ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
41 7.3.3項  設計・開発からのアウトプット 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-41
7.3.3 設計・開発からのアウトプット
[第1節]
 [第1文] 設計・開発からの アウトプットは、設計・開発への インプット と対比した検証を行うのに適した形式でなければならない。
 [第2文] また、リリースの前に、承認を受けなければならない。
[第2節] 設計・開発からの アウトプット は次の状態でなければならない。
a) 設計・開発への インプット で与えられた要求事項を満たす。
b) 購買、製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する。
c) 製品の合否判定基準を含むか又はそれを参照している。
d) 安全な使用及び適正な使用に不可欠な製品の特性を明確にする。
 
 
1.要旨
  本項は、設計開発の結果に関する要件及び設計開発結果の取扱いに関する要件を規定している。
設計開発の結果は設計開発活動の目標(7.3.2項)を満たしているだけでなく、b)〜d)項をも含んでいなければならない。組織は、設計開発活動の結果を評価(7.3.4〜7.3.6項)し、問題のないこと確実にした後に、内容を正式に確定しなければならない。設計開発活動の結果は、これらの評価、判断ができるような情報として表されていなければならない。
組織は設計開発活動を管理する手はずの中に、設計開発の結果をどのように表すのかを決めておかなければならず、個々の契約又は注文の設計開発の結果をこれに則って表し、必要な評価の後に内容を確定しなければならない。
 
 
2. 設計・開発からの アウトプット (背景及び関連事項)
(1) 設計開発の結果
  設計開発活動も規格では『インプット を アウトプット に変換する活動』と定義#1される『プロセス』のひとつであり、『要求事項を特性に変換するプロセス』である#27から、『インプット』は製品要求事項 (7.2.1項)を基礎に決められた設計開発の必要条件(7.3.2項)であり、『アウトプット』とはその下に実行された設計開発活動の結果としての製品の具体的な仕様である。
 
  『インプット』は一般に顧客のニーズと期待の製品の機能や性能に関する必要条件であり、設計開発目標の性能特性と水準によって表わされる。『アウトプット』はそれらを実現できる製品の機構や構造であり、構造特性と水準と許容範囲で表わされる。設計開発の結果で製品実現し顧客に引き渡すべき製品がどのようなものかの、製品の仕様と品質及び付帯仕様が一連の性能及び構造特性を用いてとして決まる。これが、製品実現関連業務の目標である製品に対する品質目標及び要求事項 (7.1 a)項)となる。
 
  実務的には、設計開発の結果の製品仕様の背景にある設計開発思想、狙い、アイデア 、新技術、製品の特徴や弱点を明確にし、文書化することも大切である。また、設計開発結果に至るまでに遭遇した問題や試みた解決策とそれらの結果などの設計開発の経過に関する情報を記録に残すことも大切である。これらは体系的に整理してデータ集(7.3.2 c)項)とし、或いは、設計開発基準とすることによって、組織の設計開発能力を向上に役立てることができる。
 
(2) 設計開発結果の確定
  設計開発の結果は、設計開発の条件を満たし、顧客の想い或いは顧客のニーズと期待を満たし、組織の狙いの顧客満足に資することを確実にする処置や情報が明確になっているかどうかに関して評価され、問題が解決された上で、確定される。この評価では当然のことながら、その製品を製造又はサービス活動を実行し顧客に引渡す業務に関する必要事項や問題点、又、組織の能力や経済性の観点が含まれる。規格はこの評価の方法として、レビュー(7.3.4項)、検証 (7.3.5項)、妥当性確認 (7.3.6項)を挙げている。設計開発のどの段階のどのような評価によって誰が設計開発の結果を確定するのかは、設計開発の実行計画(7.3.1項)で決めておかなければならない。
 
  確定した設計開発の結果の内、製品の仕様と品質及び付帯仕様は製品実現関連業務の目標(7.1 a)項)となる。これとその他の設計開発の結果とから、その製品をどのように製造又はサービス活動実行(7.5項)し、顧客に引渡すかを決める工程設計(7.1 b)〜d)項)が行われる。また、確定した設計開発の結果は必要により、素材や部品の購入、外注のための購買(7.4項)、カタログや製品説明書など製品情報(7.2.3 a)項)、設備や要員の手配(6章)などの業務に反映される。
 
