ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
19 5.2 項  顧客重視 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-19
5.2  顧客重視
  顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にしなければならない
(7.2.1及び8.2.1参照)。
 
 
1.要旨

  本項では、製品に対する顧客満足の追求により事業の存続発展を図る品質マネジメントの日常業務の実行に関して、トッフ ゚マネジメントが自身で行なわなければならない管理のひとつが規定されている。
 
  トップマネジメントは必要な顧客満足の実現に向けて組織を方向づける(5.3項)だけでなく、その実現を図らなければならない。トップマネジメントは、受注又は契約から製品をつくり、顧客に引渡すまでの日常業務の実行管理に関して、製品に対する顧客のニーズと期待の把握(7.2.1項)、及び、製品に対する顧客の受けとめ方の監視測定(8.2.1項)の両日常業務が品質マネジメントの業績目標の狙いの顧客満足が実現するよう所定通りに実行されるように管理しなければならない。
 
 
2. 背景 及び 関連事項
2-1. 顧客満足
(1) 顧客要求事項
  JIS和訳『要求事項』の英文の“requirement”は、必要とする又は望むもの、或いは、必要とされる又は望まれるものの意味であり、事業用語としては必要事項、必要条件、要件、条件である$1。『顧客要求事項』は“customer requirement”であり、組織が顧客に対して満たすべき必要条件という意味であるから、「顧客に関する必要条件」或いは「顧客要件」である$1-2-2。
 
  一方、規格の定義では“requirement”は『ニーズ若しくは期待』である#18から、『顧客要求事項』は供給者としての組織が満たすべき『顧客のニーズや期待』という意味になる。また、指針規格(131a)は『顧客要求事項』について、「顧客はそのニーズと期待を満たす特性の製品を必要としている。これらニーズと期待は、製品仕様の形で表わされ、まとめて顧客要求事項 と呼ばれる」と説明している。従って、規格の意図の『顧客要求事項』は、顧客の製品の機能や性能に対する想いである『顧客のニーズや期待』を組織が満たすべき製品に関する必要条件として表したものである。規格では、『製品要求事項』が製品の仕様や品質に関する必要条件を意味し、『顧客要求事項』はその元となるべき製品に関する『顧客のニーズと期待』と考えるのがよい。
 
(2) 顧客満足の意義
  規格の『顧客満足』とは、不良品を出さないことを含み、顧客に製品及びサービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品に対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。組織の事業の存続発展は、製品を顧客が買い続け又は取引を続けてくれるかどうかにかかっている。買ってくれるかどうかは顧客が組織と製品を気に入ってくれるかどうかで決まり、この気に入ってくれる程度が顧客満足度であり、規格の『顧客満足』である。
 
  気に入るかどうかは、製品の機能や性能やその品質が自分の想いのニーズや期待にどの程度合致したと顧客が感じたかで決まり、製品が自分の想いに合致したかどうかの顧客の判断は一般に科学的、論理的というより多分に感覚的、情緒的である。これがマーケティング論における顧客満足の概念である。規格は、このような概念の顧客満足度である『顧客満足』を『顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方』と定義している#17。 ここに『顧客の要求事項$1-2-3』は『顧客要求事項$1-2-2』と実質的に同じ意味で、組織の製品に対する『顧客のニーズと期待』を指す。規格の意図の『顧客満足』とは、組織の製品がどのような顧客の想いのニーズや期待をどのようにどの程度まで満たすものであったかであり、これを顧客がどう感じたかである。
 
 組織の製品が自分の想いに合致し、或いは、超えたと顧客が感じるほど顧客の満足感が高く、その反対では顧客の満足感は低く、或いは、不満を抱く。顧客が一定の満足感を感じることができなければ次回には製品を買ってもらえない、あるいは、供給者の地位を失う。組織が、所要の販売量を達成し、又は、供給者として所要の地歩を固めることができているのは、その製品が、或いは、供給者としての組織の仕事振りが顧客に一定以上の評価を受けていること、つまり、顧客を引き止めるために必要な程度の顧客満足の状態や程度が実現しているからである。
 
