ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§30
検  証 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-30
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

     
監視測定(活動) ⇔ 監視及び測定§28.2;   業務実行 ⇔プロセス$2;   合否判定 ⇔ 検証$47;
   サービス活動(実行) ⇔ サービスの提供
$48-1;   サービスの引渡し ⇔ サービスの提供$48-2;   実績 ⇔パフォーマンス$31;
   実績評価(活動) ⇔ パフォーマンス評価
$31-2;   製品サービス ⇔製品及びサービス$92;
   製品サービスの実現(活動) ⇔ 製品及びサービスの提供
§9.3;  製品サービス実現の計画 ⇔運用の計画$28-2;
   製品サービス要件 ⇔製品及びサービスの要求事項
$1-2-4 ;   適合性検証 ⇔ 検証$47;
   品質経営体制 ⇔ 品質マネジメントシステム
$19-1-1;   有用性 ⇔ 妥当性$46;  有用性検証 ⇔妥当性確認$46;
   要件 ⇔要求事項
$1

 
  
§0.3  目 次

§30.1 検 証
§30.2 合否判定の実務
 §30.2.1 製品サービスの合否判定の実務
 §30.2.2 購買品に関係する合否判定の実務
  
  
§30.1 検 証
(1) 適合性検証

  「検証」は “verification”の和訳であり、これは物事の真偽や適切さを検討することであ
る$47。日本語の「検証」は単に、実際に調べて証明するという意味(113)であるから、「検証」を用いる場合はその目的や対象を付さないと意味をなさない。ここに、規格の定義では“verification”は「適合性の客観的証拠による証明」であり#28、従って、規格の意図の“verification”は、日本語に「検証」を用いるなら「適合性の検証」である。
  
  決められた通りに業務を行い、決められた通りの結果を出すことを確実にする業務実行管理
§28.1においては、「実績評価」は、その狙いと許容範囲を意味する管理基準に照らして業務実行又は の実績 が決められた通りかどうかを評価し、判定する活動である§11.2。この実績評価 は、規格では適合性評価の一種であり、「適合性検証」は、この結果を客観的証拠として実績の狙い又は決められた通りに対する適合性を証明することを言う。
  
 規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクル
§43.4の考えでは、すべての業務実行(履行/D)の結果 について、業務実行の結果つまり実績が意図(計画/P)した通りであるかどうかを評価(管理/C)し、そうでなければ計画通りの或いは狙いの結果とするための処置(継続的改善/A)をとる。このサイクルの評価(管理/C)は、業務実行管理における規格の表現の「実績評価」であり、これは、監視測定によって実績に関する情報を取得し、分析してその実体を把握し、それを狙いの結果を意味する管理基準又は合否判定基準に照らして、狙いの通りかどうか、適合か不適合かを評価判断する合否を評価し、判定する適合性評価の活動である。
 
 すなわち、プロセスアプローチ/PDCAサイクルの評価(管理/C)は、規格では「適合性評価」であるが、評価は適合性判定のために行うのであるから、実態としては「適合性判定」である。そして、この評価、判定の結果で、計画通り或いは決められた通りではない、つまり、不適合或いは不合格、不良と判定された実績は、除外されるか又は決められた通りの結果となるように処置
§29.1がとられる。この評価と判定、処置と再評価によって、計画した或いは決められた通りの実績だけが次の業務に供されることを確実にすることができる。「適合性検証」とは、適合性判定結果を客観的証拠として、このように決められた通りの実績であることを証明することである。
 
 「適合性検証」とは、業務実行管理の実務における実績評価を、規格のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの論理における管理/Cの「適合性評価」の意義に沿った規格特有の表現である。規定の実務的な解釈においては、言葉を「適合性評価」又は「適合性判定」に置き換えるとよい。
 
 なお、規格では計測用語としての「検証」も用いられているが、この場合の規定では、計測用語としての定義に従って用いられている
§38.2
  
  
(2) 合否判定
 品質管理用語では“verification”は「製品が特有の要件に適合しているかどうかを判定する活動」と定義され
#28-2、製品の合否の評価と判定という意味の「合否判定」の活動を指し、実務では普通、検査や試験という言葉が当てられる。「適合性検証」の定義#28は一般的な「適合性評価」に対応するものとなっているが、規格の規定では製品サービスなど実績の合否判定に関係する実績評価 に関連して用いられている。実績 が狙いの通りかどうかを識別するために行う実績評価の活動は、通常「合否判定」と呼ばれるが、規格でも製品サービス実現の計画(8.1項)で「合否判定基準」を決める必要が規定されている。
  
