ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§13
責任及び権限 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-13
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

   
経営管理(活動) ⇔マネジメント$19;    経営代行者 ⇔管理責任者$19-4;   品質経営(活動) ⇔品質マネジメント$19-0;
     品質経営体制 ⇔ 品質マネジメントシステム
$19-1-1;    職務能力 ⇔力量$67;

 
  
§0.3  目 次

§13.1 責任及び権限
§13.2 管理責任者
 
 
§13.1 責任及び権限
  経営用語では、業務、権限、責任の3用語は相互関連的である(54)。組織内で要員が委ねられた業務を行なうには、そのための責任と権限が必要である。要員がある業務を担うことは、組織内である役割を担うことともみなされる。規格では役割を果たすための責任及び権限と表現されている(5.3項)。
 
  責任とは業務遂行の義務を意味し、権限は業務を正式に遂行できる権利ないし力を意味する。責任に伴う権限が付与されなければ、業務の効果的遂行は困難である。従って、責任と権限は一致しなければならない。別の見方をすると、要員に業務を割り当てるとは、当該業務を実行しなければならない責任と、実行のために必要な資源を使用し判断を行う権限を付与することである。つまり、責任と権限は裏腹の関係にあり、「責任権限」と呼ぶのが適当である。
 
  組織の業務は一般に複数の、また、多くの要員により分担されている。この委ねられ、割り当てられた業務のことは、責任と権限の観点からは「職務」と呼ばれる。規格の「責任及び権限」は、経営用語の「責任と権限」のことであり、実務上は要員の職務であり、担当業務のことでもある。責任と権限は、管理者や役職者だけではなく、組織で業務を行うすべての要員に関係する。
 
  多数の要員が協働し、体系的で組織的に業務が実行されるには、それぞれの業務を誰が担当するのかが明確になっていることが必須である。この要員の業務内容、つまり、責任と権限が明確でない場合、例えば、同じ業務を複数の人が重複して行ったり、或いは、行わなければならない業務が放置されたままとなる危険が生ずる。特に後者は、機会の逸失や事故の発生など品質経営に深刻な結果をもたらす。また、ある要員の行うべき業務を、適切な判断能力や業務実行能力を持っていない別の要員が勝手に行うことは、間違った或いは不適切な結果を引き起こすことにもなりかねない。品質経営によって必要な顧客満足の状態を確実に実現するためには、必要として定められたすべての業務のそれぞれを定められた通りに行なう責任と権限が、抜けなく、重複せず、いずれかの要員に割り当てられていることが必要である。
 
  業務や責任と権限を誰に委ねてもよいというものではない。当該業務を定められた通りに実行し、所定の業務結果を確実に出すことのできる能力のある要員に委ねてなければならない。これを規格では職務能力のある要員と呼ぶ(7.2項)。職務能力とは、要員に割り当てられた役割を担う、或いは、それに伴う責任と権限を果たすことのできる能力のことである
§15。規格の品質経営では、要員が一挙手一投足を指示されて作業を行うのでなく、職務能力を持った要員が定められた手はずに則って主体的に実行し、職務を果たすことが期待されている。また、要員は委ねられた業務を完遂し、或いは、役割を全うすることに責任感を持っていることも期待されているが、これは規格では7.3項の「認識」である§16
 
  ISO9001は経営管理活動の規格であり、5.1項はトップマネジメントの責任と権限に関する規定であり、5.3項は管理者の責任と権限に関する規定である。一般要員の責任と権限は、要員の職務能力の管理の中でそれぞれの管理者が決めて委ねることが示唆されている(7.2項)。
 
 
§13.2 管理責任者
 (1) 品質経営代行者

  08年版(5.5.2)では、トップマネジメントが組織の経営層の中からJIS和訳「管理責任者」を指名する必要が規定されている。英文では“management representative”であるが、これは一般経営用語には見当たらず、規格でも定義が規定されていない。よって、英文の意味
$19-4に従って「経営管理活動を代表する人」又は「経営管理活動を代行する人」の意味に受けとめるのがよい。
 
