ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§29
修正、是正、予防処置 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-29
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:
   
外部及び内部の事情 ⇔ 外部及び内部の課題$65-1; 業務 ⇔プロセス$2;   経営管理体制 ⇔ マネジメントシステム$19-1;         サービス活動(実行) ⇔ サービスの提供$48-1;   サービスの引渡し ⇔ サービスの提供$48-2;
    実績 ⇔ パフォーマンス
$31; 実績評価 ⇔パフォーマンス評価$31-2;  製造及びサービス活動 ⇔ 製造及びサービス提供§25.1;
    製品サービス ⇔ 製品及びサービス
$92; 修正処置 ⇔修正#42; 必要条件 ⇔ 要求事項$1;
    品質経営(活動) ⇔品質マネジメント
$19-0;   品質体制 ⇔ 品質システム$19-1-2p; 品質体制 ⇔ 品質システム$19-1-2p;
    要件 ⇔ 要求事項
$1;


 
  
§0.3  目 次

§29.1 不適合と改善の処置
§29.2 修正、是正処置、予防処置
§29.3 製品サービス不良の実務
§29.4 是正処置と予防処置に関する規格の規定の変遷
 
 
§29.1 不適合と改善の処置
(1) 不適合

  「不適合」とは、定義では要件 或いは必要条件 を満たしてしていないことである
#5-2。規格では、業務実行管理における実績評価(9.1.1項)の活動によって決められた必要な結果が得られていないと判定された業務結果の状態を指す。実務では、業務結果が狙いの、或いは、決められた通りの結果又は管理基準を満たしていない不良や異常な状態を意味する。また、検査に合格しない製品サービスは不適合製品サービスであり、顧客のニーズと期待を満たさないために苦情を申し立てられた製品サービスも不適合製品サービスであり、業務が決められた通りに行われていない状態は業務実行の不適合であり、設備が必要な機能を発揮できない状態は設備の不適合である。「不適合」とは品質経営の業務における何であれ必要な、決められた通りの状態ではない物事の状態のことであり、実務での不良や異常のことである。
   
(2) 改善の処置としての修正、是正処置、予防処置
  規格では、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すための業務実行管理の活動を、「監視」「測定」「分析」「評価」「改善」の5つの段階の活動に分割している
§28.2。この内の「改善」は、決められた通りでないと判定された業務実行と結果或いは製品サービス、すなわち、業務実行や製品サービスの不適合に対して、それによって最終的な業務結果や製品サービス が狙いの通りでなくなること、そして、その結果として狙いの顧客満足の状態の実現に支障を来すことになるのを防ぐために必要な処置をとることを意味する§12.2
 
  これら規格の概念の「改善」の処置は、実務的にはそれぞれ、狙いの通りでない業務実行や製品サービスを決められた最終的な業務結果や製品サービス になるように処理する活動と、問題の再発を防止する活動である。規格では、前者が修正処置であり、後者が是正処置と予防処置である。
   
 
§29.2 修正、是正処置、予防処置
(1) 修正

  『修正』は「不適合を除去する処置」と定義#42され、「是正処置」と同じように「処置」であるから「修正処置」と和訳する方が適切である。
 
  修正処置は、不適合を処理する処置のひとつであり、検出され或いは発生した不適合の状態を正す処置であり、処置の狙いは、不適合によって最終的な業務結果或いは製品サービスが狙いの通りでなくなることを防ぐことにある。これには、不適合を正す処置をとって適合状態に戻す処置と、処理せずに不適合状態の業務結果、製品サービスを予定の通りの次の業務に供しない処置とがある。修正処置の具体的例としては、指針規格
(115)にて、手直し(3.12.8項)、修理(3.12.9項)、再格付け(3.12.4項)、特別採用(3.12.5項)、逸脱許可(3.12.6項)、廃棄(3.12.10項)を取り上げて、それぞれの定義を規定している。
 
  規格は、発生した不適合製品サービス(8.7項)と内部監査の不適合指摘(9.2.2項)に関して修正処置をとる必要のあることを特に明示的に規定している。
   
(2) 是正処置
  同じ不適合が繰り返される可能性を無くするためには、不適合の発生の原因に対応する処置が必要である。 規格はこの処置を「不適合の原因を除去し、再発を防止する処置」と定義
#40し、「是正処置」と呼んでいる。
 
  日本語で「是正」は「悪い点をあらため正す」という意味(113)であり、必ずしも再発防止を意味しない。是正処置と修正処置の英語“corrective action”と“correction”の意味や概念も規格の定義とは必ずしも一致しないから、これら用語は日本語でも英文でも規格独自の用語として理解するのがよい。
 