 従って、規格の意図の「適合性検証」は、業務実行管理の実績評価の活動の内の、決められた通りでない業務実行又は結果を検出することを目的に行わる合否判定の活動に対応する活動であり、合否判定結果を客観的証拠として、決められた通りであることを証明する活動である。さらに「適合性検証」は、上記(1)のようなプロセスアプローチ/PDCAサイクルの論理に基づく規格特有の用語である。従って、「適合性検証を行う」という規定は、「合否判定を行って、その記録を残す」という意味に受けとめるのが実務的である。
  
 「適合性検証」という表現の規格の意図に照らすと、「合否判定」の活動は、製品サービスなど実績の「合否判定基準」との比較による合否を単に識別するのが目的ではなく、製品サービス など実績を合否判定基準を満たすものにするためで、つまり、実績を合格化するために行われる。合否判定に基づく合格化の結果で、当該の製品サービスなど実績が計画通り或いは決められた通りであることが確定する。
 
 ここに、実務では、実績が製品サービスの場合は一般に、前者は「合格品」「良品」、後者は「不合格品」「不良品」と呼ばれる。合否判定の結果を客観的証拠として「合格品」「良品」であることを証明することが規格の「適合性検証」である。また、規格では、前者の状態を「適合性検証済み」と表されるが
#28-1-3、これは実務では、例えば製品の検査票の表示の「検査済み」に相当する。
 
 
(3) 合否判定の方式
 初版以来規格では、品質管理用語としての試験や検査により明らかにした物事の実態としての特性
§18に基づく直接的な合否判定と、関連事象に関する論理的な評価に基づく間接的な合否判定との2種類の合否判定の方式が規定されている。これは実務の様々な合否判定方法を整理したものであり、実務で存在する合否判定方法はこれらのいずれかの方式に属す。このことは、15年版で「検査」と「試験」の定義が変更されて、より明確になった。
 
@ 直接的な合否判定方式
 合否判定のための物事の実態の情報を検知し、定められた合否判定基準と比較評価し、合否を判定する活動は、日本の品質管理用語では一般に検査や試験と呼ばれる。検査は、有形の製品に関して目視など五感により検知される情報に基づく合否判定である外観検査、寸法検査が一般的であり、試験は機械試験、分析など無形の特性を試験装置で計測した試験値を用いる合否判定の方式である。
 
 このような合否判定方式は規格では、94年版までは「試験、検査」と表現されていたが、00年版では一般に合否判定を行うことは「適合性検証を行う」という表現で規定され、合否判定方法の規定は「検査又はその他の活動」という表現が1ケ所(7.4.3)のみとなった。この「検査」が「必要な測定、試験、計測結果から形成した所見及び判断による適合性判定」と定義されていたから
#30-1p、規格の意図の実態に基づく合否判定方法を表す用語であった。 「試験」は「手順に従って特性を判定すること」として実績の情報検知方法を表す用語となった#31p
 
  15年版の定義では、「検査」は「規定要件に対する適合性の判定」と広く、あいまいな概念としての表現なった。しかし、「検査の結果が適合を示している場合、その結果を適合性検証のために使用することができる」との注釈
#30-1が付記されたことにより、合否判定が適合性検証の手段であり、「検査」が物事の実態に基づく合否判定の活動であることが、より明らかになった。
  
A 間接的な合否判定方式
 機械工業の溶接や熱処理など、業務結果の出来ばえとしての実態を試験や検査で明らかにできない「特殊工程」に関する管理の初版(4.9.2)の独立した条項の規定が、94年版(4.9)の工程管理の一部としての規定を経て、全業種業態向けの00年版で、それら工程の業務実行が決められた通りであったことの証明を意味する業務実行の「有用性検証」の規定
§31に変わった。この場合の「有用性検証」のための「有用性判定」は、業務実行が決められた通りであるから結果は決められた通りであるに違いないという論理的推論によって、業務実行の決められた結果を出すことに関する「有用性」を評価、判定することである。この有用性判定の結果を客観的証拠として業務結果の合否判定を行う。
 
 15年版では、「試験」の定義
#31が「特定の意図された使用又は適用に関する要件に従った判定」となり、「試験の結果が適合を示している場合、その結果を有用性検証のために使用することができる」との注記#31-2が付された。このことから、「試験」は実績の情報検知方法ではなく、有用性判定の活動となった。
 
