ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§3 品質方針 ISO9001 ISO9001/14001
規格の論理と用語   
33b-02-03
ISO14001
SL共通テキスト
§3 品質方針
(1) 顧客満足追求に関する経営方針
  08年版では『方針』とは「政府、団体、個人等によって提案又は採択された行動指針又は原則」のことであるとされ(6)、『品質方針』は08年、15年の両版でも「トップマネジメントにより正式に表明された品質に関する組織の全体的な意図及び方向付け」と定義されている#21。これらから規格の品質方針が、経営論や実務の経営方針§1のことであり、性格的には組織全体を対象とする全般的方針であり、品質に関する機能別方針であることが明らかである。
 
  00年版では『品質』の定義#2が大きく変わり、あるものの品質が優れているかどうかという今日でも通常の概念の品質の意味であったのが、実質的に顧客満足度を意味するものとなった(2)。15年版でもその定義#2-2は継承されている#2-4から、品質方針は品質のよい製品ではなく、製品の顧客満足の追求に関する経営方針であり、組織の事業の存続発展のためにどのような顧客満足の状態をどのように追求するのか、どのような顧客満足の実現を図ろうとするのか組織の意向を示すものである。
 
  すなわち規格では、品質方針は組織全体の経営方針の中の顧客満足の追求に係わる部分であり、品質経営<品質マネジメント>は、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態を追求し実現させる活動としての組織の経営管理<マネジメント>活動の一部である。08年版では品質方針が組織の経営方針の一部であることを、定義に付した注釈#21-3で「全体として品質方針は組織の全般的な経営方針と整合している」として説明し、15年版ではこの注釈に「組織のビジョンやミッションと一致している」との文言#21-4を追加して、さらに明確にしている。また、TC176の商業本(20a)は「営業/販売、財務等々を含む会社の全般方針を最初に決める方が品質方針を容易に設定できる」として、必要な売上や収益を挙げるために必要な顧客満足の状態とそのための道筋を示すものという品質方針の性格を説明している。
 
@ 基本方針としての品質方針
  品質方針は、事業の維持発展に必要であるが故に実現を目指さなければならない顧客満足がどのようなものかを示す。経営基本方針としての品質方針は、顧客満足の追求に関してどのような組織であることを目指すのかを示すものであり、究極的に達成すべき顧客満足の状態を示すのは経営基本目標としての品質目標である。この品質方針と品質目標は一般に包括的で抽象的に表されるから、両者が明確に区別されず一体として表される。
 
  94年版(4.1.1)ではトップマネジメントは「品質目標を含む品質方針を明確にしなければならない」と規定され、その品質方針が内容的に基本方針的なものあることを示唆していた。また、品質マニュアルに記述される#14-2ことになっており、更に、見直しの必要には触れられていなかった。従って、その品質方針は経営基本方針に対応する品質方針を意味していたものと考えられる。00年版でも指針規格では、品質マネジメントシステムの下の トップマネジメントの責任として「組織の品質方針及び品質目標を設定し、維持する」ことが挙げられている(131d)から、この場合の品質方針は品質目標とほとんど一体として表現される組織のあり方としての目指す顧客満足を示す基本方針的なものが意図されていると考えられる。
 
A 実行方針としての品質方針
  一方で規格は、トップマネジメントが『品質方針を見直し、維持しなければならない』(5.2.1項)と規定しているが、この場合の品質方針は、基本方針や長期方針のように組織の目的の実現の指導原則や行動規範を定めるものというよりは、中短期に実現すべき顧客満足がどういうものであるか、どのように実現すべきであるかを相当に具体的に示す実行方針であり、中、短期方針や年度方針のような性格の品質方針である。
 
  この見直し変更の必要は、無限持続体としての組織がその経営戦略を常にその時代の外部環境と組織の能力に適切なものであるように見直し変更するという経営論のマネジメントサイクルの方法論に則ったものである。08年版(5.3 e), 5.6.1)ではこのことを『品質方針を、適切性の持続のためにレビューしなければならない』『マネジメント レビューでは品質方針や品質目標の変更の必要性を評価しなければならない』という表現で明確にしていた。15年版では、マネジメント レビューにおける品質方針の見直し変更という直接的文言はないが、『マネジメント レビューでは戦略的方向性を含む品質マネジメントシステムに関連する外部及び内部の事情<課題>の変化を考慮しなければならない』と経営戦略の見直し変更の必要性という表現で規定している(9.3.1項)。
 
B 実務における品質方針
  ある時期の組織の品質経営<品質マネジメント>の業務は一般に、基本方針としての品質方針とその時期の重点又は優先事項を表す実行方針としての品質方針とを合わせた品質方針に則って、両品質方針が意図する顧客満足の状態の実現を目指して実行される。
 
  実行方針としての品質方針は当該期間限りであり、その後にはまた別の実行方針としての品質方針が決められるが、大抵の場合は前の品質方針とそれに則った業務の手はずも実現している顧客満足の状態もそのまま維持される。もはや掲示されることはないこのような品質方針は取り消されたのではなく、基本方針としての品質方針をより具体的に、より明確に表すものとして、業務実行の手はず、とりわけ業務管理基準の形で明確な存在として維持されている。
 
  見直し変更の結果の新しい品質方針により以前の品質方針が否定される場合もあるが、この場合は以前の品質方針の下の業務実行の手はずや業務管理基準は取り消され、又は、変更されることになる。
 
(2) 継続的改善の指標
  中短期又は実行方針としての品質方針は、その時点での外部環境の変化に対応するために組織の能力に見合ってどのような顧客満足の状態の実現を図るべきかを示す。このような新たな顧客満足の姿は一般には、それまでとは異なる観点、より高度な、より実現の難しいものである。これを実現するために品質マネジメントの業務はより高度の結果を出すことが必要となるから、このための業務又は手順の変更は改善と見做すことができる。
 
  品質方針の変更の度に、品質マネジメントの業務は新たな又はより高度な結果を出すように改善される。これを繰返すことにより、様々な事業環境に対応して顧客満足の製品を一貫して供給できるよう組織の業務能力が継続的に改善され強化される。08年版(8.5.1)では、このような改善の活動を一連の関連するPDCA/プロセスアプローチ サイクルの活動と合わせて、「必要条件<要求事項>を満たす能力を高める反復的活動」と定義#38-2される『継続的改善』の活動とみなされてきた。15年版では『継続的改善』は「業績<パフォーマンス>向上を図る反復的活動」となった#38-1。この定義の違いは、顧客満足に関する業績<パフォーマンス>の改善のためには品質経営<品質マネジメント>の業務能力を改善する必要があるという実務的な論理に照らせば、原因と結果のどちらに焦点を当てたかというだけの問題であり、重要ではない。
 
  品質方針は、改善の品質目標の設定の基礎となり、業務の手はずの改善の実行と管理の基準となる。品質方針は、組織の品質経営体制<品質マネジメントシステム>、或いは、品質経営<品質マネジメント>の業務能力、或いは、品質経営<品質マネジメント>の業績として実現する顧客満足の状態の継続的な改善の道しるべであり、その変遷は改善の歴史である。そして、実行方針としての品質方針の変更の実績は継続的改善が進展しているとの証である。
 
   
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H26.12.12 
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