  是正処置は生じた問題の再発を防止する処置であり、再度の発生を防止するだけではなく、二度と発生させないことを確実にする処置であり、問題を解決し、或いは、組織からその問題をなくする処置である。しかし実務的には、どんな問題も絶対に再発させないというような再発防止への取り組みはしない。不適合の原因の追求と原因を除去する程度と方法は、再発の可能性と再発防止の必要な程度に応じて適当なものとすることが大切であり、多くの場合、ひとつの根本原因を深く追求するよりも合理的な原因調査と対応の方法があり得る。
 
  このことが規格の是正処置についての意図であることは、その規定(10.2.1項)に「是正処置は、検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない」があり、明らかである。
   
(3) 予防処置
  「予防処置」は起きることが予見される不適合を抽出してその発生を未然に防ぐ処置のことであり、問題が起きる前に処置をとって問題の発生を防ぐ問題の未然防止処置である。15年版では共通テキストの採用により、外部及び内部の事情 (4.1/4.2項)からリスク及び機会への取り組みの決定(6.1項)というリスク対応型規定を設けることが、08年版の「予防処置」の概念を包含しているとして(18)、「予防処置」を規定する条項は無くなった。
 
  しかし、指針規格
(115)では08年版のままの「予防処置」の定義が規定されている。すなわち、「起こり得る不適合又はその他の望ましくない起こり得る状況の原因を除去する処置」である#41。また、「予防処置は発生を未然に防止するためにとるのに対し、是正処置は再発を防止するためにとる」との注記も継承されて、是正処置との違いを明確にしている。
 
  但し、例えば、問題発生の未然防止を意図した典型的な管理手法である管理図法では、指標値が管理限界を逸脱した場合に、将来に実際の異常や事故の起きるのを防止する処置をとるが、普通はこの処置は異常や事故の未然防止処置とは呼ばず、管理限界逸脱に対する再発防止処置とみなすのが実務では普通である。また、予防処置の定義では、予見される問題の発生を防ぎ又は回避する一過性の問題対応は含まず、その問題が将来にも二度と起きないことを確実にする処置と読み取れるから、一過性の問題対応を含む広い概念の問題の未然防止処置を意味する日本語の「予防処置」も英文“preventive action”とも合致しない。「予防処置」も「是正処置」や「修正処置」と同じく規格執筆者の造語と受けとめるのがよい。
 
  是正処置では問題解決の方法の決定が最も重要であるが、予防処置では将来に起きる可能性のある問題を抽出することがより重要である。「改善」の処置としての予防処置の必要性は、業務実行管理における実績評価(9.1.1項)において実績の業務結果が狙いの通りであるとしても、実績の変動や推移の傾向から将来的に狙いの通りにならないことになる可能性を読み取ることで見出すことができる。また、例えば顧客のニーズと期待の将来の変化を読み取ることによって、現状の狙いの製品サービスの品質水準或いは機能性能では、狙いの顧客満足の状態の実現に支障を生じると判断される場合にも予防処置の必要性が生じる。更に、他組織に生じた深刻な事故や事態に鑑みて類似の問題を評価することから予防処置の必要性を抽出することもできる。
 
 
§29.3 製品サービス不良の実務
  不適合は実務では不良、不具合などと呼ばれる。不良、不具合のある製品はその性格や原因によって、不合格品、不良品、異常品、異品、欠陥品、苦情品、など種々の名称で呼ばれる。
 
(1) 組織内の製品不良
  組織内で所定の合否判定基準を満たさないと判定された製品は一般に、不合格品と呼ばれる。不合格品をそのまま次工程に送ったり、顧客に引渡すことはできないから、合格品となるように手を加えるか、特別採用を顧客に求めるか、廃棄など顧客に引渡さないよう処置する。顧客に引渡し済みの場合は当該不合格品を引き取るか、顧客との合意の下に同様のいずれかの処置をとる。
 
  不合格品には一般に、管理されて発生する所定の不合格品と、製造及びサービス活動の工程など製品を生み出す業務が所定の通りでなかったことを原因とする所定外の不合格品とがある。 品質管理では一般に前者を不良品、後者を異常品と呼んで区別する。 多くの事業の製品では、製品を生み出すための費用と不合格品発生による損害との均衡を図るため、製造及びサービス活動など工程条件を製品が合否判定基準に100%合格するようには決めない。 このような製品では、合否判定で不合格と判定されても、それが所定の通りに業務が行なわれなかった結果とは限らない。品質管理は、不合格品が単なる不良品であるのか、或いは、あってはならない異常品であるのかに峻別することから始まる。
 