 15年版でも、製品サービス(8.5.1項)、購買品(8.4.2, 8.4.3項)、設計開発結果(8.3.4項)に関して、有用性判定を通じて合否判定を間接的に行う必要が規定されている。
 
 
§30.2 合否判定の実務
§30.2.1 製品サービスの合否判定の実務
(1) 合否判定の在り方
@ 最終製品サービスで

 製品サービスの合否判定は、顧客に引渡す状態の製品サービスに対して行なうことが基本である。 しかし実際には、必要な製品サービス 特性の合否判定を製品サービス実現の工程の種々の段階に分けて行なう方が合理的である。これに関して94年版(4.10)では、受入検査・試験、工程内検査・試験、最終検査・試験の3種の合否判定活動を規定していた。 00年版は「製品サービス実現の適当な段階で」と規定としている。 また、最終の製品サービス を顧客に引渡すまでの間に、梱包や包装、保管、移動や輸送など品質毀損の可能性のある業務や工程が付加される場合には当然、それらの業務ないし工程の後の製品サービス についても合否判定を行なうことが必要である。
 
A すべての特性について
 製品サービス の合否判定は、当該製品サービス について顧客のニーズと期待に応えるという観点で顧客に保証しなければならないすべての種類の性能や機能など製品サービス 特性
§18について行なわなければならない。 しかし、保証すべき製品サービス 特性の合否判定をすべて一律の詳しさや精度で行なうことは合理的ではない。 製品サービス の合否判定は、組織の目指す顧客満足の実現、或いは、当該製品サービス の狙いの顧客満足の確保にとってのそれぞれの製品サービス 特性の重要さに応じたものとすべきである。この重要さとは、不合格品が発生する可能性の高さと、不合格品が顧客に引渡された場合の顧客満足への悪影響の深刻さとの観点で判断される。人命に係わり、わずかな不良も許されない製品サービス や製品サービス 特性がある一方、大量生産品や素材製品を初め、契約条件として、或いは、取引習慣として、一定の不良品の混入が許容されることもある。 製品サービス実現の手順遵守により不良となる可能性のごく低い製品サービス 特性や、その軽微の不良が製品サービス 全体の顧客満足にほとんど影響しないような製品サービス 特性などには、特定の合否判定 活動を適用しないのが普通である。 これら特性の品質保証は、日常の業務実行管理(9.1.1項)の中での品質管理活動の役割である。
 
B 適当な段階で
 不良品を顧客に引渡さないことを確実にするための合否判定であるから、製品サービス を顧客に引渡す前に行なわないと意味がない。 これを94年版(4.10.4)は「当該製品が所定のすべての検査・試験に合格していることを確認してからでないと製品を出荷してはならない」と表現していた。 しかし、実務では、これが不可能であり、或いは、品質保証の観点で必ずしも適切でない場合がある。 例えば、サービス活動の実行とサービス引渡しが同時であるような 規格でサービス と呼ばれる事業商品では、そのサービス の引渡し前に事業商品たるサービスの合否判定は出来ない。
 
 全業種業態を対象とする汎用規格となった00年版(8.2.4)では、「製品サービス実現の計画で決めたことが問題なく完了したこと」を確認して製品サービスを顧客に引き渡すということになり、この規定は15年版(8.6項)にも継承されている。これらに該当する対面販売、電話相談窓口サービス、手術などの治療サービス、テレビのニュース報道、演劇などの事例では、事前の合否判定による不良サービスの引渡しの防止の代わりに、始業前の手順確認や試行訓練、或いは、出来ばえの事後評価と即座の対策などの方法により、不良サービスの引渡し機会の継続的減少を図る管理が行なわれる。 機械設備製造や設備保全サービスの場合には、顧客の使用環境を借りての試運転、試験により所定の機能の発揮を確認することで最終的な合否判定が行なわれる。 金型製品や ソフトウェア製作では、顧客が試用して問題ないことの確認を以て合格判定とすることがある。
 
 
(2) 合否判定方法
@ 検査と試験

 合否判定のための情報を検知し、定められた合否判定基準と比較評価し、合否を判定する活動は、日本の品質用語では一般に検査や試験と呼ばれる。「検査」とは「(基準に照らして)調べ検めること」であり
(113)、英語“inspection”は「特にすべてが所定の通りであることを確かめるために、物事を詳細に調べること」である(101)。「試験」は機械試験、分析など、無形の特性を試験装置で計測した試験値を用いる合否判定の方式である。
 
