ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§33
マネジメントサイクル ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-33
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

    
事情 ⇔ 課題#65; 業務実行 ⇔運用#8; 経営管理(活動) ⇔ マネジメント$19;
     実績評価 ⇔
パフォーマンス評価$31; 品質経営(活動) ⇔ 品質マネジメント$19-0;
     品質経営体制 ⇔
品質マネジメントシステム$19-1-1; 品質経営体制の計画 ⇔品質マネジメントシステムの計画$19-1-1;
     取組む処置 ⇔
取組み$80;
 
  
§0.3  目 次

§33.1 マネジメントサイクル
§33.2 規格の品質経営のサイクル
  §33.2.1 2つのプロセスアプローチ/PDCAサイクル
  §33.2.2 品質経営活動の定期的方向づけ
 
 
§33.1 マネジメントサイクル
  経営管理活動は、組織の存立の目的に沿って事業を維持発展させる活動である
§35.1。その方法論の観点からは、組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を明確にし、その実現を図るべく組織の業務を方向づけ、実行を管理する活動である§35.2
 
  経営論では、経営管理を「組織の有している能力を組織の置かれた状況に適応させながら組織目的を達成していく過程」と定義し
(45)、経営管理活動は、無限持続体であるために組織の業績の継続的な向上を図るマネジメントサイクルの繰り返しの循環的活動と見做される。このマネジメント サイクルには研究者により様々な表現があるが、例えば野中氏は、plan‐do‐see、又は、計画‐リード‐統合という繰り返し活動に準えることを提唱している(45)。マネジメントサイクルの考え方では、経営戦略を策定し、その実現のための業務の手はずを整え、業務が手はずの通りに実行されるよう管理することによって、その戦略を実現し、戦略の実現を通じて組織目的を達成する。さらに変化する事業環境に応じて戦略を見直し変更するという循環的活動の繰り返しによって、戦略をいつの時代にも適切な状態に維持し、以て組織の永続的な存続発展を図ることができるとする。
 
@ 計画
  計画‐リード‐統合で表されるマネジメントサイクルでは、「計画する」は戦略の策定と戦略の経営目標、方針、計画としての明確化することを意味する。適切な経営戦略は、組織が置かれた環境と組織の有している能力をマッチングさせ、実現の可能性と実現により得られる利益や効用の大きさとが釣り合う最適解として決められなければならない。
 
  決めた経営戦略
§35.2は、経営方針、経営目標として明確にされる。この経営戦略の実現を図るよう業務実行の手順を決め、資源を用意して経営管理を行うための体制を確立することは、戦略を策定することと合わせて、経営管理を計画すると表現される。
規格の品質方針、組織の品質目標(5.2項)は、この経営方針、経営目標の一部としてのどのような顧客満足の姿、状態や程度を目指し、実現を図るのかの品質経営の戦略を表すものである。 規格では品質経営の実行管理の体制を確立することは品質経営体制の計画であるが、08年版(5.4.2)の規定ではこれを、品質目標を達成できるように関連する業務の手はずを整えると表現し、15年版では、リスク及び機会への取組みを計画することと表現されている(6.1項)。
 
A リード・統合
  「リードする」は人々をその方向に動機付け、導くこと、「統合する」は戦略遂行つまり計画の達成に向けて組織の能力を調整、制御することに、それぞれ関係する。すなわち、戦略実現に向けた組織内業務の実行管理という経営機能を意味し、実務的には、管理者の担う日常的業務実行管理の業務の実行のことである。管理者は、トップマネジメントの指揮の下に各業務が計画に則って行われ、計画で定められた通りの業務結果が出るよう、その担当部門内の業務実行を管理する。
 
  規格では、08年版では「製品実現」 (7章)の、また、15年版では「業務実行 」(8章)の各業務の実行を管理することであり、その管理手法が08年版では測定、分析及び改善(8章)、15年版では実績評価 (9章)及び改善(10章)に規定されている。
 
B 目的達成度の評価
  この統合と次のサイクルの計画との間にはそのサイクルの経営管理活動の成果としての目的達成度の評価と次のサイクルへの反映という経営の意思決定が含まれる。経営管理活動の成果を組織目的の達成度で評価するという経営論の考え方は、組織がある目的達成のために誕生し、その目的を達成するために存続しているという見方に立っているからである。実務では、経営管理活動の成果は、組織の業績目標を表す経営方針、経営目標の達成度評価として行なわれる。
 
  規格では品質方針、組織の品質目標(5.2項)の達成度の評価、つまり、品質経営の業績の評価は、08年版では顧客満足の監視測定(8.2.1)とデータ分析(8.4 a))として、また、15年版では顧客満足の情報監視 (9.1.2項)と分析及び評価(9.1.3 b)項)として、それぞれ規定されている。
 
