ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§5
品質マネジメントシステムの計画 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-05
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
 
  経営管理 ⇔マネジメント$19;   経営管理体制 ⇔マネジメントシステム$19-1;
     品質経営(活動) ⇔品質マネジメント
$19-0;    品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;
     品質経営体制の計画(活動) ⇔品質マネジメントシステムの計画
$19-1-1;
   

§0.3  目次
§5.1 計 画
§5.2 品質マネジメントシステムの計画
§5.3 品質マネジメントシステムの計画に関する規格の規定の変遷
 
 
 
§5.1 計 画
@ 計画

  「計画」の英文は“planning”であり、「計画活動」「計画すること」という意味である。ここに、日本語の「計画する」が、将来行なうことの方法や手順を企画することであるのに対し、英語の“plan”は、将来行うことの手はずを整える、準備万端を整えるということを意味する
$28。00年版TC176指針(6)では「(処置や企画された一連の事柄の処理の実行のために)前もって手はずを整える」ことと定義されている。
 
  すなわち、「計画」とは、必要な手順(業務方法及び管理基準)や資源を企画するだけでなく、それらを作成、用意し、いつでも実行、使用できるような状態にしておくことまでを含む概念である。 規格の「計画」は、日本語の「計画を策定する」「計画書を作成する」ではなく、品質経営活動の業務実行の手はずを整える活動のことであり、プロセスアプローチ/PDCAサイクルの計画/Pに相当する活動である
§43.4
 
A 計画のアウトプット
  英文では“output of planning”であり、「アウトプット」は「業務実行の結果」と定義されるから
#39、「計画のアウトプット」とは「計画活動の結果」のことである。規格の「計画活動の結果」は、整えられた業務実行の手はずのことを指す。
 
B 計画した取決め
  英文では“planned arrangement”であり、“arrangement”は「準備、手配、お膳立て、用意」の意味であるか ら(108)、「整えた手はず」の意味である。つまり、計画活動の結果のことである。
 
C プログラム
  「計画」が、実行の結果に不確定要素がある業務、或いは、一定期間で完遂の必要がある業務の手はずを整える活動である場合は、「計画」の結果は「特定の目的に向けた、決められた期間内で実行するように計画された一連の活動」として表されたプログラム
#24-3の作成という形をとる。規格の「プログラム」は、実務的には実行計画のことであり、内部監査のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの全体実行計画は「監査プログラム」と呼ばれている。また、6.2.2項には、不確定要素のある業務目標としての品質目標§4の達成のための業務実行計画における手順と資源の適用を日程計画の形で表す「実行計画」の要件を規定している。
 
 
§5.2 品質マネジメントシステムの計画
(1) 品質経営体制の計画

  「品質マネジメント」「品質マネジメントシステム」は英文からそれぞれ、品質経営
#19-0、品質経営体制$19-1-1のことである。品質経営は、組織の経営管理活動の一部ないし一側面として、その存続発展に必要な顧客満足を追求する経営管理の活動であり§2.2、品質経営体制は、それに則って品質経営を行うように整えられた一連の業務実行の手はずから成る§2.3
 
  同様に「品質マネジメントシステムの計画」は英文から「品質経営体制の計画」であり、品質経営に係わる業務実行の手はずを整える活動である。規格の表現で業務実行の手はずを整えるとは簡単には、手順(業務方法及び管理基準)を確立し必要な資源を用意することと表現できる。規格の品質経営体制の計画では、実現すべき顧客満足の状態を表し、品質経営の業績目標を示す品質方針 (5.2項)を実現するのに必要な業務を特定し、達成が必要なそれぞれの業務目標たる品質目標(6.2項)に展開し、それら業務目標の達成のための業務実行の手はずを整える。これは、経営論では、その経営戦略の実現を図るための経営構造ないし経営管理体制を確立することを意味する「経営計画」に相当する
§35.7
 
  00年版執筆者のひとりは、このことに関連して品質経営体制の計画活動を、「顧客のニーズと期待を満たし品質方針と品質目標を実現することができる品質経営体制とするために、必要な資源、組織構造、プロセス、活動、管理、責任と権限を決定すること」であると説明
(22)し、別のひとりは「設定された品質目標を達成するために必要な資源を特定し、準備すること」と説明(21)している。表現は異なるが趣旨は変わっていない。
 
(2) 品質経営体制の計画活動の態様
  事業開始のための品質経営体制の確立も、品質方針変更に伴う経営施策たる処置の実行の手はずを整えることも、再発防止対策としての業務実行の手順を確立又は変更することも、品質経営体制の計画 である。規格の品質経営体制の計画活動は、それにより実現を図る品質方針との関係から3種類の計画活動を包含している。
   
@ 事業体制の確立
  経営基本方針、目標に対応する顧客満足の実現を図るための手はずを整える品質経営体制の計画は、組織のあるべき姿としての顧客満足の実現のための手はずを整える活動であり、実務的には品質経営体制を確立する活動のことである。これは、品質経営体制のプロセスアプローチ/PDCAサイクル
§43.4の計画/Pであり、「品質経営体制を確立する」に相当する(4.4項)。このような品質経営体制の計画活動に関しては、トップマネジメントが「品質経営の枠組みを確立する」ことであるという説明(22)や、品質経営体制の計画活動の結果で「品質目標を満たす組織の業務実行の基礎が形成される」とする説明(27)がある。
 
