ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
22
5.4.1項  品質目標 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-22
 トップマネジメントは、次の事項を確実にしなければならない。
 [第1文] トップマネジメントは、組織内のしかるべき部門及び階層で、製品要求事項(7.1 a)参照)を満たすために必要なものを 含む品質目標が設定されていることを確実にしなければならない。
 [第2文] 組織は品質目標は、その達成度が判定可能で、品質方針との整合性がとれていなければならない。
 
 
1.要旨

   本項では、経営目標としての品質目標が確実に達成できるように関連する業務を管理するための要件、及び、そのような管理に対するトップマネジメントの責任が規定されている。
 
  品質方針と合わせてトップマネジメントが決める組織の品質目標(5.3項)は、組織の存続発展のために実現すべき顧客満足の状態や程度を表し、組織の経営管理活動の業績のひとつの品質マネジメントの狙いの業績目標である。組織は、この顧客満足に関する業績目標、及び、その一部である適合製品の供給という業績目標を確実に達成するために管理する必要があり、管理すれば十分と考えられる業務を特定し、その必要な狙いの業務結果、すなわち、業務目標としての品質目標を明確にしなければならない。トップマネジメントは、業績目標の達成のためのこのような管理ポイントが関連する経営機能上及び管理の観点から適切に決められており、業績管理のために真に効果的であるように管理しなければならない。
 
   
2. 背景 及び 関連事項
2-1. 経営管理の枠組み
(1) マネジメント サイクル
 経営管理(マネジメント)は、組織の存立の目的に沿って事業を維持発展させる活動である。経営論では「組織の有する能力(資源)を状況のニーズに適応させながら組織目的を達成していく活動」と、方法論を含めて定義される(45a)。規格では「組織を方向づけ制御する統制された活動」であり#19、事業の維持発展の管理活動であることに焦点を当てた定義となっている。
 
   基礎的な経営論では経営管理活動は、組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を明確にし、その実現を図るべく組織の業務を方向づけ、実行を管理する活動である。無限持続体としての組織の経営管理活動は継続的に業績の向上を図る、plan‐do‐seeの繰り返しの循環的活動と見做される。このマネジメント サイクルは、計画‐リード‐統合のサイクルであると整理されるが、この統合と次のサイクルの計画との間にはそのサイクルの経営管理活動の成果としての目的達成度の評価と次のサイクルへの反映という経営の意思決定が含まれる。規格ではこのマネジメント サイクルを、プロセスアプローチ/PDCAサイクルの計画/P‐履行/D‐管理/C‐継続的改善/Aの形で表現している。
   
  すなわち、経営論では、組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策は経営戦略と呼ばれ、これは組織が置かれた環境と組織の有している能力を勘案して、実現の可能性と実現により得られる利益や効用の大きさとが釣り合う最適解として決められ、経営方針、経営目標として明確にされる。この経営方針、経営目標の一部としてのどのような顧客満足の姿、状態や程度を目指し、実現を図るのかを示す方針、目標が規格の品質方針(5.3項)、品質目標(5.4.1項)である。
 
  この戦略の実現を図るよう業務実行の手順を決め資源を用意して経営管理体制を確立することを、戦略の決定と合わせて、経営管理を計画すると表現される。規格ではこれは、品質目標を達成できるように関連する業務の手はずを整えるという意味での品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)と呼ばれる。
 
  管理者の担う日常的管理業務は、各業務が計画に則って行われ、計画で定められた通りの業務結果が出るよう管理することである。これは、経営論ではリード・統合(45a)、或いは、執行(指揮)・統制(54)である。規格では、製品実現の管理(7章)である。
 
  経営管理活動の成果は、つまり、組織の業績は、経営方針、目標の達成度として評価され、評価の結果は変化する事業環境と組織の能力の評価に基づく戦略や経営計画の必要な見直しに反映される。規格では品質方針、目標の達成度の評価は、顧客満足の監視測定(8.2.1項)及びデータ分析(8.4 a)項)として、それに基づく戦略と経営計画の見直しは マネジメントレビュー(5.6項)として規定されている。
 
