ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§10
顧客満足 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-10
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

     
製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1; 外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題#65;
    品質経営(活動) ⇔
品質マネジメント$19-0;
 
  
§0.3  目 次

§10.1 顧客満足
§10.2 顧客フィードバック
 
 
§10.1 顧客満足
 (1) 顧客満足

  規格は「顧客満足」を「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方」と定義している
#17。製品サービスに対する顧客満足とは、顧客が製品サービスをどの程度気に入ったかであり、製品サービスの機能や性能やその品質が自分の想いのニーズや期待にどの程度合致したと顧客が感じたかである。組織の製品が自分の想いに合致し、或いは、超えたと顧客が感じるほど顧客の満足感が高く、その反対では顧客の満足感は低く、或いは、不満を抱く。 マーケティング論では、気に入るかどうか、製品が自分の想いに合致したかどうかの顧客の判断は一般に科学的、論理的というより多分に感覚的、情緒的であるとされる。
  
  94年版までは、不良品を出すか出さないかで、組織の製品サービスに対する顧客満足度が決まるとされてきた。00年版ではその執筆時期の、不良品の激減と世界的競争の激化という状況に対応して、当時に確立しつつあったマーケティング論における顧客満足の概念がとりいれられて、顧客満足の継続的な向上が規格の品質経営の目的となった。
 
(2) 顧客満足の意義
 規格の「顧客満足」とは、製品サービスを受け取って初めて知る自分の想いのニーズと期待が満たされたかどうかの顧客の判断であるが、本質は顧客が次も製品サービスを買い或いは取引を継続するかどうかの顧客の判断に係わる顧客の想いのことである。
 
  顧客はその感じる相対的な満足感が高い製品サービスを次にも買い、そのような組織を次の取引先として選択する。顧客満足度が相対的に低いと感じられた製品サービスを供給する組織は、次回には製品を買ってもらえない、あるいは、供給者の地位を失う。組織が、所要の販売量を達成し、又は、供給者として所要の地歩を固めることができているのは、その製品サービスが、或いは、供給者としての組織の仕事振りが顧客に一定以上の評価を受けていること、つまり、顧客の想いの中での顧客満足度が他の競合組織と比較して高いという状態が実現しているからである。
  
  つまり、品質経営で実現を図るのは、個々の製品サービスを受け取り、使用又は利用した顧客が次も買おうと思う程に製品サービスを気にいってもらうことだけではなく、その積み重ねによって組織とその製品サービスに対する顧客或いは市場の良い評価を確立することである。従って、規格の品質経営で組織の存続発展に必要として決める顧客満足の状態とは、不良品を出さないことを含み、顧客に製品サービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品サービスに対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。
  
 組織の事業の存続発展は、製品を顧客が買い続け又は取引を続けてくれるかどうかにかかっている。買ってくれるかどうかは顧客が組織と製品を気に入ってくれるかどうかで決まる。どの市場、どの業界にも競合組織が存在する。規格の顧客満足の意義は、一般消費者向け製品サービスだけでなく、いわゆる一件契約型や下請け型、プロジェクト型、業務受託型など如何なる形態にも当てはまる。
 
 狙いの顧客満足とは例えば、業界一の高品質の製品を供給する組織であると顧客に評価され信頼されるという状況であり、この高品質はさらに機能に優れた製品、欠陥のない製品、客層に合わせた製品、使用の容易な製品、短納期などのように具体化される。これらの実績について顧客がどのように評価し受け止めているかの総合的な顧客の評価が規格の意図の顧客満足である。
 
 事業組織の実務では事業活動の最終的業績目標は収益であり、狙いの顧客満足の状態とは狙いの収益を挙げるために必要な製品サービスの売上又は取引高を達成するのに必要な製品サービスに対する顧客の好感、満足感、安心感、信頼感のことである。契約又は注文に対してこの狙いの顧客満足の状態に適う製品サービスを顧客に引き渡すことによって、以降もその売上又は取引高を確保できる条件が整うことになる。
 
