ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§38
計量管理 ISO9001:2015 ISO9001/14001
規格の論理と用語   
33b-02-38
ISO14001
SL共通テキスト
§0 概要   こちら
 
 
前書き
  計測器は一般に、使用によってその性能や機能を劣化させる。 計測器の機構上必然の自然の性能変化は、計量管理用語では「経年変化」と呼ばれ、これに対して計測器の機能や性能を使用目的に必要な水準に維持するために行なう活動は「計量確認」と呼ばれる。08年版ではこれを「測定機器がその用途のための必要条件を満たすことを確実にするのに必要な一連の操作」と定義し、一般に、校正又は検証、必要な調整又は修理、並びに、その後の再校正、再検証を含み、更に必要なら封印や標識をつけることも含まれると説明している#37p。効果的な品質経営業務のためとして本項に規定される『測定機器』の管理の要件が、計量計測管理の国際標準の用語と方法論に依拠しているとして、規定の意図を読み取る必要がある。
 
 
§38.1 計測分野の国際標準
(1) 計測用語

 計測用語の国際的標準化は、1984年に国際度量衡局(BIPM)、国際法定計量機関(OIML)とISO、IECが共同で定めた「国際計量基本用語集(略称 VIM)」が最初であり、以降拡充されて2007年には第3版がISO/IEC 指針99として発行されている。また、1995年初版のISO/IEC 指針98「計測における不確かさの表現ガイド(略称 GUM)」にも、用語の定義がまとめられている。日本では、これらとの関係を明確にしたJISZ8103(計測用語)が発行されており、2012年にはVIM(2007年改定3版)とGUM(1995年改定版)とが、それぞれ技術仕様書TSZ032、TSZ033として2012年に翻訳発行されている。
  
 ISO9001の用語と計測値や計測器の管理の規定が、基本的にこれらのISOが当事者となって作成した国際標準に則って書かれていると考えるが自然であり、実際、94年、00年の両版では計量確認の国際標準であるISO10012規格(154)を参照すべきことが書かれていたことからも明らかである。94年版(4.11.2項)の『精度』『正確さ』『精密さ』も08年版や15年版の『校正』『検証』『調整』『トレーサビリティ』も国際標準の計測用語の意味で解釈しなければならない。但しJIS和訳では例えば、“international standard”“national standard”は、JISZ8103では『国際標準』『国家標準』、ISO9001では『国際計量標準』『国家計量標準』というような用語の不一致がみられる。
  
  
(2) 計測マネジメント システム規格
  94年版(4.11.2)、00年版(7.6)で参照すべき旨の註釈があったISO10012規格は、国際貿易における製品品質の信頼性を高めることが狙いで作成され、製品品質の保証のために必要な正しい計測値を得ることを確実にする計測のやりかたの管理と計測器の管理の要件を、トップマネジメントが経営の課題として取り組むという枠組みの中で規定している。1992年に「ISO10012-1(測定器の品質保証要求事項−第1部:測定器の計量確認システム)」、1997年に「ISO10012-2(測定装置の品質保証−第2部:測定プロセス管理の指針)」として作成されたが、2003年に一本化されて「計測マネジメント システム−測定プロセス及び測定機器の要求事項」となった。
  
 旧規格第1部の計量確認は、計測器の精度や性能の維持の管理であり、第2部の測定プロセス管理とは計測の必要を満たす計測器の適用や合否判定基準の設定などの管理である。ISO9001(7.6項)の『監視及び測定の要求事項との整合性を確保できる方法で監視及び測定が実施できることを確実にする』は旧規格第2部の部分であり、同規格やISO14001(4.5.1項)の『校正』が関係するのは旧規格第1部の部分である。
08年版ではこの註釈が削除され、15年版でもこれへの言及はないが、規格執筆者からの特別な説明もないので、とりわけ重要でもない規格記述上の変更と理解される。
  
   
§38.2 計量確認
(1) 計量確認
 「計測器」は一般に、使用によってその性能や機能を劣化させる。 計測器の機構上必然の自然の性能変化は、計測用語では「経年変化」と呼ばれ、これに対して計測器の機能や性能を使用目的に必要な水準に維持するために行なう活動は「計量確認」と呼ばれる。 ISO9001の条文にはこの用語は使われていないが、「測定機器がその用途のための必要条件を満たすことを確実にするのに必要な一連の操作」と定義#36pされ、同定義では「計量確認」という場合は一般に、校正又は検証、必要な調整又は修理、並びに、その後の再校正、再検証、機器の意図された用途の計量上の必要事項と比較、更に必要なら封印や標識をつけることも含まれると説明されている。
 
