ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§20
組織の知識 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-20
§0 概要   こちら
 
 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
職務能力 ⇔力量$67;  外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題#65;
    品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;  品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1; 監視測定用具 ⇔監視機器及び測定機器$58;
 
§20.1 組織知
§20.2 職務知識
§20.3 規格の意図の組織知に関する規定
   
   
§20.1 組織知
  JIS和訳「組織の知識」の英文は“organizational knowledge”であり、経営用語としては「組織内の他の個人の知識と組み合わされた個人の知識」等と定義され(125)、日本語では「組織知」である。
 
  「組織知」とは、個人の持つ様々な暗黙知を形式知化して組織内で共有し、業務に使用している組織としての知識のことであり、個人知の対局にある概念であり、人が変わっても継続して組織内に存続し、継承される知識である。規格は、「組織知」について、組織の経営目標の達成のために用いられ、組織内で共有される情報のことであるとし、それは、組織に特有の知識であり、一般に経験によって獲得されるものであると説明している(7.1.6項 注記1)。
 
  「組織知」は、一般に業務を通じて要員に蓄積された知識から形成が図られるが、外部の知識情報から直接、又は、それら知識データの分析によって、或いは、それらを暗黙知として用いた要員の業務実行の経験からも形成される。規格は、「組織知」には、知的財産、経験から得た知識、失敗の教訓、未文書化知識と経験の取得と共有など組織内部の知識に基づくものと、規格、学会、会議、顧客や供給者からの収集などに基づく外部起因知識に基づくものとがあると説明している(同注記2)
 
  なお、このように、個人知の組織知化、すなわち、業務実行を通じて個人に蓄積された知識を、組織の経営資産として組織の経営管理の効率化や業績向上への活用を図る経営活動は ナレッジマネジメントと呼ばれる。
 
 
§20.2 職務知識
  規格では、要員がある業務を決められた通りに行い決められた結果を出すことができることを、「職務能力 $67がある」と言う(7.2項)。 ここに、職務能力は、「知識と専門性$38を活用して所定の結果を出す能力」と定義される#3。 この「知識」は当該業務を決められた通りに行い決められた結果を出すために要員が知っておかなければならないことであるから、「職務知識」である。また、「専門性」は、職務知識に基づいて頭が働き、言葉を生み出し、身体や手指を動かして、実際に当該業務を決められた通りに行い決められた結果を出すことができるかどうかの、要員の能力のことである。
 
  職務知識は、基本的に組織知から成り、形式知として文書に表され、保存され、利用される。例えば、業務の規範を定める文書や、各業務の方法、基準を定める手順書は、組織知を保存し、実際に業務に用いる文書である。また、業務実行の結果とその管理の記録、発生した問題の原因調査の記録や新技術の開発記録、或いは、各種の報告書は、組織知としての形式知、或いは、形式知化につなげることのできる知識データを保存する文書である。設備図面や設備取扱い説明書、外部委託した設備点検記録、専門図書、規格書、法律書なども、外部から取得した知識又は知識データとして必要に応じて利用するために保存する。
 
  業務実行に用いる職務知識は、必要な職務能力を備えさせるための教育訓練(7.2項)によって要員に習得され、根幹部分は記憶され、詳細部分は関連文書又はその内容を要員が利用できるようにして、職務知識が業務実行に確実に用いられるようにする。例えば、業務指示書或いは電算機端末画面に詳細業務実行条件を示し、要員が必要に応じて参照できるよう必要な頻度と迅速さに応じて手順書を当該職場近傍に配付し、或いは、必要な製作図面を取り出し作業机に広げるようにする。
 
  要員は習得した職務知識に基づいて業務を行うことにより、その元の組織知を越える様々な知識を得ることになり、それらは暗黙知として要員の頭の中に蓄積されていく。これら暗黙知は、例えば発生した問題の再発防止処置の検討や改善活動に要員を参画させることにより、要員の頭の中から抽出されて形式知化されて、組織知とすることができる。
 
  さらに、新知識の普段の取得のために、業界紙、専門誌や学会発表論文、講習会資料などを利用して、新知識又は知識データを外部から取得する。これは規格では、品質経営体制の見直し検討に用いるための外部及び内部の事情の変化に関する情報の日常的な収集、分析(4.1項)の一環の活動である。
 
 
§20.3 規格の意図の組織知に関する規定
  付属書A(A.7)は、15年版で知識条項(7.1.6項)を導入した理由に関連して、同項に定めた規定の目的を次のふたつであると説明している。すなわち、ひとつは、要員の転職、或いは、知識情報の取得と共有に失敗することを通じて組織が必要な組織知を失い或いは形成に失敗することから守ることであり、もうひとつは、経験を活かし、要員を指導し、他の組織と比較分析をすることを通じて組織が組織知を取得することを後押しすることである。すなわち、規定の意図は、組織が品質経営を効果的に行うために必要な知識が組織に存在することを確実にすることであり、このための知識の充足管理の必要を明確にすることであるということである。
 
  この説明によると、15年版で資源条項(7.1項)に導入された知識の充足管理の必要の規定 (7.1.6項)は、08年版の資源としての職務能力の充足管理(6.2.2)の要件の中に暗に含まれていた職務知識の充足管理の必要の規定に代わるものであり、15年版で共通テキスト化により職務能力(7.2項)が資源から除外されたことから、職務知識の集まりである組織知が資源であることを明確にし、その充足管理の必要を明示的に規定しているということである。品質経営のための組織知に関する何らかの必要の変化に基づく新条項の導入ということではなく、単なる規定表現上の変更である。
 
 
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H28.3.10 
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