  なお、下記§10.2のようにマーケティング論では、顧客が製品を選ぶ基準は、製品そのものの価値のみならず組織に対する総合的な印象に支配されるとされるが、規格で取り上げるのは製品サービスに対する顧客の評価だけである。しかし、顧客満足追求の対象は事業商品としての製品サービスだけでなく、これに関連する顧客との接点業務(8.2.1項)において顧客に提供するサービスを含む。
  
(3) 顧客満足の追求
  一般に顧客はどのような製品が技術的、経済的に実現できるのかも知らない。例え顧客がそのニーズと期待を明示したとしても、顧客満足が得られるという観点からの真の顧客のニーズと期待は、明示の要求の範囲を超えるものである。顧客が製品を受け取り、使用又は利用してどのように感じるかは一般に、顧客がそのニーズと期待をどの程度明確に認識していたかには無関係である。顧客のニーズと期待はあくまで組織が探り、推し測るべきものである(8.2.2項)。しかし、顧客のニーズと期待がどの程度満たされたかを判断するのは、その製品サービスを受け取り、使用又は利用した顧客である(9.1.2項)。
  
 このような顧客満足の本質を指針規格は、「顧客要求事項は顧客との契約によって規定されることもあり、組織自体がこれを決定することもある。いずれの場合も顧客が最終的にその製品を受け入れ可能かどうかを決定する」
(131)、或いは、「顧客要求事項が顧客と合意され、満たされている場合でも、それが必ずしも顧客満足が高いことを保証するものではない」#17-3と説明している。
 
 また、競争社会ではどの組織にも競合組織が存在するから、顧客の創造には競合組織以上の顧客満足を実現することが必要である。08年版指針規格
(131)は競争社会の中の顧客創造について、「顧客のニーズや期待は変化し、かつ、競争と技術の進歩があるので、組織には製品及びプロセスを継続的に改善することが求められる」と述べている。これは同時に、顧客満足の追求の本質が差別化にあることを示唆している。
 
 また、品質マネジメントの原則のひとつの「関係性管理」は08年版では「供給者との互恵関係」であり
(131)、組織がその供給者との間に「互恵関係」を築くべきことが挙げられている。その狙いを「組織及びその供給者は独立しており、両者の互恵関係は両者の価値創造力を高める」ことと説明している。これは、顧客がその個々の要求に従うのではなく、独立して顧客の満足を高めるよう努力する供給者の製品サービスを選ぶということを意味している。組織はこのような供給者としての努力を他の供給者以上に行うことで、その製品サービスを顧客に気に入ってもらうことができ、顧客の受けとめの顧客満足を高めることができる。
 
(4) 品質経営の業績としての顧客満足
 特定期間の収益目標として表される組織の業績目標を達成するのに必要な顧客満足の状態は、規格では品質方針及び組織の品質目標(5.2項)に表される。この顧客満足の状態が品質経営の業績目標であり、品質経営の業績の評価は、実際に実現した顧客満足の状態を、品質方針及び組織の品質目標に定めた狙い顧客満足の状態と比較して、その達成度を判定することである。
 
 実務の経営管理活動の成果としての業績の評価は、特定期間又は時点での業績目標を確実に実現させるための業績管理の手段として行い、また、特定期間又は時点の業績を確定するために行う。実務的には、前者は日常業務管理の結果の評価に基づく業績目標達成状況の推定、或いは、達成度予測のためであり、問題があれば正す処置をとる。後者は、品質経営活動のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cであり、定められた特定期間での業績目標の達成度の確定のための評価であり、この結果とそれに伴う業務実行能力の評価は次の特定期間の業績目標の決定の際の基礎となる。この評価は、顧客満足の監視 (9.1.2項)とデータ分析(9.1.3項)に基づくマネジメント レビュー(9.3項)の活動の主題である。
 
