ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
37 7.2.2項  製品に関連する要求事項のレビュー 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-37
7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
[第1節]
  [第1文] 組織は、製品に関連する要求事項を レビュー しなければならない。
  [第2文] この レビュー は、組織が顧客に製品を提供することについての コミットメント(例 提案書の提出、契約又は注文の受諾、契約又は注文への変更の受諾)をする前に実施しなければならない。
  [第3文] レビュー では次の事項を確実にしなければならない。
a) 製品要求事項が定められている。
b) 契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には、それについて解決されている。
c) 組織が、定められた要求事項を満たす能力をもっている。
[第2節] この レビューの結果の記録、及び、その レビュー を受けてとられた処置の記録を維持しなければならない(4.2.4参照)。
[第3節] 顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、組織は顧客要求事項を受諾する前に確認しなければならない。
[第4節]
  [第1文]
 
製品要求事項が変更された場合には、組織は、関連する文書を修正しなければならない。
  [第2文] また、変更後の要求事項が関連する要員に理解されていることを確実にしなければならない。
 
 
1.要旨

  本項は、成約又は受注した個々の製品について、顧客の想い、意向を正しく受けとめるための要件を規定している。
 
  組織は、顧客との取引において製品に関する顧客の意向を誤って受け取り、顧客の想いと異なる製品を引き渡すことのないようにしなければならない。組織は、個々の製品の成約又は受注する際に、顧客の想いを満たすための「製品に関する必要条件」、つまり、製品仕様と品質及び付帯仕様に関する必要条件を正しく、抜けなく、錯誤なく把握する手はずを整え、この手はずに則って顧客の意向を把握し、顧客と合意しなければならない。この手はずには、顧客の意思表示の「製品に関する必要条件」が正しいことを確認する手順、これを顧客と合意する手順、及び、以後の顧客の意思表示の変更に対応する手順を含んでいることが必要である。
 
2. 製品に関連する要求事項のレビュー (背景及び関連事項)
(1) 契約内容の確認
  『製品に関連する要求事項』はa)項では『製品要求事項』と表現されており、原文では「製品に関する必要事項」である$1-2-4。7.2.1項と同じ概念ではあるが、本項では顧客の意向の製品が何であるか、どのようなものであるかを製品仕様と品質及び付帯仕様(7.1 a)項)に係わる必要条件として表すものである。これには7.2.1項に規定されるように『引き渡し及び引き渡し後の活動』に関する必要条件を含む。
 
  『レビュー』 は原文“review”から、それでよいのかどうかを評価するという意味で「見直す」ことである$22。規格では「対象事項がその所定の目標の達成という観点で適当か、十分か、又は、効果的かを判定するために行なわれる活動」と、マネジメント レビュー(5.6項)のようにものごとの総合的な評価を示唆する定義となっている。しかし本項の規定の『レビュー』は、間違っていないかどうかを確認するという程度の「見直し」である。
 
  本項は94年版(4.3)では標題が「契約のレビュー(contract review)」であり、ほとんど同じ内容の要件が規定されていた。これには定義が定められており、『品質要求事項が適切に規定され、あいまいさがなく、文書化され、組織によって実現可能であることを確実なものとするために、組織が契約締結前に実施する体系的な活動』と、その趣旨が明確にされていた(134d)。 JISはこれを『契約内容の確認』と和訳し、本項の趣旨をよく表していた。00年版では全業種業態に適用可能な汎用規格となり『製品に関連する要求事項のレビュー』と表現が変更されたが、趣旨は不変である。
   
(2) 契約内容
  店頭での対面販売も含みすべての取引は契約を満たす活動であり、取引に当たって組織と顧客が合意した契約内容は規格では、契約条件又は受注条件という意味で『契約又は注文の要求事項』と呼ばれる。これは、顧客と合意した「製品に関する必要条件」のことであり、規格では個々の契約又は注文にどのような製品を当てるかを決定する場合の評価判断の観点のひとつとしての『顧客が規定した要求事項』 (7.2.1 a)項)に対応する概念と考えてよい。7.2.1の他の観点 b)〜d)項の「製品に関する必要条件」は、狙いの顧客満足の実現のために組織が顧客の意向を越えて主体的に決めるものであり、一般には顧客に明らかにしない。しかし、明らかにし、顧客と合意した場合はそれも『契約又は注文の要求事項』であり、契約内容に含まれるとして規格を解釈するのがよい。
   