C 経営戦略の見直し
  目的達成度の評価の結果は、変化する事業環境と組織の能力の評価に基づいて経営戦略の必要な見直しに反映され、その結果で次のサイクルの計画が見直される。これには組織の能力と外部環境に関する情報が日常的に体系的に収集、分析、評価される体制が組織内に確立していなければならない
(45)
 
  規格では、目的達成度の評価と経営戦略の見直し検討を行う活動がマネジメント レビュー(9.3項)である。規格は、マネジメント レビューの意義を「組織の品質経営体制が、引き続き、適当で、十分で、効果的であることを確実にする」こと
$22-2と表現し、08年版(9.3項)ではその目的を「品質方針及び品質目標を含む品質経営体制の変更の必要性を評価する」と明確に表している。
 
  変化する事業環境と組織の能力の評価の必要は、08年版(5.6.2 f))では「品質経営体制に影響を及ぼす変化
$73」を、また、15年版(9.3 b)項」では「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情」を、それぞれマネジメント レビューで評価する情報に含めることとして、明確にしている。また、15年版では、この情報の収集、分析、評価の体制の必要も明示的に規定している(4.1/4.2項)。
 
 
§33.2 規格の品質経営のサイクル
§33.2.1 2つのプロセスアプローチ/PDCAサイクル

  規格は、製品サービスの顧客満足の追求により組織の永続的な存続発展を図る品質経営の在り方を規定している。その基本要件は、あるべき顧客満足の状態に関する経営戦略を時代の変化に応じて適切に変更し、それを確実に実現させるという循環的活動として品質経営活動を行うことである。この品質経営のサイクルは、経営論のマネジメントサイクル
§33の論理に則り、また、PDCAサイクルの形で表わされて、品質経営体制のプロセスアプローチサイクルとみなして、その要件が4.4項に記述されている§43.4
 
  しかし、規格の規定は、この循環的活動を実務の品質経営活動の実態に倣って、必要な顧客満足を追求するプロセスアプローチ/PDCAサイクルの活動と、契約又は注文に対して狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービスを顧客に引渡すことを確実にするための製品サービス実現のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの活動とのふたつの循環的活動として書かれている。
 
  すなわち、実務では、後者の管理は日常業務管理であり、業務が決められた通りに実行され、決められた通りの結果を確実に出すようにする管理者による管理である。前者は、このような管理を通じて、狙いの顧客満足の状態を実現させるトップマネジメントによる業績管理の活動である。
 
@ 顧客満足追求のプロセスアプローチ/PDCAサイクル
  顧客満足追求のプロセスアプローチ/PDCAサイクルは、時代に合った狙い顧客満足の状態を決め、これを確実に実現させる品質経営の業績の追求と管理の循環的活動であり、このサイクルの中核がマネジメントレビュー
§6の活動である。マネジメントレビューは、あるサイクルの最終段階の活動であり、トップマネジメントが、時代の変化と組織の能力の変化を見据えて、変化に対応するために品質経営の戦略を表す品質方針§3の変更を含む品質経営の手はずの変更と必要な処置を決め、次のサイクルの品質経営活動を方向づける。
 
  すなわち、マネジメント レビュー(9.3項)により時代の変化に合わせて組織が実現しなければならない顧客満足の状態の狙いを決め、決めた狙いの顧客満足の状態を品質方針に表し(5.2項)、その実現のための業務の実行と管理の手はずを整え(6.1項)、それら業務を実行し(8章)、実現した顧客満足の状態が狙い通りかどうかの合否判定を行い(9章)、検出された問題に必要な処置をとり(10章)、狙いの顧客満足の状態の実現の確実な実現を図る。更に、このサイクルの最終段階でマネジメント レビューを行い、そのサイクルの実績と組織の業務能力の実態、及び、品質経営に係わる事業環境の変化 (4.1/4.2項)に対応するために、必要により顧客満足の状態の狙いを含み品質経営活動の手はずを変更して、次のサイクルを繰り返す。
 
  時代の変化にもかかわらず適切な顧客満足の状態の狙いを維持することを確実にするこのプロセスアプローチ サイクルでは、その履行/Dの段階は次のAの製品サービス実現のプロセスアプローチ/PDCAサイクルである。これは、狙いの顧客満足の状態が、その狙いに適う製品サービスを顧客に引き渡すことにより実現させるという実務の実態が規格の論理となっていることを表し、また、品質経営体制のすべての業務が狙いの結果を出した総合的結果で狙いの顧客満足の状態が実現するというプロセスアプローチ論
§43.3をも表している。
 
  実務の品質経営では、このプロセスアプローチ/PDCAサイクルの活動は、トップマネジメント主導の活動であり、狙いの顧客満足の状態は規格では「品質経営体制の品質目標
§4」であるが、品質経営活動の業績目標であるから、この循環活動は業績管理の活動である。
 
