ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
47 7.4.2項  購買情報 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-47
[第1節] 購買情報では購買製品に関する情報を明確にし、次の事項のうち該当するものを含めなければならない。
a) 製品、手順、プロセス、及び、設備の承認に関する要求事項
b) 要員の適格性確認に関する要求事項
c) 品質マネジメントシステム に関する要求事項
[第3節] 組織は、組織は、供給者に伝達する前に、規定した購買要求事項が妥当であることを確実にしなければならない。
 
 
1.要旨
  本項は、購買製品が組織の必要を満たすものであることを確実にするために、購買情報として供給者に伝達にすべき購買条件に関する要件を規定している。
 
  組織は、購買製品に関して供給者が満たすことを必要とするすべての必要条件を明確にし、購買条件として購買情報の形で供給者に伝達しなければならない。組織の必要を残らず含む購買情報であるためには、a)〜c)の観点から購買製品に関する組織の必要を考慮しなければならない。購買情報には抜けがないことを確実にしなければならない。
 
 
2. 購買情報
  購買情報とは、『購買要求事項』と和訳される購買条件(7.4.1項)を表す情報のことである。 購買条件は、購買製品の仕様とその製品実現の業務実行に関係して供給者に満たすよう求める事項や条件、基準である。『購買要求事項』は94年版(4.6.1, 4.6.2)では、購買製品に関する「規定要求事項」又は「下請負契約要求事項」であり、『購買データ』として表すとされていた。また、『購買データ』は文書に記述して『購買文書』として供給者に交付するよう規定していた。 00年版では購買文書の代わりに購買情報と表現されるようになったが、これは、購買製品の発注が注文書の発行だけではなく、口頭や電子メール、インテターネット、専用の購買システムなどを通しても行なわれる業種や近年の状況に対応したものであるとされる(22n)。
 
  購買情報に表される購買条件とは、供給者と購買製品に対して必要な管理の方式と程度(7.4.1項)として決めた事項の内で、供給者に順守を求めるために間違いなく伝達しなければならない事項のことである。購買条件は、初めての購買ではこれをどのように満たすことができるかという観点で供給者の能力評価(7.4.1項)の基礎となり、また、実際に受け取った購買製品が組織の必要を満たすことを確かめる合否判定の基準となる(7.4.3項)。
 
  購買情報は発注の都度に注文書などの形で表される性格のものであるが、継続的な取引では契約書や製品仕様書、品質約款や協定書などの形で表されて予め供給者に伝達されることが多い。特に、供給者の管理に関する購買情報は後者の形が一般的である。
   
   供給者が伝達を受け、満たさなければならない購買条件(7.4.1項)と、組織が顧客に対して満たさなければならない製品関連要件(7.2.1項)とは、どちらも購買側が供給側に課す購買条件であるという点で同じである。 前者では組織が購買側であり、後者では組織が供給側の立場にあるという違いだけである。契約内容の確認(7.2.2項)は、組織が供給側として購買側の提示する購買条件に抜けがなく適切かを確かめることであり、これを逆の購買側として供給者に提示する購買条件に抜けがなく適切かを確かめることが本項の『規定した購買要求事項が妥当であることを確実にする』ことである。供給者がISO9001認識取得組織なら、受け取った購買情報だけでなくその背景にある組織の意向をも汲みとった組織のニーズと必要を確実に満たす製品(7.2.1項)が供給されることが期待できる。
 
 
3. 規格要求事項の真意
  組織は、購買管理の手はずの中に、購買製品に係わる組織の必要を購買条件として明確にし、購買情報の形で供給者に伝達する手はずを含めなければならない。組織は個々の契約又は注文に関する製品実現の計画(7.1項)において、この手はずに則って購買条件を決め、供給者に伝達しなければならない。
 
  この購買条件とは、購買製品が組織の必要を満たしたものであることを確実にするために組織が個々の供給者及び個々の購買製品に適用する管理の方式と程度(7.4.1項)の内の供給者が満たすべき要件を整理したものである。購買条件として供給者に順守を求める事項を抜けなく決めるには、次のa)〜c)項を考慮しなければならない。
 
(1) 購買情報では購買製品に関する情報を明確にし、次の事項のうち該当するものを含めなければならない。 [第1節]
  この原文は「購買情報は、購買する製品を表すものでなければならない」であり$54、『該当するもの』は「必要なら」であり$45-2、趣旨は94年版(4.6.3)の『購買文書には、発注物品を明確に記述したデタを含めること』と同じである (21u)。
   
  供給者に順守を求める事項として購買条件を決めるに当たっては、次のa)〜c)項に係わる諸事項が必要かどうかを評価し、必要な事項を必要な程度に購買情報として明確にしなければならない。
 
