ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§9
運用の計画 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-09
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

   
業務 ⇔プロセス$2; 業務実行 ⇔プロセス$2; 経営管理(活動) ⇔ マネジメント$19; 経営管理体制 ⇔マネジメントシステム$19-1;      サービス活動(実行) ⇔サービスの提供$48-1; 製造及びサービス活動 ⇔製造及びサービスの提供§25.1;  
     製品サービス ⇔製品及びサービス
$92; 製品サービスの実現 ⇔製品及びサービスの提供§9.3;
     製品サービス実現の計画(活動) ⇔ 運用の計画
$28-2;    品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;
     品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム
$19-1-1;  品質経営体制の計画 ⇔品質マネジメントシステムの計画$19-1-1;
 
  
§0.3  目 次

§9.1 運用の計画
§9.2 製品サービス実現の計画
§9.3 製品及びサービスの提供に関する要求事項
 
 
§9.1 運用の計画
(1) 運 用

  「運用」は英文では“operation”であり、手術や軍事作戦、企業活動など多数の人々が参画する組織的な活動の意味であり、日本語では組織内の一連の業務の組織的実行という意味での「業務実行」である
#8。一方、8章は、事業商品の受注から製造又はサービス活動実行、顧客への引渡しに係わる一連の業務に関する規定であり、08年版(7章)で「製品実現」の下に規定される業務と同じである。“operation”は共通テキスト化による種々の経営管理に関する規格に適用するための汎用表現であり、ISO9001の場合は08年版の表現に倣って、しかし15年版では「製品」は「製品サービス」と表現されるから、“operation”は「製品サービス実現のための業務の実行」がよい
 
 
(2) 運用の計画
@ 計 画

  「計画」の英文は“planning”である。日本語の「計画する」が、将来行なうことの方法や手順を企画することであるのに対し、英語の“plan(計画する)”は、方法や手順を企画するだけでなく、いつでも実行できるように準備をしておくことまでを含む。即ち、将来行なうことの用意万端、手はずを整えることである
$28。TC176指針(6)では「(処置や企画された一連の事柄の処理の実行のために)前もって手はずを整える」ことと定義されている。  
 
  また、“planning”は英文法上の動名詞であるから、「計画活動」又は「計画すること」である
$28。すなわち、JIS和訳「計画」は「計画活動」であり、「手はずを整える活動」のことである。
 
A 運用の計画
   「運用の計画」の英文は“operational planning”であり、経営論の「経営計画(business planning)§35.7」と相対する「業務計画」を意味する。経営論で「業務計画」とは、経営計画の経営目標を達成するために事業活動に係わる業務をどのように行うのかの計画である。規格の規定(8.1項)では、顧客満足追求のために必要な業務とその実行の手はずを整える「品質経営体制の計画」に対して、事業商品の個々の製品サービスを実現させるための「業務を計画する」ことである。ここに「計画」は、業務実行の手はずを整えることを意味する
$28
 
   これも共通テキスト化による種々の経営管理に関する規格に適用するための汎用表現である。ISO9001の「業務計画」は、08年版(7.1)の「製品実現の計画」のことであり、15年版では「製品サービス実現の計画」と表すのがよい。「製品サービス実現の計画」は、品質経営体制の計画で整えられた手はずの下で、個々の契約又は注文に対してどのような製品サービスをどのように実現させ顧客に引き渡すかを決めることである。これは、以降の製品実現の一連の業務の実行の手はずを整える活動であり、規格の製品サービスの実現のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの計画/Pに相当する。
 
 
§9.2 製品サービス実現の計画
(1) 品質計画

  94年版までは品質経営管理活動に関連して手はずを整える活動はすべて「品質計画」と呼ばれていた。00年版以降も「品質計画」という用語は残ったが、規定においては「品質経営体制の計画」と「製品実現の計画」との2種類の計画に分けられた。15年版では、「製品」の呼び方が「製品サービス」に変わったため、「品質経営体制の計画」と「製品サービス実現の計画」とになった。
 
? 品質経営体制の計画経営管理体制の確立
 組織が事業活動を行うには、成約又は受注から製品サービスをつくり又は生み出して顧客に引き渡すまでに必要な要員と設備を配置し、事業で顧客に買ってもらう製品サービスを明確にし、どのような方法や条件で製品サービス実現の業務をそれぞれ行うのかが決まっていなければならない。これは、事業体制が確立しているということであり、効率的、効果的に事業を行うためには、事業諸活動を管理する経営管理体制が整ってなければならない。
 
  事業のための製品サービス実現のための一連の業務実行及び管理の手はずを整える活動は、規格では品質経営体制の計画 §5.2であり(6.2項)、これには各製品サービスの製品サービス実現の計画を含む。創業時に行う製品サービス実現と管理の手はずを整える活動は、「品質経営体制の計画」であり、事業継続中の事業場の建設、新立地や拡張、設備更新、新設備の投入などは、「品質経営体制の変更」である(6.3項)。
 
