ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
24 5.5.1項  責任及び権限 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-24
5.5.1 責任及び権限  
 トップマネジメントは、責任及び権限が定められ、組織全体に周知されていることを確タにしなければならない。
 
 
1.要旨

  本項では、品質マネジメントの各業務が定められた手はず(5.4.2項)に則って効果的に実行されるよう、各業務の実行の責任と権限が、抜けなく明確に各要員に割り当てられていることの必要と、そのことに関するトップマネジメントの管理の責任が規定されている。
 
  一定規模以上の組織の品質マネジメントは、トップマネジメントの統率の下で多数の管理者の協働で行われる。品質マネジメントが効果的に行なわれるためには、必要な管理業務のすべてが各管理者に抜けなく明瞭な形で割り当てられていなければならない。更に、各管理者は自部門の要員の業務分担を明確にし、理解させなければならない。トップマネジメントは、品質マネジメントに必要な業務が抜けなく効果的に実行されるよう、各要員の責任と権限の範囲を明確にする手はずとその履行を管理しなければならない。
規格は事業の維持発展のために必要な顧客満足を追求する効果的な品質マネジメントの規範であり、本項はその品
 
2. 責任及び権限 (背景及び関連事項)
  経営用語では、業務、権限、責任の3用語は相互関連的である(54c)。責任とは業務遂行の義務を意味し、権限は業務を正式に遂行できる権利ないし力を意味する。責任に伴う権限が付与されなければ、業務の効果的遂行は困難である。従って、責任と権限は一致しなければならない。別の見方をすると、要員に業務を割り当てるとは、当該業務を実行しなければならない責任と、実行のために必要な資源を使用し判断を行う権限を付与することである。従って、責任と権限は裏腹の関係にある。
 
  組織の業務は一般に複数の、また、多くの要員により分担されている。この委ねられ、割り当てられた業務のことは、責任と権限の観点からは「職務」と呼ばれ、実態的には要員の担当業務を指す。規格の『責任及び権限』は、経営用語の「責任と権限」のことであり、実務上は要員の職務であり、担当業務のことでもある。『責任と権限』は、管理者や役職者だけではなく、組織で業務を行うすべての要員に関係する。
 
  多数の要員が協働し、体系的で組織的に業務が実行されるには、それぞれの業務を誰が担当するのかが明確になっていることが必須である。この要員の業務内容、つまり、責任と権限が明確でない場合、例えば、同じ業務を複数の人が重複して行ったり、或いは、行わなければならない業務が放置されたままとなる危険が生ずる。特に後者は、機会の逸失や事故の発生など品質マネジメントに深刻な結果をもたらす。また、ある要員の行うべき業務を、適切な判断能力や業務実行能力を持っていない別の要員が勝手に行うことは、間違った或いは不適切な結果を引き起こすことにもなりかねない。品質マネジメントによって必要な顧客満足を確実に実現するためには、必要として定められたすべての業務を定められた通りに行なう責任と権限を抜けなく、重複せず、いずれかの要員に割り当てられていることが必要である。
 
  実務上では単にそれぞれの業務をいずれかの要員に割り当てればよいのではない。当該業務を定められた通りに実行し、所定の業務結果を出すことのできる要員でなければならない。これは規格では『力量のある』要員と呼ばれる(6.2.1項)。『力量』とは職務能力のことであり、要員に割り当てられた責任と権限を果たす能力のことである。規格の品質マネジメントでは、要員が一挙手一投足を指示されて業務を実行するのでなく、職務能力を持った要員が定められた手はずに則って主体的に実行し、職務を果たすことが期待されている。
 
3. 規格要求事項とその真意
  トップマネジメントは、責任及び権限が定められ、組織全体に周知されていることを確実にしなければならない。
  『責任及び権限』とは各要員に割り当てられた業務、つまい、職務のことである。『定められている』の原文は、責任と権限の範囲が明確になっているという意味である$20。JIS和訳『周知されている』では「広く知れわたっている」(113)ことと受けとめられかねないが、原文では、情報が伝えられ、必要な要員間で共通理解となっているということが趣旨である$21。
 
  品質マネジメントシステムの効果的実行のためには、必要な業務(4.1 a)項)がすべて抜けなく、いずれかの要員にその責任と権限として割り当てられていなければならない。すべての要員は自らに課された責任と権限を理解しており、また、関係する他の業務の責任と権限の所在を知っていなければならない。必要な業務に抜けが生じることのないよう、要員に割り当てられる責任と権限は、その範囲が明瞭であることが大切であり、とりわけ、他の要員の責任と権限との境界について抜けや重なりがないという観点から明瞭であり、相互に共通理解が確立していることが大切である。
 
  一般には、経営管理の業務は機能別組織によって分担される。部門の担当業務は部門名称に概括的に表され、部門役職層の一般的な責任と権限が慣例的に、又は、文書に記述されて要員の共通理解となっている。このような組織構造の下では、所属する部門、階層、職場名、或いは、役職名によって、要員の責任と権限をおおよそ特定することができる。より詳細な担当業務の範囲は、必要により部門や職場内で通達されるか、文書化される。要員の人事異動や職場配置の変更は、文書の配布や掲示で組織の関係する部門に徹底する方法がとられる。
 
  プロジェクト型業務では、その都度組織体制をつくり、また、チーム内での要員の職務を決めることが必要である。職場や担当作業が日々に変わるような場合は、始業前打合わせや掲示などで徹底を図ることが大切である。制服、腕章や名札、ヘルメットへの表示などで、特定の職務を自他に明らかにする方法がとられることもある。職場や設備などに担当要員の名前を掲示、標示することもある。
 
  組織は、品質マネジメントとその関連業務に要員が割り当てられ、各要員の業務範囲が必要な関係者の間で理解が徹底するよう手はずを整え、履行しなければならない。トップマネジメントは、この手はずが適切であるよう、また、その手はずの履行を管理しなければならない。実務では要員は一般に品質マネジメントの業務だけでなく、他の経営管理(マネジメント)の業務も割り当てられている。要員の責任と権限の割り当てと表現においては、この実態に則して組織の全業務を一体的に取り扱い、要員へは品質マネジメントの業務を含むすべての業務責任とその権限の形で割り当てることが大切である。
 
 
 
H24.2.7 
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