ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§12
改善 ISO9001:2015 ISO9001/14001
規格の論理と用語   
33b-02-12
ISO14001
SL共通テキスト
§0 概要   こちら
 
 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
業務 ⇔プロセス$2; 経営管理 ⇔マネジメント$19;  
     経営管理体制 ⇔マネジメントシステム
$19-1;  実績 ⇔パフォーマンス$31;  実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31;
    修正処置
⇔修正
#42p;  製品サービス ⇔製品及びサービス$8.1;   体制 ⇔システム$3; 必要条件 ⇔要求事項$1; 
    品質経営 ⇔品質マネジメント
$19-0; 品質実績 ⇔品質パフォーマンス$31; 要件 ⇔要求事項$1
 
 

§12.1 業務実行管理
  決められた通りに業務を行い、決められた結果を確実に出すようにする実務の業務実行管理の活動は一般に、業務結果の情報を収集、把握し、これを狙いの結果の許容範囲を示す管理基準に照らして評価し、必要な結果が得られたどうかを判定する実績評価の活動$11と、決められた最終的な業務結果を確実に出すようにするための不合格となった業務結果や製品を処理する活動と、問題の再発を防止する活動とから成る。
 
  規格では、この業務実行管理の活動をそれぞれ、前者をJIS和訳「パフォーマンス評価」の「実績評価$31 」(9章)、後二者を不適合の処理(10.2項)と是正処置(10.2項)の「改善」(10章)として表している。規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは、実績評価は管理/Cに相当し、不適合の処理と再発防止の活動は改善/Aに相当する。
 
  実務では、決められた通りに業務が実行され決められた結果が確実に出るようにする業務実行管理には、業績管理と業務管理の2種類がある。前者は、組織の存続発展に必要な狙いの顧客満足の状態の実現を図る経営管理活動の業績管理であり、後者は、これら顧客満足の状態の実現を図るために必要な各業務がそれぞれに決められた結果を確実に出すようにする業務管理である。これらは規格では、前者が品質方針に基づく組織の品質目標(5.2 b)項)の達成の管理のプロセスアプローチ /PDCAサイクルであり、後者はその鍵となる関連業務(6.2項)の品質目標の達成の管理のプロセスアプローチ/PDCAサイクルとして表される。狙いの顧客満足の状態は関連する業務が狙いの結果を達成することにより実現する。
 
 
§12.2 改善
(1) 改善
  「改善“improvement”」は物事をより良いものにすること(101)という意味であり、15年版では「実績を高める活動」と定義される#38-1。08年版の定義では「必要条件を満たす能力を高める活動」である#38p。ここに、JIS和訳「高める」は英文では“enhance”であり、価値や品質、望ましさ、魅力を高めるという意味(110)(103)である。
 
  規格の10章に規定の「改善」とは、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理の活動において、実績評価(9.1.1項)によって不合格と判定された業務結果が決められた狙いの結果となるようにその質を高める活動である。定義によると規格の「改善」のこのような概念は08年版でも同じである。ここに「質」とは、決められた狙いの結果になっているかどうかの観点での実績の質のことである。「改善」は、不合格と判定された業務結果によって最終的な業務結果や製品サービスが狙いの通りでなくなること、そして、その結果として狙いの顧客満足の状態の実現に支障が来たすことになるのを防ぐために、その不合格の業務結果に対して必要な処置をとることである。
 
  10.1項の注記には、「改善」の活動或いはその方法論として、修正処置、是正処置、継続的改善、現状を打破する変更、新機軸、改良が挙げられている。
 
 
(2) パフォーマンスの改善
  JIS和訳「パフォーマンス」は「実績」という意味である$31から、同「パフォーマンスの改善」は「実績の改善」である。規格では「改善」は上記(1)のように「実績を高める活動」であるから、「実績の改善」は「改善」と同義語である。規格の「実績」は、狙いの業務結果が出ているのかどうかの観点での「実績」のことである§11.1。規格の意図の「実績の改善」は、実績たる業務結果が狙いの業務結果となるように業務結果の質を高めることであり、業務結果又は製品・サービスの質自体を高めることではない。
 
  「実績の改善」とは、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理§11.1の活動において、実績評価によって不合格となった業務結果の処理の活動である。「実績の改善」は、狙いの通りでない業務結果によって最終的な業務結果や製品サービスが狙いの通りでなくなることを防ぎ、その結果として狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことになるのを防ぐために、狙いの通りでない業務結果に対して処置をとることを意味する。
 
  すなわち、業務実行管理の実務における実績評価§11.2では、実際の業務結果である「実績」を決められた狙いの結果を表す合否判定基準或いは管理基準と比較して業務結果の適否或いは合否を評価判定する。これにより狙いの業務結果ではないと判定された業務結果は、狙いの業務結果、又は、最終的に狙いの業務結果となるようにその質を高めるか、又は、狙いの業務結果としては取り扱うことのないようにするかの処置をとる。
 