 計測器の構造や機構、使用環境などによって経年変化の程度は異なるが、この程度は計測用語では「安定性」「無影響性」と呼ばれる。 ここに「経年変化」は長期の時間経過に伴って計測器の特性が変化することと定義され、「安定性」とはその変化の小さい程度を意味し、「無影響性」とはその変化が小さいことに関する計測器の能力を意味する(92)。天秤には無影響性があり、測定により自身を熱してしまう抵抗温度計には無影響性がない(92)。
 
 計測器の管理の方式としての「計量確認」では、その結果で当該計測器がその目的のために必要な水準の性能や機能を失っていると判断されることがあってはならない。計量確認は、そのようなことがないような長さの一定期間毎に、又は、使用頻度に応じた一定間隔毎で実施することが必要である。すなわち、計量確認の間隔は、計測器の「安定性」或いは「無影響性」の程度に応じたものとすることが必要である。
 
(2) 校正と検証
 計測用語で「校正」とは「計器又は測定系の示す値、若しくは、実量器又は標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業」であり(146)、当該計量器による測定値が真の値とどれ程ずれているかを明らかにすることである。 ここに「実量器」は分銅、枡、標準電気抵抗器、ブロックゲージ、標準信号発生器など、また、「標準物質」はpH標準液、元素標準液、標準ガスなどであり、個々の計測器の校正の基準として用いられる器具、物質である(146)。 計測用語では、測定値と真の値との差異は「誤差」であるから、校正は計測器の測定範囲にわたって測定値の誤差を明らかにすることであり、この誤差は校正係数、又は、校正曲線という形で表現される。 これらを用いて測定値を読み替え、又は、補正することにより、測定値は真の値となる。
 
 一方、計測用語の「検証」は「規定要求事項に合致していることを検査及び証拠提示によって確認すること」であり(147)、当該計測器の測定範囲、分解能、最大許容誤差、測定のばらつき(93)などの性能が、計測器の使用目的の必要を満たしていることを証拠で明らかにすることである。この「検証」には、もし劣悪な環境で使用される計測器ならばその環境に耐え得る丈夫さをもっているかをも明らかにすることが含まれ、また、技術の進歩により開発されたより良い計測方法や計測器に置き換えることができないかを検討すること、仮に生産量に変動があれば従来の校正間隔が適切かも見直すことも含まれるとの説明もある(93)。 「検証」の結果により、そのまま使用する、或いは、使用のために機能を回復させる、調整を行なう、修理する、格下げする、廃棄するなどの判断をすることになる(147)。
 
 計量確認における校正と検証の違いは基本的に、対象とする計測器に違いがあるのではなく、対象とする測定値の特性の違いである。 すなわち、校正は計測器の誤差の管理の手段であり、経年変化で拡がった誤差は校正によって元に戻すことができる。検証はこの他の測定値の特性の管理の手段であり、明らかにされた性能の劣化を修復するには、計測器を調整、修理、又は、新品と置き換えることが必要である。
 
 
(3) 校正と調整
 計測用語で「調整」は「計器をその状態に適した動作状態にする作業」のことであり(146)、「校正」や「検証」で明らかにされた誤差をなくし、又は、他の機能、性能の不備を修復、調節することである。 今日の国際的計量用語(92)では、「校正(calibration)」は当該計測器による測定値と真の値との差を明らかにするだけを意味し、「調整(adjustment)」は含まれない。この校正の定義は、00年版が引用していたISO10012-1(計測器の計量確認)でも同じであり、JISZ8103(計測用語)(146)でも「校正には計器を調節して誤差を修正することは含まない」と明記されている。
 
 調整機能を有する計測器では、校正の結果により計測器を調整して、必要な測定範囲にわたって示される測定値が真の値となるようにする。分析器や機械試験機ではこの機能を有していることが多い。調整機能を持たない計測器で、校正の結果による測定値を読み替えが困難な計測器の場合は、可能なら機能回復のための修理を行なうか、或いは、格下げ、廃却などの処置に供する。
 
