ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
43 7.3.5項  設計・開発の検証 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-43
7.3.5 設計・開発の検証
[第1文] 設計・開発からの アウトプットが、設計・開発への インプット で与えられている要求事項を満たしていることを確実にするために、計画されたとおりに(7.3.1参照)検証を実施しなければならない。
[第2文] この検証の結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持しなければならない(4.2.4参照)。
 
 
1.要旨
  本項は、『設計開発の検証』が、設計開発活動の結果(7.3.3項)が設計開発目標(7.3.2項)を満たしたものであることを確実にする「適合性判定」活動であることを明確にし、その在り方としての要件を規定している。
 
  組織は、設計開発活動が必要な結果を所定の期限までに確実に出すことができるよう、設計開発の実行計画(7.3.1項)に定めた通りの段階で『設計・開発の検証』、つまり、設計開発目標(7.3.2項)を合否判定基準として設計開発の結果の合否を判定しなければならない。この合否判定で問題が見つかった場合は必要な処置をとって問題を正し、すべての目標を満たした設計開発結果とすること、すなわち、設計開発結果を適合化しなければならない。
 
  組織は、設計開発活動を管理する手はずの中に設計開発結果の適合性判定を行い、設計開発結果を適合化する手順を含めておかなければならず、設計開発活動の実行計画に従って手順の通りにこれを実行しなければならない。
 
 
2. 設計・開発の検証 (背景及び関連事項)
(1) 検証
@ 適合性判定
  JIS和訳『検証』の原文“verification”は、あることが正しく又は適切かどうかの観点で調査する、又は、それを実証することを意味する$47。日本語の『検証』は、物事がどのようなものかを実際に調べて明らかにすること(113)であるから、適切な和訳ではない。
 
  規格は『検証』を「規定された要件が満たされていることを客観的証拠を用いて実証すること」と定義している#28。『要求事項が満たされている』とは規格では『適合している』と表現される#5から、規格の意図の『検証』とは「適合性を実証すること」である$47。
   
  品質管理用語#28-2では“verification”は「製品とサービス が特有の要件に適合しているかどうかを判定する活動」のことを指す。つまり「適合性を判定すること」である。品質管理の実務では「適合性の実証」に基づき「適合性の判定」が行われ、或いは、「適合性の判定」の結果で「適合性の実証」がされるのであるから、両者は同義語である。規格の文脈では『検証』は品質管理用語の“verification”と同じ「適合性の判定」を意味している。
 
  品質管理用語の“verification”の「製品の適合性の判定」とは基準に照らしての製品の合否判定のことであり、これを行う活動は日本では一般に「検査」と呼ばれる。日本語で「検査」とは「基準に照らして調べ検める」という意味(113)であり、製品の合否判定を製品検査と呼ぶ他、広く物事が決められた通りであるかどうかを判定する活動にも適用される。すなわち、物件検査など物品の検査だけでなく、設計検査、現場検査、金融検査、官庁による各種立入検査のように業務実行や体制が決められた通りであるかどうかの判定のための種々の検査活動がある。
 
  日本の実務では「検査」と「適合性判定」とはほとんど同義語であるが、規格では『検査(inspection)』は「測定、試験、計測結果から形成した所見及び判断による適合性評価」#30というように適当性判定のひとつの手法に過ぎない。日本語の「検査」も、全数検査、目視検査などと言う場合には適合性判定のための特定の方法を指し、規格の定義の『検査』と同じく適合性判定のひとつの方法の意味で用いられている。
 
  JIS和訳『検証』では規格の意図を表しておらず、「検査」では混乱を生む可能性があり、「適合性判定」が適当な日本語であり、「合否判定」が実務的で、わかり易い。
 
A 適合化
  規格のPDCA/プロセスアプローチ サイクルの考えでは、すべての業務実行(D/実施)の結果 は、監視測定によって意図(P/計画)した通りの結果であるかどうかを評価(C/管理)し、そうでなければ計画通りの結果とするための処置(A/継続的改善)の処置をとる。この評価(C/管理)は規格では「適合性評価」であり、これに基づく判断、判定は「適合性判定」「合否判定」である。この評価、判定の結果で、計画通り或いは決められた通りではない、つまり、不適合或いは不合格、不良と判定された業務結果は、除外されるか又は決められた通りの結果でとなるように処置をとる。この評価と判定、処置と再評価によって業務実行の結果を間違いなく計画した或いは決められた通りとなるようにすることができる。
 
  この観点からの適合性判定活動は、単に業務実行や結果が適合か不適合か、或いは、合否を識別するだけでなく、業務実行や結果又は製品の適合化を図る活動である。上記@の『検証』の定義の「実証する」は、JISでは『確認する』と誤訳されているが、原文は“confirm”であり、これはTC176指針#32は「公式合意によって効力を持たせる」ことであると説明している。このことからも規格の意図の『検証』は「適合化活動」であり、この手段として「適合性判定」が行われると考えることができる。
 