A 製品サービス実現の計画
  規格の意図の「製品サービス実現の計画」(8.1項)とは、品質経営体制の中に整えられた製品サービス実現の一連の手はずを基本として、個々の契約又は注文の特定の製品サービスの目標を決め、製品サービス実現の方法、条件を決めることである。このような「製品サービス実現の計画」の性格について、規格は「品質計画書」の定義の中で「個別のプロジェクト、製品、プロセス、又は、契約に対して、どの手順、及び、どの関連する資源が、誰によって、いつ適用されるかを決める」ことであると説明している#59-1。
 
  例えば、ある条件範囲で運転可能なある設備を導入することは品質経営体制の計画であり、特定の契約又は注文に必要な目標特性の製品サービスをつくり上げるのに必要な設備運転条件を決めることが製品サービス実現の計画である。同様にある特性範囲の製品サービスを製品サービス実現することができる状態を確立することは品質経営体制の計画であり、特定の契約又は注文に対して、顧客のニーズと期待を満たすためにどのような製品サービスの特性でならないか、そのために必要な製品サービス実現の方法、条件を決めるのが製品サービス実現の計画である。
 
 
(2) 製品サービス実現の計画
  製品サービス の実現の計画では、個々の契約又は注文で顧客に引き渡す製品サービス が顧客のニーズと期待を満たし狙いの顧客満足の状態の実現に適うものであるように、製品サービス の仕様や品質及びその他の事項を決め、その製品を製造し、又は、サービス活動を行い、このような製品サービス を顧客に引き渡すことができるように、行うべき業務とその方法、管理基準、合否判定の方法や基準を決める。製品サービス実現の業務とは、契約又は受注から製品サービスを顧客に引渡すまでの一連の業務のことを指し、これには引渡し後に狙いの顧客満足の状態の実現に関連して行う活動である「引渡し後の活動」(8.5.5項)が含まれる。
 
  規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルに基づく表現(4.4.1項)では、製品サービス実現の計画活動は、契約又は受注に対する製品サービスの目標としての製品サービス実現の業務の出力を決め(a))、その実現に必要な業務とそれらの順番と相互関係を決め(b))、各業務の実行と管理の手順を確立し(c))、必要な要員や設備などの資源を用意する(d),e))という活動である。8.1項の規定では、製品サービスの目標を決め(a))、その実現に必要な製品サービス実現の業務の管理基準と製品サービスの合否判定基準を決め(b))、必要な資源を用意する(c))と表わされている。
 
  製品サービス実現の計画を行うとは、個々の契約又は受注に対して、顧客のニーズと期待を満たし、組織の狙いの顧客満足の状態の実現に適うと判断される製品サービスの狙いの仕様や品質及びその他の事項を決めることと、その製品サービスをつくり又は生み出して顧客に引渡すために必要な一連の業務とその方法や条件を決めることを指す。このような製品サービス 実現の計画で整えた手はずに則って、決められた通りにすべての関係業務が実行された場合は、組織の意図を逸脱した不良や異常な製品サービス が顧客に引き渡されることはなく、また、引き渡した製品サービス が組織の意図した通りの満足感で顧客に受け入れられる。
 
 
 
(3) 製品サービス実現の計画活動の態様
@ 計画の態様

  上記(2)Aのように、個々の契約又は注文に対する製品サービス実現の計画とは一般に、品質経営体制の一部としての確立した製品サービス実現関連業務の実行の枠組みの範囲の製品サービスの仕様や品質及びその他の事項、或いは、業務やその実行の方法、条件、基準に基づいて、当該の製品サービスに適したものを選ぶ、又は、特定する活動である。
 
  しかし例えば、店頭物品販売業では物品毎に確立した製品サービス実現関連業務の実行方法に則って必要な業務が行われ、注文毎に新たに製品サービス実現の計画活動を行うことはない。一方、大規模なプロジェクト型事業では個々のプロジェクト毎に成約から設計、工事、引渡し、操業支援まで一連の業務の手はずをほとんど一から整えるというような、事業体制確立に近い製品サービス実現の計画活動が行われる。これらは極端な事例であるが、個々の製品サービスの製品サービス実現の計画の活動の態様は、製品サービスの性格、供給方法の違いなど業種業態によって様々である。
 
  TC176の中小企業向け解説商業本の96年版(20.1)は、個々の製品サービスに対する製品サービス実現の計画の活動の態様を3つに類型化している。すなわち、製品サービスの成約又は受注が日常的で反復性の強い事業では、製品サービス実現の計画活動は既存の手順と資源の選択だけとなる。常に新規な注文であり、又は、プロジェクト受注である事業では、その度毎に新たに事業体制確立に近い製品サービス実現の計画活動を行うことが必要となる。更に、通常の成約又は受注には製品サービス実現の計画活動を行わず、定例的でない製品サービスの受注の時だけ製品サービス実現の計画を行えばよい事業もある。
 