 検査は、有形の製品サービス に関して目視など五感により検知される情報に基づく合否判定である外観検査、寸法検査が一般的であるが、しかし、検査は、服装検査、身体検査、衛生検査、視力検査、決算の検査(会計検査院)、銀行検査(日銀、金融庁)など広い事物、事象を対象とした合否判定の方式を表す言葉として用いられている。また、例えば、演劇の最終リハーサル、催し会場つくりの最終事前点検も製品サービス の合否判定活動の一種と考えることができる。 この他にも、鑑定、査定、査閲、査読、校閲、確認、監査、比較検定、模擬実験、総見、オーディション 等々、製品サービス の合否判定の方式を表す言葉が数多くある。
 
 
A 抜取り検査
 製品サービス の合否判定は、生み出した製品サービス の中から不良品を見出して除去するために行なうものであり、このためには当該の製品サービス の全数、全面、全長、全量について関連する製品サービス 特性の情報を検知する必要がある。 しかし一般に、各種製品サービス 特性の情報をこのように検知することは経済的、技術的に困難である。とりわけ、分析や機械試験など破壊試験で測定する製品サービス 特性は、全体製品サービス から抜取ったサンプルについてしか行なうことができない。 94年版(4.10.2.2)では、製造業の大量生産で普通に適用されている抜取り検査を受入検査に適用する規定が存在した。 しかし、厳密に言うと、実際の合否判定はすべて、抜取り採取の、部分的な情報に基づいた、いわゆる、抜取り検査である。
 
 抜取り検査の場合、一定の条件で継続的に製造される製品サービス に関しては一般に、無作為抽出サンプルの特性や合否結果を統計的方法で評価して、当該特性の製品サービス 全体としての合否判定が行なわれる。 工程実行の変化や変動に一定の傾向がある場合には、この傾向を考慮して必要な情報検知が行なわれる。いずれの場合も工程実行の変動を監視測定し、工程実行が所定の工程条件の許容範囲内にあることが確かめられている状態であることが前提である。 情報検知の頻度など情報抜取り採取の程度は、狙いの顧客満足の状態の実現に及ぼす当該製品サービス 特性の重要性と不良品を見逃す可能性の高さとに応じたものでなければならず、工程実行の安定性又は管理の確実さが高い程、情報抜取りの程度を緩和することができる。
 
B 工程保証
 上記Aの極致が、判明している技術的な因果関係に基づき、工程実行の状況から製品サービス 特性を推定して、これによって製品サービス の合否判定を行なう方法である。一般に工程保証と呼ばれる品質保証の方式は、このような合否判定方法を利用したものである。また、製品サービス の寿命や耐久強度などのように、個々の製品サービス について、また、抜取った製品サービス についても、製品サービス 特性を試験で求めて合否判定をすることが実際に不可能な製品サービス 仕様がある。これらの製品サービス 仕様或いは製品サービス 特性は、一般に「設計品質」と呼ばれ、所定の原材料や所定の部品の適用を確かめることで、製品サービス の合否判定が行なわれる。これらは規格では上記
§30.1(3)の業務実行の有用性検証(8.5.1 f)項)を通じた製品サービス の間接的な合否判定方式に属する。
  
  
(3) 合否判定の記録
 製品サービス の品質保証活動において製品サービス の合否判定の活動の記録はとりわけ重要である。 この記録は、合否判定の方法、使用した製品サービス の特性
§18の情報、適用した合否判定基準を明確にするものでなければならない。また、工程保証方式の合否判定では決められた業務の実績とその決められた許容範囲を明確にしたものでなければならない。また、合否判定の記録は、そこから製品サービス実現の履歴(8.5.2項)を遡ることができるようになっていなければならない。
 
 記録の範囲や詳しさは、事後における記録の使用の目的に合ったものであることが大切である。 記録は第一に、苦情など事後に製品サービス に問題が生じた場合の対応に使用される。苦情対応においては、組織は当該の製品サービスが、顧客のニーズと期待或いは顧客と合意した製品サービス 仕様を満たすことに必要な配慮と処置をとりつつ生み出され、適切な方法で合格と判断されたものであることについて顧客の理解を得ることが大切である。 この拠り所が合否判定の記録である。
  
 原因の追求と再発防止対策の検討にも合否判定の記録は重要なデータ を提供する。また、同様の問題がどの範囲に生じる可能性があるか、範囲内の各製品サービス にどのような問題発生防止処置をとる必要があるかを判断するためにも合否判定の記録が使用される。 合否判定の効果的な記録の使用によって、迅速、効果的に問題の再発防止と問題拡大の防止をすることができ、問題発生に起因する顧客満足の深刻な毀損を防ぐことができる。
 