(2) 経営目標
  経営目標は経営方針と一対であり、経営の意思表示である。経営方針が組織のあるべき姿、目指すべき将来像に関して、また、そこに到達するための道筋或いは方策に関する考え方、方向性を示すのに対して、経営目標はそれらの特定時点での到達点或いは達成すべき状態や程度を表す。経営の基本方針に対応する基本目標は一挙に達成できるものではなく、それぞれの時点での事業環境の必要や組織の経営資源の実態を勘案した中期目標や短期目標に或いは、状況に見合う実行目標に展開され、その達成の繰り返しで、段階的、継続的に目指すべき将来像が追求される。基本目標は一般に抽象的、概念的であり、中期や短期目標、実行目標ほど具体的、定量的に表される。
 
  経営目標は、日常の経営管理の各業務を通じて達成が図られる。その実現、達成のための業務実行の手はずを整えることは、マネジメント サイクルでは経営方針、経営目標を決めることと合わせて「計画する」と表現される。規格では品質目標を達成するための業務の手はずを整える活動を、マネジメントシステムの計画(5.4.2項)と呼ぶ。
 
 
2-2. 品質目標
(1) 顧客満足追求に関する目標
  品質目標は、「品質に関して、追求し、目指すもの」と定義される#22。00年版では品質は顧客満足と同義語であるから、定義によると何であれ顧客満足の追求に関係する狙いはすべて品質目標と呼ばれる。
 
@ 業績目標
  規格の品質マネジメントは、組織の経営管理(マネジメント)活動の一部としての事業の維持発展を顧客満足の観点から追求する経営管理(マネジメント)活動である。経営方針の一部としての品質方針と経営目標の一部としての品質目標は一体であり、前者は顧客満足のあるべき姿やその実現の道筋に関する考え方であり、後者はどのような顧客満足の状態や程度を目指し、達成を図るのかを表す。
 
  品質目標は組織の存続発展に必要な顧客満足の状態を示し、その達成は最終的に収益を指標として表される組織の業績を支える。すなわち、組織の経営管理活動の目標であり成果である収益たる事業業績は、様々な経営課題への対応の結果で達成されるものであり、品質マネジメントの業績は通常、狙いの必要な売上高の達成を通じて組織の事業業績を支える。品質目標は品質マネジメントの目標であり、その成果として達成が図られる。品質目標は実務的には特定期間又は時点の品質マネジメントの業績目標である。
 
  経営目標たる品質目標を決めるのはトップマネジメントの責任である。このことは、指針規格で品質マネジメントにおけるトップマネジメントの役割の説明に「品質方針及び品質目標を設定し、維持する」ことが挙げられている(131-d)ことでも明らかである。
 
A 業務目標
  規格では業績目標たる品質目標は、その達成に関係する一連の業務の実行の結果として達成されると考える。これら各業務は顧客満足の追求に関係するから、規格ではそれら業務の実行の目標ないし狙いの業務結果は品質目標である。すなわち、経営管理(マネジメント)活動の業績目標たる品質目標は、関係する各業務の業務目標たる品質目標の達成の総合的結果として達成される。
 
 規格では、品質マネジメントシステム全体としての狙いの結果は『組織の品質目標』或いは『品質マネジメントシステムの品質目標』である。品質マネジメントシステムは関連する各業務の有機的集合体であり、各業務はインプット(入力)をアウトプット(出力)に変換する活動#1という意味の『プロセス』である。『プロセスのアウトプット』とは業務結果のことであり、『プロセスの品質目標』は各業務の狙いの結果のことである。品質マネジメントシステムのすべてのプロセスの『プロセスの品質目標』が達成された総合的結果で『品質マネジメント システムの品質目標』が達成される。
 