  規格の「製品に関する必要条件」は、製品仕様と品質及び付帯仕様に関する必要条件であり、規格は製品実現の計画活動(7.1項)でこれを具体的、定量的表現の製品仕様と品質及び付帯仕様に展開し、更にその製品実現の業務の方法や条件を決めるという形で書かれている。しかし実際には、顧客の意思表示や顧客の意向、或いは、それを合意した契約内容が具体的な製品仕様と品質及び付帯仕様で表される取引が少なくない。
   
  繰返し受注型、量販型の事業では、顧客の意思表示は両者合意の製品名や製品番号、図面番号により行われるのが普通である。カタログやメニューに表示した製品を供給する事業では、製品名だけで顧客の意向の製品を特定することができる。例えば、セミオーダー型の製品では、骨格仕様が同じ製品で多様な副仕様があり、それを取引毎に顧客が自らの必要で指定し或いは組織が提案する。例えば、特定銘柄(素材とデザイン)のセーターに対する色柄、特定材質規格の鋼板に対する厚さと長さ、特定機能のパソコンに対する適用OS、特定メニューの料理に対するドレッシング、デザート種類などの選択、指定である。
   
(3) 顧客の意向把握の錯誤
  個別の製品の取引において、顧客はある使用目的で製品を探しており、このような製品がほしいということについて一定の想いをもっており、これを何らかの方法、何らかの表現で意志表示を行う。組織はこの意思表示を基にして、顧客のニーズや期待を推量してそれを満たす製品としての「製品に関する必要条件」を決定する(7.2.1項)。 組織が顧客の意向を誤って受け取り、「製品に関する必要条件」を正しく決めることができなかったならば、これを満たす製品を首尾よく製造又はサービス提供(7.5項)し、顧客に引渡してもそれは顧客の想いの製品ではないことになる。
   
  一般論として、引渡した製品が契約内容として合意した「製品に関する必要条件」を満たしていなければ不良品であり、苦情申立を受けることになり、規格では不適合製品である。組織が顧客の意向を十分に汲み取れず、合意した契約内容から当然満たされると顧客が思っていた「製品に関する必要条件」があったとしてそれを満たさなかった場合も、法律上はともかくとして顧客には不良品、異品である。契約内容以外の顧客のニーズや期待を慮って組織が独自に追加又は変更し、満たした「製品に関する必要条件」が顧客の潜在的な想いと合致すれば、組織に対する顧客の信頼は大いに強まる。合致しなければ『顧客要求事項が顧客と合意され、満たされている場合でも、それが必ずしも顧客満足が高いことを保証するものではない』という結果#17-1になる。規格の意図ではこれらも不適合製品である。
 
  これらの不適合製品の原因が、組織の顧客満足の狙い(5.3項)や「製品に関する必要条件」の決定の手はず(7.2.1項)の不備にあれば、その再発防止を図るよう手はずを強化し、又は、手順を変更すること(8.5.2項)が規格の『品質マネジメント システムの有効性の継続的改善』である。本項の契約内容確認の必要の規定は、不適合製品が成約や受注の際の顧客の意向の取り違えで生じることのないようにするためである。この顧客の意向の取り違えといういわば単純な問題のために、以降の製品実現活動の努力や費用を無にし、組織の事業の根幹たる製品に対する無用な信頼感喪失を招くようなことは厳に避けなければならない。
   
  組織が顧客の意向を誤って受けとめる原因には、顧客の意思表示の誤りと組織の受取りの誤りがあり、前者は製品に関する思い違いや意思表示の誤りなどであり、後者は意志表示の誤った受けとめ、思い込み、判断などが原因である。 錯誤は、顧客が製品について意思表示する機会、例えば、顧客の引合い、発注又は注文申込みの際に生じるが、一旦伝えられ又は合意された顧客の意向の変更を顧客が組織に伝えなかったり、伝えられた変更を組織が適切に処理しないことで結果的に生じ、また、契約交渉で当初の顧客の意向が協議され変更されたのにどちらかが変更を適切に処理しないことでも錯誤が生じる。
 