  近年では製品に対する顧客のニーズと期待は、製品の環境負荷、有害物質による健康や安全のリスク など製品の機能や性能以外にも拡がっており、更に、製品実現業務に係わる環境影響低減、法令順守や少年労働禁止など企業倫理も製品の顧客満足に関係するようになっている。購買条件の決定には、これら観点も考慮することが大切である。
 
  特定の購買製品の取り扱いや特定の業務実行に係わる特殊な法規制があり、それが供給者の事業活動の通常の業務では不必要なものであるような場合には、組織が購買条件に明確にすることが大切である。
 
  この購買条件ないし購買情報の内容及びその詳しさは、組織の意図が供給者に理解されるために必要な程度であり、供給者の購買製品の不良が組織の製品実現の業務又は最終製品に及ぼす影響、並びに、供給者の業務能力に応じたものでなければならない。
 
(2) 製品、手順、プロセス、及び、設備の承認に関する要求事項 [ a)項]
  『承認』とは組織が認める、或いは、組織が受け入れるという意味であり、『要求事項』は「要件」である$1から『〜の承認の要求事項』とは、供給者の〜を組織が受け入れるための条件という意味である。購買条件として供給者に順守を求める事項を組織が購買製品を受け入れる条件として表したものと考えてよい。
 
@ 製品の承認に関する要求事項
  購買製品が満たすべき仕様と品質及び付帯条件をどのように表現して、組織の意図を供給者と合意するかということである。これは94年版(4.6.2 a),b))では『発注物品を明確にした記述したデータ』のひとつとして『形式、種類、等級又はその他の明確な識別』『仕様書、図面、検査指示書、その他の関連技術データの標題又はその他の確実に識別できる特徴』という表現で表されていた。
 
  一般に購買製品の仕様と品質及び付帯仕様が、その目標値と合否判定基準の形で表されるが、それらが製品図面や製品仕様書と図面番号や製品名の形で購買情報となることも多い。供給者仕様の製品を購入する場合は、組織が供給者の提示する仕様や製品名を指定する。
 
A 手順、プロセス、設備の承認に関する要件
  これは、個々の購買製品が組織の意図する仕様と品質及び付帯条件を満たすものであることを確実にするために、供給者の製品実現業務の方法や条件を指定する必要がある場合の、組織が指定すべき業務実行の方法や条件、製品実現の工程と順番、使用する設備の仕様や能力のことを指す。これらを供給者に提案させ、組織が承認して購買条件とすることもよく行われている。また、原材料や製品実現に使用する資材、検査の限界見本、計測器などを組織が支給又は貸与し、供給者がこれを使用する形をとることもある。
 
(3) 要員の適格性確認に関する要求事項 [ b)項]
  JIS和訳『適格性確認』の原文は“qualification”であり、要員にある特定の業務の実行のために必要な能力を持たせることを意味する$40。規格では“qualification”は、その特定の業務の実行を認めるという観点から要員を当該業務実行に関して「適格化する」という意味で用いられている$40-1。『要求事項』は「要件」である$1から、「要員の適格化に関する要件」である。
 
  供給者が組織の規定した通りに業務を行って規定した仕様と品質の購買製品を生み出すことを確実にするために、供給者の要員に特定の業務能力が必要で不可欠と判断される場合には、そのような業務能力を身につけさせ、業務能力を持った要員が業務を行うことを確実にしなければならない。これは規格では、要員を当該業務実行に関して「適格化」し、「適格化された要員」のみが当該業務を行うようにすることと表現される。
   
   組織は、特定業務を実行する供給者の要員を適格化し、適格化された要員による業務実行を確実にするための必要条件を明確にして購買条件に含めなければならない。必要な職務能力を持つ要員に業務を行わせること(6.2.1項)は供給者の基本的責任である。本項の「要員の適格化」の意味は、供給者が行う要員の職務能力管理の中に、組織から見て必要な特定の業務の実行に係わる特別な能力を加え、この能力を持った「適格化された要員」が組織の委託した業務の実行にあたるよう供給者に管理を求めることである。
 
  組織は要員の適格化に関する要件として、どの業務の要員にどのような特別な業務能力が必要であるかを明確にし、必要ならそれを満たす要員を確実に配置するために供給者が行なうべき管理やその結果の組織への報告の手順が含まれる。具体的な要員の適格化の要件は例えば、特定業務のための公的資格や免許を有すること、組織に法的に必要な資格保有者が必要な人数が居ること、特定の技術分野の経験者や専門家が居ること、或いは、組織の意図する業務実行方法に関する組織の指定の教育訓練を履修すること、組織の経営方針を理解していることなどが含まれる。
 