 合否判定の記録はまた、校正や検証などで計測機器の不良が判明した場合に、誤った計測値によって不合格品を合格と判定していなかったかどうかを、過去の合否判定の記録の計測値から評価する(7.1.5.2項)のに不可欠である。
 
  更に、合否判定 活動の中で検知した製品サービス 特性の情報や不適合製品サービス の情報は、合否判定での不合格を減らし又は適切な水準に維持することを図る品質改善や品質管理の活動に必要である。 合否判定の記録の分析で得られる工程能力のデータ は、新製品サービス の品質設計や工程設計にも活用できる。各記録の保管の方法や維持の期間は、これら記録の使用の各種目的に応じたものでなければならない。
 
 
(4) 最高検査責任者
 欧米の製造業の伝統的な品質保証活動の中では、検査業務は製造諸業務の実行を監視するものと位置づけられる。 定められた手順を実行するだけの製造作業者と比較して、検査員には判断能力を含む高い技量が必要と考えられ、また、厳正な合否判断のために検査部門が製造部門から独立しているのが普通であった。この検査優位の品質保証活動においては“最高検査責任者(Chief Inspector)”の署名なしには製品を出荷することができない仕組みが普通であり、これを不良品出荷の防止の歯止めとしていた
(31)。 インターネットの求人情報には航空機修理会社の品質保証部門を統括し、修理済み機体の通常運航への復帰の最終判断をする“Chief Inspector”職などの求人情報があり、特定の産業界では今日でもこの方式が機能していることが窺える。
 
 日本でも検査部門の独立が一般的であったが、1960年代にはすべての関係者が品質に係わるべきとする品質作り込みの考え方から、製造部門に属する検査員によって行なわれる“自主検査”が導入され、やがてこれが品質管理上だけでなく、品質保証のための検査としての主流ともなっていった。 1980年代以降のこの全社的品質管理の考え方の欧米への拡がりによって、検査部門独立の必要は今や世界的に過去のものとなった。 しかし、大型プロジェクト事業では、製品サービス実現の工程での各種試験や検査に加えて、完工検査や引渡し検査など特定の責任者による総合的な合否判定の活動を適用するのが普通であり、この方式は不良絶無を必要とする製品にも不可欠である。
 
 ISO9001規格の初版(4.12)では、検査や試験に合格した製品サービスだけが出荷されるようにする手順に関連して、“最高検査責任者”を暗示する「製品のリリースに責任をもつ検査権限者(inspection authority)」が規定されていた。 この初版では、人的資源としての訓練された要員の配置の必要を検査、試験など合否判定活動 にのみに限定していた(4.1.2.2)が、これと合わせて、初版の規定が1980年前後の欧州の品質保証活動の実態を色濃く反映したものであったことを窺わせる。94年版(4.10.5)では、この条文は同じ内容のまま、検査、試験の記録の条項に移され、更に00年版(8.2.4)では単に「製品のリリースを正式に許可した人」という表現になり、15年版も同じ表現の規定を継承している(8.6項)。今日では、最終検査となる検査、試験を行った要員にこの責任権限を委ねることが、不良品を見落として顧客に引き渡されることを防止する効果的な方法と認識されている。
 
 
§30.2.2 購買品に関係する合否判定の実務
 組織が、規格の製品サービス実現の計画(8.1項)で定めた狙いの仕様と品質の製品サービス を実現し顧客に引き渡すためには、組織は供給者に要求した購買条件を満たした購買品、つまり、購買品しか受け入れてはならない。すなわち、購買品の合否判定を行い、受け入れる購買品がすべて合格品であるようにしなければならない。
 
(1) 購買品の合否判定方法
 製造業中心に書かれていた94年版(4.10.2)では標題が「受入検査・試験」の条項があったが、規定では合否判定方法を「検査又は他の方法」と規定し、この規定表現は08年版まで続いていた。15年版では「適合性検証又はその他の活動」となったが、これは近年の外注形態の拡大の実態と特にサービスを念頭に規定表現を一層汎用化するという改訂方針を反映した結果であったと受けとめるとよい。
 
 「適合性検証」は、前記
§30.1(3)@の実績を合否判定基準と比較評価して合否を直接的に判定する合否判定 方式であり、「他の方法」は、供給者による検査結果の合格証の確認を以て組織の受入検査とするような合否判定 方法であり、同Aの供給者の業務実行の有用性判定を通じた購買品の間接的な合否判定方式などを指す。
 