3. 規格要求事項の真意
  本項は、94年版(4.3)の『契約内容の確認』を全業種業態に適用できるよう表現を変えて引き継いだものであり、の趣旨と規定内容は変わっていない。ここに『製品に関連する要求事項』は組織が満たすべき「製品に関する必要条件」であり、本項では顧客の意向の製品が何であるか、どのようなものであるかを製品仕様と品質及び付帯仕様(7.1 a)項)に係わる必要条件として表すものである。個々の契約又は注文に関して製品に対する顧客の意向の『製品に関連する要求事項』を正しく、抜けなく、錯誤なく把握することが、顧客のニーズと期待を満たす製品を創りあげ、引き渡すための前提である。
   
  組織は品質マネジメント システムの計画(5.4.2項)の一環として、個々の製品の取引において組織が満たすべき「製品に関する必要条件」に関する顧客の意向を正しく、抜けなく、錯誤なく把握するための手はずを整えなければならない。また、製品実現の計画(7.1項)の一環として、この手はずに則って個々の契約又は注文に対する顧客の意向を把握しなければならない。この手はずには「製品に関する必要条件」を決める(7.2.1項)ためにどのような情報或いは事項を、どのような方法でどのような形式で把握し、どこに文書化するのかの手順が含まれていなければならない。
 
(1) 組織は、製品に関連する要求事項を レビュー しなければならない。 [第1節 第1文]
  組織は、顧客の意向の「製品に関する必要条件」を把握する手はずの中に、契約内容が正しく、抜けなく、錯誤のないことを確実にするため、顧客の意思表示の、又は、顧客と合意する事項、つまり、契約内容について下記の(3)の観点から見直しをする手はずを含めなければならない。また、契約内容に関して顧客の意思表示を受けた際には、この手はずに則って契約内容を見直してから、契約又は注文を確定しなければならない。この顧客の意思表示は、引合いや予約の受付け、契約の締結、注文の受付けの際に行われる他、顧客の生産計画の通知、予定又は確定納期の指定の形でも行われる。 
   
  通常、顧客の意思表示は、顧客が文書で又は口頭で、或いは、主体的に又は組織の質問に答えて行われる。見直しは、見積り関連文書の整理、注文書など文書の点検、口頭注文の文書化と点検などの方法で行われ、正式契約書の作成、引受け書の発行、口頭による復唱などの形で顧客と合意する。
   
(2) この レビュー は、組織が顧客に製品を提供することについての コミットメントをする前に実施しなければならない。 [第1節 第2文]
  『コミットメント』 は原文から「義務、責務」の意味$29であり、正式の約束という意味である。規格では註釈を加えて、『コミットメントをする』とは例えば『提案書の提出、契約又は注文の受諾、契約又は注文への変更の受諾』を行うことだとしている。 組織は、顧客の意向の「製品に関する必要条件」を適切に、抜けなく、錯誤なく把握し、それらを満たすことができると判断してからでないと契約又は注文を確定し、顧客と合意してはならない。
 
(3) レビュー では次の事項を確実にしなければならない。 [第1節 第3文]
上記(1)の契約内容の確認は、a)〜c)項の観点から行うことが効果的である。各項の事項を『確実にしなければならない』という表現は、あるかもしれない問題を抽出し、正すことが見直しの目的であることを意味している。
 
(4) 製品要求事項が定められている。 [ a)項]
  「定められている」は“are defined”であるから、「正確に述べる又は示す」の意味$20である。 顧客の意向の「製品に関する必要条件」を特定するために必要な事項がすべて明確にされているかどうかを点検することである。 製品又は顧客によってどのような情報或いは事項が明確にされていなければならないかは、上記(1)の契約内容確認の手順に決められていなければならない。
 
  契約内容を正しく把握し、或いは、それを確実にするための見直しを効果的に行う方法としては、契約書や注文書に把握すべき或いは明確にすべき各情報或いは事項の欄を設けておく方法、及び、対面取引では把握すべき或いは明確にすべき各情報或いは事項を決めておき顧客に確かめる、或いは、この各事項の欄を設けたチェックリスト方式の帳票を用い、又、記録する方法が一般的である。
 