  適合性判定活動に基づく適合化活動の結果で、当該の業務結果が計画通り或いは決められた通りであることが確定する。規格は、この状態を「適合性が実証された」と呼ぶとしている#28-1。このように適合化された業務結果だけが、次の業務に供される。業務結果が製品の場合は、検査で合格し、又は、不具合を正して合格した製品だけが次の工程に移され、又は、顧客に引き渡される。これら製品は「適合製品」であり、実務では「合格品」「検査済品」と呼ばれる。適合性を実証された業務結果を次の業務に供することを規格は「ある業務のインプットは普通、他の業務のアウトプットである」と表現している(131L)。
 
(2) 設計開発結果の品質確認としての適合性判定
  設計開発結果の製品が意図した通りの顧客のニーズと期待を満たす製品であることを確実にする活動は日本では、機械産業を中心とする設計管理論(88a)では一般に「品質確認」と呼ばれる。すなわち、設計開発活動を設計開発目標として決められた狙いの製品の機能や性能を確実に実現させる「品質つくりこみ」活動であり、正しく品質つくりこみするための結果の評価と判定、また、問題を正す活動が「品質確認」である。
 
  規格では世界の設計管理の共通論理に基づいて、この「品質確認」に「適合性判定」(本項)と「有用性判定」(7.3.6項)の2種類の視点があることを明確にしている。この内の前者はJIS和訳『設計・開発の検証』であり、設計開発結果が設計開発目標として決められた通りであることを確実にするという視点での品質確認であり、設計開発結果の適合性判定、或いは、設計開発結果の適合化の活動と呼ばれる。日本では「設計検査」であり、最近ではISO9001のJIS和訳に倣って「設計検証」という言葉も見受けられる。
 
  設計開発の適合性判定は、簡単には設計開発目標は製品の狙いの機能や性能であり、設計開発結果はこれを実現する製品の構造、機構であるから、後者の構造、機構で前者の機能や性能の狙いを実現できるのかどうかを評価、判断する活動である。この設計開発結果の適合性判定ないし合否判定の活動の目的は、設計開発結果の適合化であり、設計開発結果が設計開発目標を満たしていることを確実にすることである。
 
  この品質確認における適合性判定ないし合否判定のための手法は様々である。工業製品の場合は一般には実験と解析計算とに大別される。これらの方法は、顧客が実際に製品を使用するのでなく、その実際を想定した模擬的な評価であるから、いずれもシミュレーション と呼ばれる(87a)。機械の部材や部品の試験、試作品の性能試験、模型の評価、縫製業の仮縫いなどは実験であり、構造強度計算、耐震性計算、機械の動作や機能の電算機シミュレーションなどが解析計算である。シミュレーションが困難な場合には、過去の設計開発の事例に照らしての総合的技術的評価により品質確認が行われる。試験や評価は製品の使用又は適用と同じ環境の下で行われなければならない。
 
  また、設計開発に不確定要素が少なく、設計開発の方法、条件、基準が確立しているような場合は、設計開発業務が決められた手順の通りに実行されたことを確かめることで合否判定が行われることある。サービス業など機能や性能が顧客の感覚、感情に関係する製品の場合は、過去の失敗や成功事例や競合組織の状況など実績に照らしての評価が主体となる。
 
  規格は初版で設計開発結果の適合性判定手法として、試験及び実演、代替計算、過去の同様の設計実績との比較を挙げ、94年版では参考10として記述していたが、全業種業態に適用する汎用規格となった00年版では機械産業を想起させるこれら適合性判定手法の例示は規格自身からなくなり、『検証』の定義(131k)に付記されている。また、00年版では指針規格(132k)に適合性判定活動の事例として、設計開発目標と設計開発結果の比較、試験やシミュレーション又は試行、代替計算、同様の製品との比較評価、過去の失敗例との対比評価を挙げている。
 
  なお、初版(4.4.5 a))では デザインレビュー を適合性判定のための手法のひとつとしていたが、94年版の記述からは除外され、合否判定とは異なる設計管理要素として取り扱われている。しかし、94年版以降は「次の段階に進める前に設計開発結果の文書を見直すこと」が追加されたから、これが初版の規定していた適合性判定手法としてのデザインレビュー の趣旨であったと考えられる。
 
 
3. 規格要求事項の真意
  JIS和訳『検証』は原文の意味と規格の意図に照らすと「適合性の判定」の意味であり、実態を表す言葉として「合否判定」が適当な場合が多い。また、規格の文脈では「適合性の実証」「適合化」と同義語であり、条文ではそのような意味で用いられていることがある。
 
