ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§40
顧客重視 ISO9001:2015
 論理と用語   
33b-02-40
 
 
§0.1 概要   こちら
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

   
経営管理(活動) ⇔ マネジメント$19;   顧客要件 ⇔ 顧客要求事項$1-2-2;   製品サービス ⇔ 製品及びサービス$92;
  品質経営(活動) ⇔品質マネジメント
$19-0;

 
 
(1) 顧客重視
  5.1.2項標題の「顧客重視」の英文は“customer focus”であり、マーケッティング論では「顧客本位」と和訳されることが多い。事業組織が長期的に成長し発展することを目指すなら、常に新しい顧客を創造し続けなければならない。この顧客創造は、顧客の必要を探り、それを満たすことによりもたらされる。今日の世界的な競争社会では、顧客創造は単にマーケティングの目的ではなく、経営の目的でなければならない
(53)。これが「顧客本位経営」である。
 
  指針規格では、規定がそれに基づいて書かれている品質経営活動の原則のひとつに「顧客重視」を挙げ、08年版(131)では「組織は顧客に依存しており、従って、現在及び将来の顧客ニーズを理解しなければならず、顧客要件を満たし、顧客の期待を越えるようにしなければならない」、15年版
(155)では「品質経営の最重要視点は、顧客のニーズと期待を満たし、顧客の期待を越える努力することである」と説明している。
 
  すなわち、規格の「顧客重視」は、マーケティング論の「顧客本位経営」と同様、顧客のニーズと期待の在り処と組織の製品サービス に対する顧客の受けとめについての顧客の意向の把握とその顧客の想いに応えることに焦点を合わせて組織を経営することを意味している。ここに、規格は、顧客のニーズと期待を把握して、それに応える製品サービスを提供し、製品サービスに対する顧客の受けとめ方である「顧客満足
§10」を追求する効果的な品質経営活動の在り方を規定しているから、規格の規定に則って行う品質経営活動は正しくマーケティング論の「顧客本位経営」である。
 
  5.1.2項の規定の「顧客重視に関するトップマネジメントのリーダーシップとコミットメント」とは、規格の規定に則って品質経営活動を行うことに関するリーダーシップとコミットメントを指す。
 
 
(2) 顧客本位経営における顧客満足
  今日、経営の中心に「顧客満足」をおくことを公言する企業は珍しくない。この顧客満足の概念は、「企業が永続し成長するには顧客が創造・維持されなければならず、それには顧客満足を軸にした売れる仕組みとアイデア・発想の新機軸が大切である」とのP.Drucker氏の主張が出発点であるとされる
(53)。日本製品が品質で世界を席巻した1980年代、米国では日本の成功の背景を様々な角度から研究された。この集大成とも言える米国産業再生の処方箋でもある国家経営品質賞の審査基準(153)では、顧客満足への取組みが全評価点の21%の重さを占めている。そして、「顧客本位の価値創造と提供の仕組みを構築し、クオリティと生産性を向上」させたことにより、瀕死の米国産業が1990年代には見事に蘇った(99.5)
 
  市場競争がグローバル化し激化が進む1990年代には、販売や市場開拓を意味した「マーケティング」が顧客創造の役割を担う活動として経営の中心に位置づけられることにもなった
(52)。 顧客創造は、顧客のニーズを探り、それを満たす活動によってもたらされる。 顧客のニーズを満たすことが顧客満足であるが、田口氏(50)は、顧客の欲求という概念を採り上げ、顧客が認識している欲求と認識していない欲求とがあり、後者を満たすことが「本来の満足の提供と言える」と述べている。嶋口氏(53)は、顧客の感じる不満に、”怒りを伴う不満”と”単に満足していない”の2種があり、前者の苦情に対する修復型対応ではなく、意思表明のない後者を満足状態にする先回り型の満足追求が顧客創造に大切と記している。 顧客の要求通りの製品では競合他組織と同じ満足しか与えることができないから、競争優位を得ることはできない。顧客のニーズは、顧客の明示の要求を超えて、組織が探り、推し測るべきものであり、それを製品に転化する際の、製品における新機軸と他組織にない製品を提供する差別化が、顧客満足の要諦である。
 
  佐藤氏
(52)は、顧客満足を、「商品、サービス、更に企業理念などに対して顧客が自分の基準によって納得の得られるクオリティと価値を見出すこと」と定義している。この顧客の判断基準は、顧客が評価した価値という意味の顧客価値(customer value)と呼ばれ、提供される製品サービスの価値だけでなく、組織や製品のイメージ、専門知識、接客態度などで顧客が受けた総合的な印象に支配されると考えられている。この考えでは、顧客価値に影響を及ぼすものは何でも事業商品の一部である。事業目的の製品サービス はもちろん、営業など顧客との対面で行われる活動から、製品サービスとは直接関係のない経営理念の類まで、顧客の印象に影響を及ぼす要素は”サービス”であり、事業商品たる製品サービスの一部或いは一要素である。製品品質と無関係な不祥事の発覚で有名企業が廃業にさえ追い込まれる最近の一連の事例は、この理論の正しさの左証である。
 
  顧客満足の意義は一般消費者向け製品サービスについて語られることが多いが、競争がある限り、契約型や下請け型、プロジェクト型など、如何なる形態の事業にもあてはまる普遍的原理である。部品調達など系列を超えた取引の拡大、下請けの集約、淘汰などの話題はこのことを物語っている。
 
 
H29.7.6 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所