ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
33 6.3 項  インフラストラクチャー 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-33
[第1文] 組織は、製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされる インフラストラクチャー を明確にし、提供し、維持しなければならない。
[第2文] インフラストラクチャー としては、次のようなものが該当する場合がある。
a) 建物、作業場所及び関連する ユーティリティー (例えば、電気、ガス又は水)
b) 設備( ハードウェア 及び ソフトウェア )
c) 支援体制(例えば、輸送、通信又は情報システム )
 
 
1.要旨
  本項はその品本項は、品質マネジメントの業務の効果的な実行を図るために、必要な物的資源を常に利用できるようしておく物的資源マネジメントの要件を規定している。
 
  組織は品質マネジメントに必要な物的資源を特定し、必要な機能を発揮させて使用できるようにする手はずを整え、手はずに則って必要な物的資源を投入し、必要に応じて使用できるようその機能と性能を維持しなければならず、また、各業務に所定の物的資源が確実に使用されるよう管理しなければならない。
 
 
2.インフラストラクチャー (背景及び関連事項)
(1) 物的資源
  『インフラストラクチャー』は、“infrastructure”の和訳であり、これは「国や組織の円滑な運営に必要な一連の基礎的な施設又は必要を満たす手段であり、例えば、建物、輸送、水、電気」の意味である(101)。規格は「組織の事業活動に必要な一連の施設、設備及びその他の手段」と定義している#15。規格の文脈での“infrastructure”という英語の意味を「組織の事業活動に必要な、財務資源、人的資源、消費材以外のすべてのもの」と捉える解説(23j)がある。また、規格解説者のひとりは「物的資源」のことであると明確に述べている(21i)。
 
  すなわち、規格の意図のインフラストラクチャーとは、経営資源を人的資源、物的資源、貨幣的資源、情報、企業文化から成るとする場合の、物的資源のことであり、事業活動の基盤としての建物、設備などのことである。これには、業務に使用する資材や工具、帳票のような物的資源は含まれない。この物的資源を整え、用意することは事業体制を確立することである。これは規格では品質マネジメントシステムの計画 (5.4.2項)の一環としての物的資源を計画 することである。
 
(2) 物的資源の マネジメント
  標題は『インフラストラクチャー』であるが、6章(資源の運用管理)の中の一条項であり、『運営管理』は“management”であるから、趣旨は「物的資源マネジメント」である。94年版(4.9)では、製品実現工程の業務を管理された状態で行うための要件として、品質計画(4.2.3)で指定された設備の使用と工程能力の維持のための設備の保全が規定されていた。00年版では、必要を見極め、導入し、機能を維持するという マネジメント としての要件が規定されている。
 
  品質マネジメントの各業務を行うのは人々であるが、人々は徒手空拳でではなく、物的資源を利用して業務を行うのが一般に効率的で効果的である。要員を配置しても例えば旧式加工設備では厳格化した加工精度の要求に対応できず、POS方式のレジスターのないスーパーでは長い顧客の支払いの列ができる。組織は要員が利用し、狙いの顧客満足の実現を図る業務の効果的実行に不可欠な機能及び性能の物的資源を、常に要員の利用に供するようにしておかなければならない。このためには現在と将来に必要な、又は、不足する物的資源を特定し、時宜を得て確実に充足する必要がある。更に、充足された物的資源の所定の機能や性能を維持させ、また、各業務に所定の物的資源を確実に使用されるよう管理しなければならない。
 
 
3. 規格要求事項の真意
  『インフラストラクチャー』は、人的資源(6.2項)、作業環境や企業文化(6.4項)との対比における物的資源のことを指す。6章の資源マネジメントは、品質マネジメントの効果的な実行に必要な資源を使用できるようにするという組織の経営管理(マネジメント)のひとつの側面であり、本項では資源の内の事業基盤としての物的資源についての経営管理(マネジメント)を取り扱っている。しかし、物的資源マネジメント の プロセスアプローチ/PDCAサイクルを規定しているだけであり、人的資源マネジメント(6.2.2項)の場合のような物的資源マネジメントをどのように行うかの詳細要件は規定していない。
 
