと、顧客に思ってもらえるような製品サービスを一貫して供給できるようにする組織の経営管理の活動のことである。顧客の製品サービスの購入時、又は、顧客との取引開始時において組織の製品サービスを選んでもらい、或いは、引き続き顧客に製品サービスを買ってもらい、又は、取引を続けてもらうためには、組織の製品サービスの品質が顧客の期待通りであることが確実であるとの安心感、信頼感を顧客に抱いてもらうことが必要である。
 
  製品サービスを顧客に買ってもらうことで成り立っている事業組織にとって、売上管理の観点からの効果的な品質保証活動はコスト管理と合わせて組織の存立の最も基本的な管理要素である。
 
@ 1994年版規格における品質保証活動
  94年版(1項)は、規格の各規定が「顧客満足を得ることを第一の狙いとする」ものであると明記して、規格の品質保証活動の目的を明らかにし、規格が顧客満足を追求する品質経営 (英文は“quality management”、JIS和訳は「品質管理」)のあり方の世界標準であることを明らかにしていた。そして、その顧客満足の状態は「製品実現のすべての業務で不適合を防止することによって実現する」とされていた。これはISO9001が1970年代までの欧米の品質保証規格を前身とするためであり、品質不良が圧倒的に少ない日本製品への欧米の対抗がISO9001作成の動機に含まれていたことが理由である。
 
  組織の発展は不良品や欠陥品のない優れた品質の製品を顧客に供給できるかどうかにかかっており、そのために組織は「製品が規定要件に適合することを確実にするための手段」としての「品質体制」の確立とそれに則った業務の実行と管理が必要というのが94年版(4.2.1)の論理であった。
 
  指針規格の定義によると「規定要件」は、顧客が明示し組織と合意した製品の仕様と品質、又は、市場ニーズを満たすものと組織が考えて決めた必要条件を指す
(145)。どちらで決められた必要条件の「規定要件」も実質的には顧客と合意した製品仕様と品質という意味であり、これを引渡すことで顧客は購入の目的を達成したと感じ、製品サービスに満足感を抱くと考えられた。つまり「不適合な製品」とは、合意の必要条件を満たさない製品であり、不良品や欠陥製品のことを指した。日本製品並みの品質とすることによって組織の品質競争力がつくと考えられたのが1980年代までの市場の状況であった。ISO9001の考え方の実践の結果、1990年代には実際に欧米の工業製品は競争力を回復した。
 
A 2000年版規格における品質保証活動
   00年版は顧客満足の製品を一貫して供給する能力の向上を図り、又は、実証するための要件を規定する規格になった(1.1項)。この改定の意義について規格は、前書き(JISでは序文0.1に転載)に、「この規格の標題は変更され、もはや品質保証という言葉を含んでいない。このことは、この規格で規定される品質経営体制の要件は、製品の品質保証に加えて、顧客満足の向上をも目指そうとしていることを反映している」と説明している。
 
  これには改定作業が1990年代に行われたという背景を考えることが必要である。00年版でも不良品や欠陥品を顧客に引き渡さないという品質保証の活動の本質は変わらないが、1990年代以降の市場競争の中ではそれだけでは製品が売れ、或いは、取引を維持できるほどの顧客満足が得られるとは限らない状況になった。また、00年版は、対象を製造業から全業種業態に拡大した、もはや伝統的な品質保証の規格ではなく、製品サービスの品質に基づく組織の発展という品質保証の目的そのものの達成を図る規格となった。94年版の時代では品質保証活動の目的である顧客満足は、不良品や欠陥品を出さないという手段で実現できたが、00年版以降の時代ではそれ以外の顧客満足に結びつく手段或いは要素をも考える必要があるということである。この顧客満足実現の手段、要素のことが「顧客要件」であり、実務的には「顧客のニーズと期待」である
§10.2
 
  94年版の表現を借りると、00年版の品質経営体制は「製品が顧客のニーズと期待に適合することを確実にするための手段」であるということになる。この「顧客のニーズと期待」には当然、受け取る製品が94年版の規定の「不適合製品」や不良品、欠陥品でないことが含まれる。
 
  また、00年版では「品質」の概念が、94年版の「品質特性」というような概念
#2p-1から「特性の良否」というような概念#2p-2に変わっており、「品質保証」が製品の機能や性能の保証ではなく、それが顧客のニーズと期待を満たすことを保証することであることを明確にしている。このことから00年版の「品質」は「顧客満足」と同義語であると理解する考え方(2)がある。この考え方に従うと、00年版も品質保証規格であり、その品質保証活動が単に製品サービスが不良品や欠陥品でないことを確実にするだけでなく、その保証をも含んで顧客の期待する顧客満足度を保証する活動であると理解することができる。
  
  94年版(1 a))でも品質要件に顧客の暗黙のニーズを反映させる考え(ISO8408: 2.3 参考1)はあったが、規定では顧客と合意の規定要件を満たすことが顧客満足の向上に繋がるとしていた。しかし、2000年版では、マーケティングや経営の原理として現実に世界で実践されている顧客満足の理論
§40に準拠している。
  
B 2015年版規格における品質保証活動
 15年版では用語「品質保証」が見られないが、定義は規定され00年版と同じである
#55-2。「品質」の定義#2も「品質経営」の定義#19-3も変わっていないし、特に概念の変更に触れた規定や記述もない。規格の目的が品質保証であり、品質保証が顧客満足の保証であるとする00年版の概念がそのまま引き継がれていると考えて問題はない。
 
H28.10.3 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所