ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
16 4.2.3  文書管理 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-16
[第1節] 品質マネジメントシステムで必要とされる文書は管理しなければならない。ただし、記録は文書の一種ではあるが、4.2.4 に規定する要求事項に従って管理しなければならない。
[第2節] 次の活動に必要な管理を規定するために、 "文書化された手順" を確立しなければならない。
a) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。
b) 文書をレビューする。 また、必要に応じて更新し、再承認する。
c) 文書の変更の識別及び現在有効な版の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
e) 文書は、読みやすく、かつ、容易に識別可能な状態であることを確実にする。
f) 品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配布が管理されていることを確実にする。
g) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な識別をする。
 
 
1.要旨

  本項は、品質マネジメントに使用する文書を管理することが必要であることを明確にし、業務実行に使用する文書の管理の要件を規定している。業務実行実績及び結果を表す文書である記録については、4.2.4項に管理の要件が規定されている。
 
  品質マネジメントの業務を効果的に実行するために使用する文書は、文書の内容が適切で正しくなければならず、必要な人が、必要な時に、必要な場所で、必要な文書が利用できるようになっていなければならない。文書を常にこの状態に置くために組織は、組織は品質マネジメントシステムの計画 (5.4.2項)の一環として、a)〜g)項を含む文書管理の手はずを確立し、文書化し、文書に規定された手はずに則って文書を管理しなければならない。対象となる文書は4.2.1項で品質マネジメントに必要と規定されている文書であり、この内の業務実行に使用する文書である。
 
 
2. 文書の管理 (背景及び関連事項)
(1) 業務の実行に使用する文書
  文書は、規格の意図する体系的な業務遂行の基礎である。本項で文書というのは、業務の実行において規範、基準、指針、指示として使用する文書である。業務実行実績及び結果や事実、実態を表す記録文書の管理は、これとは異なる(4.2.4項)。しかし、例えば前工程の工程条件実績に基づいて当該工程での業務実行条件を決めるような場合の前工程の工程条件を記した記録書のように、記録文書も業務の実行のために使用される場合は、こちらの文書としての管理の手順を適用することが必要である。
 
(2) 文書管理の目的
  規格の意図する品質マネジメントでは、文書に基づいて業務が実行され、実行結果が文書に表されることが基本である。使用する文書は、その内容が適切で正しくなければならず、必要な要員が、必要な時に、必要な場所で、必要な文書を利用できるようになっていなければならない。
 
  但し、文書管理の本当の目的は、要員が必要な、正しい文書に基づいて実際に業務を行うことを確実にすることであるから、実務では、必要な文書を要員が理解し、それに基づいた方法で業務を行い決められた結果を出すことができることを確実にする要員の能力(6.2.1項)の管理が伴っていなければならない。このことは、文書の改訂の管理の手はずにおいては、改訂の承認、改訂版を利用可能な状態にする手順と共に、要員への伝達、要員の理解を確実にする手順が含まれている必要がある。
 
 
8.規格要求事項の真意
  品質マネジメントの業務の効果的な実行のためには、内容が適切で正しい文書を、必要な人が、必要な時に、必要な場所で、必要な文書が利用できるようにしておかなければならない。組織は品質マネジメントシステムの計画 (5.4.2項)の一環として、次の(3)〜(9)を満たす文書管理の手はずを確立し、文書化し、この文書に規定された手はずに則って文書を管理しなければならない。
 
(1) 品質マネジメントシステムで必要とされる文書は管理しなければならない。ただし、記録は文書の一種ではあるが、4.2.4 に規定する要求事項に従って管理しなければならない。 [第1節]
  品質マネジメントの業務に使用する文書は管理しなければならない。文書の内、業務実行実績や結果又はある時点での事実や実態を表す文書である『記録』は、4.2.4項に則って管理し、業務実行の規範、基準、指針、指示として使用する文書は、次の(2)〜(9)の要件を満たして管理しなければならない。
 