  不良品は所定の処置手順に則って、そのまま次工程や顧客に引渡されないように管理する。再発防止対策はとらない。不良品については、その発生を一定の水準に維持するために、それらの製品仕様ないし製品特性に関係する製造及びサービス活動の工程の要因を特定し、その変動を管理することが必要である。異常品については、それが不合格品のまま顧客に引渡されないように管理するのは当然であるが、その一方で、所定の業務実行の原因を調査し、再発の可能性や再発した場合の損害の大きさと必要な費用とを勘案して再発防止対策の必要を検討することが必要である。
   
(2) 顧客で検出された製品不良
  苦情品は、契約ないし合意事項を含む顧客の意向の製品仕様と異なると顧客が受けとめて苦情を申し立ててきた製品を指し、幾つかの類型に分けることができる。
 
@ 合否判定業務が効果的に実行されずに、不合格品が顧客に引渡された (不良品)
  これには、合否判定手順の単純な不履行の場合と、合否判定の方式や方法、手順、合否判定基準が不十分、或いは、技術的に不適切である場合がある。 
A 契約や製品の識別上の誤りや錯誤によって異なる製品仕様の製品が顧客に引き渡された (異品)
B 製品仕様に顧客の製品使用のために不可欠な事項や条件が欠けていた (欠陥品)

  いずれもの場合も、再発の可能性の高さ、再発した場合の顧客満足への影響の深刻さに応じた適当な再発防止対策をとらなければならない。この再発防止対策では、製品の設計変更に踏み込む必要のあることもある。また、苦情申立てを受けた場合は、当該製品の引取り、不良の選別、代品の引渡しなどにより顧客の製品使用に支障を生じないようにする処置をとらなければならない。とりわけ大量生産品の場合では、同じ問題を生じる可能性のある製造及びサービス活動の実行済みの製品を特定又は推定して、実際に発生した場合の深刻さに応じた適当な程度に問題発生の防止を図る処置をとることが大切である。この場合には、製品の製品実現の履歴の記録(7.5.3項)、及び、合否判定の記録(8.2.4項)が有力な情報源となる。
 
(3) 許容される製品不良
  電話相談窓口や演劇など サービス活動の実行とサービス引渡しが同時であるような事業では、全サービスの出来ばえの合否判定の前にサービスが順次引渡されるが、このことについては顧客の暗黙の了解があると考えてよい。また、設備建設工事では、顧客立会いの下での全体試運転で顧客の細かい要望を聞き入れて仕様や配置を微修正、調整することが商慣習であり、金属鋳造用金型の製作では、顧客が実際に使用して所定の鋳造物が得られることを確認することが製品の合否判定とされるが、合格するまでに何度かの試用と金型修正を行なうことが商慣習であることが多い。 このような製品や業種業態では顧客は、事前の合否判定による合格品だけが組織の外に出され又は顧客に引渡されるという品質保証の一般原則が適用されないことを暗黙に又は契約上で了承しており、一定の不合格サービスを引渡される可能性や一定の不具合のある製品を提示されることを理解している。
 
  これらは定義上では「不適合製品」であるが、この種の不良や不具合は直ちに顧客満足の毀損には繋がらない。この場合は、組織内で検出された不合格品として処置される。 しかし、不良や不具合の程度やその修正の的確さや迅速さの程度によっては、顧客の不満を生み、組織の狙いの顧客満足に打撃を与えることにもなる。 この場合は、顧客で検出された不合格品として処置しなければならない。 組織は、あってはならない不良や不具合を明確にし、その発生を防止する製造及びサービス活動の手順を確立すること(7.1項)が必要である。例え製品全体の事前合否判定が出来ないとしても、特定の不良や不具合に関係する製品と工程の要素の事前合否判定が可能な場合もある。
 
  また、予想される不良や不具合を発生させ、認識し、又は、指摘された場合にとるべき処置を決め、その手はずを整えておくことが必要である。この例には、対面サービスでの謝罪とやり直し、延着特急の特急料金払戻し、誤ったニュース報道に対する訂正放送や訂正記事、不通となった鉄道路線の乗客に対する代替輸送手段の提供、購入者が開梱して発見した不良品に対する代品提供などがある。
 
 
§29.4 是正処置と予防処置に関する規格の規定の変遷
  規定表現の変遷は小さくないが、規格における是正処置と予防処置が、業務実行管理による不適合の発生の再発、未然防止処置であるという、目的と性格は初版以来変化していない。
 