  繰返し取引の場合は基本情報或いは事項や製品の種類に共通の事項を取引契約書に定め、個々の注文の際には製品名や量、納期のような当該の注文に固有の情報或いは事項に関する顧客の意向のみを把握及び見直すだけで済ませることが多い。
 
(5) 契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なる場合には、それについて解決されている。 [ b]項]
  『契約又は注文の要求事項』とは「契約又は注文に関する必要条件」ということであり、本項では顧客が意思表示した又は組織と顧客が合意した「製品に関する必要条件」であり、実務的には契約内容のことである。また、JIS和訳『解決されている』は“are resolved”であり、趣旨は「違いが解消されている」ということである。
 
  組織は上記(4)の契約内容の見直しにおいて、顧客の意向の製品仕様と品質及び付帯仕様に従来からの変化或いは相違を見つけた場合には、顧客に確認して相違を正さなければならない。組織は、このように見つけた相違を正すための手順を上記(1)の契約内容確認の手順に含めなければならない。
 
  繰返し契約又は注文、或いは、以前に同じ製品の取引があり、当該の契約又は注文で顧客が意思表示した「製品に関する必要条件」が組織が把握している顧客の意向のそれと異なることが、実務ではしばしばあり得る。また、引合いに対する見積り提出で製品仕様と品質及び付帯仕様の必要条件を合意した後に、暫くして実際の注文を受けた場合には、この際に顧客が意思表示した製品仕様と品質及び付帯仕様の必要条件が先に合意した内容と異なることもあり得る。
 
  このような相違は、顧客の意向がその後に変化したり、組織の理解に誤りがあったり、或いは、当該注文の顧客の意思表示が誤っていることが原因であるから、当該の顧客の意思表示を無条件に受け取ることや一方的に無視することは適切ではない。顧客に確認して正しい方に決めるか、又は、変化した顧客の意向に基づいて新たに「製品に関する必要条件」を決めることが必要である。
 
(6) 組織が、定められた要求事項を満たす能力をもっている。 [ c]項]
   顧客と継続した取引の維持を図るなら、一旦約束したが、技術的、製品実現能力上などの理由で、その製品を実現できない、或いは、定められた期限や数量を満たすことができないというようなことは絶対にあってはならない。製品実現可能かどうかには、組織は各製品の受注可能な製品仕様と品質及び付帯仕様の範囲、及び、納期や数量に関する制約を明確にし、契約又は注文を受けた際には顧客と合意する契約内容がこの範囲内であることを確認しなければならない。
誤った契約又は注文を約束することのないようにする手順を上記(1)の契約内容確認の手順に含めなければならない。一般には、受注可能範囲や制約事項を文書化し、契約又は受注担当者が容易に参照できる状態に置くことなどである。
 
(7) この レビューの結果の記録、及び、その レビュー を受けてとられた処置の記録を維持しなければならない(4.2.4参照)。 [第2節]
  契約内容を見直し、必要な処置をとって顧客の意向を正しく、抜けなく、錯誤なく汲み取り、顧客と合意したということに関する記録を残さなければならない。記録をとることは定められた手順が確実に実行されることに役立ち、記録を維持することは事後に顧客と問題が生じた場合の対処に必要である。上記(1)の契約内容確認の手順には、どのような事項をどの文書に記述するのかに関する手順を含めなければならない。
 
  文書に記述するのは、契約内容確認の定められた手順が効果に実行され、問題なかった、或いは、問題をこのように処理したという事実であり、いつ、誰がどのような方法で何を確認したのか、発見された問題は顧客の誰とどのように解決したのかがわかるような内容であることが必要である。また、この記録の効用と使用目的から、下記(8)の口頭による注文の処置に関しても同様の記録をとることが必要である。
 
(8) 顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、組織は顧客要求事項を受諾する前に確認しなければならない。 [第3節]
  この場合の『要求事項』も『顧客要求事項』も文脈から顧客の意思表示の「製品に関する必要条件」のことである。『確認する』の原文は“confirm”であり、自分で何かを確かめるという意味ではなく、ここでは予約など先に伝えたことがそのままでよいということを改めて意思表示するような場合の、相手の確認を求める、相手に確認するという意味での「確認する」である$51。条文は「〜場合には、組織は『顧客要求事項』を顧客に確認しなければならない」である。これは94年版では『組織は注文要求事項が合意されていることを確実にすること』と表現されていた。
 
