ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§35 経営管理 ISO9001: 2015
   論理と用語   
33b-02-35
0.1 概要   こちら
 
0.2 *実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応  (英語解釈 抜粋)
   外部及び内部の事情 ⇔外部及び内部の課題#65;   経営管理体制 ⇔マネジメントシステム$19-1;
   品質経営 ⇔品質マネジメント$19-0;     品質経営体制 ⇔品質マネジメントシステム$19-1-1;    
   品質経営体制の計画 ⇔品質マネジメントシステムの計画$19-1-1;
 
 
 
§35 経営管理
   経営論 規格のJIS和訳「品質マネジメントシステム」の「マネジメント」は、英文では“management”であり、これは英語では紛れもなく組織の経営、或いは、経営管理のことである。規格は全体として、経営論の基礎的な経営管理の枠組みと米国国防省MIL-Q9858Aに発する品質保証規格の流れに、1980年代に世界標準として認められた日本の製造業の実践的な品質経営の考え方と手法を加えて書かれている。
 
  規格の規定の内、組織及びその状況の理解(4.1項)、利害関係者のニーズ及び期待の理解(4.2項)、リーダーシップ及びコミットメント(5.1.1項)、品質方針、品質目標(5.2項)、リスクと機会に取組む処置(6.1項)、パフォーマンス評価 (9.1.1項)、マネジメント レビュー(9.3項)などの条項は、経営論の基礎的な経営管理の枠組みに基づいて書かれており、規定では経営用語がそのまま、又は、修飾されて用いられている。
 
 
 
§35.1 経営管理
  経営論では経営管理は、組織の存立の目的に沿って事業を存続発展させる活動である。組織はその目的を果たすために無限持続体或いは継続組織体として生き残っていかなければならない。営利企業などの経済組織が生き残るためには、常に社会的ニーズの高い財・サービスを提供することと、財・サービスの提供に要する費用を上回る収入を得ることというふたつの条件を満たさなければならない。簡単に言えば、前者は何を作ればよいかであり、後者は如何に作ればよいかということである(44)
 
 組織がどのようにこのふたつの条件を満たして存続発展を図るのかの組織の基本的意思決定は、経営戦略の策定と言われる。経営戦略とは一般に、組織目的を果たすための組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策(45)のことを意味する。この観点から、経営管理は、経営戦略を策定し、それを経営方針、経営目標、経営計画として表し、具体化して、その実現を図るように事業活動に関連する業務の実行を管理する活動と定義される。
 
  しかし、どのような姿を目指しても実現するという訳ではなく、組織は、「企業が有する経営資源と企業を取り巻く環境との間に、企業目的の実現にとって最も有利な適合関係を創り出す」という形での進路を選択、決定することが必要である(54)
 
  このように、経営戦略を策定し経営戦略を実施又は遂行して組織目的の実現を図る経営管理活動の方法論は、一般にマネジメントサイクル§33として捉えられる。
 
  規格では、組織の存続発展を図る管理の活動であることに焦点を当て、経営管理活動を「組織を方向づけ制御する統制された活動」と、経営戦略を策定してその実現を図る管理の活動として定義#19している。
 
 
§35.2 経営戦略
(1) 経営戦略
  経営論では、経営戦略とは組織目的を果たすために組織が無限持続体としてどのように存続発展を図るのかの組織の基本的意志を表すものであり、組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を示す(45)。それは、組織の事業とは何か、及び、それは如何にあるべきかに対する解であり、組織のあり方や事業環境との係わり方の指針であって、組織内の様々な意思決定の指針又は基準の役割を果たす (43)。さらに、組織の基本的な活動内容と範囲、経営資源や業務構造の確立や適用の基本的な考え方、競争上の位置づけ等々を規定にするものとも説明(44)される。
 
  規格では、組織の存続発展のために実現が必要な顧客満足の状態としての品質経営の戦略は、品質方針及び組織の品質目標(5.2項)として表される。
 
 
(2) 経営戦略の策定の方法論
  経営戦略が描くあるべき組織の姿は、そのような組織が顧客を中心に社会の関係者に受け入れられるようなものでなければならず、かつ、組織がそれを実現させることが可能なものでなければならない。経営論では、適切な経営戦略は、組織の外部環境或いは組織の置かれた状況と組織の有する能力或いは資源とを適合させることによって導き出すことができるとされる。
 
  経営論では、経営戦略の策定には、とりわけ外部環境に係わる不確実性という現実に立脚した問題検討や思考が重要視される。すなわち、経営戦略の策定とは、組織の存続発展に向けて組織が置かれた環境における機会と脅威を識別し、組織の有する独自能力の評価を経て、独自能力とのマッチングを図ることである(44)とされ、或いは、組織の有する資源を外部環境が生み出す機会とリスクに マッチさせることである(43)などと説明される。ここに、経営用語としての「機会と脅威」は、将来に見込まれるそれぞれ好都合と不都合な事情のことであり、それらによりもたらされる可能性のあるそれぞれ好都合と不都合な結果が「機会とリスク」である。経営戦略決定に係わる好都合と不都合とは、組織の存続発展に、或いは、経営目的の追求に対してそれぞれ貢献する、又は、障害となるという意味である。
 
