ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
継 続 的 改 善 実務の視点による
ISO9001:2000の解説  <その4>
35-01-04
JISQ9001:2000 8.5.1 継続的改善
      組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置及びマネジメントレビューを通じて、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること。


1.改 善

 2000年版の特徴のひとつが継続的改善の要求事項の明確化(JISQ9001:解説 2.4 i))である。この背景は、94年版では規格の認証適合が重視され、品質改善のために規格が活用されて来ず(6)(7)、規格導入組織に製品品質が向上しないとの不満が存在していた(: 解説 2.5 c))ことであると説明されている。


 改善とは、「優れたものにする、又は、させる行為、プロセス」(8)と定義されているが、平易に表現すると「より満足な結果を得るための努力であり、物事を現状より良くすること」(9)である。


  改善に取り組むやり方としては、課題に対して目標を掲げて積極的に改善の機会を設ける場合と、問題の発生により改善の機会が現れるのを待つ場合
がある(JISQ9004: 8.5.1)。前者が品質方針(5.3)、品質目標(5.4.1)、品質マネジメント システムの計画(4.5.2)と展開される改善の活動であり、後者は是正処置(8.5.2)、予防処置(8.5.3)による改善である。また、規格はプロセスの継続的改善への取り組みには、既存プロセスの変更、改善ないし新規プロセスの導入など革新的な改善活動と既存プロセスの中での段階的な継続的な改善の活動の2種がある*(ISO9004 AnnexB)としている。

2.継続的改善の意義
  組織の維持発展のためには、現在のみならず将来にわたって一貫して、顧客の期待とニーズを満たす製品を提供していかなければならない(1)。 顧客のニーズと期待は変化し、かつ、競争と技術の進歩があるので、今日において必要な顧客満足を確保していたとしてもそれに安住することは将来において顧客を失う危険がある。顧客を維持し続けるためには、組織は製品とプロセスを継続的に改善することが必要である(JISQ9000: 2.1)。 「継続的改善の目的は、組織が顧客満足を向上させ得る可能性を高めること」(: 2.9)というのは、この意味である。


  継続的改善を進めることによって、組織はその能力を高め、競争力を向上させて、顧客の変化するニーズに効果的に対応して
(10)、いつの時代にも顧客満足を相応に維持することができ、生残り発展し続ける。これが継続的改善の意義である



3.品質マネジメントシステムの有効性
 4.1項ではプロセスの継続的改善のために必要な処置をとることが規定(4.1 f))されているが、同項の冒頭には「品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善すること」の規定があり、1章(序文)の説明でも、5〜8章の要求事項においても、継続的改善はプロセスでも品質マネジメントシステムでもなく、品質マネジメントシステムの有効性が対象となっている。有効性とは、「計画した活動が実行され、計画した結果が達成された程度」(JISQ9000: 3.2.14)である。  狙った通りの「結果が達成されたかどうか、達成されていれば有効となる」(: 解説 4 h))のであるから、この問題を考える場合には品質マネジメントシステムの活動の狙いが何であるかが鍵となる。


 品質マネジメントシステムは、品質マネジメントのための、諸プロセスを相互に関係づけて形成されたプロセスの有機的集合体、あるいは、仕事とその道具立て(3)のことであり、その目的は顧客満足の向上である(2)。従って、品質マネジメント システムの有効性とは、品質マネジメントという組織の運営管理活動が狙いの顧客満足の向上を達成しているかどうかである。 これを規格は、その序文(0.3)で、「ISO9001規格は、顧客要求事項を満たすことに対する品質マネジメントシステムの有効性に焦点を合わせている*」と表現している。  パイル氏(11)Hoyle(12)は、システムの有効性は顧客が満足した程度で評価、判断されると、明確に述べている。 品質方針、目標を達成することに対する有効性の改善であるとも説明されている(5)(13)が、品質方針、目標は顧客満足向上を目指したものであるから、これも顧客満足に対する有効性を意味している。


