ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
48 7.4.3項  購買製品の検証 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-48
[第1節] 組織は、購買製品が、規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするために、必要な検査又はその他の活動を定めて、実施しなければならない。
[第2節] 組織又はその顧客が、供給者先で検証を実施することにした場合には、組織は、その検証の要領及び購買製品の リリース の方法を購買情報の中で明確にしなければならない。
 
 
1.要旨
  本項は、購買製品が購買情報として供給者に伝達した購買条件を満たしたものであることを確実にするための購買製品の受け入れに関する要件を規定している。
 
  組織は供給者から受け取った購買製品が、規定した購買条件(7.4.2項)を満たしているかどうかの合否判定を行い、合格品のみを受け入れることでなければならない。合否判定の方法は、組織による受入検査の他、購買製品の管理の方式と程度(7.4.1項)に応じた実行可能で効果的な方法でなければならない。
 
 
2.背景 及び 関連事項
2-1. 購買製品の検証
(1) 検証
@ 適合性判定
  JIS和訳『検証』の原文"verification"は、あることが正しく又は適切かどうかの観点で調査する、又は、それを実証することを意味する$47。日本語の『検証』は、物事がどのようなものかを実際に調べて明らかにすること(113)であるから、適切な和訳ではない。
 
  規格は『検証』を「規定された要件が満たされていることを客観的証拠を用いて実証すること」と定義している#28。『要求事項が満たされている』とは規格では『適合している』と表現される#5から、規格の意図の『検証』とは「適合性を実証すること」である$47。
 
  品質管理用語#28-2では"verification"は「製品とサービス が特有の要件に適合しているかどうかを判定する活動」のことを指す。つまり「適合性を判定すること」である。規格の定義が「判定」ではなく「実証」であるのは、"verification"の2種類の意味$47の中の単なる調査ではなく判断することを含む方の意味のであることを明確にし、また、適合性の判定を客観的証拠に基づいて行うべきことを強調した表現であると受けとめてよい。
 
  このように、規格の『検証』は品質管理用語の"verification"と同じ「適合性の判定」の意味である。その定義の「製品とサービスの適合性の判定」とは基準に照らしての製品、サービスの合否判定のことであり、これを行う活動は日本では一般に「検査」と呼ばれる。日本語で「検査」とは「基準に照らして調べ検める」という意味(113)であり、製品の合否判定を製品検査と呼ぶ他、広く物事が決められた通りであるかどうかを判定する活動にも適用される。すなわち、物件検査など物品の検査だけでなく、設計検査、現場検査、金融検査、官庁による各種立入検査のように業務実行や体制が決められた通りであるかどうかの判定のための種々の検査活動がある。
 
  日本の実務では検査と適合性判定とはほとんど同義語であるが、規格では『検査(inspection)」は「測定、試験、計測結果から形成した所見及び判断による適合性評価」#30というように適合性判定のひとつの手法に過ぎない。日本語の「検査」も、全数検査、目視検査などと言う場合には適合性判定のための特定の方法を指し、規格の定義の『検査』と同じく適合性判定のひとつの方法の意味で用いられている。
 
  JIS和訳『検証』では規格の意図を表しておらず、「検査」では混乱を生む可能性があり、「適合性判定」が適当な日本語であり、「合否判定」が実務的で、わかり易い。
 
A 適合化
  規格のPDCA/プロセスアプローチ サイクルの考えでは、すべての業務実行(D/実施)の結果 は、監視測定によって意図(P/計画)した通りの結果であるかどうかを評価(C/管理)し、そうでなければ計画通りの結果とするための処置(A/継続的改善)の処置をとる。この評価(C/管理)が規格では「適合性評価」であり、これに基づく判断、判定は「適合性判定」つまり「合否判定」である。この評価、判定の結果で、計画通り或いは決められた通りではない、つまり、不適合或いは不合格、不良と判定された業務結果は、除外されるか又は決められた通りの結果となるように処置をとる。この評価と判定、処置と再評価によって業務実行の結果を間違いなく計画した或いは決められた通りとなるようにすることができる。
 