A 品質経営活動の定期的方向づけ
  一方で実行方針としての品質方針によって具体的に表された狙いの顧客満足の実現の手はずを整える活動も品質経営体制の計画活動である。これは、実際には既存の手はずの変更又は追加であり、このような品質経営体制の計画は、「品質経営体制の変更」の活動とも表現される。これは、マネジメントレビュー(9.3項)により「品質経営体制が引き続き,適当で、十分で,効果的であることを確実にする」ために行う品質方針(5.2項)を含む品質経営の手はずの見直し、変更のことである
$22-2。これは、品質経営体制のプロセスアプローチ/PDCAサイクル§43.4の継続的改善/Aの結果の次のサイクルの計画/Pであり、「品質経営体制の継続的改善」に基づく「品質経営体制の確立」である (4.4項)。
 
B 日常業務管理
  日常業務実行管理において、業績目標の実現に必要な特定業務の品質目標が達成できない、或いは、業務実行やその結果に問題が生じた場合は、決められた品質目標或いは業務結果が確実に出るように業務実行の手はずを見直さなければならない。更に、プロジェクト型事業で新規受注があり、或いは、市場型事業で新製品を投入し、又は、組織が新技術を導入し、設備を更新、新設する場合も、品質方針の変更の要否や有無によらず、新しい業務、新しい業務方法が必要となり、又は、業務実行の狙いを変更する必要が生じる。これも、実務的には品質経営体制の履行のプロセスアプローチ/PDCAサイクル
§43.4の継続的改善/Aの結果の次のサイクルの計画/Pであり、「品質経営体制の継続的改善」に基づく「品質経営体制の確立」である (4.4項)。
 
(3) 組織の経営管理体制との関係
規格の品質経営は、事業の維持発展を顧客満足の向上を通じて図る組織の経営管理の一部ないし側面である。実際の組織の経営管理は、顧客満足の追求だけでなく、利益、コスト、能率、安全、環境、法順守など様々な観点から行なわれている。品質経営の業務も多くはこれら他の特定分野経営管理
§2.2にも関係しているから、その業務結果は品質目標を満たすだけでなく、他の特定分野経営管理に係わる業務目標をも満たす必要がある。実務的には、品質経営体制の計画は、関係するすべての経営管理体制の計画にも対応する形で行なわれる。そして、品質経営体制の計画活動により整えられる手はずには、当該業務が関係する他の特定分野経営管理のための手はずも含まれている。すなわち、品質経営体制の計画活動で決めた手順や資源は、時には相互に矛盾する、組織のすべての経営管理の観点の必要を調整して満たした、組織として最適なものとなっていることが必要である。
 
 
§5.3 品質マネジメントシステムの計画に関する規格の規定の変遷
  品質経営体制の計画活動に関する15年版の規定記述は、08年版と大きく変わっている。しかし、狙いの顧客満足の状態という品質方針(5.2項)の達成に必要としてマネジメント レビューで決めた経営施策たる処置(9.3.3項)を、具体的な業務に展開して、その業務実行の手はずを整える活動としての品質経営体制の計画活動の概念は、08年版から何も変わっていない。
 
@ 08年版:品質目標を満たすように品質経営体制の計画活動を行う
  品質経営体制の計画活動を行うことを08年版(5.4.2)ではJIS和訳「品質目標に加えて、4.1に規定する要求事項を満たすために、品質経営体制の計画を策定する」と規定されているが、英文の正しい解釈は「トップマネジメントは、品質経営体制の計画活動が品質目標だけでなく、4.1に規定する要件をも満たすように実行されることを確実にしなければならない」であり
$28-1p、趣旨は「品質目標を満たすように品質経営体制の計画活動を行う」である。
 
  これは、品質経営体制の計画活動では狙いの業務結果が確実に出る、すなわち、業務目標としての品質目標
§4が達成できるように、業務実行の手はずを確立し又は変更しなければならないという意味である。すなわち、品質経営の各業務がそれぞれの決められた通りの業務結果(業務目標としての品質目標)を出すことによって、それらの総合的結果としての品質方針 (5.2)に表される狙いの顧客満足の状態(品質経営の業績目標としての品質目標)が実現するという、規格の品質経営のプロセスアプローチの枠組み§43.3に沿って、品質経営体制の計画の在り方が表わされている。
 
A 15年版: リスク及び機会への取組む処置を計画する
  15年版(6.1.2項)では、品質経営体制の計画活動を行うことをJIS和訳「リスク及び機会への取組みを計画しなければならない」と表しているが、英文の正しい解釈は「リスク及び機会に取組む処置
$80を計画しなければならない」である。「リスク及び機会へ取組む処置」とは、マネジメントレビューの結果で変化する内外の事情(4.1/4.2, 9.3.1 b)項)への対応として決めた「処置」であり、次期の品質経営活動における重点取組み事項(9.3.3項)のことである。15年版では、品質経営体制の計画活動を、これら重点取組みのための処置の実行の手はずを整えることとして表している。
 
  08年版の「品質目標を満たすように…」の品質目標も、マネジメントレビューの結果で変化する内外の事情(5.6.3 f))への対応として決めた次期の重点取組み事項(9.3.3項)である「処置」の狙いの結果のことであるから、15年版の品質経営体制の計画活動も08年版品質経営体制の計画活動も、マネジメントレビューの結論として決めた次のサイクルの品質経営の重点取組みに係わる業務の手はずを整える活動として書かれていることに変わりはない。
 
  15年版(6.2項)では、取組む処置をその狙いを達成するために行わなければならない業務に展開することを「品質目標を確立する」と表し、それら業務の手はずを整える品質経営体制の計画活動を「品質目標を達成するための計画策定」と表している。08年版では、マネジメントレビューの結果の次期の重点取組み事項のしての処置(9.3.3項)を具体的な業務に展開することを「品質目標が確立していることを確実にする」として表し(5.4.1項)、品質経営体制の計画活動をこの品質目標を満たすように業務実行の手はずを整える活動であるとして表している。
H29.8.17 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所