  品質マネジメントシステムの品質目標は組織の品質マネジメントの業績目標であり、プロセスの品質目標は品質マネジメントに関連する各業務の狙いの結果である。すべての業務が狙いの結果を出すことで組織の業績目標が達成される。業績目標を達成するための日常業務管理では、関係するすべての業務を管理するのでなく、そのために特に重要な業務の実行と結果たる実績を管理する。規格の意図の業務目標とは実務的には、このような管理ポイントとなる業務とその狙いの結果のことである。
 
 例えば、顧客の表面欠陥に関する苦情発生件数をこれまでと同じ一定水準に維持することを指標とする品質目標の場合には、@検査部門の検査精度の維持の観点、B品質管理部門の製品品質水準の維持の観点から、それぞれ、@照明や限界見本の管理、検査員の定期能力検定、A検査不良率の管理、異常材の原因追求と対策実行という処置に関して、各業務の狙いの結果つまり業務目標が明確にされ、その実行の手はずが整えられている(5.4.2項)。これら業務の実行と結果は、日常業務管理における管理ポイントとして決められた通りかどうかの観点から監視され、月例業務検討会に報告され、それまでの苦情発生件数の実績と勘案して目標が達成されるかどうかの観点で評価される。
 
  例えば、顧客の表面欠陥に関する要求の厳格化で増加傾向の苦情発生件数の一定水準までの減少を業績目標とした場合、@検査部門の検査精度を向上させる観点、A検査技術の開発の観点、B品質管理部門の品質水準を向上させる観点から、それぞれ、@限界見本の整備と検査員再教育による検査能力向上、A照明の当て方の検討やストロボ導入など設備対応、B検査不良率低減を図る製造基準強化の対策を講じて業績目標の達成を図ることとする。対策処置を実行する各業務の狙いの結果が業務目標たる品質目標である。これら業務は、@Aの業務は通常、方法を決め、Bの製造管理基準を変更して実行の手はずを整える(5.4.2項)。加えてや手段、日程、責任者を明確にした実行計画を作成し、進捗管理の体制を整える。苦情件数を狙い通りの低減を実現するために、日常業務管理においては管理ポイントとしてのこれらの業務の実行計画通りの実行とその狙いの結果を監視し、業務が狙いの結果を出すように、また、それまでの苦情発生件数の実績から処置の適切性を評価しつつ、目標が達成されるよう必要な処置が講じられる。この管理は月例業務検討会の場又は改善活動特別チームとして行われる。
 
B 製品の仕様と品質
  規格ではプロセスのアウトプット、すなわち、業務実行結果は、物であれ、サービスであれ、情報のようなものであれ、すべて製品と呼ばれる#13。しかしISO9001が取扱う製品は、組織が顧客向けに意図された製品と製品に付随するサービス、及び、そのための購買製品と半製品に限られる(1.1項 註記1)。
 
  業務の実行結果がこれらの製品である場合の業務の狙いの結果は、狙いの製品の仕様と品質である。製品の仕様や品質が顧客のニーズと期待を満たす程度が規格の顧客満足であるから、狙いの製品の仕様と品質も品質目標である。すなわち、製品実現(7章)の業務の狙いの結果たる業務目標としての品質目標は、『製品の品質目標(7.1 a)項)』でもある。
 
C 改善目標
 中短期又は実行方針としての品質方針の下の業績目標としての品質目標は、その時点での事業環境の変化に対応するために組織が達成すべき顧客満足の新たな状態や程度を示す。この品質目標の達成には業務と業務実行の手順を変更することが必要であり、この変更は、一般にはより高度な又は新な観点の顧客満足の状態や程度の達成を図るように業務と手順を変更することであるから、改善である。規格では、品質方針、品質目標の変更に基づいて新たな業績目標たる品質目標を達成するように関係する業務とそれらの業務目標を決めることは、改善の業務目標たる品質目標の確立である。これに基づいて新たな業績目標たる品質目標を達成する体制を確立することを繰り返えす活動が、問題の再発防止処置(8.2.2項)と未然防止処置(8.2.3項)と合わせて、規格の『継続的改善』である#38。
 