(2) 次の活動に必要な管理を規定するために、 "文書化された手順" を確立しなければならない。 [第2節]
  原文の意図は「文書化された手順を確立して次の活動に必要な管理を明らかにしなければならない」である$20‐1。文書に基づく体系的業務実行を確実にするためには、必要な人が、必要な時に、必要な場所で、必要な、正しい内容の文書を使用できるようになっていなければならない。このためには、次のa)〜g)項の活動が行なわれ、又は、確保されるようにする管理の手順を確立し、それに基づいて文書を取扱うことが必要である。これらの管理の手順はすべての文書に一律ではなく、一般に文書の性格によって異なり、必要な人が、必要な時に、必要な場所で、必要な、正しい内容の文書を使用できることが可能な程度でよい。文書によってはa)〜g)項のいずれかの管理が必要ではない場合もある。このように定められた手順の通りに文書管理が効果的に行なわれることを確実にするために、手順を文書に明確にしなければならない。
 
(3) 発行前に、適切かどうかの観点から文書を承認する。 [ a)項]
    『適切』は“adequacy”であるから特定の目的に質的、量的に十分という意味である$21。文書の中味である手順や基準、資源の使用などは、当該業務の狙いの実現に適当であるだけでなく、他の関連業務と整合し、組織の品質方針や目標を踏まえ、他の経営管理(マネジメント)をも満たすなど、必要なあらゆる要素を考慮した組織として最適なものでなければならない。
 
  承認はその業務の実行と結果に最終責任を負う者が行う。一般にはその業務を行う部門、又は、その業務に関係する機能を担う部門を統括する役職者である。責任と権限の明確化は体系的なマネジメントの要件のひとつであり、トップマネジメントは組織の業務に関する責任と権限を明確にしなければならない(5.5.1項)。文書の承認の責任は基本的にこの業務実行と結果に係わる責任と一体である。承認された手順の基準や処理方法に従って作成され文書は、その内容は正しいので、記入又は処理ミスの点検の必要がある場合はあっても、改めて承認する必要はない。
 
  なお、規格では設計開発の目標(7.3.2項)、設計開発の結果(7.3.3項)、購買条件を表す文書(7.4.2項)について発行前に承認しなければならないことを規定しているが、これ以外の文書は承認しなくてよいという意味ではない。
 
  承認なしに発行できないようにするためには一般に、文書への承認の捺印か署名が表示される。計算機システムから発行される文書は、そのソフトウェアが承認された紙文書を反映していることを確実にする管理で承認の機能が代替されており、画面や印刷された紙文書自身には承認の証拠の表示をしないことが多い。文書の作成から使用まで一切を計算機システムで行なう場合でも、承認手続きを経て文書がシステムに取り込まれるような手順があればよい。決められた責任者以外の承認手続きでないとシステムが受け付けないようにするとか、電子承認印を用いるとかは、本来誤った手順の実行を防止するのが目的であり、これを承認手続きの確実な実行のために用いる必要のある場合はばい少ない。
 
  なお、94年版(4.5.1)では、これを"review and approve"と規定し『確認し、承認する』と和訳されていた。00年版では原文が"approve"となり和訳も『承認する』となった。承認には内容を見直し点検して問題がないことを確認する行為が含まれるから、94年版の表現が冗長であったと言える。
 
(4) 文書をレビューする。また、必要に応じて更新し、再承認する。 [ b)項])
  『レビュー』は"review"であり、変更が必要かどうかという観点から物事を再検討するという意味である$22。『文書をレビューする』とは、業務に関して状況の変化があった場合に、それを規定している文書の内容を変更する必要があるかどうか見直すことである。また、『更新』は"update"であるから、最新のものにすることである(102)。
 