(4) 品質マネジメントシステムに関する要求事項 [ c)項]
  この場合の品質マネジメントシステムは、供給者の品質保証に関する経営管理(マネジメント)の枠組みを指すが、実務的には品質保証に関する特定業務の実行管理のあり方から、日常業務管理体制から経営管理(マネジメント)まで広い概念での様々な業務実行の管理のあり方を指すと考えてよい。『品質マネジメントシステムに関する要求事』とは、組織の規定する方法や条件(上記(2)A、(3))の通りに製品実現業務を実行し、規定する仕様と品質及び付帯仕様(上記(2)@)の購買製品を確実に供給することを図る供給者の品質保証に係わる業務実行管理に関する必要条件のことである。実務的には、組織が決める供給者の管理の方式と程度(7.4.1項)に関して組織が供給者に要求する事項に相当する。これには、供給者にISO9001規格適合の登録証の取得を要求することが含まれる。
 
(5) 組織は、供給者に伝達する前に、規定した購買要求事項が妥当であることを確実にしなければならない [第2節]
  JIS和訳では94年版(4.6.2)の『適切性』が00年版で『妥当であること』になったが、原文は同じ"adequacy"であり、これは、必要を満たすのに十分であることを意味する$23。94年版(4.6.3項)では「規定した要件が十分であるよう購買文書を評価し承認する」と表現されていた。
 
  購買情報を供給者に伝達する場合は、当該購買製品を必要とする者、一般には、それを使用する業務と結果に最終責任を負う者が、その必要を満たす購買製品を受け取ることができるという観点で購買情報を見直し検討して、十分な内容の購買条件が規定されていることを確実にしなければならない。販売店で市販品を購入するような場合を除いて、購買文書は文書化することが必要であるから、購買情報のこの見直しと承認は、文書管理における発行前の内容が十分かどうかの見直し検討と承認と同じ趣旨である。
 
   
4. 購買情報の実務
(1) 購買情報の承認
  購買情報の責任者による承認は、購買条件を新たに決め、又は、変更する場合にのみ必要である。この購買条件に基づいて発行し、供給者に交付する注文書や発注伝票のような購買情報には責任者による承認は不要である。手順書など組織の内部文書を購買情報として供給者へ交付する場合も、購買情報として改めての承認は不要である。このような内容の責任者による承認が不要な購買情報でも、高額であるとか、複雑であるとか、特に重要である購買条件を規定する購買情報は、誤作成、誤記の点検を含み、それぞれの場合に決められた責任者の確認と承認を必要とすることにすることがある。購買情報に必要な購買条件が抜けなく正しく規定されることを確実にする方法として、購買文書の書式に必要項目の記入欄を織り込むなどの工夫が効果的である。
 
(2) 購買情報の伝達
  購買情報の供給者への伝達の方式は、組織の意図が供給者に誤って受けとめられる可能性と、その場合の組織の製品実現の業務と最終製品に及ぼす影響に応じたものでなければならない。00年版では購買情報の伝達は購買文書の発行によるものの他に、電子メールや口頭での伝達も想定されている。伝達が口頭であっても、購買条件自体は組織のいずれかの文書に記述され、承認されていることが必要である。
 
  例えば、継続取引の場合は繰返し発注の都度、すべての購買条件を購買情報として供給者に伝達するのは効率的ではない。例えば、市販品など供給者仕様の購買製品の場合は、供給者のカタログの製品仕様に対応する商品名や型式番号だけを注文書等の購買情報で規定する。継続取引の繰返し発注の購買製品については、文書や図面を予め供給者に配付し、注文はこれを特定できる製品名や品番、又は、文書名で行なう。
   
  供給者の業務実行と管理に関する購買条件については、検査方法や納品方法、管理体制などすべての購買製品に共通の購買条件は、覚書や協定書、取引約款などに別途定めておくことが一般的である。
 
(3) 購買文書の管理
  購買情報として組織の規範文書や図面などを使用することもよくある。この文書には変更があり得るから、組織内部の都合で文書の内容を変更した場合に、必要な供給者に変更内容を伝え、改訂版が確実に交付される手はずを文書管理の手はず(4.2.3項)に含めておかなければならない。また、供給者が改訂版を受け取り、供給者が変更された文書を旧版に代えて使用することを確実にする手はずについて、購買条件に含めて供給者と合意しておかなければならない。覚書や協定書、取引約款などの購買文書についても同じである。
   
  特別な機密保護を必要とする組織の文書や情報、顧客が知的財産権を有する内容の文書、図面等を購買情報として組織が供給者に交付する場合には、その保護についての必要な配慮(7.5.4項)を購買条件に含めることが必要である。
カタログなど供給者の文書を購買情報として使用する場合も、その最新版の入手と組織内での使用を確実にする文書管理が必要である。
 
 
 
H25.3.14
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サニーヒルズ コンサルタント事務所