ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
26 5.5.3項  内部コミュニケーション 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-26
5.5.3 内部コミュニケーション
[第1文] トップマネジメントは、組織内に コミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にしなければならない。
[第2文 また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にしなければならない。
 
 
1. 要旨

  本項では、品質マネジメントの業務の実行と結果に関する必要な情報が組織内で確実に伝達され或いは交換される手はずの必要と、そのことに関するトップマネジメントの管理責任が規定されている。
 
  品質マネジメントの業務は多数の人々によって分担されており、定められた顧客満足の実現には人々が連携してそれぞれの業務を行なうことが必要である。人々が協働し、個々の業務が連携して効果的に行なわれるには、人々、業務間、工程間、部門間、階層間、及び、それら内部において業務実行と結果についての情報交換が確実に行なわれることが不可欠である。トップマネジメントは、必要な情報交換の手はずが確立し、それに基づいて情報交換が確実に行なわれているよう管理しなければならない。
 
 
2. コミュニケーション
(1) 情報交換
  『コミュニケーション』は原文では“communication”であり、これは情報の交換、又は、それによって考えや意思を共有することを意味する言葉$21である。TC176指針(6)では「情報交換」と定義される。すなわち、『内部コミュニケーション』とは組織内での意思疎通或いは共通理解のために必要な情報を相互に伝達する「組織内情報交換」のことを意味する。
 
  規格が基礎とする体系的で組織的な業務実行の原理では、『プロセスの運用及び監視を支援するために必要な情報を利用できることを確実にしなければならない』とされている(4.1 d)項)。本項の「組織内情報交換」活動を行うということは、この『情報を利用する』ことと同じ意味である。
 
  品質マネジメントが必要な顧客満足を確実に実現する真に効果的なものであるためには、組織の狙いの顧客満足が人々の共通理解となっており、その達成を目指して人々が協働し、且つ、それぞれの業務に必要な結果を確実に出すことができるという、体系的で組織的な業務実行が必要である。これには組織内で必要な情報が適宜伝達され、交換され、人々、業務間、工程間、部門間、階層間、及び、それら内部において必要な情報が共有されている状況が必要である。
 
  また、要員の認識 (6.2.2 d)項)の醸成には、必要な情報が行き交う風通しのよい職場風土が不可欠である。
 
(2) 情報交換活動
  規格では本項の他でも用語“communication”“communicate”が使われており、JISでは『周知』『伝達』『通信』『コミュニケーション』と和訳されている。すなわち、『顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知する』(5.1 a)、5.5.2 c)項)、『品質方針が組織全体に伝達される』(5.3 d)項)、『責任及び権限が組織全体に周知されている』(5.5.1項)、『通信システム(6.3 b)項)』(5.5.1項)、『顧客とのコミュニケーション』(7.2.3項)、『購買要求事項を供給者に伝達する』(7.4.3項)、『設計・開発に関与するグループ間の効果的なコミュニケーション』(7.3.1項)である。また、『マネジメントレビュー』(5.6項)は情報交換のひとつの態様である。
   
  いずれも、狙いの顧客満足を確実に実現するよう品質マネジメントの業務を効果的に行うために必要な情報交換の活動である。本項の情報交換活動もその一環であるが、下記3.ように『品質マネジメントシステムの実施の有効性』に関する情報交換活動である。
 
 
3. 規格要求事項の真意
(1) トップマネジメントは、組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にしなければならない。[第1文]
(2) また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にしなければならない。 [第2文]
  JIS和訳では[第1文]と[第2文]と分けられて2つの文章となっているが、原文ではひとつの文章である。また、[第1文]の『コミュニケーション』も[第2文]の『情報交換』も原文では“communication”であり、文脈からどちらも『品質マネジメントシステムの有効性』に関するものである。従って、条文は「トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの有効性に関する適当な情報交換の活動が組織内に確立し、その情報交換が行なわれていることを確実にしなければならない」である$21-1。
 
  すなわち、事業の維持発展に必要な顧客満足を確実に実現するよう品質マネジメントの業務が組織内で効果的に実行されるには、情報交換が不可欠であるということであり、交換すべき情報は『品質マネジメントシステムの有効性』に関するものであるということである。ここに『有効性』は「活動が計画通りに実行されて、計画した結果が達成された程度」と定義される#4。品質マネジメントシステムは、組織の発展に必要な顧客満足の実現を図る品質マネジメントの業務の体系であり、従ってその有効性とは、狙いの顧客満足の実現を図るよう計画 された各業務がその通りに実行され、決められた通りの結果が出ているかどうかということである。
 