 顧客による組織と製品サービスに対する評価としての顧客満足の状態には多様な側面があり、その如何は多面的に判断することが必要である。 狙いの顧客満足を表し、監視測定する指標は当然、ひとつではなく、製品や顧客が多様な場合は指標も複雑になる。これら指標には数値で表すことができるものもあるが、定性的又は記述的なものもある。売上、市場又は顧客占有率、逸注件数、苦情件数、補償要求受付件数、顧客提示の製品使用成績などは、分かり易い指標である。日常業務での製品サービスの性能や材料特性の水準、納品時間分布、サービス業では顧客の待ち時間や混雑の実績などから推定できる場合もある。体系的なアンケート調査の分析や各種の情報から抽出した顧客の要望や問題意識も指標として用いられる。顧客による監査の結果、個々の苦情対応に対する顧客の反応、営業活動における顧客の評価などに、顧客の真の評価が示されている。これらの情報の前年や近年の傾向の比較評価が実務的に大切である。
 
 例えば狙いの顧客満足の状態を基本品質方針で世界一品質とし、当該期間に特別な懸案も変化もないとすると、業績目標と実績はクレーム件数、顧客使用成績、新規注文数、顧客による監査結果、営業情報における顧客の評価、競合組織の動向と顧客の評価などを指標とし、実績評価はこれら指標の前年の実績や近年の傾向と比較しての総合的判断である。
 
(5) 品質経営の戦略としての顧客満足
 経営戦略を基礎として組織の永続的な存続発展を図る経営管理活動は、その方法論から経営戦略策定の管理と経営戦略遂行の管理の2種類の循環的活動から成ると考えることができる。前者は戦略を策定し、時代の変化に応じて見直しを行って、戦略を常に組織の存続発展に必要で十分な適切な状態に維持する経営戦略の管理であり、後者は戦略の遂行のために必要な資源を投入し、業務を方向づけ、決められた通りに業務が実行され決められた通りの結果が出されることを確実にする日常業務管理を通じて、狙いの顧客満足の実現を図る業績管理である。
 
@ 経営戦略策定の管理
 無限持続体としての顧客満足の追求に関する経営戦略の策定と見直しの管理は、マネジメントレビュー(9.3項)による品質方針及び組織の品質目標の策定と見直し変更(5.2項)として規定されている。経営論では経営戦略の見直し変更は、変化しつつある又は変化が予想される組織の事業を取り巻く外部環境と組織の業務能力を均衡させるように行うとされているが、これは規格では「外部及び内部の事情」(4.1項)と「利害関係者のニーズと期待」(4.2項)の情報から対応すべき課題を「取り組む必要があるリスク及び機会」(6.1項)として抽出し、品質方針及び組織の品質目標を変更する。
 
A 経営戦略遂行の管理
規格では、経営戦略として実現を図る顧客満足の状態は、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)として表され、上記(4)のように一定期間の業績目標として日常業務の実行の中でその達成を図るという形で、戦略の遂行が管理される。
 
§10.2 顧客フィードバック
  「フィードバック」は英文では“feedback”である。これは、物や仕事の出来ばえの良さについての情報
(101)というような意味で広く使われているが、元々は機械の運転制御の用語であり、「修正や調節のために出力を入力に戻すこと」を意味する(103)。例えば、炉の加熱において炉内温度を刻々と測定し、その情報によってバーナーの燃焼強さを調節して、昇温速度を所定の通りに制御する場合、炉内温度(出力)の情報をバーナー燃焼強さ(入力)に“feedback”するのである。
 
 「顧客からのフィードバック」は英文では“customer feedback”であり、品質経営の業務実行の手はず(入力)の結果である顧客満足の状態の実績(出力)の情報を指す。製品が顧客にどのように受けとめられたか、つまり、製品サービスがどのように顧客に受けとめられ方に関する情報(9.1.2項)のことである。この出力を元にして、より良い出力を得るために、業務の仕方(入力)を変更する。これには、苦情や顧客での製品使用成績のような顧客満足の実績だけでなく、将来の顧客満足に影響する可能性のある顧客や市場の必要と期待の変化、及び、競合相手や技術進歩の動向に関する情報を含まなければならない。 マネジメントレビュー に供するこれらの情報は、入手或いは収集した情報に加えて、それらを現在と将来の顧客満足に関して分析評価し(9.1.3項)、問題点や対応策を明確にしたものでなければならない。
 
H28.11.11 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所