 品質マネジメントシステムという組織の仕事とその道具立て、そして実際の仕事振りが、組織が狙い、期待する顧客満足の向上を達成するのに十分かどうか、がシステムの有効性であり、目標の顧客満足が常に達成できるように、仕事の仕方と道具立てを改善し続けることが、規格の継続的改善の要求事項である。有効性の改善とは、結果を達成するための効率ではないという改善の目的、視点の違いを強調するための表現であって、改善の対象はシステム自体である。システムたる仕事(体系的業務活動)は、諸プロセスの集合体であるから、システムの改善はその構成プロセスの改善かプロセス間の相互関係の改善によって実現する。規格の品質マネジメントシステム 一般要求事項(4.1 f))の「これらプロセスの継続的改善を達成するために必要な処置をとること」は、これを意図した規定である。


4.製品の改善
  顧客満足とは、提供された製品について自らのニーズ、期待がどの程度満たされたかの顧客の受けとめ方である(1) 顧客満足の向上を図るには、組織は顧客満足がより高くなるよう製品を変更するか、あるいは、新製品を提供することが必要である。ただし、製品とは事業活動の目的である製品、サービスだけではなく、市場開拓、営業活動に始まる製品実現のすべての過程において顧客との対面で実施されるすべての活動で、顧客の便益や感情に影響を与えるものである(1)


 顧客満足の向上を目指すとして、具体的に何が顧客のニーズ、期待であるか、それを満たす製品とはどのようなものか、あるいは、その製品はどのように製造或いは提供することができるのか等は組織とその置かれた状況によって千差万別であり、一定の解があるものではない。それぞれの組織が判断し決めなければならない問題であって、どのように製造するかも組織の能力に係わる問題であるので、規格で規定することはできない。代わりに規格は、組織がそのような評価、判断、決定を適切、効果的に行うことができるようになるような、組織の運営管理の仕事の仕方を規定している。これが規格の規定する品質マネジメントであり、それに関する要求事項である。顧客のニーズ、期待を推し測り、方針、目標に定めてその実現を図り、あるいは、製品に反映して顧客に提供する。   狙った顧客満足が得られなければ、製品、プロセス、システムを改善する。この品質マネジメントの継続的改善のサイクルを繰り返すことで、組織は顧客ニーズと期待に合致した製品を提供することができるようになる。つまり、品質マネジメントシステムの有効性が改善されたということである。これを MacNee氏ら(15)は、「品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善は、結果的に顧客要求事項を満たす製品を供給する組織の能力を高めることになる」と説明している。


   このように、
品質マネジメントシステムの有効性の改善の実体は、製品の改善である。継続的改善の要求事項には製品の改善は含まれない(JISQ9001 解説: 4.c))が、規格は製品の改善による顧客満足向上が目的であり、このためにマネジメント レビューによりトップマネジメントが「顧客要求事項に関連する製品の改善*」(5.6.3 b))についての決定を行うよう規定している。


5.要求事項としての継続的改善
 規格における継続的改善の定義は、「要求事項を満たす能力を高めるために繰り返し行われる活動」(JISQ9000: 3.2.13)である。良くなったかどうかではなく、良くする努力を続けることである。「継続的改善の意図、趣旨は、継続的改善と呼べる活動をやめなければよいということ」との説明(JISQ9001: 解説 4. ah))もある。


 一方、継続的改善への取り組みの方法について規格は、「品質方針、品質目標、監査結果、データの分析、是正処置、予防処置、マネジメントレビューを通じて」行うべきことを規定(8.5.1)している。規格のマネジメント(運営管理活動)は、方針、目標を定め、その達成を図るPDCAの活動であり(2)8.5.1項の記述はこのサイクルを構成する諸プロセスとそれらの順序(4)をそのまま引用した表現となっている。