  顧客満足とは本質的に顧客が製品を買い続ける或いは取引を継続するかどうかの顧客の判断に係わる状況のことであり、それは製品が顧客想いのニーズと期待を満たしているかどうかの顧客の判断による。顧客に買い続けてもらい或いは顧客との取引を継続し発展させるためには、顧客の想いの製品に係わるニーズと期待たる『顧客要求事項』を正しく推定、把握して (7.2.1項)、これを満たす製品仕様と品質の製品(7.1 a)項)を確実に顧客に引渡すことが必要である。
 
(3) 品質保証と顧客満足
  『品質保証』は規格では、94年版()では「あるものが品質に関する要件を満たすだろうという十分な信頼感をもたらす活動」、00年版(131h)では「品質要件が満たされるだろうという信頼感をもたらすことに焦点を合わせた活動」とそれぞれ定義されている。実務的には、顧客に組織の製品に対する信頼感を抱かせ、製品の購入時又は取引開始時において顧客に選んでもらう状況、或いは、組織の製品が売れ、或いは、取引が維持される状況をつくり、維持する活動である。つまり、組織の存続発展に必要な顧客満足を追求する活動である。規格の品質マネジメントは顧客満足の観点から組織の存続発展を図る組織の経営管理(マネジメント活動のひとつの側面であり、一部である。
 
@ 1994年版規格
  94年版(1項)は規格の各規定が『顧客満足を得ることを第一の狙いとする』ものであると明記して、規格が品質保証活動の目的を追求する品質マネジメント(JIS和訳は『品質管理』)のあり方の世界標準であることを明らかにしていた。そして、その『顧客満足』が「製品実現のすべての業務で不適合を防止することによって」実現するものとされていた。これはISO9001が1970年代までの欧米の品質保証規格を前身とするためであり、品質不良が圧倒的に少ない日本製品への欧米の対抗がISO9001作成の動機に含まれていたことが理由である。
 
  組織の発展は不良品や欠陥品のない優れた品質の製品を顧客に供給できるかどうかにかかっており、そのために組織は『製品が規定要求事項に適合することを確実にするための手段』としての『品質システム』(00年版表現では『品質マネジメントシステム』)の確立とそれに則った業務の実行と管理が必要というのが94年版(4.2.1)の論理であった。
 
  指針規格の定義によると『規定要求事項』は、顧客が明示し組織と合意した製品の仕様と品質、又は、市場ニーズを満たすものと組織が考えて決めた必要条件を指す(145a)。どちらで決められた必要条件の『規定要求事項』も実質的には顧客と合意した製品仕様と品質という意味であり、これを引渡すことで顧客は購入の目的を達成したと感じ、製品に満足感を抱くと考えられた。つまり『不適合製品』とは合意の必要条件を満たさない製品であり、不良品や欠陥製品のことを指した。日本製品並みの品質とすることによって組織の品質競争力がつくと考えられたのが1980年代までの市場の状況であった。ISO9001の考え方の実践の結果、1990年代には実際に欧米の工業製品は競争力を回復した。
 
A 2000年版規格
  00年版は顧客満足の製品を一貫して供給する能力の向上を図り、又は、実証するための要件を規定する規格になった(1.1項)。この改定の意義について規格は前書き(JISでは序文0.1に転載)に、『この規格の標題は変更され、もはや品質保証という言葉を含んでいない。このことは、この規格で規定された品質マネジメントシステム要求事項は、製品の品質保証に加えて、顧客満足の向上をも目指そうとしていることを反映している』と説明している。
 
  これには改定作業が1990年代に行われたという背景を考えることが必要である。00年版でも不良品や欠陥品を顧客に引き渡さないという品質保証の活動の本質は変わらないが、1990年代以降の市場競争の中ではそれだけでは製品が売れ、或いは、取引を維持できるほどの顧客満足が得られるとは限らない。対象を製造業から全業種業態に拡大した00年版は、もはや伝統的な品質保証の規格ではなく、製品品質に基づく組織の発展という品質保証の目的そのものの達成を図る規格となった。94年版の時代では品質保証活動の目的である顧客満足は、不良品や欠陥品を出さないという手段で実現できたが、00年版以降の時代ではそれ以外の顧客満足に結びつく手段、要素をも考える必要があるということである。この顧客満足実現の手段、要素のことが、『顧客要求事項』、つまり、『顧客のニーズと期待』と一括表現されている。
 
