ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
§20
利害関係者のニーズ及び期待 ISO14001:2015
 論理と用語   
33b-03-20
§論理と用語   #用語の定義    $英語解釈 は、全項目執筆の後に整理します。
 
§0.1 概要   こちら
 経営論では、「利害関係者」とは組織が事業活動を進める上で主体的に関係を持たなければならない関係者のことを指す。そして、組織の戦略や経営目標の決定は、これら関係者に及ぼす、及び、及ぼされる様々な影響を考慮して、組織と利害関係者の間の利害を調整することと見做される。いずれのISOマネジメントシステム規格も、それぞれの経営管理活動を利害関係者との利害の調整により組織の存続発展を図る活動と捉える観点で書かれており、とりわけISO14001は、組織の事業に付随する環境影響の低減に係わる利害関係者のニーズと期待を、その実現のために必要な費用や実現能力との調和を図って満たす活動であることを、規格序文に明確にし、このことを環境経営の計画の要件として明示的に規定している(04年版4.3.3)。組織が永続的に存続発展を図るには、組織起因の環境影響に係わる利害関係者のニーズと期待を満たす環境取組みを行なわなければならない。
 
  規格は、その定義で、そのニーズと期待を満たさなければならない利害関係者を、次の観点か特定する必要を規定している。
イ) 組織の事業活動の結果としての環境影響に利害を有するが故に、組織がその環境責任遂行或いは環境取組みの在り方を決め、活動を行なう際にそれらのニーズと期待を考慮し、反映させなければならない個人又は組織、
ロ) 組織起因の環境影響の被害を直接、間接に受けていると組織が考える個人又は組織、
ハ) 組織起因の環境影響の被害を受けると感じてその旨を組織に伝えて、或いは、訴えている個人又は組織、

 
 
§0.2  実務の視点和訳⇔JIS和訳の対応:

     
環境経営(活動) ⇔ 環境マネジメント$19-0-1; 事情 ⇔ 課題$65; 組織の置かれた状況 ⇔ 組織の状況$63;
      品質経営(活動) ⇔品質マネジメント
$19-0;

 
  
§0.3  目 次

§20.1 利害関係者
§20.2 利害関係者のニーズ及び期待
 
 
§20.1 利害関係者

(1) 利害関係者

  経営論では、「利害関係者」とは組織が事業活動を進める上で主体的に関係を持たなければならない関係者のことを指す。そして、組織の戦略や経営目標の決定は、これら関係者に及ぼす、及び、及ぼされる様々な影響を考慮して、組織と利害関係者の間の利害を調整することと見做される(54)。
 
  利害関係者に関する規定(4.2項)は、共通テキスト(14)で導入されたものである。それは、それぞれの特定分野経営管理活動
§2.2の在り方を規定している各ISOマネジメントシステム規格のいずれもが、それぞれの経営管理活動を利害関係者との利害の調整により組織の存続発展を図る活動と捉える観点で書かれているのに、規定表現に違いがあり、これを共通表現にするためである。
 
  すなわち、経営管理活動を利害関係者との利害の調整により組織の存続発展を図る活動と捉える観点からは、例えばISO9001規格の品質経営は、製品サービスに対する顧客のニーズと期待を、その実現のために必要な費用や実現能力との調和を図って満たす活動である。しかし、「利害関係者」という用語は用いられておらず、「顧客のニーズと期待を満たし法規制要件を満たす」という表現で、顧客と規制当局等という利害関係者の存在を示唆しているだけである。ISO14001規格の環境経営は、組織の事業に付随する環境影響の低減に係わる利害関係者のニーズと期待を、その実現のために必要な費用や実現能力との調和を図って満たす活動
§1.2であることを、規格序文に明確にし、このことを環境経営の計画の要件として明示的に規定している(04年版4.3.3)。
 
 
(2) 規格の意図の利害関係者
  規格の環境経営の狙いは持続的発展可能な社会の実現であり、そのために組織は組織起因の環境影響を社会的ニーズと経済的ニーズの調和を図りながら継続的に低減を図らなければならない
§1.2。初版以来、序文で環境保全に対する社会的ニーズを代弁するものとして「利害関係者のニーズ」という概念が導入され、規定で「利害関係者のニーズ及び期待」という表現が用いられている。利害関係者のニーズと期待に応える環境取組みを行なうことにより、組織は永続的な存続発展が可能とする様々な利益を得ることができる§1.3
 
@ 利害関係者の特定
  規格では「利害関係者」とは、04年版では「組織又は体制の実績又は成果に関心を持つ人又は団体」と定義されており
#61p、15年版では共通定義化(14)により、組織の「ある決定事項又は活動に影響を与え得るか、或いは、その影響を受け得るか、その影響を受けると認識している個人又は組織」と定義#61されている(3.02)。
 