  この観点からの適合性判定活動は、単に業務実行や結果が適合か不適合か、或いは、合否を識別するだけでなく、業務実行や結果又は製品の適合化を図る活動である。上記@の『検証』の定義の「実証する」は、JISでは『確認する』と誤訳されているが、原文は"confirm"であり、これはTC176指針#32は「公式合意によって効力を持たせる」ことであると説明している。このことからも規格の意図の『検証』は「適合化活動」であり、この手段として「適合性判定」が行われる。
   
(2) 購買製品の品質確認としての適合性判定
  組織が製品実現の計画(7.1項)で定めた仕様と品質の製品を実現し顧客に引き渡すためには、組織は供給者が満たすよう購買情報(7.4.2項)として明らかにして要求した購買条件を満たした購買製品しか受け入れてはならない。すなわち、購買製品の合否判定を行い、受け入れる購買製品がすべて合格品であるようにしなければならない。製品の購買を、その製品実現業務(プロセス)を供給者に委ねるという意味の『アウトソースする』と見る観点(4.1項)では、アウトソースした製品実現業務の供給者による実行結果が組織が受取る購買製品である。アウトソースした業務(プロセス)の結果の適合性判定と、購買製品の合否判定とは同じことを意味する。
 
  組織が供給者から受取った購買製品の合否判定を行うのは、購買条件として規定した仕様と品質及び付帯仕様を満たすと判断される購買製品のみを受入れ、満たさない購買製品がそのまま組織の製品実現業務で使われたり、或いは、組織の製品又はその一部とならないようにするためである。適合性判定によって購買条件を満たすと判定された購買製品は「適合性が実証された製品#28-1」又は「適合製品」である。物たる製品の場合は実務的には「合格品」と呼ばれ、合否判定活動を「検査」と呼ぶ場合には「検査済製品」とも呼ばれる。
 
  購買条件を満たさない「不適合製品」又は「不合格品」は、そのまま組織の製品実現業務に使用されたり、或いは、組織の製品又はその一部となることのないように管理しなければならない(8.3項)。合否判定と不合格品の適切な処理によって、組織は購買条件を満たした購買製品しか受け入れることのないことを確実にすることができる。これが規格の意図の「購買製品の適合化」であり、JIS和訳では『購買製品の検証』である。94年版(4.10.2.1項)では受入検査・試験に関連して、『搬入製品が規定要求事項に適合していることを検査するまで、又は他の方法によって検証するまでは、使用又は加工を行わないことを確実にすること』と、購買製品の合否判定の意義を明確に規定していた。
 
 
2-2. 購買製品の合否判定方法
  規格の『検査』は「必要な測定、試験、計測結果から形成した所見及び判断による適合性評価」と定義#30されるように適合性評価、つまり、合否判定のひとつの方法である。『試験』は「手順に従って特性を決定する」ことと定義されているから監視測定の方法のひとつであり、定義でも明らかなように『検査』の判断基準の要素のひとつに過ぎない。
 
  購買製品の受入れに際する合否判定の方法について実務的には、検査を行うか、行わないか、又は、両者の組み合わせに大別できる。検査を行わない合否判定方法を採用する場合とは、次の状況を含む。
改めて組織が検査をすることが購買或いはアウトソースする目的に照らして合理的でない
例えば電話相談窓口業務の一括外部委託や製品を顧客に届ける輸送業務の外注のように実際問題として組織が検査できない
購買製品をそのまま組織の製品として供給者から直接顧客に引き渡す
市販品の購入、製品実現の中の特殊業務の外注のように、組織に購買製品を検査する能力を持っていない
 
(1) 受入検査
  購買製品の受取りにあたり組織の基準で検査を行い、合格品のみを受け入れるという受入検査は、最も普遍的な購買製品の合否判定方法である。受入検査は組織が一から行うのではなく、供給者が行う検査と検査項目を分担し、或いは、その検査結果を活用して行われるのが通常である。一般に受入検査は抜き取り検査であり、供給者の行った試験や検査の結果の記録の点検によって合否判定を行う場合もある。製品特性の性格から検査では合否判定ができない場合(7.5.2項)には、供給者の特定の製品実現の工程条件の実績に関する記録に基づいて組織が合否判定を行う。
 
