ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§8
製品及びサービス ISO9001:2015 ISO9001/14001
規格の論理と用語   
33b-02-08
ISO14001
SL共通テキスト
§8-0 概要   こちら
 
§8-1 実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
   
業務実行 ⇔プロセス$2;   サービス活動 ⇔サービスの提供$48-1;     サービス活動の実行 ⇔サービスの提供$48-1;  
    サービスの引渡し ⇔
サービスの提供
$48-1;
 
 
§8 製品及びサービス

(1) 定義
 組織が事業として対価を得るために顧客に引き渡す商品としての製品は、初版以来「製品」と表されてきたが、15年版では「製品及びサービス」となった。
  
@ 製品 (08年版)
 すなわち、08年版までの『製品』は「業務実行の結果」として定義#13pされ、この『製品』が『サービス』『ソフトウェア』『ハードウェア』『素材製品』に分類#13-1pできるとされていた。そして、多くの『製品』が複数の製品分類から成るとし、例えば、自動車は、ハードウェアの本体とソフトウェアの取扱説明書、素材製品の冷却液、サービスの販売員による便宜から成るが、本体が支配的要素であるので普通はハードウェア製品として分類される#13-2pとされていた。
 
 一方、ISO9001規格の規定が対象とする製品は、上記の定義とは異なり、94年版(3.1 参考4)、00年版(1.1 注記1、08年版(1.1 注記1)共に、顧客に提供することを意図してつくった製品に限定される。つまり、事業製品として顧客に引き渡す製品のみが、規定に記述される製品である。94年版では、意図されない製品として「汚染物又は望まれなかったサービス提供の効果(134)」「環境に影響する副産物(3.1 参考4)」が例示されており、不良品や副産物は製品に含めないということである。
 
 また、定義によると「業務実行の結果」はすべて「製品」であるから、製品とは7章の製品実現の一連の業務の結果で得て顧客に引き渡す製品だけではなく、規格の規定する業務の結果はすべて製品である。設計結果の製品(7.3)、購買品(7.4)、製品実現の途中工程の半製品(7.5)も製品である。さらに、営業や設計、品質保証のような製品実現と製品の顧客への引き渡しに関係して顧客との接点で行なわれる業務の結果は、製品分類のサービスという製品である。例えば、苦情や注文変更の受付けや処理(7.2.3)という組織の業務に対しても顧客は一定のニーズと期待を持ち、それが満たされたかどうかが本来の製品に対する顧客の受け止めの顧客満足の程度に影響を及ぼすからである。同様に、顧客所有物の管理(7.5.4)の結果、出荷や配送、その後の顧客の製品使用の支援の業務(7.5.1 f))の結果も製品である。
 
 定義によると、例えば、監視測定、データ分析、是正処置、品質方針の設定、マネジメントレビューの結果も製品である。しかし、これら組織内部で行なわれる業務結果たる製品は顧客の与り知らぬことであるから、規格の対象の製品ではない。これについては、08年版で「製品実現プロセスの結果として生じる意図されたアウトプット」も規格の規定が対象とする製品であるとの註釈(1.1項 注記1 b))が追加された。すなわち、本来の製品ではないが、組織の行なう製品実現に関連する業務の結果の内で、その結果に対して顧客が一定のニーズと期待を持っている場合には規定の対象の製品であることが明確になった。
 
A 製品及びサービス (15年版)
 15年版では、08年版の「製品」は「製品及びサービス」と表されている。そして、『サービス』は「必然的に供給者と顧客の接点で行なわれる少なくともひとつの活動の結果である無形の業務結果」と定義#12されるから、08年版の製品分類のひとつとしての『サービス』の定義#13-3pと同じである。『製品』は「どれひとつも供給者と顧客の接点で行われることがない一連の活動の結果である業務結果」と定義#13されるから、『サービス』以外の業務結果を意味する。また、『製品』にはハードウェア、素材製品、ソフトウェアがある#13-1との注釈も付されている。従って、08年版の業務結果としての『製品』の内の一部だった『サービス』が独立し、範囲の狭くなった『製品』と同格で規格の対象の商品として取り扱われることになったということである。
 
 すなわち、製品分類は08年版と基本的に不変であり、商品としての製品を表す場合に、製品分類のソフトウェア、ハードウェア、素材製品が支配的な場合は『製品』であり、製品分類のサービスが支配的な場合は『サービス』と呼ばれることとなった。この結果の用語「製品及びサービス」は、とりわけサービス業にも適用可能な規定表現の汎用化という15年改定の趣旨が反映された表現であり、規格の意図では「製品及びサービス」というよりは「製品・サービス」であると考えられる。
 