  どちらの定義も、規格の「利害関係者」が、上記(1)の経営論において、組織が戦略や経営目標の決定の際に考慮し、自身の利害と調節しなければならないとされる利害を有する人又は団体のことであることを明確にしている。
 
  組織の永続的な存続発展を図る環境経営であるためには、このような利害関係者を適切に特定することが必要である。15年版定義は、環境経営においてそのニーズと期待を考慮しなければならない利害関係者を適切に、抜けなく抽出し、特定するための観点から利害関係者を定義している。すなわち、組織は次の観点から環境経営の利害関係者を特定しなければならない。
 
イ) 組織の事業活動の結果としての環境影響に利害を有するが故に、組織がその環境責任遂行或いは環境取組みの在り方を決め、活動を行なう際にそれらのニーズと期待を考慮し、反映させなければならない個人又は組織、
ロ) 組織起因の環境影響の被害を直接、間接に受けていると組織が考える個人又は組織、
ハ) 組織起因の環境影響の被害を受けると感じてその旨を組織に伝えて、或いは、訴えている個人又は組織、
 
A 利害関係者の範囲
  共通テキスト (4.2項)はそれぞれの特定分野経営管理活動で対象とすべき利害関係者の範囲に違いがあることを、「××マネジメントシステムに関連する利害関係者とそれらのニーズと期待を決めなければならない」という規定表現によって明らかにしている。また、共通テキスト解説FAQ
(18)では、規定の「利害関係者のニーズと期待」に関して、組織はそれぞれの規格の経営活動において、“関連のある”利害関係者とその関連のあるニーズと期待の中で組織が受け入れるものだけを考慮すればよいと説明している。
 
  従って、ISO14001の場合の利害関係者は、そのニーズと期待が組織の環境経営に関連のある人又は団体のみであり、例えば、組織の労働安全衛生管理や人事管理に関する方針や施策に関連のある人又は団体は含まれない。また、顧客は、組織の製品サービスの環境負荷、或いは、その発生させる環境影響に関連するニーズと期待に限って、環境経営の利害関係者と見做される。
 
  供給者或いは外部提供者は、利害関係者ではあるが、組織の環境保全ニーズへの貢献が求められる立場であり(8.1項)、そのニーズと期待を満たすことが組織の環境保全責任を果すことに繋がるというような場合や事例は容易に思いつかない。また、従業員は、地域住民や地域社会の一員として組織起因の環境影響の被害を蒙るが、従業員としての立場からは汚染や廃棄物排出の行為者であるから、規格の意図の利害関係者ではない。従業員が業務実行において環境汚染物質に暴露されることも労働安全衛生上の問題であり、規格の意図の環境保全問題ではない。
 
  なお、規格は定義において、利害関係者の例として、顧客、コミュニティ、供給者、規制当局、非政府組織(NGO)、投資家、従業員を挙げている
#61-1
 
 
§20.2 利害関係者のニーズと期待
(1) 利害関係者のニーズと期待を満たす意義
@ 組織の存続発展
  
  組織の環境経営における利害関係者とは基本的に、公害のような組織起因の環境影響の被害を蒙る立場の人又は団体のことであるが、今日では温暖化をはじめ地球環境の悪化に関連して組織が発生させる環境影響に関心を抱き、将来の更なる悪化を懸念し、実際にその被害を被っていると感じて、組織の問題取組みへのニーズと期待を持ち又は表明する人や団体としての利害関係者も存在する。これらの利害関係者のニーズと期待とは、組織がそれらの環境影響の低減に取組むことであり、その結果で関連する環境状態が改善され、異常な環境状態や環境事故が起きることのない、利害関係者にとって必要な、望まれる、又は、許容できる環境状態が実現することである。
 
  組織がその事業活動に付随して発生させる環境影響は様々であり、その低減には技術と資金等の資源が必要であり、環境取組みは組織の収益との調和が必要であり、持続的発展の可能な社会の構築は一朝一夕にはなし得ない。規格の環境経営では、組織は、利害関係者のニーズと期待が大きく、従って組織の存続発展及び安定した事業活動のために重要と考えられるニーズと期待を特定し、重要な順に、そのニーズと期待に対応する環境影響の低減に取組む。
 
  組織が利害関係者の特に重要視するニーズと期待に応えて技術的、経済的に可能な限りの環境取組みを行なって当該環境影響を低減し、環境状態を改善すれば、利害関係者は普通、実現した環境状態の水準の如何によらずその環境状態を受け入れる。これにより、組織は利害関係者によってその立地や操業が認められ、例えば極端な場合の操業停止運動や製品不買運動、規制当局による操業規制処置なども免れて、逆に、利害関係者を含む社会との相互信頼の中で存続発展することができる。
 