  94年版の表現を借りると、00年版の品質マネジメントシステムは「製品が顧客のニーズと期待に適合することを確実にするための手段」であるということになる。この『顧客のニーズと期待』には当然、受け取る製品が94年版の規定の『不適合製品』や不良品、欠陥品でないことが含まれる。
 
  また、00年版では『品質』の概念が、94年版の品質特性というような概念#2-1から特性の良否というような概念#2-2に変わっており、「品質保証」が製品の機能や性能の保証ではなく、それが顧客のニーズと期待を満たすことを保証することであることを明確にしている。このことが00年版の『品質』が『顧客満足』と同義語であるという認識(2a)を生む背景であり、同じ考え方では00年版の品質保証は単に製品が不良品や欠陥品でないことの保証ではなく、それを含む顧客満足の保証ということになる。
 
 
2-2. 顧客重視
(1) 顧客本位経営
  『顧客重視』の原文は“customer focus”であり、マーケッティング論では「顧客本位」と和訳されることが多い。事業組織が長期的に成長し発展することを目指すなら、常に新しい顧客を創造し続けなければならない。この顧客創造は顧客の必要を探り、それを満たすことによりもたらされる。今日の世界的な競争社会では、顧客創造は単にマーケティングの目的ではなく、経営の目的でなければならないともされる(53-a)。これが顧客本位経営である。
 
  今日のマーケッティング論においては、顧客が製品を選ぶ基準は、製品そのものの価値のみならず組織のイメージ、倫理的行動、技術力、接客や苦情処理態度、広告や報道から受けるイメージなどを含む組織の総合的な印象に支配される(52-a)とされている。これには、組織の性格や置かれた状況によっては、環境保全への取組み、災害などリスクへの取り組み、場合によっては労働条件も含まれ、メディアによる不祥事や社会貢献実績の報道も関係する。このような顧客満足の概念について、「提供された商品・サービス、更に、企業の理念などについて、顧客が自分自身の基準によって納得の得られるクオリティと価値を見出すこと」であるとする定義(52-a)もある。
 
  つまり、顧客満足に影響する顧客のニーズと期待は製品に留まらないということである。近年ISO規格やその他の公式の基準に従った環境保全(ISO14001)、IT情報セキュリティ(ISO17001)、労働安全衛生(OHSAS)、道路交通安全()の管理への組織の取組みが増えているのは、このような顧客満足に繋がる要素の拡大が背景である。
 
  また、顧客の製品に対するニーズに関して、田口氏(50)は、顧客の欲求という概念を採り上げ、顧客が認識している欲求と認識していない欲求とがあり、後者を満たすことが「本来の満足の提供と言える」と述べている。嶋口氏(53b)は顧客の感じる不満に、”怒りを伴う不満”と”単に満足していない”の2種があり、前者の苦情に対する修復型対応ではなく、意思表明のない後者を満足状態にする先回り型の満足追求が顧客創造に大切と記している。
 
  顧客の要求通りの製品では競合他組織と同じ満足しか与えることができないから、競争優位を得ることはできない。顧客のニーズは、顧客の明示の要求を超えて、組織が探り、推し測るべきものであり、それを製品に転化する際の、他組織にない製品における新機軸と他組織にない製品の提供、更に、顧客毎の多様なニーズと期待のそれぞれを満たす製品仕様や品質の柔軟性を中心とする製品の差別化が、顧客満足の要諦である。
 