  94年版では、一般論として経営資源の必要を特定し、用意するべきことを規定していた(4.1.2.2)が、具体的な資源としては人的資源を表す『訓練された要員』を示すだけであった。物的資源については、試験機や測定器の管理(4.11)を別途に規定し、製品品質の実現、或いは、製品実現のための設備、装置に限定して、その用意 (4.2.3 b))、使用(4.9 b))、保全 (同 g))について規定しているだけであった。00年版では、製品実現に直接関係する業務を含み、狙いの顧客満足の実現に必要な物的資源、つまり、品質マネジメントのすべての業務に係わる業務基盤としての物的資源について、必要又は不足を特定し、用意するべきことを本項にまとめて規定している。
但し、試験機や測定器については94年版同様に、適用と使用の管理や機能維持の管理の要件が別途規定されている(7.6項)。また、使用の管理に関して、製品実現に使用する設備について定められた設備を確実に使用するようにする管理の必要が別途(7.5.1 c), 7.5.2 b))規定されている。
 
(1) 組織は、製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされる インフラストラクチャー を明確にし、提供し、維持しなければならない。 [第1文]
@ 製品要求事項への適合に必要なインフラストラクチャー
  『製品要求事項』とは『製品に関連する要求事項』(7.2.1項)と同じであり、顧客の必要と期待たる顧客要求事項 を反映した製品仕様のことである。『〜への適合』は原文“conformity to 〜”の直訳だが、この場合は「〜を満たす」の意味である。『製品要求事項への適合』とは「製品仕様を満たすこと」であり、製品仕様は顧客の必要と期待を満たすように決められなければならないから、これを満たすとは必要な顧客満足を実現することを意味する。
   
  この表現はJIS和訳文ではわずかな違いがあるが、原文では 6.4項と全く同じであり、事業の維持発展に必要な顧客満足向上の実現を図る品質マネジメントの効果的な実行を可能にするために必要な物的資源という意味である。
 
A 必要なインフラストラクチャーを明確にし、提供し、維持しなければならない  
  原文では、『明確にする』は「特定する」であり$6、『提供する』は「使用できるようにしておく、又は、用意する」であり$37、『維持する』は機能や性能を「保守、保全する」の意味である$5-2。
 
  組織は、事業の維持発展に必要な顧客満足を確実に実現する、或いは、その顧客満足の実現に支障を生じさせないよう品質マネジメントの各業務を効果的に実行するために、必要な物的資源を間違いなく用意する物的資源マネジメントの手はずを整え、履行しなければならない。必要な物的資源としては、a)〜c)の観点から検討するのが抜けがない。
 
  物的資源マネジメントの手はずには、必要な又は不足する物的資源を特定し、投入の必要を評価し決定する資源充足の手はずと、充足された物的資源の所定の機能や性能を維持させる手はずと、各業務に所定の機能や性能の物的資源を使用することを確実にする手はずとが必要である。
 
  物的資源の必要や不足が生じるのは、狙いの顧客満足の変更、異常や問題への対応、競争力強化の必要、新規仕様製品の受注、新機能製品の投入、事業規模の拡大などの場合である。また、物的資源の使用による損耗や経年劣化で、所定の機能の発揮が困難となり、又は、経済的でなくなった場合にも、必要や不足が生じる。これは規格ではそれぞれ、品質方針 の変更(5.3項)、是正処置 や予防処置 の実行(8.5.2, 8.5.3項)、製品実現の計画 (7.1項)、製品の品質目標 の変更(5.4.1項)、品質マネジメント システムの計画 と変更(5.4.2項)、及び、インフラストラクチャーの維持(本項)である。物的資源の投入には、新規購入設置、既存の改造、修理、更新などの態様がある。規格では、マネジメント レビュー (5.6.3 c)項)を物的資源充足に関する戦略的決定や最終判断の機会として位置づけている。
 