 
(4) 校正と較正
 日本でも古くは、「較正」と表現されて、今日の「校正」により明らかになった誤差を修正する調整を行なうことが普通であったと言われる。 現在でも、電波法(102条18号)が無線設備の点検に用いる周波数計など7種の計測器の独立行政法人情報通信研究機構及び指定較正機関による較正の必要を規定しており、労働安全衛生法の作業環境測定基準(2条3項 1号)が屋内作業場の粉塵濃度を測定する測定機器の指定較正機関による較正の必要を規定している。 また、コンピューター や監視カメラ の表示装置である ディスプレー 或いはCRTは、経年変化によって表示される画像の輝度、色、歪みや画像のずれなどが生じる。これを調整することを表示較正(monitor calibration)と呼ぶとの説明(94)がある。
 
 
(5) 校正の種々の方式(148)
 校正は、詳しくは、「点検」と「修正」から構成されている。 すなわち、「点検」は校正された実量器や標準物質など測定標準に照らして測定値の真の値からの誤差を求める作業であり、「修正」は計測器の全測定範囲にわたる誤差を求めて校正係数や校正曲線として表す作業である。 一般に計測器の校正のやり方には、「点検」と「修正」の適用とそれらの結果によってとられる処置の違いで様々な態様が存在する。校正の方式は一般に4種類に区分できる。
 
 最も一般的な校正方式では、まず「点検」を行い、「点検」結果は予め定められた「修正限界」と比較され、当該計測器をそのままで使用を続けるか、「修正」を行なうか、又は、計測器を破棄するか、のいずれかの処置に付される。「修正」を行なった場合には、校正曲線で測定値を補正して計測器を使用するか、または、「調整」して計測器が真の値を示すようにして使用するかのいずれかである。 ある測寸器でその測定範囲の上下限に相当するブロックゲージを測定し、測定値の誤差が「修正限界」以内ならその測寸器の使用を継続し、「修正限界」外なら外部の校正機関に校正を依頼するというような場合は、この校正方式に相当する。 内部で「点検」せずに校正を校正機関に依頼する場合は、組織は「修正」済みの計測器を受け取ることになり、「修正」結果に基づいて、「修正」せずに使用するか、「修正」結果の校正曲線を用いて使用するか、「調整」するか、破棄するかの、いずれかの処置に付される。
 
 「点検」を行なわず、必ず「修正」して計測器の使用を継続するような校正方式もある。組織が校正機関に校正を依頼する場合は一般にこれに該当する。この方式は機械試験機など長期間使用される高価な計測器の場合にも一般に適用され、「修正」結果に基づく「調整」や修理が行なわれることも多い。 新品購入より「修正」や修理が高額な計測器に関してなど、定期的な「点検」だけで、そのままの使用継続か破棄かの処置に付する校正方式もある。 また、更に、無校正の校正方式と呼び、校正することなく計測器を使用し続け、一定期間後に破棄する方式も挙げられている。これは、計測器の誤差が例えば測定対象の製品の公差に比べて十分に小さいことがわかっている場合などに適用される。
 
 
§38.3  計量標準
(1) 計量標準
 校正は当該計測器による測定値と真の値との差を明確にする作業であるが、真の値を体現するのが計量標準、又は、測定標準であり、これは計測分野では単に標準と呼ばれることも多い。 これは具体的には例えば、1kgの質量標準器、100Ωの標準抵抗器、標準電流計、セシウム周波数標準器、標準水素電極、認証された濃度をもつ人間の血清中のコルティゾールの標準液のようなものである(92)。 日本の計量法(2条1項)は、「計量」を「物象の状態の量を計ること」とし、計量の基準となる「計量単位」として長さ、質量、時間、温度を初め、70種類以上を定めている。 また、同法は、これらを23区分に分けており、それぞれの計量標準の整備の必要を規定している。 この必要を満たすために、2010年までに物理標準250種類、化学標準250種類を整備する経産省の目標があるとされている(95)。
 
 計量標準には、真の値を体現するものであると国際的合意によって認められた国際計量標準、及び、国家的決定によって認められた国家計量標準がある。 ひとつの国際計量標準を世界で使い回しすることは不可能であるから、実際には、計量標準相互承認協定(MRA)によって、各国で整備される国家計量標準が同等であることを認め合っている。これにより各国の計量標準は国際比較によって同等性の程度が明らかにされ、国際計量標準との繋がりをもつことになる。
 
