ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§21 資源 ISO9001 ISO9001/14001
規格の論理と用語   
33b-02-21
概要  こちら
 
 
実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
経営管理⇔マネジメント$19; 業務⇔プロセス$2; 経営管理体制⇔マネジメントシステム$19-1-1;
 品質経営⇔品質マネジメント
$19-0;  品質業績⇔品質パフォーマンス$31
 
 
§21   資 源

§21.1   経営資源
  規格では品質経営の業務が必要な狙いの結果を確実に出すよう実行されるには、手順(4.4 c)項)と資源が(同d)項)が必要である。この『資源』の英文は“resource”であり、資源、財源、資産、供給源、蓄え等の意味(110)であるが、経営に必要な資源を指しているから経営資源 (management resources)のことである。実際、94年版(4.1.2.2)ではこの“resource”を『経営資源』と和訳していた。
 
  経営論では、事業活動は一般に、一定の要素を投入し、これを処理して所定の結果を産出するものと捉えられ、この投入されるものが「経営資源」である(54)。この言葉は、近年は企業の合理化戦略に関連して成長分野への経営資源の集中的投入などという表現で新聞記事にもしばしば登場する。この経営資源は普通、人的資源、物的資源、貨幣的資源から成るとされるが、近年では情報と企業文化もこれに含まれるとも言われ(54)、また、企業価値創造のための第四、第五の経営資源として「ワザ」「知恵」を位置づける考えもある(241)
 
 
§21.2 規格における経営資源
(1) 規格の意図の資源
  規格の経営資源については、94年版では用語の定義の注釈で「経営資源には、要員、財源、施設、設備、技法及び方法が含まれる」と#1p-1説明し、指針規格では人的資源、設計開発用設備、製造設備、検査、試験と調査のための設備、及び、計装及びコンピューターソフトウェアが例として示されていた(138)。00年版指針規格では、人々、インフラストラクチャー、作業環境、情報、供給者、天然資源、財務資源(132)を例示し、また、目に見える資源と対照させて目に見えない資源である知的財産を挙げ、更に、プロジェクトチームを含む組織構造、情報及び情報技術、要員の職務能力や管理者の指導力にも言及している。00年版執筆者のひとりは、人々、時間、建物、設備、電気・水・ガス、原料、部品、機器、ソフトウェア、輸送設備を例に挙げている(21)
 
  一方、規格は品質経営のための業務<JIS和訳:プロセス>のことを、94年版では「入力を出力に変換する、相互に関連する経営資源及び活動のまとまり」と定義#1pし、00年版以降は15年版でも「入力を出力に変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義している#1。そして、この変換の活動に必要なものとして、00年版では判断基準及び方法(4.1 c)項)と資源及び情報 (同 d)項)を挙げ、15年版ではこれを判断基準及び 方法(4.4 c)項)と資源(同 d)項)と表している。表現には多少の変化はあるが、規格では業務とは入力に価値を付加して出力とする活動であり、価値を付加するために手順と資源が用いられるという概念であることに変わりはない。この概念の下では、業務とはその手順と用いる資源とで表すことができる。
 
  例えば、製造業務(8.5項)の入力は原材料で出力は製品であり、製品実現の計画 で決められた手順に則って、用意された要員の技能と設備、及び、生産指示という情報や作業手順書などの資源を使用して行われる。設計開発業務(8.3項)の入力は製品機能・性能の狙いであり、出力はこれを満たすことのできる製品構造仕様であり、製品図面、部品仕様書に表される。業務は、設計計画書に決められた設計手順に則り、設計者の技能や設計基準書、及び、試作設備や評価設備等々の用意された資源を使用して実行、管理される。教育訓練業務(7.2項)の入力は当該要員の持つ職務能力であり、教育担当者の教育技能と教室、訓練用機器、教科書等の資源を使用して、要員が身に付けた必要な職務能力という出力に変換する。
 
  また、品質経営を効果的に行なうための品質経営体制 §2は顧客満足追求に関連する業務の有機的集合体とみなされる。ここに、業務手順と資源で表されるから、手順と資源の集まりとも捉えることができる。規格の表現では品質経営体制を構成するそれぞれの業務を各条項の標題に対応させ、それら業務の在り方を狙いの結果を確実に出すための要件として表している。規格の意図における資源とは、規格の各条項に対応する業務の実行に必要な資源のことであり、本項に挙げられるものだけでなく、例えば、7.2〜7.5項の要員に備わった職務能力ややる気、知識情報、情報伝達手段、文書や記録も資源であり、収集した組織の内外の事情の情報(4.1項)、マネジメント レビュー(9.3項)を中心とする品質業績 管理の枠組みや外部供給者の管理の枠組み(8.4項)も資源である。すなわち、品質経営業務実行に必要で用いられるものはすべて資源である。
 
