ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§2
品質マネジメントシステム ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-02

 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  *実務の視点和訳⇔JIS規格用語 対応:
   
業務 ⇔プロセス$2;  経営管理体制 ⇔マネジメントシステム$19-1;
   製品サービス ⇔
製品及びサービス§8.1;   品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;  
   品質経営体制 ⇔
品質マネジメントシステム
$19-1-1;
 
§0.3  目次

§2.1 品質
§2.2 品質マネジメント
§2.3 品質マネジメントシステム
§2.4 規格における用語「品質マネジメントシステム」の用法
 
 
§2.1 品質
 94年版では、「品質」とは「“もの”の表明されたニーズ又は表明されていないが一般に認められているニーズを満たす能力に関係する全体的な特質」と定義#2p-1されていた。これは機能や性能の良し悪し、つまり、品質の程度を表す「品質特性」という概念であるから、実務的な意味での品質に合致する。94年版では、品質特性の保証、すなわち、不良品を顧客に引渡さないことを確実にするための関連業務に対する必要条件が規定されていた。
  
  しかし、00年版では品質の定義が、「一連の固有の特質が必要条件を満たす程度」へと変更され#2p-2、15年版でもこれを継承して「ある物事の一連の固有の特質が必要条件を満たす程度」である#2。00年版以降の「品質」とは、単に製品の機能や性能が良い悪いというのではなく、それが顧客の必要を満たしているかどうかであり、満たしている程度が「品質」である。この定義の「必要条件」はJIS和訳では「要求事項」であり、これが同じくJIS和訳の「顧客要求事項」である「顧客要件」を指すとすると、これは組織が顧客に関して満たすべき要件であり、顧客のニーズと期待のことである§41.2。
  
  すなわち、「品質」とは製品サービスが顧客のニーズや期待を満たす程度という意味になる。ここに、規格では「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方」が「顧客満足」である#17から、00年版以降の「品質」とは、品質が良いかどうかではなく、顧客満足の状態や程度を意味する。このことから、00年版の「品質」が「顧客満足」と実質的に同義語であるというISOの説明が生まれた(2)。このことは15年版でも同じである。
  
  この定義の「顧客満足」はマーケティング論における顧客満足と同じ概念であり§40、実務的には、不良品を出さないことを含み、顧客に製品サービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品及びサービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感等の状態や程度のことである§10.1。
  
  
§2.2 品質マネジメント
(1) 品質経営
 JIS和訳「マネジメント」の英文は“management”であり、日本語ではずばり、経営、或いは、経営管理である$19。 「経営管理」は、経営論では組織の存立の目的に沿って事業を存続発展させる活動である。規格では「組織を方向づけ制御する統制された活動」と定義#19されている。
  
  「品質マネジメント」の英文は“quality management”であり、英文法上の群名詞であるから“quality”を“management”するという意味で「品質に関する経営管理」であり、「品質経営」である。規格の定義#19-3も「品質に関する経営管理活動」である。ここに上記§2.1 のように規格では「品質」は「顧客満足」の意味であるから、「品質経営」とは組織の存続発展のために必要な顧客満足を追求する経営管理活動のことである。
  
(2) 特定分野経営管理活動
 営利事業組織では、その最終的業績は収益で表される。近年、組織の活動を収益という財務業績だけで評価するのではなく、その経済的側面、社会的側面、環境的側面の3つの側面で評価するという トリプルボトムライン の考え方が拡がっているが、この場合でも経済的側面たる収益あっての他の2つの側面の業績というのが現実である。
 
 組織が存続発展を続けるには継続的に利益を関係者に配分し、新たな資源の投入が必要であり、その原資となる収益を安定的に得ることが不可欠である。一般に組織は収益体質としての長期的な収益目標と共に、年度毎に必要な収益目標を設定し、収益実績動向を監視し、年度末に決算を行って組織の最終的業績としての収益実績をとりまとめる。しかし、収益というものが直接手に入るというのではなく、組織の様々な活動の成果の総合的な成果が収益となる。単純には収益は売上と費用の差であり、売上と費用にも様々な事業活動の要素が関係している。例えば製造業では、売上は顧客の組織と製品サービスに対する信頼感の醸成を図る活動、必要な生産能力を維持開発する活動、売上目標の達成を図る活動、受注製品を納期通りにつくり顧客に引き渡す活動等々の活動の総合的な成果であり、費用も様々な経費のそれぞれに関係する活動の総合的な合計額として算出される。
 