 
3. 規格要求事項の真意
  『設計・開発からのアウトプット』とは設計開発活動の結果であり、その主体は一連の特性で表される製品の仕様と品質及び付帯仕様の詳細である。このような仕様の製品が使用されて顧客の想い或いは顧客のニーズと期待が実際に満たされるためには、設計開発の結果は本項に定められる要件を満たしていることが必要である。設計開発の結果は、この適切性を評価され(7.3.4〜6項)、確定されて、製品実現関連業務の目標である『製品に対する品質目標及び要求事項』 (7.1 a)項)となる。
 
  なお、『設計・開発からのアウトプット』は用語上では設計開発の各段階のアウトプット を含む概念とも受け取れるが、本項では設計開発活動全体の『アウトプット』 としての要件が規定されていると考えてよい。各段階のアウトプット は、本項を基礎としつつそれぞれの目的や目標に応じて異なったものとするのが実務的である。
 
  組織は設計開発活動を管理する手はずの中に、設計開発の結果をどのように表すのかの方法や基準を次の(1)〜(7)を満たすように決めておかなければならず、個々の契約又は注文の設計開発の結果はこれに則って表し、設計開発実行計画(7.3.1項)で定められた通りに評価し、責任者が確定、承認しなければならない。
 
(1) 設計・開発からの アウトプットは、設計・開発への インプット と対比した検証を行うのに適した形式でなければならない。
                                                                                           [第1節 第1文]
   条文は原文でも94年、00年、08年版と少しずつ変化し、JISでは00年版の『様式』が08年版で『形式』となったように同じ原文の和訳の変更が加わっている。この中で原文では94年版では設計開発の結果の文書の書式を意図したかの表現であったが、00年版で『文書化』という文言が消え、更に、誤解され易い表現の訂正が目的の改定08年版では文書の書式が意図ではないことが明確な表現になった。また『対比した』『検証』も条文の意図からは適当な和訳ではない。
 
  条文の意味は「設計開発の結果は、設計開発目標に対する適合性を実証するのに適した態様でなければならない」である$49-2。規格執筆者のひとり(21r)はこれを「アウトプットは、その後の『検証』に使用できる方法(in a way)で提示される」と表現している。
   
  設計開発の結果はその適切性を通常、『レビュー』(7.3.4項)、『検証』(7.3.5項)、『妥当性確認』(7.3.6項)によって評価し、判断しなければならない。これら評価の内、『検証』を効果的に行うための設計開発結果の在り方を規定するのが、本条文である。
『検証』は設計開発結果が設計開発目標を満たしていることを客観的証拠で評価し、これを証明することである$53。設計開発結果の主体は一連の特性で表される製品の仕様と品質及び付帯仕様の詳細である。これら設計開発結果は、設計開発目標のひとつずつが設計開発結果にどのように反映されているのかが評価できるような態様でなければならない。
   
  態様とは、規格では設計開発結果を表す情報の種類又は形態の違いである。一般に、寸法や重さ、速度に関する情報は紙の文書に表され、形状や意匠の情報は図面に表され、見栄えのような感覚的な情報は見本や模型で表され、味覚や嗅覚に関係する情報は現物見本の形をとる。設計開発の結果は、設計開発目標を満たしていることを正しく判断するのにそれぞれ適当な種類又は形態の情報で表されなければならない。
   
   実際に設計開発結果の態様は業種業態によって様々である。例えば工業製品の場合は一般に各種特性の数値データを含む仕様書又は図面であり、或いは、試作品や見本が付属する。注文住宅業の設計開発結果の態様は、間取り図と建築確認用図面と外観模型であり、コンビニ弁当供給業ではレシピと試食用見本である。94年版(参考10)では『検証』の方法の事例の説明の中で、代替計算結果のデータや図形、試験や試行をすること、仕様書というような設計開発結果の態様を挙げていた。

