ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§27
§27 顧客又は外部提供者の所有物 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-27
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

     
製品サービス ⇔ 製品及びサービス$92;  品質経営(活動) ⇔ 品質マネジメント$19-0;
 
  
§0.3  目 次

§27.1 顧客所有物
§27.2 顧客所有物の管理の意義
§27.3 外部提供者の所有物
 
 
§27.1 顧客所有物
  規格で管理の必要が規定される顧客の所有物とは、顧客へ製品サービスを提供する取引に関係して組織が顧客から支給され又は貸与され、預かり又は使用する資産のことである。これは94年版(4.7)では「顧客支給品」と表され、顧客支給の素材や部品など、及び、製品検査のための特殊な計測器や治具などを指すと認識されていた。修理や洗浄などのサービス活動のために顧客から預かり、後に返却する顧客の装置や部材も対象となる
(28)
 
  00年版ではこの顧客所有物について注記が付され「知的所有権も含まれる」ことが明確にされ、08年版では「知的財産及び個人情報を含む」なり、15年版では「材料、部品、道具、設備、顧客の施設、知的財産、個人情報などが含まれ得る」となった。
 
  00年版指針規格
(132)では、顧客所有物の事例として、@製品のために支給される原料又は部品、A補修、保全又は改修のために支給される製品、B顧客支給の包装材料、C保管サービスで取り扱う顧客の資材のようなもの、D顧客所有物の第三者への輸送のために顧客が手配した輸送サービス、E仕様書、設計図及び顧客の社内情報を含む顧客の知的所有権が示されている。00年版執筆者のひとり(21)は「工具、情報、テストソフトウェア、出荷用容器など顧客から提供されるすべての顧客の財産」、もうひとり(22)は「組織の最終製品に組み込まれる顧客支給の製品だけでなく、組織が使用するすべての顧客の財産」と、それぞれ説明している。
 
  なお、「知的財産」は英文“intellectual property”が00年版で「知的所有権」と誤訳されたため、なお、特許情報と受け止める向きもあるが、組織の製品サービスや業務実行に係わる顧客の資産としての情報全般のことである。
 
 
§27.2 顧客所有物の管理の意義
@ 組織の管理責任

  94年版では、組織が購買品や顧客支給品の受入検査を行って良品だけを受け入れるようにしなければならないことが明確に規定されている。一方で、例え組織が受入検査を行うとしても顧客が良品を支給する責任は免れない(4.7)、或いは、顧客が供給者の外注先で製品を検査したとしても、組織の良品納入の責任は免れない(4.6.4.2)とも規定されている。これは、規格の狙いが「すべての段階で不適合を防止することによって顧客の満足を得ることを第一のねらいとしている」ためであり(1章)、全ての当事者が不適合防止に責任を果すことによって顧客が不良品を手にすることが防止できるという論理で規定が定められていたからである。
 
  例え顧客が管理して組織に送られてきたとしても、組織は、その顧客所有物が必要な決められたものであることを確実にしなければならない。顧客所有物の管理の規定の意図は、顧客所有物であっても、組織の製品サービスの実現の業務に使用し、又は、組織の製品サービスに組み込むものである場合は、組織の所有物と同じ管理を適用しなければならないということである。
 
A 顧客の要求の製品サービスの実現
  「顧客所有物」は、顧客へ製品を供給する取引に関係して組織が顧客から支給され又は貸与され又は預かる資産のことであり、組織の品質経営の効果的な実行に必要な資源の一部である。顧客がその所有物を組織に使用、利用させるのは、それによって顧客が受取る製品サービスが顧客の必要とするものであることを確実にするのに必要と考えるからである。顧客の意図と異なる又は異なる状態の顧客所有物を使用し、意図と異なる使用、保持をした場合には、顧客の意図の製品サービスをつくりあげることはできない。組織は、顧客所有物が顧客の意図の品質や機能性能を持ち、顧客所有物を顧客の意図の通りに使用、保持し、顧客所有物の不適切な取り扱いによって製品サービスの不良品を発生させないようにしなければならない。
 
B 顧客満足の観点
  00年版では、普遍的なマーケティング論に倣って品質保証の概念を顧客満足§10の保証へと拡大し、また、規定は全業種業態に適用可能な汎用的表現で書かれることとなり、この時代には不良品がないのは当たり前となり、規格も不良品を発生させないことを含む顧客満足の追求を目的とするものとなった
§1.2。当時に確立しつつあったマーケッティング論§40においては、顧客が製品を選ぶ基準は、製品そのものの価値のみならず組織のイメージ、倫理的行動、技術力、接客や苦情処理態度、広告や報道から受けるイメージなどを含む組織の総合的な印象に支配されるとされている(52)
 
  このような状況に対応して00年版では、管理の対象が「顧客所有物」と拡がり、規格の規定の管理の要件は、「大事に扱う」ということになった。これは、顧客が組織の製品サービスを買う、或いは、取引をしようとする際の判断に、組織が顧客所有物をどのように大切に扱ってくれるのか、或いは、組織への顧客所有物の提供又は貸与によって損害を蒙ることがないかという組織に対する顧客の安心感や信頼感が強く影響を及ぼすという顧客満足の拡大した概念に基づいている。従って、管理の対象が、組織の製品の不良に結びつく可能性のある製品に組み込み又は使用する顧客支給品から、製品の不良に直接関係ないが、その紛失や情報漏洩によって顧客が打撃を受ける可能性のある例えば顧客の図面をも含む顧客所有物に拡げられた。
 
  顧客所有物の使用、保持に関係する組織の業務の結果で顧客の財産を棄損して迷惑や損害を与えることは、組織から製品サービスを買い又は取引を継続するかどうかに関係する顧客の組織の製品サービスに対する評価に悪影響を及ぼし、組織の狙いの顧客満足の実現の足を引っ張る。組織は、その に対する顧客満足の追求の活動の一環として、顧客所有物を使用、利用し、そのために受入れ、保持することに関係して、顧客の財産を棄損し、或いは、顧客に経営上、また、感情上の損害を与えることの防止を図らなければならない。
 
 
§27.3 外部提供者の所有物
  外部提供者の所有物の管理は08年版までには見られない規定である。これは、近年は、組織は狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービスの実現に必要な設備等の資源として、外部から賃貸する事例が増えているという状況を反映したものと受け止めてよい。航空業界の機体、建築業界の建設機械、一般企業における乗用車のリースなど、或いは、共同ビル内の店舗や事務所、仮想商店街による販売、電算機システムの利用などなどである。
 
  15年版では、管理の対象が「顧客又は外部提供者の所有物」となったが、これは管理すべき組織の所有物として外部提供者の所有物が加わったというよりは、組織の所有物でなくとも組織の品質経営の業務に使うなら組織の手順や資源に対する規格の規定を満たすよう管理しなければならないということを明示的に規定されることになったと考えるのがよい。例えば、製造及びサービス活動(8.5.1項)において外部提供者の所有物を使用する場合で、その管理の不首尾が組織とその製品サービスに対する顧客の好感や満足感、安心感、信頼感に悪影響を及ぼす状況が考えられるなら、組織の所有物と同様の管理をしなければならない。ただし、当然ながら、外部提供者の所有物も機密漏洩を含み紛失や損傷をしないように組織の所有物と同様に大切にしなければならず、紛失や損傷した場合は組織の財産ではないのだから、外部提供者を無視した処理はできない。
H30.9.1 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所