  つまり、この場合は『品質マネジメント システムの実施の有効性』の意味であり、狙いの顧客満足を実現するように行われているはずの業務が実際にそれぞれに決められた通りに行われているか、或いは、決められた方法や条件を逸脱して狙いの顧客満足の実現の支障となりかねない、決められたのと異なる業務結果が出ていないかどうかということである。この『品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換」とは実務的には、業務実行は順調か、何か問題が起きていないかということに関する情報交換のことであり、日々の業務の実行状況或いは実績に関する情報交換のことである。
 
  この種の情報とは規格では、プロセスの監視及び測定 (8.2.3項)、製品の監視及び測定 (8.2.4項)や不適合製品の管理 (8.3項)、データ分析 (8.4項)、是正処置 (8.5.2項)、予防処置 (8.5.3項)などの情報のことである。また、品質マネジメントシステム内の情報交換であるから、組織と顧客との接点業務(7.3.4項)(7.2.3項)、組織と供給者との接点業務(7.4項)、法規制(7.2.1 c)項)の把握や市場情報の入手(8.2.1項)に係わる外部関係者との接点業務に関する情報も含まれる。
 
  情報交換は必要に応じて、要員間、要員と管理者間、管理者間、又は、業務間又は工程間、或いは、部門間、階層間、及び、組織内全体に対して行われる。
 
  情報交換の形態には、個々の業務に関する実行指示と結果の報告、検出した不良や異常の報告の他、管理者による監視、監督、説明、指導、指示、文書の交付、配付や掲示(4.2.3項)、記録の作成と閲覧 (4.2.4項)、特定業務の報告書の作成と閲覧、連絡会や検討会での報告や議論、教育訓練(6.2.2項)、改善提案制度、社内報の発行などがある。最近では組織内LANによる情報閲覧システムやeメールの交換などによって情報が交換されることも少なくない。
 
  組織は、どのような情報交換が必要か、どのような方法で行なうことが効果的で効率的かを判断し、品質マネジメント システムの計画 (5.4.2項)の一環として情報交換の手はずを整え、それに則って決められた情報交換を確実に行なわなければならない。トップマネジメントは、必要な情報交換の手はずが確立し、それに基づいて情報交換が確実に行なわれるよう管理しなければならない。
 
 
4.情報交換の実務
  各部門の管理者の日常業務の主体は、各業務が決められた通りに行われ、決められた通りの結果が出ていることを確実にすることである。この日常業務管理では管理者は、様々な業務の現場における業務実行と結果を監視し、決められた通りでない異常や問題を見つけ、それを正して、最終業務結果或いは組織の業績を損なうことのないようにする。更に、必要に応じて再発防止対策をとる。
 
  このためには、それぞれの業務の実行と結果、とりわけ、発生した異常や問題に関する情報が確実に収集され、管理者に、或いは、定められた部門に確実に伝達されるような枠組みの確立が必要である。これには、種々の異常や問題に対応する部門の責任、及び、具体的な処置を実行する部門にその情報を伝達する方法も定められていなければならない。
 
  組織が必要とする業績を確実に実現するための最も大切なことは、日常業務において異常や問題を見落とさず、適切に処置し、これらを部門及び組織全体として把握し、対応することである。異常や問題を部門の管理者が正しく把握、処置し、他の部門も必要によりこの情報を共有し、更に、トップマネジメントがこれを組織全体として把握し、経営管理上の判断を行うような情報収集と情報伝達、情報交換の枠組みを確立し、異常の防止、問題の解消に取組まなければならない。
 
(1) 日常業務における情報交換
  個々の日常業務の実行と結果に関する情報交換は、それぞれの業務実行の手はずの一部として定めておくことが必要である。この種の情報交換には、個々の業務や作業の実行の指示と、個々の業務結果に関する業務間又は部門間の情報連絡が主体である。
 
  製造業では例えば、生産計画部門からの生産部門への日々の生産の指示と、業務の結果の指示元への報告や次の業務又は関連部門への連絡であり、或いは、生産部門から購買部門への資材購入要請と払出した原料の明細の生産ラインへの連絡である。ホテル業では例えば、受付からベルボーイへの宿泊者案内の指示と、ベルボーイから受付への案内済みの連絡である。食堂では例えば、ウェイトレスから調理場への顧客の注文の伝達と、調理場からウェイトレスへの調理完了の連絡である。
 