(2) 品質目標の設定、見直し
  組織の存続発展に必要な顧客満足の状態や程度を示す品質目標は、組織内外の事情の変化に応じて見直さなければならない。このような業績目標としての品質目標は品質方針と一体であるから、基本的には品質方針の設定と見直しに伴って設定、見直される。しかし、品質目標は品質方針実現の特定期間又は時点での到達点であり、同じ品質方針の範疇で到達点としての品質目標が変更されることがある。実務では、改善の進捗や顧客のニーズと期待の厳格化に対応してよく行われることである。
 
  品質方針と業績目標としての品質目標の見直しは、規格では品質目標の達成度合いと事業環境の変化に関する評価、判定 (8.2.1, 8.4 a)項)に基づき行うこととしており、トップマネジメントがその必要有無を含む見直しの判断を行う場としてのマネジメントレビュー(5.6項)を規定している。
 
  業務目標としての品質目標は、業績目標の品質目標が変更になった場合に見直し、変更される。また、業務実行上の問題の再発防止処置(8.2.2項)と未然防止処置(8.2.3項)の実行とは、業務実行の手はずの変更を検討することに相当するが、その目的が狙いの業務結果たる品質目標の変更にある場合もある。組織の最終製品の狙いの仕様と品質、つまり、製品の品質目標を変更することは、製品実現の業務と手順又は業務の狙いの結果たる品質目標を変更することを伴う。新技術の採用など製品実現業務の合理化、効率化の場合には、業務と手順の変更に加えて一連の各業務の狙いの結果たる品質目標が変更されることがある。
 
 
3. 規格要求事項とその真意
  品質目標は『品質に関して、追求し、目指すもの』と定義され#22、規格では顧客満足の追求に関係する狙いはすべて品質目標と呼ばれる。品質方針(5.3項)と一対で示される経営目標としての品質目標は、組織のあるべき姿としての顧客満足のありかたを示す。プロセスアプローチ/PDCAサイクルに則る規格の品質マネジメントでは、品質目標は組織の存続発展のために特定の期間又は時点で実現が必要な顧客満足の状態や程度を表し、品質マネジメントの活動はこの達成を図る活動である。この品質目標は品質マネジメントの成果、つまり、業績として達成されるから、品質目標は実務的には品質マネジメントの業績目標である。
 
  規格では業績目標としての品質目標は『システムの(又は組織の)品質目標』であり、これは関連する各業務の狙いの結果である『プロセスの品質目標』に展開され、各プロセスの品質目標の達成の総合的結果としてシステムの品質目標が達成されると考える。プロセスの品質目標は実務的には業務目標である。業績目標の達成のために行われる改善活動の目標も『プロセスの品質目標』のひとつである。
 
  規格の記述では様々な性格の品質目標が区別されていない。基本目標/実行目標の点では、7.1 a)、8.5.1項は後者、5.3 c)、5.6項の大抵は後者、4.2.1 a)、本項、5.4.2、項は両方の品質目標を指す。業績目標/業務目標の点では、5.3 c)、5.6、8.5.1項は前者、本項と7.1 a)項は後者、4.2.1 a)、5.4.2項は両方の品質目標を指す。
 
  トップマネジメントは、組織の事業の維持発展に必要な顧客満足の状態や程度を表す品質目標が確実に達成される状況が組織内で確立していることを、次の(1)(2)の要件を満たす管理によって確実にしなければならない。
 
(1) トップマネジメントは、組織内のしかるべき部門及び階層で、製品要求事項を満たすために必要なものを含む品質目標(7.1 a)参照)が設定されていることを確実にしなければならない。 [第1文]
  JIS和訳『設定されている』の英文“are established”であり、「確立している」の方がよい$7。すなわち、「品質目標が確立している」とは、品質方針と合わせて示されている業績目標としての品質目標に関して、その達成に関連する業務とその狙いの業務結果つまり業務目標である品質目標が、それらの達成の総合的結果で所定の業績目標が確実に達成されるように間違いなく決められているということを意味している。
 