@ 初版、94年版
  初版、94年版は、組織が不良品を出して顧客に迷惑を掛けることのないようにする品質保証活動の実用的指針であり、品質保証に関連する各業務の当時の世界の最良慣行を、不良品を出さないことを望む組織が遵守すべき要件として規定していた。是正処置、予防処置もこの一環であり、初版(4.14)では予防処置は是正処置に含まれ、製品検査による不適合品の再発防止対策として是正処置を行うことの必要を規定していた。
 
  94年版(4.14)では是正処置、予防処置はそれぞれ、「現存している/潜在している不適合、欠陥、望ましくない状況の再発/発生を防止するために、原因を除去する処置」と明確に区別して定義
(134) されると共に、「製品、工程及び品質体制に関する不適合」に対する処置に概念が拡大した。 しかし、94年版でも是正処置、予防処置は、製品の不適合の発生を防止する処置としての意味合いが強く、この場合の予防処置は事実上、管理図を用いるなど、品質指標の傾向管理によって大きな問題が起きるのを未然に防止する大量生産型製造業でお馴染みの品質管理手法を指すものと理解されてきた。これが規格の意図であることは、是正処置の必要の判断を「顧客の苦情及び不適合報告のような情報源」、予防処置の必要の判断を「製品の品質に影響を与える工程及び作業、特別採用、監査結果、品質記録、サービス報告書及び顧客の苦情のような情報源」に、それぞれ基づくべきことが規定されていることからも明らかであった。
 
A 00年版、08年版
  00年版は、不良品を出さないだけでなく顧客のニーズと期待の満たす製品を供給するという新時代のマーケティング論
§40に沿った品質保証活動に内容が拡大すると共に、規格の意図の品質保証活動が経営管理上の活動であることに焦点を当てた規格構造と規定表現に変わった。この中で、是正処置、予防処置はプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cの「監視、測定、分析」の結果の不適合に対する継続的改善/Aの処置として規定されることになった。
 
  このことから、是正処置と予防処置は、日常的な製品実現の業務実行管理における不適合への対応の処置としてだけでなく、品質経営のあらゆる問題への対応の処置を表すものとして理解されることにもなった。すなわち、プロセスアプローチ/PDCAサイクルの継続的改善/Aに相当するあらゆる処置は是正処置か予防処置のいずれかであり、両者は事後対応か事前対応かという観点で区別されるという理解である。この理解からは、マネジメントレビュー(5.6)における事業環境及び組織の業務能力の変化に対応する経営判断に基づく経営施策も、是正処置か予防処置のどちらかということになる。
 
  しかし、是正処置(8.5.2)、予防処置(8.5.3)のいずれの規定も、日常的な製品実現の業務実行管理における不適合への対応の処置としての要件が規定されており、マネジメント レビューの結論(5.6.3)のような経営施策に適用することが出来るような規定にはなっていない。一方、予防処置については、品質管理における傾向管理に係わる予防処置の実行を必要とする規定(8.4 c))があるため、00年版、08年版の是正処置、予防処置に関する規格解釈は事実上、94年版の解釈が継承されてきた。
 
B 15年版
  15年版では「予防処置」を規定する条項がなくなった。これは共通テキスト化のためであり、共通テキスト解説FAQ
(18)では理由を、経営管理体制の主要な目的が予防的な手段として機能することにあり、これを顧客満足の追求に関連する内外の事情の評価 (4.1項)と、取り組むべき リスク及び機会の決定(6.1項)の両規定で表したためであると説明されている。
 
  また、08年版(8.4 c))の業務実行と製品の特性の傾向管理と予防処置という、業務実行管理の普遍的な管理手法の規定もなくなった。しかし、指針規格
(115)には、08年版のままの予防処置の定義が規定され#41、予防処置と是正処置が一対の処置であることを明確にする注釈も残されている#40-2。従って、業務実行管理に係わる予防処置の規定が無くなったのは、規定表現の汎用化と、元々は製造業の手法が規範的な規定になっているものの削減というISO9001の15年版改訂方針(11)に基づいた規定見直しの結果と考えられる。つまり、08年版(8.4 c))の予防処置の規定は、効果的な品質経営に必要でないという訳ではなく、そのような日常の業務実行管理の手法は、種々のサービス業を含むすべての業種業態では必要とまでは言えないから、規定を無くしたということである。
 
  従って、製造業を中心にこれまで08年版の是正処置と予防処置の規定を満たすことに支障を感じていなかった組織にとっては、08年版と全く同じ規定理解と規定実践でよい。
H30.9.1 
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所