  設計開発結果の主体は特性 で表された製品仕様であるが、これを設計開発の条件と比較して評価するためには、これらの特性 が設計開発目標を表す特性 と同じか又は同種のものであることが必要である。例えば、機械の月間製造量が設計開発目標であれば、設計開発で決めた製品移送速度やそのための電動機能力のみを設計開発結果とするのでなく、それらから計算した月間製造業を設計開発結果に含めなければならない。設計開発結果は顧客のニーズと期待を満たすために必要な製品仕様であるから、この観点から必要なすべての種類の仕様が含まれていなければならない。『インプット』が『漏れがなく、曖昧でなく、相反することがあってはならない』(7.3.2項)とは、このためでもある。
 
  この設計開発結果の在り方に関する規定は94年版(4.4.5)では『インプット に対して検証及び妥当性確認ができるような』となっていた。00年版で『妥当性確認』に言及されていないことに関して、『妥当性確認』が『インプット』の前の『製品要求事項』を満たしているかどうかの評価であるからと説明する解説がある(23u)。
 
(2) また、リリースの前に、承認を受けなければならない。 [第1節 第2文]
  『リリース』は"release"であり、設計開発の結果を設計開発活動の外に出すという意味$57であるから、00年版の『次の段階に進める』でよかった。設計開発活動の外に出すとは、設計開発結果をそれでよいとして確定し、製品実現の計画 (7.1項)でこの設計開発結果に基づいて行うことになっている業務を行うことである。設計開発結果は、設計開発の実行計画(7.3.1項)で決めた通りに『レビュー』『検証』『妥当性確認』の各評価と判断に供し、問題を正し、最終的に責任者が判断して内容を確定し、設計開発活動を完了させる。設計開発結果を正式に確定してから、設計開発結果を次の段階又は関連業務に使用しなければならないというのが、規格の趣旨である。
 
  組織の業務における承認とは、業務上の結果や、これから行おうとすること、また、その計画や方法について、組織として正式に認め、権威づける行為である。 業務上の結果は承認されて初めて効力をもつこととなり、関係する業務に使用又は適用してよいことになる。 承認は、その業務に責任及び権限をもつ者が、そのことが適切であるかどうかを評価し、必要な問題を解決した後に、これでよいとして判断し又は決定した結果で行われる。
 
  設計開発活動では結果の承認は、トップマネジメント、設計部門の管理者、設計担当者など当該設計開発の責任者である。規格では『検証』『妥当性確認』は要件を満たしていることに関する評価と判断であり、これを『レビュー』に供して設計開発実行計画で定めた設計開発活動の狙いの結果を達成したことを評価、判断する。『レビュー』では参加する関係者のそれぞれの責任事項に関する判断を基にして、設計開発の責任者が最終的に判断し、設計開発結果を承認する。この承認は、その仕様と品質及び付帯仕様の製品を組織が製造又はサービス活動実行により製品実現し顧客に引渡すという決定を意味する。この承認により設計開発の結果は設計開発活動以外の業務に供されることが可能になる。
 
(3) 設計・開発からの アウトプット は次の状態でなければならない。 [第2節]
  設計開発の結果は、a)〜d)項の要件を満たしていなければならない。 この内、a)項は設計開発目標との関係での必要事項であり、b)〜d)項は製品実現及び製品使用に関係する必要事項である。a)項は『設計・開発の検証』(7.3.5項)により評価、判定され、b)〜d)項の情報が十分かどうか適切かどうかの評価や判断を行うのは通常、『設計・開発のレビュー』(7.3.4項)の役割である。
 
   設計開発の結果の製品仕様の背景にある設計開発思想、狙い、アイデア 、新技術、製品の特徴や弱点を明確にし、文書化することも大切である。また、設計開発結果に至るまでに遭遇した問題や試みた解決策とそれらの結果などの設計開発の経過に関する情報を記録に残すことも大切である。これらは体系的に整理してデータ集(7.3.2 c)項)とし、或いは、設計開発基準とすることによって、組織の設計開発能力を向上に役立てることができる。
 
(4) 設計・開発への インプット で与えられた要求事項を満たす。 [a)項]
  原文は単純に「インプットの要求事項を満たす」であり、設計開発結果は設計開発目標(7.3.2項)を満たさなければならないということである。一般に設計開発目標は製品の性能特性の必要条件で表され、設計開発活動はこれを実現できる製品の構造特性に変換する活動である。設計開発結果のこの構造特性の製品が実際に、設計開発目標の性能特性の必要条件を満たしたものであることを確実にしなければならない(7.3.5項)。
 