  この「経営代行者」は00年版で登場した用語と規定であるが、00年版執筆者のひとりは
(22)、品質経営体制に則って品質経営の業務が実行されることを確実にすることに責任と権限をもつ者とし、もうひとりは(21)、トップマネジメントが品質経営の状態や改善の必要を正しく把握するように組織の管理者とトップマネジメントとを結びつける役割を持つ者と説明している。TC176商業本(20)では、経営代行者は他の業務の実行責任を有するが、「品質経営体制が適切に機能することを確実にするのに必要な権限をもたなければならない」としている。品質経営体制の確立、実行、維持を確認する程度のISO9001規格適合のためだけに設定された象徴的役割としての存在か、或いは 品質経営体制の管理の責任者という実務的存在かの2つの見方ができるとする解説(23)もある。
 
  いずれの説明でも規格の「経営代行者」は、トップマネジメントに代わって品質経営を行なうことに責任権限を持つ経営層又は管理層の誰かということになる。また、08年版規定の注記には、品質経営体制に関して外部の関係者との連絡役であることを示す注釈が付されているが、この場合の役割なら「経営代表者」である。
 
 
(2) 経営代行者の指名の意義
  実務的には、規格の「経営代行者」は、トップマネジメントに代わって品質経営の日常業務を統率し、適宜その実績をトップマネジメントに報告し、問題があれば対処方法を考案し、トップマネジメントの判断と指示を仰ぐという形で、トップマネジメントが品質経営を全うするのを補佐する役割を担う者である。経営代行者は一般には、トップマネジメントを補佐する役割の組織の第二序列者か、組織の品質保証機能部門の責任者である。
 
  トップマネジメントの責任と権限は、組織全体の経営管理を担うことであり、無限持続体として存続発展させるよう組織を方向づけると共に、各業務の実行を組織全体の観点から指揮監督することであり、業務間或いは部門間の関係を調整、管理することも含まれる。トップマネジメントの日常は基本的に多忙であり、日常の個別の問題に係わることのできる深さには限界がある。このためある程度以上の規模の組織では、組織の業績を左右する重要な問題については、特定の責任者を明確にして、日常業務の指揮監督を委ねることが多い。トップマネジメントは、これら責任者に一元化された情報と整理された情報と問題分析と改善の提案を基礎として経営判断を行い、その経営管理統率責任を果す。
 
  規格は、世界の成功企業の品質経営の優れた方法論や手法を整理し、標準化したものであり、規格の規定の経営代行者と役割はこのような実務の経営管理活動のトップマネジメントによる統率の実態に倣ったものである。規格の経営代行者は、そのように呼ばれることはないが日本の多くの組織で存在し、トップマネジメントの統率機能を補佐していりから、規格の規定は特別なことではない。
JISマークの表示に関する基準
(156)では、製造部門と独立した「品質管理責任者」を置き、品質管理の推進に当たらせることが規定されているが、その役割はJIS認証に係わる標準化、教育訓練、苦情処理などの企画、助言が中心である。同じ「管理責任者」という日本語が使われているが、規格のJIS和訳「管理責任者」とは役割も責任と権限も異質である。
 
 
(3) 15年版での経営代行者
  15年版規定では経営代行者に関する用語もそれを規定する条項もなくなった。しかし、08年版の5.5.2項(管理責任者)の規定とは表現は同じではないが、その経営代行者の役割に相当する要件が、役割、責任及び権限(5.3項)の一環として規定されている。
 
  これに関して規格の付属書A(A.1)は、「経営代行者」という用語は用いられていないが、同様の責任権限の割り当てが規定されていると説明している。共通テキスト概念説明書
(16)は、この責任権限について、品質経営体制が規格の規定を満たしていることを確実にすることであると説明し、さらに、先の付属書Aの説明では「単一の経営代行者でなければならないとは規定してされていない」として用語“management representative”が用いられている。
 
  従って15年版では、組織がその役割を「経営代行者」と呼ぶことを求めていないが、とりわけ大規模組織では トップマネジメントによる品質経営活動の効果的な統率のためには、08年版と同じ役割を果す経営代行者の存在とその責任権限が果されることが必要であるとする規格の考えには変化はなく、経営代行者を指名しなければならないという規定の意図にも変化はないということである。
H29.9.5
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