A 品質計画書の態様
  94年版(4.2.3) の「品質計画」の概念が00年版では「品質経営体制の計画」(5.4.2)と「製品実現の計画」(7.1)に分けられたのであるが、個々の契約又は注文の「製品実現の計画」活動の結果を表す文書は94年版のまま「品質計画書」と呼ばれる。「品質計画書」の定義
#59も94年版と00年版で実質的に違いはない。ただし、94年版(4.2.3)では「品質計画書」の作成が必要と規定されていたが、00年版にはその存在を示す註釈があるだけである(7.1項 注記1)。
 
  定義によると「品質計画書」とは、品質経営に関してある特定の業務結果を出すための一連の業務とそれらの実行の手はずを規定する文書であるから、個々の契約又は注文の製品サービス実現の計画活動の結果を表す文書である。品質計画書には、狙いの顧客満足の実現に資するよう定めた仕様と品質の製品サービスを顧客に引渡すという業務結果を出すためにどのような業務をどのように行うかが規定されている。
 
  品質計画書は、これらのことをすべて記述した単一の文書であるとは限らない。これについて、94年版(4.2.3 参考8)では品質経営体制を構成する文書化された手順のどれを適用するかを記述する形の文書でよいとされ、00年版では品質計画書ではしばしば、品質マニュアルの部分又は手順書が引き合いに出されると説明されている
#59-2-2。これは品質計画書が、当該製品サービスの狙いの仕様や品質及びその他の事項、及び、その実現に必要な工程とその順番を記述することが中心で、具体的な業務実行の方法や条件は既存のどの手順書のどの部分のどの事項を適用するのかを記述するという形がとられることが多いということを指している。
 
  規格の表現では、製品サービス実現の計画活動の結果の文書たる「品質計画書」は、品質計画書と呼ばれる文書と、それに引用される他の様々な文書から成る。00年版解説書では「品質計画書」の事例として、工程計画書、製造又はサービス提供日程計画書、資源調達及び日程計画書、検証/検査・検査計画書、管理計画書、手順書、作業手順書など
(22j)、また、プロジェクト実行計画書、 開発計画書、生産計画書、調達計画書、保守保全実行計画書、管理又は検証計画書、施工計画書、試運転計画書、実績評価計画書など(23)が挙げられている。
 
 
(4) 製品サービスの品質目標
  15年版では「品質目標」は「品質に関連する目標」であり
#22-2、ここに「目標」は「達成すべき結果」である#22から、「品質に関連して達成すべき結果」という意味である。00年版の「品質」は実質的に顧客満足度の意味であり(2)、品質経営のすべての業務は事業維持に必要な顧客満足の追求に関係する。従って、規格では品質経営のすべての業務の出力の狙い、つまり、業務の狙いの結果は「業務実行の品質目標」であり、業務実行の結果が製品サービスである場合には「製品サービスの品質目標」でもある。
製品実現の計画により決める個々の契約又は注文に対する製品サービスの仕様や品質及びその他の事項の狙いのことを、08年版(7.1 a))では「製品の品質目標」と表わすが、15年版では「製品サービス要件」である(8.1 a)項)。
 
   
§9.3 製品及びサービスの提供に関する要求事項
@ 製品及びサービスの提供
  8.1項ではJIS和訳「製品及びサービスの提供に関する要求事項」として「製品及びサービスの提供」という表現がある。この場合の「製品及びサービスの提供」の英文は“provision of products and services”であるから、「製品及びサービスを提供する」という意味である。そして、この場合の規定「製品及びサービスの提供に関する要求事項を満たすために必要なプロセスを計画する」は、08年版の規定「製品実現のために必要なプロセスを計画する」が15年版で書き直されたものである。これらのことから、8.1項の「製品及びサービスの提供」とは、組織内で受注から製造又はサービス活動の実行によって製品サービスをつくり又は生み出して顧客に引き渡す活動を意味する08年版の「製品実現(product realization)」を意味している。従って、「製品及びサービス 」を事業商品の呼称としての「製品サービス」と表して
$92、「製品サービスの実現」と表すのが適当である。
 
  なお、1章(a)項)にも「製品及びサービスを提供する」という表現があり、英文も“to provides products and services”と同じである。こちらの「提供」は、文脈から、本来の“provide”“provision”の意味の、事業として顧客に提供するという意味で用いられている。この場合は「 を提供する」と和訳するのが適当である。
 
A 製品及びサービスの提供に関する要求事項
  「要求事項」は「必要条件」であるから
$1、「製品及びサービスの提供に関する要求事項」は「製品サービス実現の要件」である。これは、製品サービス実現のために組織が満たさなければならない必要条件であり、実務的には製品サービス 実現の方法のことである。規格の表現では、製品サービス 実現のために実行が必要な一連の業務とそれらの実行の手はずのことであり、どのような手順(業務方法及び管理基準)と資源で製品サービス実現の業務を行うのかということである。「製品サービス要件」は、どのような製品サービスであるかであり、「製品サービス実現の要件」とは、そのような製品サービスをどのように実現させるかである。
       H30.10.9
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サニーヒルズ コンサルタント事務所