  『維持する』の機能や性能の維持のための保全の管理について94年版(4.9 g))では、製品実現業務が管理された状態で行われるための必要条件として『工程能力を継続的に維持するための設備の適切な保全』の実行が規定されていた。保全活動は、故障が起きる前に対策を講じてその後の故障が起きないようにする予防保全と、故障が起きた後に対策をとって復帰させる事後保全のふたつの考え方に分けることができる。大規模組織やいわゆる設備産業と言われる業種では前者が、通常の、特に小規模組織では後者が一般的である。後者の組織でも、始業前点検や必要なら清掃や給油や増締めなどをも行う自主保全というような作業者による故障防止取組みが拡がりつつある。
 
  使用の管理については、規格は製品実現に使用する設備についてのみ。7.5.1 c)、7.5.2 b)項で規定している。例えば同種の加工機械が複数ある場合に、能力を超えるような素材の加工に使用しないこと、生産性の最も高い機械を使用すること、品質上の必要を満たす機械を使用すること、などというような機械の使用管理が狙いの顧客満足の実現など組織の狙いの業績の達成に効率的、効果的であることがある。
 
(2) インフラストラクチャー としては、次のようなものが該当する場合がある。 [第2文]
  品質マネジメントに必要な物的資源を抜けなく抽出するためには、次のa)〜c)に分けて検討することが効果的である。すなわち、a)は組織に一般に不可欠な業務基盤としての物的資源、b)項は品質マネジメントの業務の実行に直接用いられる業務実行用設備機器としての物的資源、c)項は業務実行に関係して必要となる補助的な手段、或いは、付帯設備である。これは物的資源の使用目的による分類であり、物的資源の種類の分類ではない。例えば、a)、b)、c)の資源としてそれぞれ例示される建物、ソフトウェア、通信設備のいずれも一般には、a)〜c)項のいずれの物的資源としても用意され、使用されることがある。
 
@ 建物、作業場所及び関連する ユーティリティー [a)項]
  『ユーティリティ』の原文は“utilities”であり、「配電、配水、ガス供給などの公共用事業サービス」を意味し(101)、TC176指針では「例えばガス、水、電気、通信などの供給に責任を持つ組織」と定義している。従って、この意味や定義の“utilities”を組織の資源であるとそのまま理解するのは難しい。また『作業場所』は“workspace”であり「作業空間」である(108)。規格の意図による物的資源の分類という観点からは本a)項を、組織の業務基盤としての物的資源を意味するとすれば、「建物、作業空間及び付随する電気、ガス、水等の受入設備」と受け止めてよい。
 
A 設備(ハードウェア及びソフトウェア) [b)項]
  『設備』の原文は“process equipment”であり、製造業の生産設備のような業務実行のための物的資源を指す。括弧内は“both hardware and software”であるから、機械や装置だけではなく、電算機システムのプログラムや法律書、辞書のような業務実行で用いる文書などを意味する。すなわち「ハードウェア及びソフトウェアを問わず業務用設備機器」の意味である。規格の意図では製造及びサービス活動実行のための設備機器(7.5.1 c)項)である。
 
  製造業の生産設備、生産管理システム、ホテルの部屋、駐車場や運動施設、レストランの内装や備品、倉庫業の収納庫や冷凍又は空調設備など、及び、電算機システムのプログラムや法律書、辞書など、品質マネジメントの業務に必要なすべての物的資源を指す。
 
B 支援体制(例えば輸送、通信又は情報システム) [c)項]
  『支援体制』は"supporting service"の和訳であり、00年版では『支援業務』と和訳されていたが、規格の物的資源分類の意図からは業務の実行に直接係わる「業務用設備機器」とは言えないが業務実行に必要な「付帯設備」である。00年版で規格執筆者のひとりは(22j)、郵便/配送、電気通信、防犯、清掃の各サービス を例示していた。08年版で括弧内の例示に情報システムが追加となった。
 
  情報システムには、組織内の情報連絡システム、受注管理や製品実現の計画、製造及びサービス活動実行管理の自動処理のためのシステム、購買と在庫管理のシステムなど組織内の業務処理システムの他、顧客との発受注情報システム等々がある。
 
 
 
H24.7.14
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サニーヒルズ コンサルタント事務所