ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
品質マネジメントの8原則
(マネジメント活動の方向)
実務の視点による
ISO9001:2000の解説  <その7>
35-01-07
   品質マネジメントの原則は、JISQ9000(0.1)、JISQ9004(4.3)の両規格に規定されているが、それぞれの原則の意義に触れた説明が主体で、そのものの意味や内容はあまり説明されていない。 ISO中央事務局発行の説明書「Quality Management Principles」(4)には、各原則の主要な狙いあるいは利益と原則の適用が組織内にどのような好ましい状況や結果をもたらすかについて簡単に説明されている。



1.マネジメントの方向に関する原則
   
原則 a)と f)は組織をどのような方向で運営管理するか、その狙いや目標に関する原則である。組織の維持、発展は、顧客のニーズと期待にどこまで応えることができるかにかかっているから、マネジメント活動は顧客満足の向上に焦点を当てることが必要である。顧客のニーズと期待は常に変化するから、マネジメント活動はこれに適切に対応するため、製品やプロセスを継続的に改善することを意図したものでなければならない。


2.顧客重視 (本シリーズ その1参照)
 a)  顧客重視 :  組織はその顧客に依存しており、そのために、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を越えるように努力すべきである。
   いかなる組織も顧客の支持でなりたっている。顧客の支持は組織が常に顧客のニーズと期待に応えようと努力してくれるとの組織への信頼感が基礎となる。顧客要求事項を満たす製品、サービスをいつの時代にも一貫して提供することで顧客満足の向上を図ることができる。これを狙いとする品質マネジメントを組織の全体マネジメントの中核に据えることが、組織の事業の発展と成功をもたらし得る。


    日々の事業活動において顧客満足の向上を図るには、組織を運営するトップマネジメントは、受注した製品、サービスについての顧客のニーズと期待を自らの判断でくみ取って、それに合致するような製品、サービスを提供することを確実にしなければならない。 JISQ9001でこのような行動原則を規定したのが、5.2項(顧客重視) である。


  ISO文書(4)は、この原則の適用によって組織が得る利益を次のように表現している。
@ 顧客満足向上に向けての業務のしかたが効果的なものとなる
A 顧客の組織への信頼の向上によって、選ばれた供給者となり、また、繰り返し受注を得るようになる
B 市場ニーズの変化、生じた事業機会への迅速、柔軟な対応によって、収益及び売上を増加させる



3.継続的改善 (本シリーズ その4参照)
 f)  継続的改善 :  組織の全体的な業績の継続的改善を組織の恒久的な目標とするべきである*。 
 組織を発展に導くためのマネジメントは本質的に改善の活動である。マネジメントの方法論の基本は、現在あるいは将来の課題を抽出し、その解決のために方針、目標を定めこの達成を図ることである。この目標が達成された場合には新たな課題を設定し方針、目標を変更する。達成できそうもなければ達成のための新たな方策を決め実行する。これはPDCAサイクルの考え方によると、方針、目標がPであり、達成の活動がD、そのフォローがC,新課題の抽出や設定がアクション(A)である。 そして、規格のプロセスアプローチの用語では、Pが"計画"、Dが"実施"、Cが"管理"、Aが"継続的改善"である(5)。また、規格の概念では、計画通りの結果が得られなかった場合にその原因を取り除いて再発を防止することが是正処置であり、計画の未達の兆候を見出して潜在する原因を除去して問題発生を未然に防止することが予防処置である。この方針、目標と是正、予防処置を含み目標達成を追求する改善の活動の概念は、上記のような事業課題への取組みに対してのみならず、広くすべての業務の活動に対しても適用できる。


    規格は 8.5.1項で、継続的改善の活動を「品質方針、品質目標、監査結果、データ分析、是正処置、予防処置及び マネジメント レビュー を通じて」行なうべきことを規定している。 これが規格が意図する改善の具体的な手順である。この改善のサイクルを、業務体質強化のマネジメントの活動について考えると次のようになる。


  ISO文書(4)は、マネジメントにこの原則を適用することで組織が得ることのできる利益を次のように表現している。
@ すべての階層の改善活動を組織の戦略的狙いに合致させることができる
A 組織の事業遂行能力の向上によって、業績が改善する
B 好機に素早く対応できる力を身につけることができる


    一方、品質マネジメントは顧客満足向上に関するマネジメントであり、規格の"品質"は実質的に、製品が顧客要求事項を満たす程度、つまり、顧客満足の向上を意味する(6)。  顧客の期待、ニーズは時代により変化するし、競争もあり技術の進歩がある(JIS9000  2.1)から、組織は現状の顧客満足に安住していれば将来を失うことになりかねない。規格は、継続的改善の目的を「顧客要求事項及び適用される規制要求事項を満たす製品を一貫して提供する能力をもつこと」(1.1 a)項)と表現している。規格の継続的改善は顧客要求事項を満たすために製品やプロセス、システムを改善する活動である。


   規格は製品の改善について、顧客満足向上を目指す方針(5.3項 品質方針)を、マネジメントと日常生産活動における製品に対する2種の目標(5.4.1項 品質目標)に展開してその実現を図るという、マネジメントの戦略的活動と5.2項(顧客重視)を方法論とする日常的改善の活動の2つのPDCAを規定している。




引用文献
(英文献及び * 印は著者による翻訳)
(1) ウェブサイト ISO-実務の視点:実務の視点によるISO9001:2000の解説 シリーズ; 概要編はこちら
(2) ウェブサイト ISO-実務の視点:英語で読み解くISO9001/14000 シリーズ; 概要編はこちら
(3) D.Hoyle: ISO9000 Quality Systems Handbook,4th Edition, Butterworth Heinemann, 2001;
    (p.237)(p.380)(p.383)

(4) ISO 中央事務局: Quality management principles,http://www.iso.ch/iso/en/iso9000-14000/iso9000/qmp.html (5) TC176: 品質マネジメントシステムへのプロセスアプローチ, ISO/TC176/SC2/N544R,17 May 2001;(p.4)(p.6)
(6) TC176: ISO9000:2000シリーズ改定版のコミュニケーション及びマーケティングに関するISO/TC176からの推奨事項、
    http://www.jsa.or.jp/iso9000/pdf/recommendation.pdf;(p.2)
(10) Merriam-Webster's Collegiate Dictionary:
(11) 狩野紀昭:質経営で築く日本の新世紀, 品質月間委員会,2001.10.1(p.26)
(12) 林伸二他:現代経営管理論,有斐閣,1994.1.10;(p.54)
(13) 吉田和夫他:基本経営学用語辞典、同文館出版,H9.2.25(p.276)
(14) Quality Glossary: ASQ, http://www.asq.org/info/glossary/s.html
(15) ISO 中央事務局:ISO9000&14000謎解きの旅,多忙な管理者のためのISO9000,
       http://www.iso.ch/iso/en/iso9000-14000/basics/basics9000/basics9000_1.html
(16) "Achieving agile manufacturing-PartU", Automotive Engineering,December 1994,p.13;(p.13)
(17) S.Ledgard他:http://www.bsi-global.com/Corporate/News+Room/auto-quality.xalter
(18) "Minimal; engineering by multidisciplinary teams", New Steel, May 1994;

H15.11.22 
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