  組織が、経営戦略を新たに策定し、或いは、見直し変更する場合には、外部環境における組織の存続発展に好都合な事情(機会)のその活用で実現の可能性のある好都合な結果(機会)、及び、不都合な事情(脅威)とそれがもたらす可能性のある不都合な結果(リスク)を特定し、それぞれに組織の有する顕在及び潜在能力でどのように対応できるのかを検討することが必要である。組織は、置かれた環境と有している能力を勘案して、実現の可能性とそのための費用が実現により得られる利益や効用の大きさとが釣り合う最適解として自らの存続発展の道を選択する。
 
  米国ハーバード大学ビジネススクールで開発され、今日広く経営分析分野で用いられているSWOT分析法では、外部環境と組織の能力に関係する種々の要素を、組織目的の達成に貢献するか障害となるかによって、機会(opportunity)と脅威(threat)、強み(strength)と弱み(weakness)にそれぞれ分類した上で、経営の方向を検討する。
 
 
(3) 外部環境と組織の能力
  外部環境とは経営論では、一般環境(政治、経済、文化、社会、自然環境)、事業に係わる環境(顧客、市場、競合組織、地域性)、組織間環境(政府・自治体、供給者、投資家)等である。また、組織の有する能力は資源とも呼ばれ、要員と組織全体としての戦略立案・管理能力、技術・専門能力、業務能力、要員の資質、組織風土、設備力、資金、事業規模、立地等であり、組織がどのような価値を生み出す能力を持っているかである。
 
  品質経営に係わる外部環境は、実務的には次のように分類して情報収集するのがよい。
a) 現状製品サービスに対する顧客の受けとめ方、
b) 製品のニーズや期待に関係する顧客、市場、社会の動向、
c) 競合組織の動向、
d) 製品や製品実現に関連する技術の動向、
e) 製品や製品実現業務に関係する法規制、規格の動向
 
  また、組織の能力は、実務的には業務実行管理の実績、内部監査の結果、それらを通じたトップマネジメントによる分析結果、及び、実行中や予定される設備や要員など資源に関する変化などで評価される。
 
  規格では、マネジメントレビューで評価すべき「品質経営体制に関連する外部及び内部の事情」(9.3.2 b)項)のことであり、外部環境と組織の能力とを合わせて「組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の事情」(4.1項)と、「顧客のニーズと期待及び適用される法規制を満たす製品サービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を及ぼす利害関係者とそのニーズと期待」(4.2項)とも表現している。
 
 
(4) 経営戦略の見直し変更
  上記(2)のような経営戦略策定の方法論§35.2に焦点を当てて経営管理活動を「組織の有する能力(資源)を状況のニーズに適応させながら組織目的を達成していく活動」と定義(45)する向きもある。すなわち、組織が無限持続体として存続発展するためには、経営戦略を時代の変化に応じて適宜見直し変更し、いつの時代にも顧客や社会に受け入れられ、且つ、組織の能力で実現可能な経営戦略を維持しなければならない。
 
  規格では、このことを「組織の品質経営体制が、引き続き、適当で、十分で、効果的であることを確実にする」こと$22-2と表現し、ている。
 
  規格では、経営戦略の見直し変更の必要を、その検討の活動である マネジメント レビューの定期的実行の必要として規定している(9.3項)。また、見直し変更の方法論としては、マネジメントレビューによって品質経営に影響する内外の事情の変化(9.3.2 b)項)及びその他の問題点に対応するのに必要な、品質方針と組織の品質目標(5.2項)の変更を含む品質経営体制の手はずの変更を決め、このための経営施策 (9.3.3項)を決めることを規定している。そして、経営戦略の見直しそのものについては、外部及び内部の事情 (4.1/4.2項)に基づいて抽出した経営課題としての「取り組む必要があるリスク及び機会」(6.1.1項)への対応としての「リスク及び機会への取り組み」の手はずを整えることと表現している(6.1.2項)。
 
 
   
§1.3 経営理念
  どの組織にも創業の目的があり、それを追求する事業活動を行っている。この創業の目的は英語では“Purpose”である。これをどのように実現するのか、事業遂行の指針となる基本的な考え方ないし哲学は経営理念、英語では“Managerial Philosophy(54)”又は“Values(23)”と呼ばれる。これは、創業者の遺訓や社是や社訓として成文化されていることが多い。また、実際にどのように事業を行い、何を目指すのか、現在と将来の事業の在り方を明らかにしたものは使命又はビジョンと呼ばれ(55)、英語では“Mission”“Vision”である(23)。使命が描く組織の最終の到達点は、基本目標、英語では“fundamental objectives”と表される。これらは経営機関たる取締役会が最終的な意思決定を行う。なお、これら用語の用法については研究者や文献で必ずしも一定していない。
 