  実務では、実績評価で不合格と判定された業務結果は一般に不良、異常と呼ばれ、例えば再加工、補修などにより狙いの業務結果の状態に修正するか、例えば後工程の条件を特別に変えて最終的な業務結果の時点で狙いの業務結果が得られるようにするか、例えば半製品の降格、振替え、廃棄などにより最終的な業務結果の適否、合否に影響を及ぼさないようにする等の処置をとる。その上で必要により問題の再発を防止する処置をとる。
 
  規格では、実績評価で不合格と判定された業務結果は不適合(10.2.1 a)項)であり、不適合の処理の方法、つまり、「改善」の手法としては、不合格と判定された業務結果又は製品をそのままで後工程に送ったり、後工程で使用されることを避ける修正処置 #42pと、業務実行の方法や条件を変更して同じ問題の再発を防止するように図る是正処置#40を、10.2項に規定している。
 
  さらに規格は、下記のように、適宜見直し変更する品質方針と組織の品質目標(5.2項)の下に品質経営活動のプロセスアプローチ/PDCAサイクルを繰返すことによって、組織の維持発展に必要な顧客満足の状態を確実に実現できる品質経営の業務能力の向上を図ることを「継続的改善」の活動#38と呼んで「改善」の活動とみなして、10.3項に規定している。
 
  なお、08年版では規定表現において修正処置は改善の処置としては扱われていなかった。また、08年版までは、実績評価によって、狙いの結果が将来に出なくなる可能性があると考えられる場合に実績が確実に狙い通りとなるように業務実行の方法や条件を変更することによりそのような事態を未然に防止する予防処置#40-2の規定があったが、15年版では経営管理上の予防処置がリスクと機会への取り組みという規定(6.1項)に置き換えられると共に、初版以来の品質管理上の手法としての予防処置の規定がなくなった。
 
 
(3) 品質マネジメントシステムの有効性の改善
  JIS和訳「品質マネジメントシステム」は「品質経営体制」の意味であり§2、これは規格の概念では、必要な狙いの顧客満足の状態の実現を図る品質経営 活動がそれに則って行われることになっている、業務の手順や方法、要員の配置や設備等々の一連の手はずの集まりである。このように手はずを整える活動は規格では「品質経営体制の計画」である§5 (6.1項)。
 
  品質経営体制は、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態を一貫して実現させることを図る品質経営の実行体制であるから、その有効性とは狙いの顧客満足を実現させることができるかどうかの観点での有効性である。ここに、 規格の「有効性」は、どの程度に決められた通りに業務が行なわれ決められた通りの結果が得られたか#4という意味である。従って、「品質経営体制の有効性」とは、品質経営体制の手はずに則って行われた品質経営の業務がどの程度に手はずの通りに実行されたか、手はずの狙いの結果が得られたかという観点からの手はずの有効性を意味する。
 
  決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すようにする業務実行管理§11.1の活動における実績評価(9.1.1項)によって、ある業務の実績が狙いの業務結果を満たしていないとすると、その業務のために整えた手はずが狙いの結果を出すという観点で有効でなかったということである。これは実務的には、手はずが狙いの業務結果を出すには技術的に適切でなかった、手はずの通りに業務が行われるようにする管理の手はずが適切でなかったという理由が考えられる。
 
  規格では上記(1)のように「改善」は「実績を高める活動」であるから、「品質経営体制の有効性の改善」とは品質実績評価に基づく「品質経営体制の有効性」の評価によって見出された、狙いの業務結果を出すという観点からの問題の手はずを、狙いの業務結果を確実に出すようにその手はずの質を高めることである。実務的には、不合格と判定された業務結果の原因となる手順や資源など業務実行の手はずの不備を、狙いの業務結果が確実に出るように改善することである。この手はずの改善は規格では「品質経営体制の変更」である(6.3項)。
 
 
§12.3 継続的改善
(1) 継続的改善
  「継続的改善」は規格の「改善」の方法論のひとつであり(10.3項)、定義によると「改善」を反復的に行うことである#38。08年版(8.5.1)では、品質経営体制の有効性の継続的改善を「品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメントレビュー」を通じて行うべきことを規定しており、15年版の「継続的改善」の定義の注記では「目標を設定し、改善の可能性を見出す活動は、監査所見と監査結論、データの分析、マネジメント レビュー、又は、他の手段を用いる反復的活動であり、一般に是正処置と予防処置のきっかけとなる」と説明されている#38-1
 
  これらから、継続的改善の特徴の「反復的活動」が品質経営のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しを意味し、継続的改善が日常業務管理や業績管理の実績評価で生じた問題への対応ではなく、品質方針と組織の品質目標(5.2項)との結びつきの中で行われる戦略的な問題対応としての「改善」であることがわかる。これは、規格の品質経営の枠組みでは、マネジメント レビュー(9.3項)よる品質方針及び組織の品質目標の見直し変更と、それに基づく経営施策の決定(9.3.3項)と、それへの取り組み(6.1.2項) と業務目標と実行計画(6.2項)への展開による「改善」の活動である。
 