 また、業務実行の結果が製品・サービスであることは定義#12,13から明らかであり、規格の規定の意図の製品・サービスが顧客に提供することを意図してつくり又は実行される製品・サービスに限定されることも、08年版(1.1 注記)を引き継いだ1章 (注記1)で明らかである。規格の規定記述が「製品」から「製品及びサービス」になったことは、規格と規定の意図の解釈や規格取り組みに何の影響を与えるものではない。
 
(2) 製品
 08年版では『製品』を、ソフトウェア、ハードウェア、素材製品、サービスに分類できるとしていた#13-1pが、15年版ではサービスがこの分類から抜けて、実質的にソフトウェア、ハードウェア、素材製品の3分類となった。ここに、電算機システム設計、出版業の製品のプログラムや書籍はソフトウェアという製品であり、機械製作、部品製造、建築業の製品はハードウェアという製品であり、鉄鋼業や化学産業の製品の鉄鋼製品、化学原料、潤滑剤などは素材製品である。
 
(3) サービス
 英語の“service”の意味で規格の意図に関連するものとしては「顧客のために何事かをなすが、品物を作らない事業」「そのような事業上の業務」また「ホテル、レストランや店舗で顧客を支援すること」がある$48 。経済や市場用語としての サービスは「物たる商品に相当する非物質」と定義され、サービス事業は「所有権をもたらさない経済活動である」とも説明される(117)
 
 15年版規格は、これを「必然的に供給者と顧客の接点で行なわれる少なくともひとつの活動の結果である無形の業務結果」と定義#12している。94年版の定義(134)も「顧客のニーズを満たすための、供給者と顧客との接点での活動、及び、供給者の内部活動によって生み出された結果」であったから、規格が「サービス」という製品の特質が顧客との接点における供給者の業務実行にあると見ていることがわかる。
 
 また、94年版の指針規格(139)では、サービス事業も“もの”たる製品を扱っており、サービス事業を有形の“もの”と無形の“サービス”を両極端とする座標軸上の連続的なものと認識するのがよいと説明していた。この説明では、限りなく“サービス”要素の高いサービス事業として法律事務所、限りなく“もの”の要素の高いサービス事業として自動車販売が挙げられ、その中間的なサービス事業の事例として レストランが挙げられている。
 
 ところで、日本語では「サービス」は通常、奉仕、給仕、接待という行為や活動の意味(113)で使われているが、英語でも規格でも行為や活動の結果として顧客に引き渡す無形の製品のことを指す。規格では、サービスは「サービスの提供」という業務の結果であり、「サービスの提供」は有形の又は有形の媒体に納められた製品の「製造」に対応する種類の業務のことである。つまり、自動車が修理された、品物が届けられた、納税申告が代行されたという状態や事実、また、ホテル や レストラン で顧客が睡眠をとり、食事をし、時間を過ごすことを可能にしたことが「サービス」である。この実現のために行った自動車の分解や補修、荷分けや輸送、収支情報の計算や申告書の作成、更には、案内や応接、調理や給仕或いは空間、調度の提供が、それぞれの「サービスの提供」である。この実態からJIS和訳「サービスの提供」は「サービス活動の実行」と和訳するのが適切である$48-1
 
 また規格では、顧客への有形の製品の出荷又は引渡しに相当する無形の製品たるサービス を顧客に引渡す活動は、“delivery of service”と呼ぶ。例えば、修理済の自動車を顧客に引き渡すこと、運んだ品物を依頼先に引渡すこと、作成した納税申告書を顧客に渡すことである。JISはこれも『サービスの提供』と和訳しているが、英語の意味は「サービスの引渡し」である$48-2。なお、ホテル や レストラン、販売や営業、或いは、音楽会や演劇事業など顧客との対面で実行される活動が主体の サービス事業では、「サービス活動の実行」と「サービスの引渡し」が同時である。
 
 規格の概念と表現では、「サービス活動」の実行結果が「サービス」であり、サービス事業ではこの「サービス」を顧客に引渡すこと、つまり、「サービスの引渡し」の結果で対価を得る。サービスの品質とは、自動車修理では迅速さ、技術的又は経済的的確さ、輸送では迅速さ又は期日遵守の程度、品質保持、会計事務所では遵法性、正確さ、ホテルやレストランでは快適さ、安穏さ、料理の味などに関係する。
 
 表現は異なるが規格におけるサービスの概念は、94年版から基本的には変わってはいない。94年版の方が、指針規格「品質マネジメント及び品質システム要素−第2部 サービス の指針」(139)が存在するなど、規格の意図が明確にされていた。但し、サービス分野でのISO9001使用のための商業解説書(24)がISOとITC(国際貿易センター)との共同で2006年に発行されている。
 
   
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H27.6.1 
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