   
   
§1.4 経営方針
  トップマネジメントは、組織目的に適う組織のあるべき姿、目指すべき将来像に関して、また、そこに到達するための道筋或いは方策に関する考え方或いは指導原則、つまり、経営戦略を経営方針として明確にして、それに沿って組織の業務を指揮し統御する。経営方針は通常、反復的に起きる同じ種類の問題に対する意思決定と行動に一貫性を与えるために組織が設定する指導原則及び実行手続きを指す(54)
 
  経営理念、経営方針とも、組織の要員が一体となって業務を行うのに不可欠な業務上の指針を示すものであるが、理念は拠り所や指針であり、概念的であり包括的で、トップマネジメントの哲学や信念に関係し、一方、方針は理念より具体的で、業務の実行に関する必要についての トップマネジメントの想いに関係する。また、理念が トップマネジメントの交代があっても変わらず引き継がれていき、時代の大きな変化に適合して周辺から少しずつ変化していく(55)のに対して、方針は事業環境の変化や問題解決の実績によって変わっていく。理念は経営方針を決める際のトップマネジメントの意思決定の過程に影響を与える(54)のに対して、方針は要員が意思決定する時の直接的な指針(56)となる。
 
  経営理念に相対する経営方針は基本方針とも呼ばれる。経営方針にはこの枠内の下位の方針として、より具体的は拠り所或いは方向を示す中期方針、短期方針が設定され、年度に限った年度方針もある。一般に、基本方針は行動指針や指導原則の性格が強いが、短期や年度方針は具体的な到達点を念頭に向かうべき方向やそのための方法についての考え方或いは枠組みを示す実行方針としての性格が強い。
 
  経営方針はまた、方針設定の範囲によって、組織全体のマネジメント(全般管理)に係わる全般的方針と、それを受けた部門内業務のマネジメント(部門管理)に係わる部門方針とに分けられる(54)。これらは英語ではそれぞれ“General Policies”“Departmental Policies”である。更に、経営方針が取扱う対象によって、事業方針、事業所方針などの事業別方針、及び、販売方針、財務方針、品質保証方針、安全衛生方針などの機能別方針に分けることができる。
 
 
 
§1.5 経営目標
  経営目標は経営方針と一対であり、経営の意思表示である。経営方針が組織のあるべき姿、目指すべき将来像に関して、また、そこに到達するための道筋或いは方策に関する考え方、方向性を示すのに対して、経営目標はそれらの特定時点での到達点或いは達成すべき状態や程度を表す。経営の基本方針に対応する基本目標は一挙に達成できるものではなく、それぞれの時点での事業環境の必要や組織の経営資源の実態を勘案した中期目標や短期目標に或いは、状況に見合う実行目標に展開され、その達成の繰り返しで、段階的、継続的に目指すべき将来像が追求される。基本目標は一般に抽象的、概念的であり、中期や短期目標、実行目標ほど具体的、定量的に表される。
 
  経営目標は、日常の経営管理の各業務を通じて達成が図られる。その実現、達成のための業務実行の手はずを整えることは、マネジメント サイクル§7では経営方針、経営目標を決めることと合わせて「計画する」と表現される。規格では品質目標を達成するための業務の手はずを整える活動を、マネジメントシステムの計画(6章)と呼ぶ。
 
  経営目標には、objective(目標)、goal(到達点)、target(標的)とも表される様々な性格のものがあり、実務的には戦略(基本、長期)目標、中期(戦術、個別)目標、短期(実行、年度)目標などに分けられる。いずれも将来の組織のあるべき姿を表すが、想定期間が長いほど概念的、抽象的に表され、想定期間が短いほど内容が明確で具体的となる。
 
 
 
§1.6 経営計画
  どのように経営戦略の実現を追求し図るのかの経営構造ないし経営管理体制を確立することが「計画する」である。この経営計画は「需要構造の変化、技術革新など企業環境の変化に適応するための経営政策に従って、企業の将来のあるべき姿を経営するための意思決定であり、環境変化に適応しうる経営構造をつくり上げること」とも説明される(54)
 
  経営計画は経営方針、目標を達成するのに必要な業務実行と管理の方法、手段、責任、日程から成り、そのために必要な資源が用意されている。規格では、計画活動(planning)は、手順を確立し資源を用意する活動として記述されている。
 
  経営計画には、経営基本方針、この枠内の下位の方針としての中期方針、実行方針的な短期方針や年度方針など、それぞれの方針と目標に対応する基本計画(戦略計画)、中期計画、短期計画などがある。基本計画は事実上、事業推進のための経営管理体制がどのようなものか決め、必要な資源を用意するものであり、年次計画など短期計画は、特定の業績目標の実現を図るための手段の開発や資源の手当てやその日程計画が主体となる。
 
 
   
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H26.12.12, H27.11.3(2015年版)
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 サニーヒルズ コンサルタント事務所