  00年版指針規格は、「顧客のニーズと期待は変化し、かつ、競争と技術の進歩があるので、組織には製品及び業務を継続的に改善することが必要である」と、継続的改善の実務的な意義を述べている(131)。すなわち、継続的改善とは、 組織の維持発展に必要な顧客満足の状態を確実に実現できる品質経営の業務能力の向上を図る「改善」であり、組織の経営戦略を時代の変化に適合させて無限持続体としての存続発展を図るという品質経営の業績追求のための「改善」の活動であるから、この「改善」は実務では経営管理活動を行う目的そのものである。
 
(2) 品質マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性の継続的改善
  JIS和訳「適切性、妥当性、有効性」は英文では“suitability, adequacy, effectiveness”である。“suitability”は目的にあっているかどうかであり、ふさわしいとか適当かというような意味であり$24、“adequacy”は十分であるとか不足がないとかの意味である$23。“effectiveness”は意図した通りの結果が得られるかどうかであり$25、規格では「活動が計画通りに実行されて、計画通りの結果が得られた程度」と定義される#4。すなわち、「品質マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性」は、品質経営の業務の実行の手はずが、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態の確実な実現を図るという目的に適当であるか、実現を図るために不足なく十分であるか、そして、実際に実現を目指して業務が行われ、実現しているかということである。
 
  規格では、品質経営に関連する業務が整えられた手はずの通りに実行されて狙いの業務結果が出て、それらの総合的結果として狙いの顧客満足の状態が実現する。トップマネジメントは、組織の存続発展に必要な顧客満足の在り方を決めて品質方針に明らかにする。品質経営の各業務はこの実現を図るようにその手はずが整えられ、手はずに則って決められた狙いの業務結果を出すように実行される。
 
  業務実行の手はずが狙いの業務結果を出すのに適当でなく十分でなければ、また、業務が手はずに則って狙いの業務結果を出すように効果的に行われなければ、必要な狙いの業務結果は得られず、狙いの顧客満足の状態は実現しない。また、品質方針が真の顧客のニーズと期待に対応するものでなければ、所定の通りに業務が実行されて狙いの組織の想いの顧客満足の状態が実現したとしても、製品・サービスは顧客に受け入れられず、組織の存続発展に必要な売上又は取引額を挙げることができない。
 
  規格では、このような状態は、品質経営体制が有効でないと表現する。逆に、顧客のニーズと期待を正しく読み取って狙いの顧客満足の状態が決められ、業務が狙いの結果を出し、狙いの顧客満足の状態が実現している状態が、品質経営体制が有効な状態であり、このような有効な品質経営体制が機能している組織は「顧客のニーズと期待や適用される法規制を満たす製品を一貫して提供する」ことができる (22)。規格は適用範囲(1章)のa)項で、規格の品質経営体制に関する規定を満たすことが、このような品質経営 能力を有する組織であることの証拠となると、規格の規定の意義を説明している。
 
  このような「品質経営体制の有効性」とは、品質経営の手はずが適当で十分であり、手はずに則って業務が効果的に行われている結果である。規格では継続的改善に関して、08年版の8.5.1, 4.1項では「有効性」、5.6項では「適当で十分で有効」と表され、15年版では本項と9.3.1項では「適当で十分で有効」であるが、4.4.1項ではずばり「品質経営体制の継続的改善」と表されているように、表現が一定しない。このことは、「適当」「十分」という観点が、つまるところは結果が有効かどうかで評価されるものであり、3つの観点が「有効性」に集約され得ると考えると、単なる表現の不統一の問題と受けとめてよい。
 
  すなわち、品質経営体制の継続的改善も、品質経営体制の有効性の継続的改善も、品質経営体制が適当で十分で有効であるための継続的改善も、同じことである。いずれの表現の継続的改善も、事業を取り巻く内外の事情の変化(4.1, 4.2項)にもかかわらず、組織が顧客のニーズと期待や適用される法規制を満たす製品を一貫して提供する能力を維持することができるように、組織の存続発展に必要な狙いの顧客満足の状態の決定とその実現の支障となる業務実行の手はずの問題点を経営課題としてその解決に取り組むことを意味する。
 
  なお、品質経営が組織の維持発展のための活動である以上、効率性を無視することはできない。規格は、狙いの顧客満足の実現に必要な業務実行の要件だけを示すものであるが、組織がそれら要件を満たすに当たっては、業務の効率性を含む費用対効果の観点を織り込まなければならないのは当然のことである。規格に則って業務を行う組織が、規格に明示の規定がないとして効率性を考慮しないことは規格の意図に反する。また、規格には例えば「リスク及び機会への取組みは、製品・サービスの適合への潜在的影響と釣り合いのるとれたものでなければならない」(6.1.2項)のように効率性への配慮の必要を明示した規定も幾箇所かに存在する。
 

 
 
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H27.9.30 
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