  この種の情報交換に間違いを生じないために一般には、定められた書式の文書が用いられる。口頭による情報伝達の場合でも、情報交換が行われたことを確認する帳票が用いられることも多い。
 
(2) 日常業務の管理のための情報交換
   日常業務において、それぞれの業務が所定の通りに実行され所定の結果が出されるようにする管理では、業務実行と結果を監視し、それらに関する情報を検知し、その情報に基づく必要な処置を決定し、実行し、また、必要により再発防止対策をとる。このためには、どの業務でどのような不良や異常があり得るのか、それぞれにどの部門がどのように対応するのかの責任と、そのための情報交換の方法を決めておくことが必要である。
 
  このような管理は、日常的な個々の業務に対する管理と、部門や組織の業務の全体としての管理に分かれる。前者の管理で交換される情報は日常業務で検出される不良や異常の情報が主体である。例えば検査不良品の発生時には検査部門と処置決定部門や生産管理部門との間で、不良外注品に関しては生産部門と外注管理部門や外注組織との間で、顧客の苦情に関しては受付部門と対応部門や原因部門との間で、それぞれの情報交換が必要である。
 
  不良や異常の情報は一般に、検査記録、異常連絡票、職場日報などを用いて業務現場から発信される。これへの対応は、それぞれの問題対応手順に則った書式の帳票を用い、この帳票の送受によって情報連絡と問題対応を進める形がとられることが多い。
 
  後者の管理は更に、部門を単位とする部門管理とそれらを統合した組織全体としての全般管理に分けることができる。部門管理では、部門が管理すべき不良や異常の発生を部門全体として分析し、部門としてとるべき対応を決め、実行する。例えば、苦情の発生率、納期達成率、外注品の品質成績、設備故障頻度の推移と原因分析、以降の見通し、必要な処置などの情報である。他部門に原因がある不良や異常には対応を要請し、原因部門のとった処置の有効性を管理する。
 
  全般管理のための情報は、各部門の不良や異常、問題の管理の実態の情報だけでなく、それに基づいて組織全体としての業務実行能力に係わる問題点を明らかにし、必要な対応を決め、又は、検討に供することが出来るようなものでなければならない。この情報交換によって、トップマネジメントは組織の業務実行と問題を把握し、全部門が必要な情報を共有することになる。さらに、この中から各部門は問題対応の責任を認識し、それぞれの取組みを合意し、トップマネジメントは経営管理上の判断と指示を行う。そして、それぞれの部門、又は、組織全体としての必要な処置をとる。
 
  このような情報交換は一般に、部門内又は部門間の業務日報や業務週報として、及び、月次の会議や検討会の場で行われる。規格のマネジメント レビュー(5.6項) は他の問題と合わせて、これを年度で見直し検討しようとするものである。
 
(3) 効果的な業務実行を支援するための情報交換
  業務が効果的に行なわれて所定の結果が確実に出されるためには、関係する要員は知らされた状態であることが必要である。すべての要員は、与えられた責任と権限(5.5.1項)に係わる職務能力を有する(6.2.1項)と共に、自らの業務の重要性を認識している(6.2.2 d)項)ことが必要である。
 
  このためには、要員の業務に直接必要な情報だけでなく、関連する情報、更には、組織とその実績に関する様々な情報が要員に伝達されている必要がある。例えば、前者は最終製品や前後の業務の概略知識、特定時点で特別に必要な注意や配慮、周辺で行なわれる特定の活動や出来事などであり、後者は、経営の動向や苦情など重要問題の情報などである。
この情報交換は管理者による普段の対話活動、部門内連絡会や会議、教育訓練、文書の掲示や回覧、社内報などの形で行われる。
 
(4) トップマネジメントとの間の情報交換
  品質マネジメントの実行により組織の事業維持発展に必要な顧客満足を実現するのは、トップマネジメントの責任である。ある程度以上の規模になると、機能別組織構造の枠組みの下に部門長に責任と権限を委ね、部門長の業務実行の監視と指揮を通じて、組織全体としての効果的業務実行を管理する。トップマネジメントはこの管理のために情報を収集し、その想いを伝達することが必要である。この情報は一般に、自身の随時の監視活動による収集と合わせて、部門長からの重要問題の報告として随時に、また、定めた会議体及び業務報告書によって体系的に、それぞれ収集される。トップマネジメントの決定や意思に関する情報は、これらの場で行なわれる他、品質方針として表明され、又は、全員集会で説明されて、関係者に伝達される。
 
 
 
H24.7.12
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