(2) 品質マネジメントと顧客満足
  規格の品質マネジメントは、組織の経営管理(マネジメント)活動のひとつの側面ないし一部としての、組織の存続と発展に必要な顧客満足を追求する活動である。規格の品質マネジメントと『顧客満足』に係わる規定の論理は、マーケティング論の顧客本位経営の論理と軌を一にしている。このことを明確にしているのが、品質マネジメントの8つの原則のひとつの『顧客満足』に係わる『顧客重視』の原則(82-a)である。すなわち、「組織は顧客に依存しており、そのために、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を超えるように努力すべきである」と、顧客本位経営の論理が引用されている。
 
  ただし、規格の品質マネジメントが取り扱うのは製品に関係する顧客のニーズと期待だけである。しかし、製品には事業の目的の製品だけではなく、例えば販売、苦情対応、製品配達、部品補給など顧客との接点で行われる活動の結果で顧客に与える便宜や印象、感情も製品である(7.2.3項)。品質マネジメントでは、本来の製品だけでなく、製品に付随する顧客との接点業務に関する『顧客要求事項』つまり顧客のニーズと期待も対象である。
 
  規格の品質マネジメントでは、組織の存続発展のために実現しなければならない顧客満足のあり方を経営戦略として決め、品質方針、品質目標((5.3項)に明らかし、この狙いの顧客満足を実現するように日常の各業務の実行を管理する。規格ではこの狙いの顧客満足は一般に、経営戦略と実行目標として決められる。実務では、前者は組織の要員の行動指針となり、後者の組織の品質目標は、特定期間例えば年度の品質マネジメントの業績目標となる。日常業務管理では、受注又は契約した個々の製品の顧客のニーズと期待を品質方針に沿って引き出し把握し、品質目標の狙いの顧客満足の達成を図るように製品としての必要条件を明らかにし (7.2.1項)、これを反映して具体的な製品仕様と品質及び付帯仕様を決め (7.2.1項)、この通りの製品をつくり、顧客に引渡すように各業務の実行を管理する。
 
 品質マネジメントのプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cは品質マネジメントの業績目標としての品質目標の達成度の評価であり、個々の製品に対する顧客の苦情の把握(7.2.3 c)項)と合わせて、日常業務の実行管理の総合的結果として品質目標がどの程度達成されたかの評価である。これは規格では顧客満足の『監視及び測定』(8.2.1項)と『データ分析』(8.4 a)項)として規定されている。
 
  事業組織の実務では事業活動の最終的業績目標は収益であり、狙いの顧客満足とは例えばこれを製品の売上、或いは、取引高の面で達成するのに必要な製品に対する顧客の評価に関係する。狙いの顧客満足とは例えば、業界一の高品質の製品を供給する組織であると顧客に評価され信頼されるという状況であり、この高品質はさらに機能に優れた製品、欠陥のない製品、客層に合わせた製品、使用の容易な製品、短納期などのように具体化され、これらの実績について顧客がどのように評価し受け止めているかの総合的な顧客の判断が規格の意図の顧客満足である。組織の狙い顧客満足とその実績が顧客のニーズと期待に合致した場合に、他の関連する業績と合わせて営業マネジメントの業績目標の狙いの売上、取引高をあげることができ、或いは、あげることの足を引っ張らない。このことと合わせて原価マネジメントと他の関連する業績目標が達成できれば、組織の最終的業績目標の狙いの収益をあげることができる。
 
(3) 顧客満足の追求
  品質マネジメントが必要な収益をあげることに寄与できるかどうかは、顧客のニーズと期待を如何に正しく汲み取るかにかかっている。しかし、ニーズと期待が実際に満たされたかどうかの判断をするのは顧客である。一般に顧客はどのような製品が技術的、経済的に実現できるのかも知らない。例え顧客がそのニーズと期待を明示したとしても、顧客満足が得られるという観点からの真の顧客のニーズと期待は、明示の要求の範囲を超えるものである。顧客が製品を受け取り、又は、使用してどのように感じるかは一般に、顧客がそのニーズと期待をどの程度明確に認識していたかには無関係である。組織の存続発展に必要な顧客満足を実現するには、顧客のニーズと期待はあくまで組織が探り、推し測るべきものである。
 