  『しかるべき』は00年版では『それぞれの』と和訳されていたが英文は同じであり、業績目標の品質目標の達成に密接に関係するという意味で「関連する」である$26。
『部門』は英文では“function”であり、日本語では「機能」である(109)。経営用語では「経営機能」「職能」のことである。組織構造のひとつの単位の職能が実行、管理するべき一連の業務のことを指すとする説明もある(121)。この説明でも“function”の例として、営業、輸送、ITが挙げられているから、実務的には機能部門制組織構造おける各部門の担当経営機能を意味する概念である。
 
  『階層』は“level”であり、この英語には上下関係の意味の「水準」の他に、「観点」という意味で「何かを検討、対処、理解する特定の方法」という意味がある(101)。解説者のHoyle氏は、“level”は組織構造の階層の意味ではなく、管理又は改善の品質目標を確立する観点の意味であると説明している(23ad)。この考えから 同氏は、組織全体、及び、業績目標たる品質目標の達成を可能とするための特定の業務、製品、部門又は職能、さらに、要員の職務能力の5つの観点を挙げている。また、2015年版で採用される共通定義(3.08)では、「xxx目標」は戦略的、戦術的、業務上の3種に分類することができ、また、事業戦略、組織全体、プロジェクト、製品、業務などの種々の“level”の「xxx目標」があり得るとの注釈を付記している。さらに、規格執筆者のひとり(21c)は、組織の品質目標に直接的に係わるか又は重要な業務の結果に対する高位(higher level)の品質目標からこれに関係する業務の結果たる下位(lower level)の品質目標へと展開していくという形での品質目標の設定に関して“level”を用いている。
 
  このように『しかるべき部門及び階層』は、規格の意図と英文の意味では、業績目標たる品質目標の達成に「関連する経営機能上及び管理の観点」である。条文『しかるべき部門及び階層で、品質目標が設定されていることを確実にしなければならない』の正しい趣旨は「業績目標達成に必要な、経営機能上及び管理の観点で関連する業務の業務目標が確立していることを確実にしなければならない」ということである。
 
 この規定は、業績目標を確実に達成するための効果的な関連業務の実行管理の方法論を規格の論理と用語に沿って、表現されたものである。趣旨は、業績目標の達成に重要な役割を果たす業務を特定し、業績目標達成のためにそれらがどのように実行され、どのような結果を出すことが必要かを明確にして、そのように実行され、結果が出るように管理しなければならないということである。つまり、業績目標を確実に達成するためにその実行と結果が決められた通りであることが必要であり、それであれば業績目標が確実に達成できる考えられる業務を特定し、その狙いの業務結果を適切に決めるということである。卑近な表現を用いると管理ポイントを決めるということである。条文の趣旨は、トップマネジメントは自らが設定した業績目標が確実に達成されるように業績管理のための管理ポイントが適切に決められているよう管理しなければならないということである。
 
 品質マネジメントの活動がその目的である狙いの顧客満足たる業績目標の確実な達成に効果的であるためには、業績目標の達成に関係する経営機能上、及び、業績目標の達成に必要な管理の観点という点から、管理すべき業務とその狙いの結果である業務目標を決め、それら業務の実行を管理しなければならない。実務的にはこれらの業務目標たる品質目標とは、業務実行の管理基準や結果の合否判定基準として表される。
 
  また、『製品要求事項を満たすために必要なものを含む品質目標(7.1 a)参照)』は、英文では「製品要求事項を満たすために必要なもの(7.1 a)参照)を含む品質目標」であり、業績目標の達成を図るためと製品の適合性を確実にするための2種類の管理ポイントの決定をトップマネジメントが管理しなければならないという意味である。「製品要求事項を満たすために必要な品質目標」とは、業績目標の狙いの顧客満足の実現に沿うように決めた個々の注文の製品の狙いの仕様と品質及び付帯仕様(7.1 a)項)が確実に満たされるようにするための管理ポイントとしての業務とその狙いの業務結果を意味する。卑近な表現では品質管理の管理ポイントが適切に決められているかどうかの問題である。
 
