ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§6 マネジメント レビュー  
ISO 9001:2015
ISO9001/14001
規格の論理と用語
33b-03-06
(0) 要約  こちら
 
(1) マンジメント レビュー 
  『マネジメント レビュー』は英文では“management review”であるが、これは一般経営用語としては見当たらない。英語の“management”は日本語では経営管理活動であり$19、“review”は過去を振り返って、例えば何事がなぜ起きたかを「見直す」ことであり$22、“management review”は英文法の群名詞の用法(107)により、過去の経営管理活動を見直すという意味である。つまり、経営管理<マネジメント>活動の実績を見直し、評価する活動のことである$22-1
  
(2) 品質経営<品質マンジメント>の実績評価
 マネジメント レビューは94年版では「経営者による見直し」と和訳されていたが、品質方針及び目標の達成との関連で品質マネジメントの業務実績と問題点を、トップマネジメントが公式に評価することであると定義されていた#19-2。また、00年版では定義が規定されていないが、条文で予め定められた間隔で行なうことと明記し、指針規格(131)は「品質経営体制<品質マネジメントシステム>の適切性、妥当性、有効性及び効率に対する定期的な体系的評価を実施する」ことだと説明している。
  
 すなわち、規格の意図のマネジメント レビューは、一定期間の経営管理<マネジメント>の実績を体系的、総合的に見直し評価、検討する定期的な経営管理<マネジメント>の実績評価の活動である。規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは、その管理/Cに相当する活動であり、その中心は実現した顧客満足の状態(9.1.2項)を組織の品質方針及び品質目標(5.2.1 b)項)に定めた狙いの顧客満足の状態に照らして評価することである。
  
 経営論では、経営管理<マンジメント>は組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を経営戦略として定め、必要な資源を投入し、組織の業務を方向づけ、実行を管理する循環的活動として表されるが、マンジメント レビューはこのマンジメントサイクル§7の組織目的の達成度評価に相当する。
  
 実務的には、一般に1年を単位とする組織の経営管理<マネジメント>活動の期末に行なわれる実績の決算であり、品質経営<品質マネジメント>の年度の業績目標たる狙いの顧客満足の状態の実現の程度を評価し、実現した顧客満足の状態たる業績を確定する活動である。
  
(3) 品質方針及び品質目標の見直しと変更
① マンジメント レビューの目的
 マネジメントレビューは上記(2)のように、一義的に経営管理<マネジメント>活動の成果としての顧客満足追求に係わる業績目標の達成度を評価し判断する活動であるが、その目的は「品質経営体制<品質マネジメントシステム>が引き続き、適当<適切>$24、十分<妥当>$23、効果的<有効>$25あることを確実にする」ことである。この意味は、組織の存続発展に資するという点で適切な顧客満足の状態の狙いが品質方針及び品質目標として掲げられ、その実現を確実にするような業務実行とその管理の手はずが整えられているかどうかを評価して、そのような品質経営<品質マネジメント>活動であるようにしなければならないということである。この規定表現は00、08、15年版共同じであり、94年版でも趣旨は同じであるから、規定の他の内容が変わっていてもマンジメント レビューの意義は初版以来変わっていないということである。
  
 顧客満足の追求により無限持続体として存続発展を図る組織は、時代の変化による組織の内外の事情の変化に応じて狙いの顧客満足の状態、及び、その実現のための業務実行の方法を適切に、適宜を得て変えていかなければならない。規格は、このことが確実に行なわれるように定期的なマンジメント レビューの活動の必要を規定している。マンジメント レビューにおけるこのような品質方針及び品質目標の見直し変更とそれに伴う処置の決定は、゚ロセスアプローチ/PDCAサイクルの継続的改善/Aに相当する。
 
 経営論では、時代の変化に対応して経営戦略§1.2を見直し変更することに相当する。すなわち、組織が無限持続体として存続発展するには、変化する外部環境に組織の業務能力を適応させるよう経営戦略を見直し変更することが必要である。この経営戦略の見直し変更は、マネジメントサイクル§7の中核に位置づけられ、目的達成度の評価に引き続く次のサイクルの計画に関する経営の意思決定のことを指す。
 
 実務的には、基本方針としての品質方針及び品質目標の変更は新事業への進出など余程のことがなければないから、年度末の決算としての狙いの顧客満足の状態の実現の程度の評価を基礎として、内外の事情の変化を見据えて次年度の品質方針及び品質目標(5.2 b)項)、重点施策を決めることに相当する。
 
② 08年版の記述
 08年版ではマネジメント レビューでは「品質方針及び品質目標を含む品質経営体制<品質マネジメントシステム>の変更の必要性の評価を行わなければならない」とマンジメント レビューの目的が明確に規定されている。
 