  このような顧客満足の本質を指針規格は、「顧客要求事項は顧客との契約によって規定されることもあり、組織自体がこれを決定することもある。いずれの場合も顧客が最終的にその製品を受け入れ可能かどうかを決定する」 (131a)、或いは、「顧客要求事項が顧客と合意され、満たされている場合でも、それが必ずしも顧客満足が高いことを保証するものではない」#17-1と説明している。
 
  また、競争社会ではどの組織にも競合組織が存在するから、顧客の創造には競合組織以上の顧客満足を実現することが必要である。指針規格は競争社会の中の顧客創造について、「顧客のニーズや期待は変化し、かつ、競争と技術の進歩があるので、組織には製品及びプロセスを継続的に改善することが求められる」と述べている(131a) 。これは同時に、顧客満足の追求の本質が差別化にあることを示唆している。
   
  規格の顧客満足の意義は一般消費者向け製品やサービスについて語られることが多いが、競合組織が存在する限りは、いわゆる契約型や下請け型、プロジェクト型など、如何なる形態の事業にもあてはまる普遍的原理である。
 
  なお、品質マネジメントの8原則の中には、顧客としての組織がその供給者との間に『互恵関係』を築くべきことが挙げられており、その狙いを『組織及びその供給者は独立しており、両者の互恵関係は両者の価値創造力を高める』ことと説明(131a)している。これは組織が立場を変えて顧客となった状況において、組織の個々の要求に従うのではなく独立して組織の満足を高めるよう努力する複数の供給者の中から最も満足の高い製品を供給する供給者を選ぶということを意味している。組織は供給者の努力を活用することで効果的に顧客満足を追求して発展することができ、これにより供給者も売上や取引量を増やすことができる。
 
 
3. 規格要求事項の真意
  『顧客要求事項』は、用語の意味$1-2-2や指針規格の説明(131a)から、顧客の製品の機能や性能に対する想いである『顧客のニーズや期待』を組織が満たすべき製品に関する必要条件として表したものであり、『顧客要求事項』は簡単には製品に関する顧客のニーズと期待のことである。『顧客満足』とは定義#17から、組織の製品がどの程度まで顧客のニーズと期待を満たすものであるかであり、それを顧客がどう感じたかである。実務的には、顧客が組織から製品を買い続けるのか或いは取引を継続するのかどうかの判断に関係する顧客の製品に対する評価のことである。
 
  規格の品質マネジメントでは、組織の存続発展のために必要な顧客満足のあり方を品質方針(5.3項)、品質目標(5.4.1項)に明確にし、受注又は契約した個々の製品の顧客のニーズと期待を引き出し推定し把握し、品質目標の狙いの顧客満足の実現に資するように製品としての必要条件を明らかにし (7.2.1項)、これを反映して具体的な製品仕様と品質及び付帯仕様を決め(7.1 a)項)、この通りの製品をつくり、顧客に引渡すよう日常業務の実行を管理する。これら製品を顧客がどのように受け止めたかの顧客満足を監視及び測定(8.2.1項)し、データ分析(8.4 a)項)して、品質目標の狙いの顧客満足が確実に実現することを図る。
 
  トップマネジメントは、組織の存続発展に必要な顧客満足のあり方を決め、その狙いの顧客満足を確実に実現させるよう品質マネジメントの日常業務の全般の管理をしなければならない。とりわけ、狙いの顧客満足の実現に直接関係する7.2.1項と8.2.1項の日常業務については、自ら管理しなければならない。組織は品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)の一環として7.2.1項と8.2.1項の業務実行をトップマネジメントが管理する手はずを整え、トップマネジメントはそれに則って日常業務実行の管理の観点からの狙いの顧客満足が確実な実現を図らなければならない。
 
  トップマネジメントによるこの管理の活動は、規格では プロセスの監視及び測定(8.2.3項)のひとつであり、内部コミュニケーション(5.5.3項)や マネジメントレビュー (5.6項)はこの手段のひとつとなり得る。また、管理責任者 の報告責任(5.5.2 b項)に含めることもあり得る。
 