  組織が購買製品を受入検査で合否判定をするような取引でも、供給者の業務管理能力への一定の信頼が確立していなければならず、受入検査の詳しさはこの信頼の強さの程度に応じたものとなる。受入検査の方法を決める場合には、供給者の業務管理能力に対する組織の管理の方式と程度が明確となっていなければならない。94年版(4.10.2.2)では『受入検査の量と内容を決めるに当たっては、供給者での管理の程度及び提供された適合の証拠を示す記録を考慮すること』と規定して、このことを明らかにしていた。
 
(2) 業務委託現場での検査
  供給者がつくった製品を組織が業務委託現場(供給者)で検査して受入可否を決める場合がある。規格は94年版に引続き00年版でも、組織が供給者に出かけて受入予定の購買製品を検査する購買製品の合否判定のあり方を規定している。
 
  単品ものの機械産業製品によくある検査方法であるが、TC176指針(4a)が アウトソースされたプロセスの管理の方法の事例の1つとして挙げている、建設会社が設計開発業務を専門業者に委託した場合に組織の責任者が設計開発のレビューに参画し、設計開発結果を組織が最終承認をするというような管理もこれに相当すると考えられる。
 
  さらに、組織の構内で組織の業務の一部を供給者に委託しているような場合には、供給者の行う業務の結果としての購買製品の合否判定は実質的に組織の日常業務管理の中で行われており、また、同じ企業で組織としての製造事業所の品質マネジメント システムの中に本社の営業部門が供給者として組み込まれているような場合には、営業部門の業務の事業所による管理と業務結果の合否判定は実質的に企業の業務管理体制の中で行われている。すなわち、組織が供給者において合否判定を行っていると考えることができる。
 
(3) 無検査で受入れ
  今日では多くの購買製品が組織による受入検査なしに受け入れられている。この場合、組織は受入れにあたって両者で合意した合格品である事を証明する供給者の記録や記述を確認することで、購買製品が購買条件を満たしたものであると判断する。供給者から直接顧客に製品が引渡されるような場合には、合格品であることの証を組織が確認するのは通常は製品が顧客に引き渡された後である。例えば組織の製品の顧客の輸送を専門の輸送業者に外注するような場合も、間違いなく届けたと言う輸送サービス活動の実行結果が購買製品に相当するが、購買条件を満たして間違いなく届けたという輸送業者の合否判定結果の記録や報告を事後に組織が確認する。
 
  このように組織が検査するまでもなく購買条件を満たした購買製品であり、或いは、顧客に引き渡すべき所定の仕様と品質及び付帯仕様の製品であることが確実であり、後に購買製品の不良に起因する問題が生じることがないことを確実にするためには、合格品であるとの供給者の証明には間違いがないという状態が確立されていなければならない。このために組織は、供給者が満たし或いは遵守すべき購買製品の仕様と品質及び付帯仕様、及び、必要により製品実現の方法や条件を指定し、さらに、供給者が行うべき必要で可能な合否判定方法とその結果で合格品であることを証明する方法、及び、不良品の処置と組織への連絡の方法を決めて、供給者と合意しなければならない。合わせて、供給者がこれらを確実に満たす業務管理能力と意思を持っていることを確実にするように供給者を管理しなければならない(7.4.1項)。
 
  例えば、組織の製品実現の途中の特定の一部の加工工程を外注するような場合は、購買製品たる加工済み半製品に不良があっても引き続く組織の製品実現業務や製品検査で容易に検出できる。電話相談窓口の外部委託のような場合は、組織の顧客の相談に対する供給者の担当者の対応結果が購買製品であるが、対応結果が購買条件を満たしものであったかどうかの個々の合否判定は通常供給者も行わないし、組織がこれを確認することもできない。組織が購買製品を受入検査なしに受入れ、或いは、そのまま顧客に引き渡しても不良品が顧客に引渡される事がないようにするために必要な供給者の管理の方式と程度は、供給者の固有の業務能力と合否判定の重要性、性格や難しさに応じて適切なものとしなければならない。
 
  供給者に求める品質保証に係わる業務実行体制、或いは、業務管理能力の範囲は検査体制のみ、品質保証の組織構造、或いは、広く品質保証体制全般にわたるなど、また、その遵守の監視方法には購買製品の品質実績から問題を判断する、供給者から変更や問題点の報告を受ける、組織が供給者に出向いて監査するなど、それぞれに様々な程度、方法がある。
 