  従って、組織の経営管理の実務では、事業の維持発展に係わる重要な問題のそれぞれを包括的に扱う幾つかの分野別の経営管理活動を組織のトップマネジメントが統括調整する形で行なわれている。それぞれの分野別の経営管理活動にそれぞれの業績目標を設定し、それらの達成の総合的な結果として最終的な業績としての必要な収益目標が達成される。共通テキストでは、これら個別の経営管理活動を特定分野(discipline specific)経営管理活動と呼んでいる。
 
 品質経営は、組織の経営管理活動のひとつの側面、或いは、一部としての特定分野経営管理活動のひとつであり、組織の無限持続体として存続発展に必要な顧客満足追求に係わる経営管理活動である。この顧客満足§10とは、不良品を出さないことを含み、顧客に製品サービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品サービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。品質経営は、組織が狙いの売上をあげるために必要な組織と製品サービスに対する顧客の受けとめ、評価を確立することが目的である。すなわち、品質経営活動は、狙いの売上を挙げるために必要な顧客満足の状態の実現を図る経営管理活動であり、この業績目標を達成すること、つまり、狙いの顧客満足の状態を実現させることによって組織の最終業績たる収益の達成に貢献する。
 
 
§2.3 品質マネジメントシステム
(1) 品質マネジメントシステム
 JIS和訳「マネジメントシステム」は、「システム」がある目的に向けていろいろのものが関連をもって機能している様を意味するから$3、経営管理のために相互に関連して機能する要素の集まりのことであり、実務的には、その下で経営管理を行うように整えられた体制という意味である。従って、「品質マネジメントシステム」は、品質経営のためにいろいろの要素が結びつけられた、その下で品質経営が行われる「品質経営体制$19-1-1」のことである§43.1。
  
 品質経営体制は、組織の全体の経営管理体制の中の品質経営に係わる部分のことであり、組織の経営管理体制に融合して含まれる顧客満足の追求に必要な一連の要素を指す。品質経営体制は、規格の概念上、組織の経営管理体制の二次的体制であり、逆に組織の経営管理体制は、その手はずを相互に共有する複数の特定分野経営管理§2.2の二次的体制で構成されている。
  
 実務的には、品質経営体制がどんなものかを明確にするとは、組織の経営管理体制の中から品質経営に関連する要素とそれらの相互関係の網目構造を特定し、二次的体制としてあぶり出すことに相当する。例えば、臓器、血管、神経、筋肉、骨格、皮膚などの要素から成る「人体システム」を、循環器系、消化器系、耳鼻咽喉系など二次人体システムに分けて医学的治療を行うことと同じ考え方である。
  
  
(2) 品質経営体制の実体
 品質経営体制がどういうものであるかは、その構成する要素をどう見るかによって異なり、規格では次のような3種類の概念の表現が存在する。
  
➀ 業務の有機的集合体
 00年版序文(0.2)では、プロセスアプローチ論に則って、品質経営体制を「プロセスのシステム(a system of processes)」であると説明している。この概念は15年版でも「プロセスと全体としてのシステムを管理する$78」と表現を変えて継承されている。ここに、JIS和訳「プロセス」は「業務」であるから$2、規格の意図の「経営管理体制」を構成する要素は、経営管理に関連する一連の業務であり、品質経営体制は品質経営の業務の有機的集合体である。つまり、組織の永続的な存続発展を図る経営管理活動のために、経営目標の達成を目指して種々の業務が相互に関連して実行されるようになっているそれら業務の集まりとみなすことができる。これら業務とは、規格の各条項の標題に対応する業務のことであり、詳細には、各規定に相当する業務をも指す。
 