 00年版指針規格(131)は、時代の変化とそれへの対応の必要性に関して、顧客満足の製品の一貫した供給により無限持続体として存続発展を図る組織は「顧客の必要と期待は変化し、市場競争があり、技術は進歩するから、製品と業務を改善し続けなければならない」と説明している。
 
 また、マンジメント レビューの目的について、「品質経営体制<品質マネジメントシステム>の見直し<レビュー>には、利害関係者の変化するニーズ及び期待に応じて、品質方針及び品質目標を修正することの必要を考慮することを含める」と説明している。規格執筆者のひとり(22)は、マネジメントレビューを組織が事業環境の変化に対応し、その品質経営体制<品質マネジメントシステム>、品質方針及び目標の必要な変更を行なう原動力であると説明している。
 
③ 15年版の記述
 マンジメント レビューの役割に関して15年版は、マンジメント レビューの結論を導く方法論を詳しく規定する一方で、結論が品質方針及び品質目標の見直し変更ととるべき経営施策に関するトップマネジメントの判断<決定>と処置でなければならないというマンジメント レビューの目的の規定が欠如又はあいまいである。
 
(4) 品質方針及び品質目標の見直しの方法論
① 方法論
 時代の変化に対応して品質方針及び品質目標を適切に見直し変更するためには、トップマネジメントの体系的な情勢評価と総合的な判断が必要である。
  
 実務の品質経営<品質マネジメント>でのマネジメント レビューでは、トップマネジメントは品質方針及び品質目標に規定される業績目標の達成度を評価して確定させ、この業績目標達成実績に関係して関連業務の実績を評価して組織の業務実行能力の実態を明らかにし、さらに、顧客満足追求に影響を及ぼした、或いは、その可能性が見込まれる組織の内外の現実及び潜在的な事情を把握することに努める。年度品質方針及び品質目標の決定においては、トップマネジメントはこれらの情勢認識を基礎とし、次年度の組織の収益業績目標を踏まえて、必要であり且つ実現可能な顧客満足の状態の狙いを決め、次年度の品質方針及び品質目標として明らかにすると共に、その実現に必要で実行が可能と考えられる経営施策を年度重点取り組み事項と決める。
 
② 08年版の記述
 トップマネジメントの体系的な情勢評価と総合的な判断が可能とするための検討に必要な業績と内外事情の係わる情報をマネジメントレビューへのインプット(5.6.2項)として規定している。また、品質方針及び品質目標の見直し変更の検討の結果を、どのような観点のトップマネジメントの判断ととることを決めた処置として明確にすることが必要かをマネジメント レビューからのアウトプット(5.6.3項)に規定している。
 
③ 15年版の記述
 マンジメント レビューの役割に関して15年版は、マンジメント レビューの結論を導く方法論を詳しく規定している。すなわち、 トップマネジメントの体系的な情勢評価と総合的な判断が可能とするための検討に必要な業績と内外事情の係わる情報は、08年版と同じ趣旨の事項が異なる表現で9.3.1項に規定されている。
 
 そして、時代の変化に直接係わる組織の内外の事情に関しては、「品質経営体制<品質マネジメントシステム>の意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える外部及び内部の事情<課題>を決定」 (4.1, 4.2項)して、それらの「ニーズと期待<要求事項>を考慮して、品質経営体制<品質マネジメントシステム>がその意図した成果を達成できることを確実にするために取り組む必要のあるリスク及び機会を決定」(6.1.1項)して、「それらのリスク及び機会への取り組みを計画しなければならない」(6.1.2項)として、時代の変化を評価して対応すべき課題を抽出し、品質方針及び品質目標の変更に反映し、必要な経営施策を決定するという方法論を明確にしている。
 
 そして、時代の変化の情報である組織の外部及び内部の事情<課題>の情報を日常的に収集し(4.1, 4.2項)するという方法論も明確である。
 
 しかし、マンジメント レビューの結論(9.3.2項)が時代の変化に対応するための品質方針及び品質目標の変更とそのための経営施策に関する判断と処置であることを伺わせる表現がなく、『リスク及び機会への取り組み』がマネジメント レビューの結論(9.3.2項)としての処置のことであり、その狙いの結果が組織の品質目標(5.2 b)項)を意味するということの直接的記述がないなど、バランスの良くない規定表現となっている。
 