● 顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは、顧客要求事項が決定され、満たされていることを確実にしなければならない
  この条文の受動態で表された英文を日本語的に能動態表現にし、『顧客要求事項』を「顧客のニーズと期待」と表す$1-2-2と条文の意図がわかりやすい日本語条文となる。すなわち、「トップマネジメントは、組織が顧客満足の追求という観点から顧客のニーズと期待を把握し、満たすことを確実にしなければならない」である$18。
 
@ 顧客要求事項が決定される
  規格の意図のこの部分の条文は、「トップマネジメントは、組織が顧客満足の追求という観点から顧客のニーズと期待を把握することを確実にしなければならない」であり、この文章に対応して『7.2.1項参照』の注釈が付されている。
 
  顧客本位経営の考えに立つ品質マネジメントにおいては、受注又は契約した個々の製品について、顧客の想いのニーズと期待を確実に正しく引き出し推定して、狙いの顧客満足の実現に資するような製品であるために組織がつくる製品の仕様と品質がどのようでなければならないかをきめなければならない。規格では、7.2.1項(製品に関連する要求事項の明確化)で、個々の製品の顧客の想いのニーズと期待(顧客要求事項)を把握し、それらを製品及び付帯仕様とそれらの品質に関する必要条件(製品要求事項)として展開し、製品実現の計画 (7.1a)項)活動でこれを基にして実際に顧客に引渡す製品の具体的な仕様と品質及び付帯条件を決める。
 
 条文の『顧客要求事項が決定される』に係わる部分の規格の意図は、受注又は契約した個々の製品について顧客の想いのニーズと期待を確実に正しく引き出し推定し、狙いの顧客満足の実現に資するように製品の仕様と品質に関する必要条件を決めるという日常業務の実行をトップマネジメント自身で管理することが必要であるということである。トップマネジメントは、7.2.1項(製品に関連する要求事項の明確化)の業務の手はずが適切であるよう、また、それに則って業務が行われるように管理しなければならない。
 
  なお、7.2.1項(製品に関連する要求事項の明確化)では、顧客のニーズと期待を表すのに『顧客要求事項』ではなく『製品に関連する要求事項』又は『製品要求事項』が用いられている。これは00年版の記述表現において「顧客のニーズと期待」『顧客要求事項』『製品要求事項』の3つの概念と表現が完全には統一されていないからである。本項と7.2.1項とにおいて異なる用語が用いられていることには他意はなく、『顧客要求事項』と『製品に関連する要求事項』の違いは『顧客のニーズと期待』をどのように表すかの違いだけであるから、両条項では両用語は同じ意味に理解して問題ない。
 
A 顧客要求事項が満たされている
  規格の意図のこの部分の条文は、「トップマネジメントは、組織が顧客満足の追求という観点から顧客のニーズと期待を満たすことを確実にしなければならない」であり、この文章に対応して『8.2.1項参照』の注釈が付されている。
 
  この部分の条文の『顧客要求事項が満たされている』とは、顧客に引渡した製品が実際に顧客の想いのニーズと期待を満たしたということであり、顧客にそのように感じてもらえたということである。成約又は受注した製品のすべてがこのように顧客に受け止められた総合的結果で組織の狙いの顧客満足が実現したと判断される。このような狙いの顧客満足の実現の管理は規格では、品質マネジメントの業績目標としての特定期間又は時点で達成すべき顧客満足の状態や程度を表す組織の品質目標(5.4項)を確実に達成するための業績管理として位置づけされている(8.2.1項)。
 
  条文の『顧客要求事項が満たされている』に係わる部分の規格の意図は、納品又は引渡した個々の製品が実際に顧客の想いのニーズと期待を満たしたと顧客に受け止められかどうか、それらの総合的結果で品質マネジメントの業績目標の顧客満足が達成されるかどうかに関する情報収集と評価の日常業務の実行をトップマネジメントが自身で管理しなければならないということである。トップマネジメントは、8.2.1項(顧客満足)の業務の手はずが適切であるよう、また、それに則って業務が行われるように管理しなければならない。
 
 
H26.9.23
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サニーヒルズ コンサルタント事務所