 経営管理体制の構成要素は規格の条項標題に対応する経営管理の種々の業務であり、経営管理体制はそれら業務の有機的集合体である。この概念では、品質経営体制が関連する種々の業務の網目状構造から成り、それら業務が相互に関連しながら行なわれて、それぞれの狙いの結果を達成することにより、それらの総合的結果としての経営管理体制の狙いの結果、すなわち、狙いの顧客満足の状態が実現すると考える。この概念は、品質経営のためのJIS和訳「品質システム」と呼ばれていた94年版でも同じであり、その指針規格(136)では網目状構造で結びつけられた多くの業務の実行によって良品を供給するという品質経営の狙いを効果的に実現できると説明されている。
 
 94年版では規格の各条項の標題が表す業務を「品質システム」の要素と呼んでいたが、00年版からは各標題自体が品質経営に必要な業務として扱われており、これらの網目構造の形に相互に関連された状態が品質経営体制である。これは序文(0.2項)のプロセスアプローチの説明に業務を基礎とした品質経営体制の図(図1)を掲載し、4.1項末尾の注記1が「品質経営体制に必要な業務には」として規格の5~8章の標題と同様の名称の業務を挙げていることからも窺える。また、TC176指針文書(7)では、模型的な業務の流れを品質経営体制を表す円で包み込み、各業務と品質経営体制のそれぞれにPDCAサイクルを回すことを描いた図で以て、プロセスアプローチの説明をしている。また、その品質経営体制を構成する典型的な種類の業務として、品質方針、目標の設定、コミュニケーション、マネジメントレビュー、資源の決定と用意、人的資源、インフラストラクチャの明確化、設計開発、購買、製造及びサービス提供、監視測定機器の管理等々を挙げているが、これらもほとんどすべての規格の条項の標題名である。
 
 15年版でも、プロセスアプローチの説明の図1を含み表現は変わっているが、品質経営体制の要素が各条項に対応する業務であるという概念も、それら業務の有機的集合体が規格の意図の品質経営体制であるという概念はそのまま引き継がれていると考えることができる。
 
 
② 業務実行の手はずの有機的集合体
 品質経営体制を確立することは、規格では品質経営体制を計画すること(6章)であり、「計画する」の英文の“planning”は何かの実行のために前もって手はずを整えることを意味する$28。この点からは品質経営体制の要素は、品質経営体制の計画によって整えた顧客満足の追求に関わる一連の業務の実行の手はずであり、この手はずは規格の表現では手順と資源から成る。手順とはどのように業務を行なうかの決まり#9であり、資源とはいわゆる経営資源のことであり、一般に人、物、情報と金を指すと言われるが、手順で使用が決められた業務実行に必要なすべてのものは資源である。
 
 この観点からの経営管理体制の要素としては、組織構造、手順、業務、経営資源を挙げる説明(134)や、組織構造、計画活動、責任、行為、手順、業務、資源を挙げる説明がある(135)。これら要素の事例は、規格の各条項に規定に従って整えられた業務実行の手はずを指しており、品質経営体制とは各条項の規定の業務実行の手はずの有機的集合体であるということになる。
 
 しかし、上記①の考えでもそれぞれの業務がどのようなものかは、その実行のために必要な手順と資源との業務実行の手はずで表されるから、品質経営体制とは各条項の規定の業務実行の手はずの有機的集合体であるということにもなる。従って、①と②の考えにおける品質経営体制の要素には実質的には違いがない。
 
 
③ 文書の集まり
 94年版では、すべての条項で「……を文書化すること」と規定されていたが、08年版でも効果的な品質経営であるための基本要件としての「品質経営体制を確立し、文書化し、….」との規定(4.1)があり、15年版でも同様の品質経営体制の在り方を規定する条項(4.4)で「文書化し」が無くなったが、条項末尾には文書化の必要が規定されている。これは、品質経営体制が業務実行の手はずを示す文書から成るという概念が表現されたものと受けとめることができる。
H28.8.18 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所