ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§32
識別 及び トレーサビリティ ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-32
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

     
識別できるようにする ⇔ 識別する$14; 製造及びサービス活動(実行) ⇔ 製造及びサービスの提供§25.1;
      製品サービス ⇔ 製品及びサービス
$92; 製品サービスの実現(活動) ⇔ 製品及びサービスの提供§9.3;

 
  
§0.3  目 次

 
 
§32 識別及び トレーサビリティ
@ 識別
  JIS和訳「識別する」の英文は“identify”である。これには「特定」「発見」「区別」の3つの意味があるが$14、08年版TC176指針(6)が「物事が何であるかをはっきりさせること」と説明しているから、ある物事を他の物事と区別して見分けられるようにするという意味である。すなわち、この場合の“identify”は、「見分ける」ことを意味(113)する「識別する」ではなく、「見分けることができるようにする」の「識別できるようにする」が正しい和訳である。
 
  多数の人々が協働する場での業務の実行には意思疎通が不可欠であり、意思疎通を可能にする共通の認識、共通の理解の存在が不可欠である。何が何物であるということに関する一貫した認識は、個人としての業務実行の基本要件であるが、協働の場ではこの認識が関係者の共通理解となっていることが必要である。規格の「識別できるようにする」とは、業務実行に係わる物事に関して、関係者が同様の複数の物事の中からある特定の物事を区別し、他の物事から見分け、特定することができるようになっているということである。
 
  例えば、業務実行指示の、ある特定の機械の使用の指定が、業務実行者に誤って受け取られて異なる機械が使用されたなら、業務指示で意図した業務結果を得ることができない。複数の同種の機械には例えば1号機、2号機等の名称を付け、機械そのものにもこの名称を表示することで、このような問題を防ぐことができる。「識別できるようにする」とは簡単にはこのようなことである。
 
A トレーサビリティ
  JIS和訳「トレーサビリティ」の英文は“traceability”であり、「由来や原因をたどって調べる(101)」の“trace”が由来であり、今日では「トレーサビリティ」と呼ばれることが多いが、「履歴追跡性」「追跡可能性」という言い方もある。工業製品の製造履歴の追跡をはじめ、サービス や ソフトウェア製品をも含む製品サービス実現の履歴を遡及追跡できるという意味で広く使用されている。
 
  規格では「あるものの来歴、使われ方又は所在を追跡できること」と定義#33され、材料や部品の入手先、製品サービス実現の工程の履歴、配送方法や引渡し後の製品の所在を明らかにすることを含むと説明されている#33-1。
 
  この「トレーサビリティ」について、00年版解説書では、「ある一連の業務に関する何かについて、その業務のある段階を基準にして、それより先、又は、それまでを追跡し、その何かの起源、履歴、供された状態を明らかにすること」とか(23)、「ある事物又は活動の来歴、適用、仕様、所在を、それらを見分けることのできる記録によって遡及追跡できる可能性」とか(30)の説明がある。
 
  なお、規格では「測定のトレーサビリティ」の規定(7.1.5.2項)があるが、この「トレーサビリティ」は計量管理用語§38.3であり、全く異なる概念の「トレーサビリティ」である。
 
B 識別とトレーサビリティ
  トレーサビリティと識別できるようにする とは異なる問題ではあるが、トレーサビリティ の確立には物事が識別できるようになっていることが不可欠であるという意味で両者には関連がある(21)。 トレーサビリティが例えば、ある製品がどんな購買製品を使用して、どのような製造及びサービス活動実行の工程で、どのような要員が、どの設備を使ってどの工程条件で製品を実現し、どのような検査や試験で合否判定されて……、というように履歴を追跡できることであるとすると、このためにはまず、組織で多数使用され又は存在する購買品や設備のそれぞれを他と見分け識別できるようになっていること、また、それらの適用、工程条件や検査、試験の実績の多数の記録のそれぞれが何物であるかが見分けられるようになっていることが必要である。トレーサビリティの確保には、このようにそれぞれが何物であるかを識別できるようになっているだけではなく、それらがその特定の製品とつながりがあるかどうかが見分けられるようになっていなければならない。
 
  トレーサビリティがあるということは、何物であるかが見分けられるようになっている記録を個々の単位製品サービスを核としてつなぎ合わせることによって、特定の単位製品サービスの製品サービスの実現の履歴を遡及追跡できるようになっていることを意味する。製品の来歴、履歴、顧客の使用状況をどの程度詳しく遡及追跡し、調査する必要があるのかによって、必要な「識別できるようにする」ものの範囲や詳しさが異なり、記録のあり方も変わる。
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サニーヒルズ コンサルタント事務所