  文書の内容が新しい状況にそぐわなくなれば、最新の状況を反映する内容に改めることが必要である。文書の内容を変更した以上、その内容が正しく、組織として最適であることを確実にするために責任者が変更内容を改めて確認、承認しなければならない。組織は、状況の変化に応じて関連する文書が見直され、必要な変更が行なわれることを確実にする管理の手順を確立しなければならない。見直してみて、文書が変化した状況にも適応しておれば、文書の変更は必要ない。
 
  文書の変更が必要になるのは、再発防止対策や改善のために手順を変更する場合、新製品の投入、設備や計算機システムの改造や新設の場合などである。また、設計開発計画書や品質目標達成計画書のように進捗の如何によって計画の変更が必要となる場合がある。業務指示文書は一般に状況の変化に対応して常に新文書が発行される。帳票のような文書は基本的に当該業務1回限り有効として発行される。
 
(5) 文書の変更の識別及び現在有効な版の識別を確実にする。 [ c)項]
  『識別』と和訳されているが、原文は"are identified"であるから「見分けがつけられる」の意味である$14。
 
@ 文書の変更の識別
  『変更の識別を確実にする』とは、文書の変更箇所がどこか、あるいは、何のためにどのような趣旨でどのように変更になったのかがわかるようにすることである$14-1。文書の内容が変更された場合は、変更内容の確認や承認の手続きが迅速に的確に行なわれ、変更点が関係者に正しく理解され、改定された手順で業務が行われることを確実にするために、変更内容が明確にされていることが大切である。94年版(4.5.3)では、変更の性格を当該文書又は変更通知のような添付文書で明確にすることの必要を規定していた。 組織は、変更点に関する関係者の理解を容易にするために必要な管理の手順を確立しなければならない。
 
A 現在有効な版の識別
  『現在有効な版の識別』は94年版(4.5.2)では『現在の改定版の識別』であったが、原文はいずれも"current revision status are identified"である。これは、欧米の解説書では内容が改定されて同じ標題の文書が複数存在する場合のそれぞれの文書の改定に係わる状態が見分けられる$14-1というような意味に受けとめられている(23-a)。例えば、ある文書の改定版が発行され、旧版と2種類が存在する状況で、それぞれが「改定に係わる現在の状態」、すなわち、どちらが新版でどちらが旧版であるか、或いは、これは改定何版でそれは改定何版であるかというようなことが見分けられるようになっていなければならない。94年版(4.5.2)では、このような見分けができるようにすることが『無効もしくは廃止された文書の使用を防ぐため』に必要であると規定されていた。実務においては、最新版とその前の旧版を定められた時期や製品で使い分けつつ新版に切り替えていく過渡期においては特に必要である。
 
  組織は同じ標題の、或いは、同種の文書が複数存在するような状況において、誤った文書の使用を防ぐために、それぞれを確実に見分けることができるような管理の手順を確立しなければならない。改定の各版の文書を識別するためには、発行日付を明示すること、又は、文書に改定版名を付すことが一般的である。94年版(4.5.2)ではこの管理の方法として『台帳ないし同等の管理手順を定め、容易に利用できるようにする』ことが必要と規定されていたが、これに囚われる必要はない。業務指示文書など改定せず、常に新文書として発行される文書は、対象とする業務や製品を明示し、或いは、適用する時期や期間を明示することによって、誤った文書の使用を防ぐことができる。
 
(6) 該当する文書の適切な版が、必要なときに、必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。[ d)項]
  『適切な』は"relevant"で、94年版では"pertinent"であり、いずれも「関係のある」である。「最新版」ではないのは例えば、文書の改定の際に、新版使用開始の時点或いは適用する製品の生産開始までの間など、新旧の両版が共に有効な過渡期が存在し、どちらかの「関係のある版」を使用することになるからである。組織は、要員が使用しなければならない文書が必要な時に必要なところで利用できるように文書の配付の手順を確立しなければならない。
 