  この事実は、製品サービスを顧客に提供するという組織の事業にとって環境影響低減の取組みはコスト要因であり、収益低下要因ではあるが、利害関係者のニーズと期待に焦点を当てた環境取組みであるなら、その結果で事業推進の観点からは見掛けの収益低下よりはるかに大きな組織への支持、支援が得られることを意味している。今日では、組織の環境取組みが利害関係者のニーズ及び期待を満たしたものでないと利害関係者に受けとめられている状況では、どのような組織も社会に一員として存続発展することはできない。
 
A 持続的発展可能な社会の実現
  このような環境取組みにより利害関係者のニーズと期待の高い環境状態は徐々に改善するが、同時に、時代の変化により利害関係者が必要とし期待する環境状態の水準や、組織起因の環境影響の種類と水準も変化し、環境技術も進歩するから、組織はその時代で重要な環境状態の必要な改善に、その環境取組みの方向と対象を変える。世界のすべての組織が、このような利害関係者のニーズと期待を指針とした環境取組みを行い続けることによって、やがて、人々が健康で暮らし、かつ、産業が持続的発展可能な環境状態が実現する。
 
 
(2) 性格の異なるニーズと期待の性格
  上記(1)のように、利害関係者のニーズと期待とは基本的に組織起因の環境影響の直接、間接の被害を免れることである。従って、組織の環境経営或いは環境取組みに関して利害関係者が必要と感じ又は期待することは、自身が直接置かれる環境状態が改善されることであり、自身が直接被害を蒙る異常な環境状態や環境事故が起きないように管理されることである。
 
  一方、規格は組織の環境取組みを促進するために、利害関係者が組織起因の環境影響の被害を免れるように組織が環境取組みを行なうことを、直接の被害者ではない組織、団体、機関が支援する枠組みや制度が生まれることを期待している。例えば、組織の環境取組みの適切さを証明する認証制度、組織の一定の環境投資に対する優遇税制措置、組織の一定の環境投資に対する融資金利優遇、一定の環境取組みを行なう組織を選別して優先的に投資する環境関連ファンドである。規格の利害関係者には、このような枠組みや制度を運営する組織、団体、機関も含まれる。この場合の利害関係者のニーズと期待とは、それぞれが設定する環境取組みの基準として表されるが、その基準は当該利害関係者自身が組織起因の環境影響の被害を免れることと無関係である。
 
  利害関係者が規制当局のように、そのニーズと期待を満たすことを組織に強制する立場である場合は、そのニーズと期待は法令や規制、許可や認可の基準として表される。規格では、このようなニーズと期待を満たす必要を「順守義務(6.1.3項)」と呼ぶ(A.4.2)。また、利害関係者が業界団体、非政府団体などで、その組織に対するニーズと期待を環境取組みの原則や特定の環境状態の維持、改善の目標で表され、組織がそれらを満たすことを自主的に決め、宣言或いは合意した場合も、このようなニーズと期待を満たす必要を「順守義務」と呼ぶ。
   
 
(3) 実務の利害関係者とそのニーズと期待
  ISO14001規格の制定とその環境影響低減取組みの原則
§1.2に係わる上記(1)(2)に照らすと、効果的な環境経営の実務では、一般に次のような利害関係者が存在すると考えるのがよい。
 
@ 公害など、組織起因の環境影響の被害を直接受ける地域住民、地域社会
A 組織の製品サービスを購入し、使用する顧客、消費者
B 組織に製品、半製品の製造を委託し、又は、サービス活動の実行を委託する顧客、親企業
C 必要な法規制や環境影響低減目標を制定し、組織に順守を要求し、順守を監視する規制当局、業界団体
D 特定の環境保全問題の解決に取り組む団体、非政府組織
E 森林伐採の結果の土砂災害など組織起因の環境影響の被害を間接的に受ける地域住民、地域社会
F 資源の枯渇、温暖化、生物多様性の喪失などあるべき自然環境を破壊される地球(地球市民)を代弁する国際機関、非政府組織、規制当局
G 環境保全責任を果す信頼すべき組織であることを社会に保証する枠組みを運営する団体、行政機関
§1.3
H 一定の環境取組みの推進のために優遇税制処置を講じる政府、自治体
I 組織の環境取組みを投資や融資の対象とする事業の枠組みとして活用する金融証券機関
 
  ここに、それぞれの利害関係者のニーズと期待は、次の通りである。
@CDEF 組織が直接又は間接に発生、引き起こす特定の環境影響を低減する
A 製品サービスの原料、構造、使用、廃棄の環境負荷が小さい
B 組織の製品サービス実現の過程で発生する環境影響を最小限化する、及び、環境事故を発生させない
C 法規制、約束の目標を順守する
GHI 組織がその環境保全責任を誠実に果す
H28.11.28
禁無断転載  (個人的使用のための複写歓迎)
サニーヒルズ コンサルタント事務所