(5) マネジメントレビューの特質
① 品質マネジメントの業績管理
 品質経営<品質マネジメント>は組織の存続発展に必要な顧客満足の状態を追求する経営管理活動であり、実現が必要な顧客満足の状態を明確にし、そのための業務の手はずを整え、日常業務管理としてそれら業務の実行を管理しつつ、狙いの顧客満足の実現を図る。特定期間の狙いの顧客満足の状態はその間の品質経営<品質マネジメント>の業績目標であり、その期間の最後に行うマネジメントレビューの一義的目的は狙いの顧客満足が実現したかどうかの、つまり、業績目標が達成したかどうかの業績評価である。
 
 規格では品質経営<品質マネジメント>の業績目標は品質方針及び組織の品質目標(5.2 b)項)に表され、その達成を図るのに必要な業務の手はずを整え(6.1.2項)、業績目標達成のために管理すべき狙いの業務結果を業務目標としての品質目標として明確にし(6.2項)、この管理ポイントたる各業務の実行の実績を日常的に管理し(9.1.1項)、問題があれば正し(10.2項)、各業務の決められた通りの実行による業務目標の確実な達成によって業績目標の達成を図る。業績目標の達成の評価は、組織の各品質目標の狙いの顧客満足の状態(5.2 b)項)を、実現した顧客満足の状態(9.1.2項)と比較して行なう。
 
 この評価と判断には、関連業務の実行にどのような問題があり、どのように対処してきたか、さらに、顧客満足の追求に係わる外部環境と組織の業務能力がどのような変化しているかのトップマネジメントの認識と判断が関係する。
 
② 品質経営体制<品質マネジメントシステム>の継続的改善
 規格の品質経営<品質マネジメント>では、トップマネジメントは、事業の維持発展に必要な顧客満足の在り方を決め、これを品質方針及び組織の品質目標(5.2 b)項)として明確にし、これを実現するのに必要な経営施策を決める。経営施策に係わる業務実行の手はずを整え、狙いの結果を出すようにその実行を管理し、問題が生じると再発防止の処置をとり、狙いの結果を必ず出すように業務能力を向上させる。時代の変化に対応する新しい組織の品質目標は基本的に現状より高度な、或いは、新規な業務結果を必要とするから、このような改善の品質目標の達成を通じて組織の業務能力は向上する。
 
 マネジメントレビューは品質経営<品質マネジメント>のPDCA/プロセスアプローチ サイクルのC/管理、A/継続的改善に相当し、その結論は次のサイクルのP/計画に反映される。このような品質経営<品質マネジメント>のサイクルの繰り返しによって、組織の維持発展に必要な顧客満足を正しく決め、それを確実に実現するという品質経営<品質マネジメント>の業務能力を継続的に改善していくことが出来る。規格は、このことを品質経営体制<品質マネジメントシステム>の継続的改善(10.3項)と呼んでいる。ここに、規格では品質経営<品質マネジメント>の狙いを達成する業務能力を、品質経営<品質マネジメント>の一連の業務とそれらの実行の手はず、つまり、品質経営体制<品質マネジメントシステム>の目的達成能力と捉えている。マネジメントレビューは、規格の意図の継続的改善を推進し方向づける司令塔である。
 
③ 非日常的活動
 マネジメントレビューは、単なる過去の品質経営<品質マネジメント>の実績の評価ではなく、そのサイクルの締めくくりの時期に、トップマネジメントがその間の品質経営<品質マネジメント>の業務の全体としての実績を振り返り、総合的で体系的に評価するという、非日常の活動である。
 
 品質経営<品質マネジメント>の業務実行には日々に問題が生じ、状況が変化するから、トップマネジメントは日常的にも判断や決定を行い、指示を出している。この中には品質マネジメントに大きな影響を与える重要な決定もある。しかし、品質経営<品質マネジメント>を真に効果的に行なうためにはトップマネジメントは、一定期間毎にこのような日常から離れて、これまでの判断や決定が正しかったかどうかを含めて、品質経営<品質マネジメント>の実行と結果が所期の狙いの通りとなっているかどうか、問題対応が適切に行なわれているかどうかを、改めて体系的、総合的に検討する機会を持つことが必要である。
 
 この非日常性と実績の総合評価という特質に関連して、ISO/TC176商業本(20c)は、マネジメントレビューを「トップマネジメントが日常に起きる個別の問題はその都度解決しながら、一定期間毎にそれら個々の問題から離れて、過去を顧みて全体的にぐるりと見渡す」ことであると説明している。また、94年版の「トップマネジメントによる公式の評価」という定義#19-2の「公式」には、マネジメントレビューが非日常の改まった機会や場で行なわれるという意味がこめられている。

 
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>
H27.1.19 
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
 サニーヒルズ コンサルタント事務所