 
(2) 計量 トレーサビリティ
 国内各組織で使用される計測器の数は膨大であり、これらをひとつの国家計量標準と比較して校正することは出来ないから、国家計量標準を一次標準とし、これを基礎として当該量に関して校正された複数の二次標準が作製される。 更にこれを基礎として校正された実用標準とも呼ばれるより下位の標準が作製される。このような形で、計測器の計量確認のための校正の基準となる計量標準が多数作製され、運用されている。どの段階の計量標準の校正でも、結果は、校正曲線として表現される真の値との差、及び、計測用語(92)の「不確かさ」の形で表され、これを記述した校正証明書が発行される。ここに「不確かさ」とは、その真の値がその校正された値からずれている可能性があると考えられる範囲、つまり、校正曲線の確かさの程度のことである。
 
 このように、国家計量標準を基礎として二次標準を校正し、更にこれを基礎としてより下位の実用標準を次々と連鎖的に校正することによって、どの段階の実用標準も国家計量標準の体現する真の値との差及び確からしさが明瞭となる。このような計量標準の性質を「トレーサビリティ」と呼び、トレーサビリティ を有する計量標準は トレーサブル な計量標準であると表現される。
 
 国際計量基本用語集(92)では「トレーサビリティ」を、校正の連鎖によって当該計量標準が真の値を体現する国家計量標準に比較しての誤差が明確になっており、その校正曲線の真の値に対する「不確かさ」が明確になっていることであると説明している。このような計量標準を基礎として校正された計測器であれば、同じものを測定した場合の測定値はどの計測器で計測されても同等であり、そのものの真の値であると信じるに足る。
 
  
(3) 校正機関の認定制度
 組織で使用される計測器、及び、実用標準の校正が、国家計量標準に トレーサブル な計量標準を基礎として行なわれ 、当該計測器による測定値の信頼性を確保するために運用されているのが、校正機関の認定制度である。 校正機関は認定機関により、国家計量標準に対する トレーサビリティ を確保して校正事業を行なう能力を審査され、校正結果の信頼性にお墨付きを与えられる。 組織は、このような校正機関に校正を依頼することにより、使用する計測器と測定値の トレーサビリティ を確保することができる。
 
 日本では、H5年の改正計量法(8章)により、国家計量標準へのトレーサビリティを確立する校正事業者登録制度(JCSS)が開始された(96)。 この制度では(独)製品評価技術基盤機構 認定センター(IA Japan)が認定機関となって、「指定校正機関」を認定し登録している。 登録された校正機関は、その発行する校正証明書にJCSSマーク の使用が認められ、この マーク付の校正証明書は当該計測器が国家計量標準と繋がっていることの公式の証明となる。
 
 国際的には、適合性評価機関を認定する機関に関する規格(ISO1/IEC17011)、及び、校正機関に必要な能力(ISO/IEC17025)に関する要件を規定する規格がある。 日本では日本適合性認定協会(JAB)がISO/IEC17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)に適合する校正機関を認定し、JABマーク の使用を許可している。 JCSS制度の場合の認定基準も同じISO/IEC17025であるから、校正機関が使用する認定マーク は異なっても、認定された校正機関の計量トレーサビリティ確保に関する能力の証明であるという点では同じである。
 
 また、計測値及び校正証明書の国際的信頼性の確立のために、世界の試験所及び校正機関の認定機関の団体である国際試験所認定協力(ILAC)の下に、各認定機関が署名した相互承認協定があり(97)、日本の両認定機関もこれに加盟している。 相互承認協定に署名した認定機関に認定された校正機関は、それぞれの認定機関のマーク に加えて、その校正証明書にILAC-MRAマークを付すことができる。 この校正証明書は、計量標準相互承認協定とあいまって、計測器や計測値の国際計量標準への トレーサビリティ を保証するものとして、国際的に受け入れられる。 この国際的な計量管理の枠組みにより、他国の製品の大きさや重さを初め機能や性能に係わる測定値が製品に添付の検査票の記録の通りに信頼できるものとなり、輸入国で再度計測する必要もない。
 
   
注釈
§1 など:  論理及び用語                   こちら<sub33b>
*Q1など:  改定版解釈に関する引用資料  こちら <sub02>
$1など:  英文解釈                          こちら <sub03>
#1など:   用語の定義                       こちら <sub04>
(1) など:  引用文献                         こちら <sub05>

H27.5.28 
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