 従って、要求事項としての継続的改善は、品質マネジメントを規格の要求事項に沿って実行することと同じ意味である。 認証審査では、品質マネジメントシステムの諸業務が規格要求事項に従って効果的に実行されているかどうかに焦点が合わされ、活動の結果は問われないとされている。しかし、良い結果が得られない活動を改善の活動と見做すのかどうか、また、顧客満足向上や製品の改善の実績がなくてシステムの有効性改善の活動が行われていると見做すのかどうかは、審査の判断だけでなく規格適用の意味の点でも問題であろう。


 なお、"継続的の英原語は continual であり、活動と改善成果が連続的でなければならない continuous と違って、活動はたゆまなく行われるが改善の進捗や成果の挙がり方は時期によって緩急があってもよいと説明されている(JISQ9004: 解説 4.3 h))

6.まとめ
 組織の維持発展のためには、時代や情勢の変化に対応して競争力のある、顧客に受け入れられる製品を一貫して提供できなければならない。品質マネジメントはこれを目指した組織の運営管理活動であり、規格は組織が品質マネジメントのPDCAを効果的に繰返して、顧客満足の向上のために製品とそれをもたらすプロセス、システムを継続的に改善していくことを求めている。運営管理の業務体系たる品質マネジメントシステムがこのような改善を実現させ得るかどうかが有効性であるから、品質マネジメント システムの有効性の改善の実体は、顧客満足向上のために必要な製品の改善である。しかし、要求事項としての継続的改善は、品質マネジメント システムの諸業務を規格要求事項に従って効果的に実行することである。認証審査では結果はどうであれ、品質マネジメントの活動が 8.5.1項のPDCAを廻して実行されていることを実証すればよい。ただし、顧客満足や製品の改善の実績のない活動を継続的改善と見做すことは、環境マネジメントシステム(ISO14001)の継続的改善と同様、審査上の判断としても問題になり得る。


   継続的改善は顧客満足の向上、プロセスアプローチと並んで
2000年版の論理の中核である。継続的改善の要求事項は規格の目的である顧客満足向上の実現の方法を示すものである。また、組織の運営管理の本質は継続的な改善を図る活動である。実務上、「継続的改善と呼べる活動をやめなければよい」では済まされない。組織が品質マネジメントを規格に従って行うということは、実際に当面する顧客満足向上への緊要性や難易度に照らして適切な継続的改善の取り組みを定め、顧客満足や製品の改善の結果を着実に出すことでなければならない。



引用文献( 英文献及び * 印は著者による翻訳)
(1) ウェブサイト: ISO-実務の視点、実務の視点によるISO9001:2000 解説(その1); (1.顧客満足の意義)
        (4.製品を通じた顧客満足)

(2)
ウェブサイト: ISO-実務の視点、実務の視点によるISO9001:2000 解説(その2); (3.品質マネジメント)
         (2.マネジメント方法論)

(3) ウェブサイト: ISO-実務の視点、実務の視点によるISO9001:2000 解説(その3); (4.マネジメントシステム)

(4)     : 品質マネジメントシステムの計画, ISOMS, 2002.7月号, p.65
(5) ISO: FAQ02, Nov.1999
(6) ISO/TC176ISO9000ファミリー改訂版のコミュニケーション及びマーケティングに関する推奨事項,
     
日本規格協会ホームページ, recommendation.pdf, 2001; (3.基本的な変更)

(7) ジェフリー フーパー: 標準化と品質管理, 53(2000),10, p.14
(8) ISO/TC176/SC2: Guidance on the Terminology, N526R
(9) RC&Associates: ISO9000 Compliance with New Requirements, Jan. 2001
(10) ISOThe new year 2000 ISO9000 standards-Executive Summary, Press Release,
      2000.12.14; (Main Features)

(11) ジム パイル: 標準化と品質管理, 53(2000),10, p.39
(12) D.Hoyle: Transition to ISO9001:2000, Trans. Support Ltd., Jan.2001; (p.4)
(13) ISO: ISO9000-Selection and use; (Maintaining the benefits and cont. improvement)

H15.5.4 
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