  口頭による契約や注文の受付けと受諾は錯誤を生み易く、後に問題が生じて、聞いた、聞かなかった、言った、言わなかったの不毛の争いが起きることになる。注文を対面や電話で受け付けるような事業の場合、また、注文書を使用する取引でも緊急注文の場合や注文書の記述が欠落している場合には、口頭で契約又は注文の申し込みを受け付けることになる。このような場合は顧客の意思表示の誤った受け取りを避けるために、組織の受けとめを顧客に伝えて顧客に確認を求めなければならない。この顧客の確認を求める方法には一般に、口頭での復唱、又は、組織で文書化しての顧客への送付又は引渡しのいずれかであり、さらに必要により顧客が復唱に同意したという記録を作成し、又は、顧客に同意した証拠の署名を求める。上記(1)の契約内容確認の手順には、口頭注文を処理する手順と手順実行の記録の方法を含めなければならない。
 
  規格の体系的で組織的な経営管理の枠組みでは、顧客の意思表示の「製品に関する必要条件」は基本的に文書化しなければならないし、これを元に決定し、合意した顧客の意向の「製品に関する必要条件」或いは「契約又は注文に関する必要条件」は文書化しなければならない(4.2.1 d)項)。注文を対面や電話で受け付けるような事業の場合も受け付けた内容を組織で文書化することが必要である。これは本項の狙いの顧客の意向の錯誤の防止だけでなく、顧客の意向の「製品に関する必要条件」から狙いの顧客満足を得るために組織が満たすべき「製品に関する必要条件」を決め(7,2,1項)、更に、顧客に引渡す製品の具体的な仕様と品質及び付帯仕様を決める活動(7.1 a)項)を効率的で錯誤なく行うためにも大切なことである。
 
  ただし、対面販売業では顧客と合意した製品仕様と品質及び付帯仕様の品物を引渡す際のレシートへの記述が一般的なように、どの時点でどのような文書に記述するのかは業種業態により異なり、例えば規格の規定のように「契約又は注文を確定する前に」ということにはならないこともある。また、屋台や露店の小物販売では一般に口頭注文を文書化することも、それを顧客に確認した記録も必要はあまり認められない。
 
(9) 製品要求事項が変更された場合には、組織は、関連する文書を修正しなければならない。 [第4節 第1文]
 また、変更後の要求事項が関連する要員に理解されていることを確実にしなければならない。 [第4節 第2文]
   契約又は受注の確定後に合意した契約内容の変更を求められた場合には、顧客の意向を正しく確認し、変更が可能かどうかを判断し、既に組織内で製品実現に着手し或いは製品実現完了している契約又は注文の一部又は全部の処置を含み、変更について顧客と合意しなければならない。また、合意した変更後の契約内容の製品を創りあげ顧客に引渡すことを確実にするのに必要な文書の訂正又は再発行、差替えを行わなければならない(4.2.3項)。
 
  変更が、注文書とは別に顧客と合意し組織が保管している顧客図面、仕様書など契約文書、操業条件や管理方法に関する指示書や協定書の変更を求められた場合は、既に組織内で製品実現に着手し或いは製品実現完了している契約又は注文の一部又は全部の処置を含み、変更の適用開始の注文を明確にし、顧客と合意しなければならない。そして合意を確実に実現できるよう、当該文書を差し替え、関連する組織内文書の変更を行い、これら文書が以降の製品と製品実現活動に適用されるよう必要な処置をとらなければならない(4.2.3項)。
 
  組織は、顧客の意向の「製品に関する必要条件」を把握する手はずの一環として、契約又は受注確定後の変更要求に際する関連注文進捗調査と顧客との調整の手順、及び、既存の注文を含めて契約内容切り換えの手順を確立しなければならない。また、上記(1)〜(6)の契約内容の確認の手順、(8)の口頭注文処理の手順、(7)の記録作成の手順の各手順の中には、契約又は注文の受付け時だけでなく契約内容変更の受付け時の対応を含めておかなければならない。これら手順は、その効果的実行によって、変更に関する顧客の意図と組織の対応が関係者に明確にされ、顧客と合意した変更が確実に実現することを可能とするものでなければならない。
 