  文書の配付には、文書の交付、写しの配布、計算機システムやパソコンの画面での表示、紙文書の掲示、必要な部分の抜出し標示、記録用紙への表示など各種の方法がある。一般には切り替え過渡期を除き、有効な最新版のみファイルに保管し、掲示や標示をし、或いは、計算機システムに搭載するという方法で、間違った版の文書の使用を防いでいる。
 
(7) 文書は、読みやすく、かつ、容易に識別可能な状態であることを確実にする。 [ e)項]
  『読みやすく』の原文は"legible"で、文字などが読み取るのに十分に明瞭なという意味であり、『識別可能な』は"identifiable"で、各文書が何の文書であるかがわかるという意味であり、『〜な状態にある』は"remain ……"であるから「〜のままである」である$15。誤った文書が使用されたり、内容が誤って理解されたりするのを防ぐために、使用すべき文書を正しく選び、正しく使用できるように、文書の内容の表記や表示、及び、どのような文書かがわかるようにする表示や標示の品質を維持する管理の手順を確立しなければならない。この文書管理の要件は94年版にはなかったが、記録の管理(4.2.4項)に倣って追加された。
 
  文書作成後の時間経過や繰り返し使用によって、紙がすり切れたり汚れたり、文字が薄れたりないようにしなければならず、現物見本や試料の場合は、変色、変質、発錆、損傷などのないようにしなければならず、文書がパソコン画面に表示される場合は、画面の輝度や鮮明さを維持しなければならない。また、保管されているのがどのような文書かがわかるような文書の保管棚やファイル背表紙の表示、標示も適切な状態に維持しなければならない。
 
(8) 品質マネジメントシステムの計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書を明確にし、その配付が 管理されていることを確実にする。[ e)項]
  『外部から文書』は外部作成(external origin)の文書のことである。94年版では『規格及び顧客の図面』が例示されていたが、00年版では単に「外部作成の文書」となり、08年版では文書化が必要な場合の表現(4.2.1 d)項)を用いて管理の対象の外部作成文書を限定する表現が追加された。『明確にする』は"are identified"であり、外部作成の多くの文書の中から、組織の業務に直接使用する文書が見分けられるようにすることである$14。このような文書を必要なところで必要な時に使用できるようにすることが『配付』である。本項では『配付』の管理しか規定していないが、外部作成文書と雖も組織の業務に直接使用する以上は、必要な人が、必要な時に、必要な場所で、必要な、正しい内容の文書を使用できるようにするという文書管理のすべての必要条件を満たした管理が適用されなければならない。この管理は外部作成文書の性格と使用のしかたによって異なるそれぞれ必要な程度でなければならない。
 
  外部作成文書を組織の業務に直接使用する場合として次のような事例がある。
@ 顧客の注文書を生産指示書として使用する。顧客の図面を製作指示書や検査基準書として使用する。
A 顧客から購買条件として提供された工程条件書や作業要領書をそのまま関連する業務に使用する。
B 顧客のカタログを基に購買製品の仕様を決める。設備に付属する機械図面や解体手順書に基づき保全作業計画を立案する。
C 顧客の注文書や図面を基に生産指示書や工程条件書を作成する。顧客の製品図面を基に設計開発書を作成する。
D 公的規格書、法令書、顧客の製品仕様書、顧客との基本契約書、また、顧客からの特定の品質要求書などに規定される事項を、個々の製品の設計、工程条件の設計の際に取り入れる。
 
  @Aの場合の外部作成文書は、部門の枠を超えて使用されており、体裁や表記方法が異なるものの事実上は組織の内部文書として取り扱われている。組織の文書体系のそれぞれの該当する機能、性格の文書として管理することがよい。この場合、入手した外部作成文書を承認して、そのままの体裁で又は文書種別名称の変更や内容の必要な追加も行って組織の新しい内部文書として再発行する手続きがとられる。BCDの場合の外部作成文書は、特定の部門内の特定の業務の実行に際して参照されるという使われ方であり、使用元で外部作成文書として保管や改定管理が行なわれ、これを元に作成された通常の内部文書が配付され、組織の実際の業務に使用される。この場合は内部文書の承認手続きの中で正しい外部作成文書の必要な事項が取り込まれることを確実にする管理が行なわれる。
 