(5) 購買、製造及びサービス提供に対して適切な情報を提供する。 [b)項]
  設計開発の結果の製品を効果的、効率的に製品実現するために必要な事項、条件、特に配慮すべき事項、困難な事項などがあれば、それらを設計開発結果の中で明確にしておくことが必要である。これは、製品実現の業務(7.5項)や製品の検査(8.2.4項)の特別な方法や条件、必要な設備の指定、重要な管理項目などである。
 
  設計開発の結果の機能や性能の製品を顧客に引き渡すために必要な包装や輸送、機械の据付けなど製品の引渡し活動に関する必要事項も含まれていなければならない。
 
  素材や部品を外部から調達し又は製品実現関連業務を外注する場合には、加えて、特定購買先の特定製品名の指定、購買先の選定、特別な管理の条件などを明確にしなければならない。
 
(6) 製品の合否判定基準を含むか又はそれを参照している。 [c)項]
  業務の結果にはばらつきがつきものであり、製品実現の結果の製品の仕様と品質、或いは、特性値とその水準も製品関連業務の結果の目標とは必ずしも一致しない。どこまでのばらつきが、与えられた設計開発目標に照らして許容されるかを設計開発活動の立場から示すのがこの『合否判定基準』である。一般にはこれが製品や半製品、素材や部品の検査の合否判定基準となる。
 
  『合否判定基準を含む』とは製品に特有の合否判定基準を決める場合のことを指す。『合否判定基準を参照している』はこの場合「〜を引用している」であり$12-2、既存の製品の合否判定基準を適用する場合であり、既存のどの合否判定基準を適用するのかを、合否判定基準の名称又はそれを記載する文書名を明確にすることを意味する。
   
(7) 安全な使用及び適正な使用に不可欠な製品の特性を明確にする。 [d)項]
  一般に製品が設計開発活動の結果の意図の通りの機能や性能を発揮するには、顧客の適切な使用が前提となる。或いは、誤った製品使用が顧客の安定操業や安全などに支障を来し、問題を引き起こす可能性がある。それら潜在的問題の防止の対応は基本的には製品仕様に織り込まれていなければならない。その上で、又は、製品仕様で対応できない問題については、適切な或いは問題を起こさない使用を確保する方策を設計開発結果に含めることが必要である。94年版(4.4.5項)では条文に「例えば、操作、保管、取扱い、保全及び廃棄に関する必要条件」を括弧付きで含んで、これら潜在的な問題が具体的にどのようなことであるかを例示していた。
 
  設計開発の結果には、製品の問題ない使用のために、又は、使用で狙いの顧客満足を得るために、起きる可能性のある問題が明確にされ、その防止に必要な事項、例えば絶対に順守されなければならない製品の特定の使用方法、製品の保守、保全方法、資材補充、部品交換の基準や注意事項等が明確にされていなければならない。例えば起こり得る問題は、高電流で接点焼損、高負荷でドラム 回転速度低下、高重量で運搬者の腰痛、無換気下のストーブ使用で中毒などであり、この防止のための電流、負荷、重量に関する安全限界の設定、使用環境や使用方法の制限などが問題発生防止策である。
 
  また設計開発の結果には、製品性能の発揮のための製品の使用に関する特性とその条件が明確にされていることも必要である。例えば、走行性能のためのハイオクガソリン使用、機能維持のための部品定期交換、空調性能確保のための室内広さなどであり、使用環境や使用の適正条件の指定、特定の免許証の必要、製品の据付けや保守の指針などの形で明確化する。
 
  これら顧客の使用に関する必要事項を顧客に伝達し(7.2.3 a)項)、製品使用の結果で顧客のニーズと期待を満たす ことを確実にする、設計開発活動の結果には、製品への注意書き標示、製品説明書の添付、製品使用相談サービス、使用のための教育訓練サービス、組織の要員用の販売説明書作成や教育訓練計画などが含まれなければならない。
 
 
 
H24.7.25(修 9.27)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所