  適合性判定活動の目的は、設計開発の結果(7.3.3項)が設計開発目標(7.3.2項)の通りであることを評価し、問題があれば必要な処置をとって正すことであり、設計開発結果を次の段階に供することができるように設計開発結果を「適合化」することである。
 
  組織は、設計開発活動を管理する手はずの中に設計開発結果の適合性判定の手順や資源を含めておかなければならず、設計開発活動の実行計画(7.3.1項)には適当な適合性判定の手順を織り込み、その適合性判定を行い、設計開発結果が設計開発目標の通りであることを確実にしなければならない。
 
(1) 設計・開発からの アウトプットが、設計・開発への インプット で与えられている要求事項を満たしていることを確実にするために、計画されたとおりに(7.3.1参照)検証を実施しなければならない。 [第1文]
  条文の原文は"Verification shall be performed ……to ensure 〜 "であるから『〜を確実にするために検証を実施する』ではなく「検証活動を行って〜を確実にする」という意味である。すなわち、「設計開発の実行計画に従って設計開発結果の適合性判定を行い、設計開発結果が設計開発目標を満たしたものであることを確実にしなければならない」である。
 
  組織は設計開発の計画(7.3.1項)で決めた各段階で、設計開発活動の結果(7.3.3項)をその設計開発目標(7.3.2項)を満たしたものであるかどうかの観点で評価し、問題があれば必要な処置をとり、再評価を行わなければならない。このようにして、設計開発活動のすべての結果が間違いなく設計開発目標を満たした計画通り或いは決められた通りの結果であるようにしなければならない。すなわち、設計開発目標として決めた機能や性能の目標を適合性判定基準として、設計開発の結果の製品の構造、機構を表す製品の仕様の適合性判定を行い、設計開発結果を適合化しなければならない。
 
  適合性判定活動或いは適合化活動は設計開発活動全体の結果に対してだけではなく、基本的にはそれぞれの段階の結果に対しても行うことが必要である。特に設計開発が長期にわたる場合、設計開発の段階と相互関係が複雑な場合には、全体設計開発結果の段階の適合性判定で不合格となった場合の損失が大きいから早期に問題を発見して対処することが大切であり、これを94年版(4.4.7)は『設計の適切な段階において設計検証を行うこと』と明確にしていた。
 
  結果が設計開発目標の通りでなければそれを正す処置をとらなければならない。処置とは例えば、設計開発の一部のやり直し、他の設計開発段階での調整の処置、評価方法の見直し、特別採用などである。原因が設計開発手順の問題であれば手順を修正する。
 
  規格の意図の設計管理では適合性判定結果は責任者によって最終的に承認され、その内容が組織内で公式なものとなる。こうして適合化された設計開発の結果と合わせてその他の必要事項を考慮して設計開発活動を次に進めるかどうかの判断をする活動が デザインレビュ (7.3.4項)である。こうして『設計・開発からのアウトプットをリリースする』(7.3.3項)ことによって次の段階の設計開発目標の一部となって設計開発活動が進められる。に進められることになる。
 
  適合性判定の方法、時期、また、デザイン・レビュー との関係は、設計開発活動と製品の重要性や技術的困難性、不確定要素の多さなどから来る個々の適合性判定の必要に応じた適当なものでなければならないというのが規格の意図である。
 
(2) この検証の結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持しなければならない(4.2.4参照)。 [第2文]
  設計開発結果の適合性判定活動の結果の記録には、適合性判定のための データや評価、判断の情報だけでなく、適合性判定で判明した問題点と問題解決のための処置とその適合性判定の情報も含まれていなければならない。
 
  この記録は、次の段階や以降の設計開発活動に対する技術的引き継ぎであり、設計開発活動の方向づけ(7.3.4項))のための不可欠な判断材料となる。
 
  設計開発全体の最終結果の適合設計開発検査の記録は、確定した製品仕様と品質及び付帯仕様、製品実現や製品使用に関してとらなければならない処置を含んでおり、以降の『製品実現の計画』(7.1項)で使用され、製品実現業務や製品使用で品質問題が生じた場合の対応の基礎となる。
 
  最終的には当該製品の一連の設計開発に係わる記録のひとつとして整理し、維持することが大切である。FDA(米国食品安全庁)の医療機器製造の基準(21CFR Part820 Quality Regulation)では設計履歴書類の管理として、製品毎の設計変更を含む設計開発活動に関連する一連の情報を整理して維持することの必要を規定しているが、これは規格の7.3.1〜7.3.7項に規定される文書や記録を製品毎に整理して管理することに相当する。
 
 
 
H24.9.27(修 H26.4.28)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所