(9) 廃止文書が誤って使用されないようにする。また、これらを何らかの目的で保持する場合には、適切な 識別をする。 [ g)項]
  現実の業務に使用されない廃止された文書は誤って使用されて業務に問題を生ずることのないように管理しなければならない。94年版では、「すべての発行部門、使用部門から速やかに撤去する」と廃止文書の処理方法を例示していた。また、「無効及び/又は廃止文書」となっていたから、期限切れの文書、承認されていない文書、私的にコピーした文書などのご使用の管理も含んでいた。 表現は変わってもこれらの文書が実務に使用されないように管理する必要性に変わりはない。
 
  旧版となったり、有効期限が過ぎたりして、業務に直接使用しなくなった文書も、種々の目的で保存されることがある。このような文書が誤って使用されることのないよう、廃止文書ないし使用してはならない文書が見分けられるようにする管理の手順を確立しなければならない。例えば、廃止文書である表示をした上でファイリングしたり、旧版から最新版まで順に下から重ねて綴じたり、文書に有効期限を明確に表示したり、情報ネットワーク上の文書しか業務に使用しないとか、配付された文書を複写したものは業務に使用しない等の手順が適用される。
 
 
4. 文書管理の実務
(1) 文書管理の観点
  業務が関係する文書に基づいて間違いなく効果的に実行されることを確実にするための必要な文書管理の観点はおよそ@〜Eである。しかし、@〜Eに関する具体的な方法がすべての文書に一律であっては、文書管理の手順は煩雑となる。文書には機能や使用のしかた等の異なる様々な文書が存在し、その文書管理に必要な観点と方法、程度は同じではない。とは言ってもすべての文書のひとつひとつに@〜Eに関してそれぞれの方法や程度を定めるのも効率的ではない。一般には、@〜Eのそれぞれに関して、幾つかの具体的な方法を定め、個々の文書又は文書の類型毎にそのどれを適用するかを決めるというやりかたがとられる。
 
@ 文書の内容の管理
  文書は組織の品質マネジメントの業務の基準、規範となり、業務実行の指示として使用される。その内容は、狙いの実現に効果的であることは当然として、品質方針など組織の考え方に沿うものでなければならず、他の文書の内容とも整合がとれていなければならない。文書に規定される業務の方法は、狙いの業務結果を得るのに十分なものであり、且つ、労働安全衛生、環境、収益など他の経営管理(マネジメント)の必要も含む様々の必要を満たしていなければならない。更に、組織に固有の経験と知識や技術の体系に基づいて最も効果的で効率的で、組織全体としても最適な手順や方法でなければならない。その上で、誤記やわかりにくい不適切な表現のないことが必要である。文書の内容がこのように適切で正しいものであることを確実にするために、その業務に最終的な責任を負う者が文書の内容を評価し、その内容で問題ないこと、従って、文書として発行することを承認する手続きが必要である。この承認の後に文書は発行されなければならない。これは、文書を新たに作成、発行する場合にも、既存の文書の内容を改定、再発行する場合にも当てはる。
 
  適切で正しい内容であることを確実にするための評価と承認に関する必要な手順は、文書の性格と重要性によって異なる。一般に、業務の基準や規範として繰返し使用される規範文書では種々の観点からの正しさの評価が必要であり、上位文書ほど承認の責任は重い。一過性の業務指示文書も、業務の基準や規範となる点では規範文書と同じであり、特定の試験や試作の方法を定める文書のように規範文書の規定より優先されるべき内容であることもあるから、規範文書と同様、すべての必要を満たす十分なもので、且つ、正しい内容であることを責任者が評価し、承認する手順が必要である。
 