  不良品をつくらず顧客に引渡さないことに関係する経営機能上、及び、そのために必要な管理の観点という点から、管理すべき業務とその狙いの結果である業務目標を決め、それら業務の実行を管理しなければならない。実務的にはこれらの品質目標は製品品質に重要な影響を持つ工程業務の実行の管理基準や中間及び最終製品の合否判定基準として表される。
 
(2) 品質目標は、その達成度が判定可能で、品質方針との整合性がとれていなければならない。 [第2文]
 この第2文の『品質目標』が上記(1)の第1文の『品質目標』と同じ業務目標としての品質目標であることは、条文表現の点でも明らかである。第1文が管理ポイントとしての業務と業務目標の決め方の要件を規定しているのに対して、本第2文は、顧客満足に関する業績目標の確実な達成を図るための管理ポイントとしての中身に関する要件を規定している。
 
  『達成度が判定可能』の英文の英文は“measurable”である。ISO14001では『測定可能』と直訳されている(135-b)が、『達成度が判定可能』の方がわかりやすい。管理ポイントとして狙いの通りの業務結果が出ているかどうかで業績目標が達成されるかどうかを判断するのであるから、狙いの業務結果たる業務目標は業務実行結果が狙い通りかどうかを判断できるような表現で表されていなければならない。
 
  実務では管理ポイントである業務の狙いの結果は、業務実行管理基準や業務結果の合否判定として表される。これらの基準は、定量的に表されていなくとも、達成の過不足の程度が評価できる程度の表現でもよく、最低限は達成の有無が判断できる程度の表現もよい。大切なのはそのような判断によって業績目標の達成の可否の判断が正しく判断できるかどうかである。
 
  品質目標が『品質方針と整合性がとれていなければならない』というのは当然のことであり、わざわざ規定される必要があるとも思えない。従って、『品質方針』をそれに基づく業績目標としての品質目標を意味しているものと捉えて、管理ポイントである業務の狙いの結果としての品質目標は、業績目標の意味の『品質方針』の実現に密接に関係しているものでなければならないという意味に理解することができる。すなわち、業績管理に真に効果的な管理ポイントと管理基準なければならないということである。
 
 
4. 品質目標の実務
(1) 年度業績目標としての品質目標
  年度経営方針の一部の品質方針に基づく品質目標は、当該年度における組織の収益を確保するのに必要な特有の顧客満足への取り組みとその到達点或いは達成すべき具体的な業績目標である。トップマネジメントは、品質方針と品質目標と合わせて、それへの取組みの考え方を例えば重点取組み事項として明らかにすることが大切である。
 
  関係部門では品質目標を達成するための方法、日程、責任者を定めた実行計画を作成し、それらが自らの考えの取組み方に合致しているかどうか、全体として品質目標が確実に達成するものであるかをトップマネジメントが評価し、判断する。品質目標は組織の経営目標のひとつとして、品質目標実行計画は組織の収益を中心とする業績管理のための実行計画の一部として、また、各部門の業務目標とその実行計画の一部として、それぞれ取り扱う。
 
  年度方針の品質目標には、達成のために方法や処置に試験や試作を必要とするなど未知の要素が含まれている場合も、方法がほぼわかっており、既存の基準や方法の変更で済む場合もあるが、どのような品質目標もその達成を確実にするための管理が必要であり、トップマネジメントは逐次中間段階での管理の状況と品質目標の達成の実績を把握し、必要な処置をとらなければならない。
 
(2) 品質目標の文書化
  品質目標には実務的には、経営基本方針と一対で組織が目指し追求すべき究極的将来の顧客満足の状態や程度を相当に概念的に示す基本経営目標としての品質目標と、組織の中短期的な存続発展のために特定時点又は期間で実現すべき顧客満足の状態や程度を相当に具体的に表す中短期或いは年度品質方針に伴う品質目標とがある。実際の特定期間又は時点或いは年度の品質目標は、これら2種類の品質目標を合わせたものであり、年度の組織の収益目標の達成には両品質目標を合わせた顧客満足の状態や程度の実現を意味する品質マネジメントの業績目標の達成が必要である。
 