A 製品サービス実現のプロセスアプローチ/PDCAサイクル
  狙いの顧客満足の状態を実現させるためには、契約又は注文に対して、その狙いの顧客満足の状態の実現に適うように顧客の想いのニーズと期待を満たした製品サービスを顧客に引渡さなければならない。
 
  狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービスを顧客に引渡すことを確実にするためのプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは、狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービスがどのようなものかを決め(8.2.2項)、その製品サービスの実現の方法を決め(8.1項)、実現のための製造又はサービス活動を行い(8.5.1項)、決められた通りの製品サービスであるかどうかの合否判定を行い(8.6項)、発生した決められた通りでない不良品に対して必要な処置をとり(8.7項)、合格品だけを顧客に引き渡す(8.6項)。 また、検出された業務実行の問題を正して(10章)、不良品を顧客に引渡すことのない業務能力を高めて、次の契約又は注文で次のサイクルを繰り返す。
 
  決められた狙いの顧客満足の状態の実現に適う製品サービスを顧客に引渡すことを確実にするためのプロセスアプローチ/PDCAサイクルは、製品サービスの実現の各業務(8章)を繋いだプロセスアプローチ/PDCAサイクルであり、普通のPDCAサイクルである。
 
  また、実務の品質経営活動では、このプロセスアプローチ サイクルの循環的活動は、製品サービスの実現に係わる業務がその狙いの業務結果を出すための管理であり、業務が決められた通りに行われ、決められた通りの結果が確実に出るようにする業務実行管理の業務であり、管理者の業務である。また、業務結果は、規格では「業務の品質目標
$4」であるが、実務では業務目標であるから、この循環活動は上記@の業績管理に対して業務実行管理の活動である。
 
   
§33.2.2 品質経営活動の定期的方向づけ
  無限持続体としての組織の存続発展を図る経営管理の方法論であるマネジメントサイクル
§33.1では、トップマネジメントは、組織の目指す姿とそこに到達するための道筋或いは方策を経営戦略§35.2として明らかにし、これを時代の変化に合わせて見直し変更し、経営戦略を常にその時代に適切なものとして維持しなければならない。この経営戦略の見直し変更は、変化する外部環境に組織の有する能力を適合させることであり、この経営判断には外部環境の変化に係わる不確実性§34.2を考慮することが必要である。
 
  規格の品質経営活動では、上記
§33.2.1の顧客満足追求のプロセスアプローチ/PDCAサイクルにおいて トップマネジメントは、狙いの顧客満足の状態とその実現のための道筋或いは方策を品質方針(5.2項)として表し、それに向かって品質経営活動を統率し、経営管理のサイクルの最終段階でマネジメントレビュー(9.3項)を行って、進行する時代の変化を見据えて、必要な品質方針(5.2項)の変更を含み、次のサイクルの品質経営活動を方向づける経営判断を行う。
 
  すなわち、トップマネジメントは、それまでに収集した「外部及び内部の事情」の情報(4.1/4.2項)を、狙いの顧客満足の実現の程度という品質経営の業績目標の達成度とそれに係わる業務実行の問題点としての業務能力の実態と合わせて評価し、時代の変化への対応の観点での「組織と組織の置かれた状況」(4.1項)を把握しなければならない。さらに、この認識を基に、組織の引き続く存続発展のための顧客満足の追求に関して、対応する必要のある課題を抽出し、それら課題への取組みのための経営施策としての処置(9.3.3項)を決定する。これにより、組織の実態と時代の状況に合った顧客満足の状態の実現ができるよう、品質経営活動を方向づける。
 
  規格では、この課題抽出と課題取組みの決定は、「外部及び内部の事情」の実態とその推移又は変化によって起きる可能性のある事態を予測し、顧客満足追求のために放置すべきでなく、対応が必要な、又は、対応する方がよい事態を特定し、それらの内の顧客満足追求に好都合な、良い事態を活用し、顧客満足追求に支障を来す不都合な、悪い事態を回避又はその影響を最小化するという観点で行われる。
 
  ここに、規格の表現では、「組織と組織の置かれた状況」を表す「「外部及び内部の事情」の推移又は変化で起きる可能性のある事態が「リスク及び機会」であり、対応する必要のある課題としての事態が「取組む必要のあるリスク及び機会」(6.1.1項)であり、これら事態に取組むための経営施策としての処置が「リスク及び機会へ取組む処置」(6.1.2項)である。
 
  なお、経営施策としての処置である「リスク及び機会へ取組む処置」を業務として実行するために手はずを整える活動は「品質経営体制の計画」(6.1.1項)であり、処置の狙いを実現するための関連業務のそれぞれの狙いの結果が、業務目標として品質目標(6.2項)である。
       H28.10.28
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サニーヒルズ コンサルタント事務所