  しかし、承認された文書から必要な事項を抜き出して作成される文書や、承認された文書の内容を必要に応じて展開し又は計算してその結果を示すような内容の文書、つまり、承認された手順の基準や処理方法に従って作成された文書が、業務に使用されることが少なくない。例えば材料規格に従って仕様を記入した発注書や当該工程の作業条件を基準書から選択、転記した作業実行指示書などである。これら文書の内容は元の文書で正しいことが承認済であるから、普通はこれら文書の発行前の確認と承認は文書作成業務を行なった要員に委ねられる。しかし、文書作成者の誤作業や誤記によって適切でない内容となる可能性がない訳ではないので、文書の重要性によっては、発行前の責任者による確認を行うことも必要である。
 
  業務実行実績及び結果を表す文書である記録の内容は責任者が了承したり承認したりする余地はない。しかし、定められた記録が適切に且つ正確にとられていることを確実にするための手段として、責任者が作成された記録を点検し、その証拠の捺印をすることはある。製造の一連の工程の前工程の実行条件の実績によって後工程の実行条件を定められた基準に照らして選定するなど、記録を元に業務を行なう場合などでは、記録が正確かどうかを責任者が確認してから後工程に送るという手順が適切な場合がある。
 
A文書の改定の管理
  業務の基本や基準を規定し業務実行で繰り返し使用又は内容が参照される規範文書には、作成時点での必要な最適の業務のあり方が規定されている。従って、その業務を巡る状況の変化に合わせて内容は変更されなければならず、又は、新たな手順の文書化が必要になる。新設備の導入、新製品の発売などはこれである。問題があって再発防止(8.5.2項)のために、或いは、改善のために業務方法を変更する場合も、それらの手順を規定した文書の改定が行なわれなければならない。時宜を得た文書の改定によって、業務が常に組織にとって最適に行なわれることを確実にすることができる。状況の変化を検出して必要な文書の内容を変更する責任を持つのは、その業務の結果に責任をもつ管理者である。
 
  特別工程指示書、毎日の生産指示書など特定業務の実行に関する業務指示文書や、年度品質方針書、業務目標の掲示書など期間を限定された業務指示文書は、一般に改定されることはない。期限切れや状況変化で内容がそぐわなくなった場合は新しい文書として新たに発行するというやりかたが実務的で便利である。購買伝票や異常報告書など便宜文書のほとんどは一過性であるから改定されない。記録は事実を表す文書であるから、記述された内容自身が変更されることはないが、教育記録書のように新たな事実の追加記入や、資格喪失による抹消があるから、文書の内容は変化する。
 
  文書が改定された場合に何時から又はどの業務から適用すべきかを明確にすることが必要である。一時期の間に旧文書と併存することもあり得るから、新旧の文書が必要な通りに使い分けられるように、両者が明確に区別できなければならない。文書の内容が全面的に改定されることは少なく、多くの場合は一部ないし部分的な変更であるから、どこをどのように変更したかを、その理由と共に文書自身又は関連付属文書で明確にすることが、必要な要員への改定の徹底という点で効果的である。改定を行なわず内容変更を新規文書の発行という形で行なう文書の場合には、適用する業務又は適用する期間を明確に表示しておくことが必要である。
 
  文書が改訂された場合、要員には改訂と事実と内容、切換え時機を必要な程度に知らせ、当該業務に直接関係する要員には理解させ、必要により新しい手順での業務実行の訓練をさせなければならない。文書管理の手はずにはこの手順を決めておくことが必要である。さらに管理者は、改訂手順が所定の時機から実行され、定着することを確実にするよう管理しなければならない。
 
  経営管理(マネジメント)は本質的に製品と業務の継続的な改善の活動である。製品と業務実行の手順が日常的に変更されることが、効果的に品質マネジメントが行なわれている証である。文書によって業務を実行、管理する品質マネジメントでは、文書の内容の変更は日常的に行なわれる。文書体系の在り方、文書の記述方法、文書の取り扱いの方法には、頻繁な文書改定に容易に対応できることを見据えて最大限の配慮や工夫をすることが必要である。
 