  なお、品質経営体制を顧客満足追求に関連する手順と資源の集まりと捉えることにより、概念的で抽象的表現である品質経営体制というものの実体の正しい理解を容易にする。さらに、手順は組織に特有の知識や経験や専門性に基づき確立した知識情報でもあるから、手順も資源の内と見做すことができる。従って、組織の存続発展に必要な顧客満足を追求する品質経営 活動のために必要なものはすべて資源であるということになり、規格の『資源』が上記(1)のように組織が所定の結果を産出するために投入するものとする経営論の経営資源と合致した概念であることが明確になる。
 
 
(2) 規格の規定における資源
  規格が品質マネジメントの業務に必要として規定するすべてのものが資源ではあるが、規格には『資源』を標題とする条項が設けられて、各条項に共通的な特定の資源を取り上げている。規定として『資源』とされるものは、94年版では『訓練された要員』、00年版では人的資源、物的資源と作業環境であり、15年版では数としての要員、物的資源、監視測定用具、職務知識である。
 
  94年版から00年版への変化は資源条項の充実と解されるが、15年版では08年版の人的資源の職務能力とやる気が『資源』条項(7.1項)から外され、監視測定用具が『資源』になり、また新たな概念の資源が取り上げられるなど、『資源』の選択基準が大きく変わっているようにみえる。これは、共通テキストが力量・教育訓練・自覚(4.4.2)を資源(4.4.1)とは別条項として規定するISO14001に倣った条項構成を採用したことに起因し、それに伴って資源条項(7.1項)が見直されたものである。規格が『資源』条項で取り上げる資源は、一般には各条項に共通的な資源であるが、具体的に何を取り上げるかについては多分に規格の規定記述上の都合が係わっていると見ることが出来る。つまり、『資源』条項に取り上げられるかどうかは、規格の意図の資源としての重要性や性格とは無関係と考えてよい。
 
 
§21.3 資源の提供
(1) 資源の用意
  『資源』条項の規定は英文では94年版から同じで、JIS和訳では94年、00年版が「必要な資源を明確にし、提供しなければならない」、15年版が「必要な資源を決定し,提供しなければならない」である。この『提供』の英文は“provide”であり、使用できるように用意するという意味であるから、JIS和訳『資源を提供する』とは、必要な時に必要なところで使用できるようにするという意図で資源を「用意しておく」ことである$37。
 
 
(2) 資源の充足管理
  組織の存続発展を目指して顧客満足を追求する品質経営 活動は素手で行なうことはできず、具体的な手段が必要である。これを用意することは経営論では経営資源の投入する、規格では品質経営体制を計画する(6章)と言われる。品質経営体制の計画とは、品質経営の各業務の実行の手はずを整えることであり、業務 実行の手順を確立し、必要な資源を用意することである。
 
  品質経営 活動では、狙いの顧客満足の状態の実現のために各業務がそれぞれに必要な結果を確実に出すために不可欠で、且つ、必要な結果が確実に出せる適切な資源を特定し、組織内で手配し又は外部から調達して品質経営体制の中に組み入れ、業務の実行において必要な場所や場面で所定の能力又は機能を発揮して使用又は適用できる状態にしておくことが必要である。さらに、使用結果及び狙いの業務 結果の変化など資源の必要性の変化に鑑みて、用いる資源を変更することが必要である。
 
  上記(1)の歴代規格の『資源』条項の「必要な資源を決定し,用意しておかなければならない」という資源の管理に要件は、このようなPDCA/プロセスアプローチ サイクルに則った必要な資源の充足管理の必要を意味している。規格の品質経営体制の全体像を規定する4.4項における、資源の投入、充足に関する要件(同 d)項)も「必要な資源を決め、利用できることを確実にしなければならない」と同じ表現である。
 
  規格は、このようにPDCA/プロセスアプローチ サイクルに則って行なわれることを7.1.1項のJIS和訳は「必要な資源を決定し、提供する」、正しくは「必要な資源を決定し、用意する$37」と表現している。規格の「必要な資源を決定し,用意しなければならない」との規定は、このような必要な資源の決定とその充足管理の必要を意味している。すなわち、組織は品質経営業務の実行に効果的な資源が、必要な業務 実行の場所や場面で、所定の能力又は機能を発揮させて使用又は適用できる状態を維持するように、資源の充足管理の手はずを整えなければならない、ということである。
 
   
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H27.4.30 
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