@ 受入検査
 購買製品の受取りにあたり組織の基準で検査を行い、合格品のみを受け入れるという受入検査は、最も普通の購買製品の合否判定方法である。しかし、今日、組織ですべての受入検査が行われていることはごく稀である。供給者が行う検査と検査項目を分担し、或いは、抜き取りで受入検査を行い、又は、供給者の検査結果の情報に基づいて組織が受入検査を行う。
 
 組織が購買品を受入検査で合否判定をするような取引でも、供給者の業務管理能力への一定の信頼が確立していなければならず、受入検査の詳しさは、この信頼の強さの程度に応じたものとなる。受入検査の方法を決める場合には、供給者の業務管理能力に対する組織の管理の方式と程度が明確となっていなければならない。94年版(4.10.2.2)では「受入検査の量と内容を決めるに当たっては、供給者での管理の程度及び提供された適合の証拠を示す記録を考慮すること」と規定して、このことを明確にしている。
 
A 業務委託現場での検査
 供給者がつくった製品を組織が業務委託現場(供給者)で検査して受入可否を決める場合がある。規格は94年版に引続き00年版でも、組織が供給者に出かけて受入予定の購買製品を検査する購買製品の合否判定のあり方を規定している。
 
 単品ものの機械産業製品によくある検査方法であるが、TC176指針
(4)が外注業務の管理の方法の事例の1つとして挙げている、建設会社が設計開発業務を専門業者に委託した場合に、組織の責任者が デザインレビュー§36.3.3に参画し、設計開発結果を組織が最終承認をするというような管理もこれに相当する。
 
 さらに、組織の構内で組織の業務の一部を供給者に委託しているような場合には、供給者の行う業務の結果としての購買品の合否判定は実質的に組織の日常業務管理の中で行われている。また、同じ企業の製造事業所の品質経営体制の中に本社の営業部門が供給者として組み込まれているような場合には、営業部門の業務の事業所による管理と業務結果の合否判定は実質的に当該企業の業務管理体制の中で行われている。すなわち、組織たる製造事業所が供給者たる本社において合否判定を行っていると考えることができる。
 
B 無検査で受入れ§31.3
 今日では、多くの購買品が組織による受入検査なしに受け入れられている。この場合、組織は受入れにあたって両者で合意した合格品である事を証明する供給者の記録や記述を確認することで、購買品が購買条件を満たしたものであると判断する。組織は、これを供給者が遵守すれば、受け取った購買品が組織に必要な所定の購買品であることが確実になると考える、供給者の業務実行と管理、或いは、品質保証体制に関する必要条件を明らかにし、個々の購買品の受け取りに際しては、それらが遵守されたかどうかを評価、判断できる内容の供給者の報告を入手する。
 
 さらに、この報告が正しいことを確実にするために、組織の求めた通りに供給者の業務実行と管理が行われ、或いは、品質保証体制が機能しているかどうかを二者監査などの方法で監視する。組織自身による管理の代わりに、供給者にISO9001の第三者認証の取得を求めるやり方もある。
 
C 無条件で受入れ
 大抵の原材料や資材、市販品や規格品など供給者が定めた仕様の製品を購入するような購買では、組織は必要な製品サービス 仕様と品質及びその他の必要条件を供給者に伝えるか、又は、それらを満たすと判断される特定の製品サービスを供給者の品揃えの中から選び顧客に伝える。購買品の受取りに当たっては、現物に表示された製品名や検査済み証の確認を以て、これらの購買条件が満たされたものと判断し、無条件で受け入れる。
 
 組織に技術知識や経験のない業務、例えば機械加工業者が特殊な熱処理や表面処理など専門性の高い加工を外注する場合では、購買条件を満たすことを確実にする管理はほとんど全面的に供給者に依存することになる。組織の指定する仕様の製品を供給者に作らせるとはいえ、購買条件を満たす管理における組織の主体性の点では供給者が定めた仕様の製品を購入するのと変わらない。
 
 08年版のTC176指針
(5)では、購買すなわち業務の外部委託には組織にその実行能力のある場合とない場合に大別され、後者の場合の組織の「外注した業務の管理」(4.1)は、供給者が行うと約束する管理が適切であるかどうかを判断することに限られ、また、この判断に外部の専門家の助けを借りるのが適切な場合もあると説明されている。このような状況の購買の場合には、実務的には組織が行うことのできる供給者の管理は、信頼できる供給者を選択することであるといえる。
 
H29.9.24 
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