B 文書の配付の管理
  体系的な業務遂行には文書に基づいて業務が実行されることが不可欠である。文書は、必要な要員が必要な時に必要なところで参照或いは使用できるようになっていなければならない。手順の多くは関係する要員が記憶し或いは身につけていていなければならず、それらを規定する文書の使用は、念のための確認や訓練の場合に限られる。このような文書は要員が必要に応じて検索又は取り出すことができればよいから、部門や職場単位の配付でよい。しかし、数値など記憶することが困難で、誤作業の原因になり兼ねない内容に関しては、当該文書又は当該内容が作業に必要な都度、その場で閲覧又は参照できるようにしなければならず、作業場や要員単位の配付が必要となる。業務実行条件の指示や順番の指定など日々に又は業務実行毎に決められる手順を記述する文書も関係要員が業務実行の現場で参照、使用できなければならない。
 
  文書の配付には、原文書を配付する場合とその写しを配付する場合、また、部門で必要な部分を複写して部門内に再配付する場合がある。配付の時期には、必要となる文書を予め配付しておく方法と業務の実行の指示と共に当該業務を規定する文書を配付する方法とがある。 また配付の形式としては、紙の文書の配布や電子文書の配信、情報ネットワークの画面での表示、設備運転管理表示盤での標示、掲示板での表示、また、記録用紙への表示などがある。 配付の管理は、文書が改定された場合に、当該文書の配付を受けているところに改定版が間違いなく届けられ、改定が関係者に周知され、改定版が旧版と置き換えられることも確実にするように行われなければならない。
 
C 文書の保管の管理
  使用中でない文書や文書の原本は、必要な要員が必要な時に必要な容易さで検索し、使用できるような形で保管することが必要である。同時に、保管の方法には文書の機密度に対応した情報漏洩防止の観点や文書の非常持ち出しの必要性の観点をも考慮しなければならない。また、繰り返し使用による劣化や損傷、写真や現物見本のように自然劣化の可能性をも考慮することが必要である。
 
  使用しなくなった文書の保存も大切である。製品実現に係わる文書は一般に、以降に発生する製品不良への対応のために一定期間保存することが必要である。これら文書によって記録に残された工程条件の実績が当時の規定を満たすものであるかどうかを確認することができる。また、文書の改定の経緯は組織の業務実行能力の進歩の過程を表し、文書の改定は組織の製品と業務実行の改善の証である。旧文書は後の実際の業務にも役立てることができる。例えば、関連する旧文書を参照して変更しようとする手順が過去の繰り返しではないことを確認し、また、新しい手順の適切性を過去の経緯に照らして評価することである。
 
(2) 情報ネットワーク上の文書の管理
  文書を情報ネットワークシステム又は個々の計算機システム上に搭載することが拡がっているが、この目的ないし文書管理の観点からのシステム利用の形態は様々である。紙文書を正として、計算機システムを文書の最新版管理や配付の管理に利用する場合が多いが、この場合は紙文書の管理に加えて、その内容が正しく、時宜を得てシステム上の文書に反映されることを確実にする管理が必要となる。また、変更された内容で業務が行なわれることを確実にするためには一般に、システム上で文書を変更するのとは別に、変更されたという事実を関係者に伝達することが必要である。
 
  文書の作成から使用まですべてを計算機システム上で行なう場合には、ソフトウェアの信頼性、計算機システムの保守管理の観点が大切である。システム設計では、作成や変更した文書の内容に誤りのないことを確実にする管理、新旧版の切り替えの管理、旧版の保存の管理、非常事態への備えにも考慮を払うことが大切である。情報ネットワークシステムによる文書管理では文書の機密度に応じた閲覧制限、外部と繋がったシステムの場合の重要情報流出防止への配慮が必要なことがある。
 
 
 
H24.11.11
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サニーヒルズ コンサルタント事務所