4. 製品要求事項の把握の実務
  組織は多数の様々なニーズと期待を持つ顧客の満足を得ることが必要であり、一般に同じ製品でも様々な異なる詳細仕様や品質を用意している。例えば、製品の寸法、意匠などの仕様、性能や効能や精度や快適さなどの品質、包装や製品引渡方法、部品補給などの付帯仕様に関する種類である。このように用意した製品の種類の中から顧客又は契約や注文毎に顧客のニーズと期待を見極めて、それらに合致する製品の種類を選び、顧客に引渡すというのが、一般的な事業形態である。
 
  顧客がどのような製品を望み、期待しているかに関しては、個々の契約、受注の際に顧客からの意思表示がある。しかし、顧客は一般にニーズと期待、或いは、その想いのすべてを体系的に意思表示することはない。組織は契約時又は注文受付けに当たっては、意思表示のみに頼らず、鵜呑みにせず、顧客の真の意図や意向を読み取り、契約又は注文に対してどのような製品を創りあげ、引渡すべきかを決める。顧客の意向を正しく汲み取る活動には、顧客の意思表示の誤りやあいまいさを正すことが含まれる。顧客の意向を汲み取るのは受注処理業務であり、これを受けてどのような仕様と品質及び付帯仕様の製品を引き当てるのかを決めるのは品質設計業務である。
 
  ごく簡単な製品を除いては顧客の意思表示は文書で行われ、汲み取った顧客の意向は文書に記述され、必要により合意し、又は、顧客に確認する。受注処理業務の結果の明確にされた顧客の意向を基礎とし、別途の契約や合意の製品仕様と品質及び付帯仕様と組織の品質設計基準とを合わせて、創りあげ引渡すべき製品の仕様と品質及び付帯仕様が決められ、文書化される。次にこれを基にして、一連の製品実現の業務と方法や条件が決められる。これは工程設計業務である。業種業態によっては受注処理業務と品質設計業務、或いは、これに工程設計業務までがそれぞれ一体として行われる。
 
  顧客の意思表示は一般に、契約書、注文書、付属図面など文書の記述により行われる。永い間の取引で文書化されないで暗黙の合意となっている製品仕様と品質や付帯仕様があるというようなこともよくある。繰返し注文型取引ではすべての契約又は注文に共通の製品仕様と品質及び付帯仕様を基本契約書、約款など別途文書で取交わし、個々の契約又は注文では顧客は製品名称や特定の仕様しか意思表示しなくてもこの顧客に供給する幾つかの製品の内のどれであるかが特定できる。対面取引や電話による発注方式の取引では顧客の意思表示は基本的に口頭でなされる。顧客が カタログやメニューから特定の製品を指定するような取引では、顧客は製品名を。又は、合わせて副仕様を特定することで意思表示する。製品仕様と品質及び付帯仕様の詳細を契約書で合意する取引もあり、設計開発(7.3項)の結果や試作品を顧客に提示して承認を得るような取引もある。
 
  受注処理業務では顧客から何と何の意思表示を求めるのか、何と何を調査して何と何を明らかにするのかが明確になっていなければならない。これには、製品の仕様と品質及び付帯仕様に関する直接的な情報と、顧客の意向の製品の仕様と品質及び付帯仕様を明らかにするための判断材料となる間接的な情報がある。後者の情報は、顧客の製品の用途や使用方法或いは製品発注の目的に係わる情報が中心であり、直線的情報に織り込まれていない情報である。例えば、素材や加工産業では用途と関連する詳細寸法や公差、レストラントでは客の構成や客層又は来店目的、カタログ販売調味料では消費される予定の地域などである。
 
  これら必要な情報を得る方法には、例えば、顧客の口頭の意思表示、注文書や基本契約書の内容の点検、申込書への記入依頼、商品説明や質問や来店客の観察などがある。必要な情報を間違いなく得るために、注文書など顧客の意思表示文書に必要な情報の記入欄が設けられ、口頭注文では明確すべき情報を網羅したチェックリスト方式の帳票が使用される。
 
 
 
H24.5.2
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サニーヒルズ コンサルタント事務所