  後者の品質目標は規格では、マネジメント レビューによる品質方針及び品質目標の見直し変更に伴って決定された処置(5.6.3項)の狙いの結果のことである。品質方針に対応する品質目標は通常、品質方針表明書(4.2.1 a))に併記されるか、又は、独立した品質目標表明書(同)として、達成度が判定可能な表現で具体的に文書に表される。
 
  前者の品質目標はそれ自体は文書に記述されていないことが多いが、過去の品質マネジメントの活動の中で必要に応じて例えば年度品質目標として明確にされて達成が図られてきた実績として積み上げられてきたものである。例えば、苦情の発生件数の推移図を毎月点検して、それでよしとするか何らかの処置が必要とするかが一定の基準で判断されているとすれば、その判断基準が苦情という観点での狙いの顧客満足の状態や程度として組織の事業業績の達成に必要であるという共通認識の下に品質マネジメントが行われているということである。規格の意図ではこれも品質目標である。このような基本経営目標としての品質目標は、品質目標であるとして謳って文書化されていなくとも、品質マネジメントの管理ポイントの業務実行の狙いの結果や管理基準を指標として文書化されている。
 
(3) 業績目標としての品質目標の単純な事例
  顧客満足追求に関する業績目標として、短期の実行方針としての品質方針と共に示される品質目標の単純な事例としては、次のようなものが考えられる。 これらは、「業界一の高品質の製品を供給する」という顧客の評価と信頼たる顧客満足の状態の確立を戦略として品質基本方針に明確にしている組織が、機能に優れた製品、欠陥のない製品、客層に合わせた製品、使用の容易な製品、短納期など、確立してきた具体的な方向性と目標としての品質方針、品質目標を基礎として、特定の期間に取り組み達成を図る品質目標である。しかし、厳密に言うと@〜Iの表現は、規格の概念では品質目標の指標であり、品質目標そのものではない。品質目標とは、例えば@では競合組織にない高機能製品を供給する組織であるという顧客の評価と信頼感が製品を買い又は取引を続けてくれるのに必要で十分な状態のことを指す。これは実務的には表現できないので、指標を用いて表現するのが普通である。 ( )は対応する品質方針であるが、上記と同様に厳密な意味ではあるべき顧客満足の姿たる品質方針を表現しているのではない。
 
@ 今後の新製品の使用耐久性保証を5年とする(製品の高機能高性能化)
A 次回更新製品より新型投入時期を従来より半年早める(新型製品投入サイクルの短縮)
B 製作原因の外観不具合の苦情発生件数を3年間で毎年10%ずつ減少させる(製品外観の顧客の苦情のゼロ化)
C 今年中に月間の指定時間納品率を80%以上とする体制を整える(顧客の供給者業績評価首位の維持)
D 今年末までに各分野1件の革新的新機能製品の探索に目途をつける(製品の思い切った差別化)
E 2年間で製品の性能区分を現状より50〜100%増やす(顧客の多様なニーズに応える品揃え)
F 今年末までに、受注〜製品発送の時間を平均1.5日以下にする(納品の迅速化)
G 今年中に即時解決率を全電話受付の90%とする(製品使用相談への的確な対応)
H 10店舗でテーブル配置の調味料、添え物の多種類化の実地検討の実施(顧客の多様を嗜好に効率的に対応)
I 今年中に 繁忙時の待ち時間を閑散時並みに短縮する(顧客を待たせないサービス提供)
J 今年中にISO9001認証取得する (品質保証体制の強化)
K 顧客との定期品質連絡会の開設 (顧客との連携の深化)
L 年末に施策を提案する検討委員会の設置 (品質リスク管理体制の見直し)
 
 
 
H22.3.24(修H26.3.5)(修H26.9.23)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所