  購買活動をその製品実現業務(プロセス)を供給者に委ねると捉える観点からは、購買管理は『アウトソースしたプロセスの管理』(4.1項)と表現される。TC176指針(5c)では「アウトソースしたプロセスの結果を以後の監視や測定で合否判定できない場合には、アウトソースしたプロセスの管理には7.5.2項に従った『プロセスの妥当性確認』を含めることを確実にしなければならない」として、検査を行わない場合には供給者の検査を含む業務の実行が購買条件の通りであるように「業務実行の有用化の管理」をしなければならないと言う事を明確にしている。
 
  購買製品の受入れに際する合否判定の方法について規格執筆者のひとり(21v)は、受入検査をする(抜取、全数)、供給者の施設で検査する、供給者を認証する(無検査)、及び、これら又はこれ以外の方法の組み合わせの4種類を挙げている。この内の「認証」は、無検査受入方式を適用する場合に供給者の業務管理能力も方式と程度を決め、それを満たす供給者であることを評価し認めることを意味している。こうして認証し、必要な業務管理能力の継続的な維持を確実にする枠組みの下に、認証した供給者にのみ購買製品或いは業務を発注する。
   
  供給者にISO9001規格の導入を求めることは、供給者が品質保証に係わる業務実行管理を経営管理(マネジメント)の枠組みにまで拡げて行うことを要求することを意味し、第三者認証制度は組織による供給者の業務管理能力の管理を認証機関に委託することを意味する。
 
(4) 無条件で受入れ
  大抵の原材料や資材、市販品や規格品など供給者が定めた仕様の製品を購入するような購買では、組織は必要な製品仕様と品質及びその他の必要条件を供給者に伝えるか、又は、それらを満たすと判断される特定の製品を供給者の品揃えの中から選び顧客に伝える。購買製品の受取りに当たっては、現物に表示された製品名や検査済み証の確認を以て、これらの購買条件が満たされたものと判断し、無条件で受け入れる。
 
  組織に技術知識や経験のない業務、例えば機械加工業者が特殊な熱処理や表面処理など専門性の高い加工を外注する場合では、購買条件を満たすことを確実にする管理はほとんど全面的に供給者に依存することになる。組織の指定する仕様の製品を供給者に作らせるとはいえ、購買条件を満たす管理における組織の主体性の点では供給者が定めた仕様の製品を購入するのと変わらない。
 
  TC176指針(5c)では、購買すなわち業務の外部委託には組織にその実行能力のある場合とない場合に大別され、後者の場合の組織の『アウトソースしたプロセスの管理』(4.1項)は供給者が行うことを約束する管理が適切であるかどうかを判断することに限られ、また、この判断に外部の専門家の助けを借りるのが適切な場合もあると説明されている。このような状況の購買或いはアウトソースの場合には、実務的には組織が行うことのできる供給者の管理は、信頼できる供給者を選択することであるといえる(7.4.1項)。
 
   
4. 規格要求事項の真意
  JIS和訳『検証』は原文に照らすと「合否判定」を意味する。組織が必要な製品仕様と品質及び付帯仕様を満たす購買製品のみを受入れることを確実にするには、購買製品の受取りに当たって所定の合否判定基準に照らして合否の評価と判断を行うことが必要である。94年版(4.10.2)では「検査またはその他の方法で合格と判定されるまでは使用又は処理してはならない」と規定され、受入検査の詳しい条件を規定していた。00年版で表現が少し変わっているが、趣旨は同じである。
 
(1) 組織は、購買製品が、規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするために、必要な検査又はその他の活動を定めて、実施しなければならない。  [第1節]
  『購買要求事項』は購買条件の意味であり$1-2-1、購買製品に関する組織の必要を表し、供給者がその製品を組織に供給するために満たさなければならない要件である。製品実現の計画(7.1項)で定めた製品仕様と品質及び付帯仕様の製品を実現し顧客に引き渡すためには、そのために必要として購買条件に規定した通りの購買製品を受け入れることが必要である。組織は各購買製品に定めた合否判定基準を満たす製品しか受け入れてはならない。
 
  実務的には合否判定の方式は、受入検査、業務委託現場(供給者)での検査、無検査での受入れ、無条件での受入れに大別される。規格では、合否判定の方式は購買製品の管理の方式と程度(7.4.1項)の範疇とされている。また、それには『検査又はその他の活動』には供給者の管理の方式と程度(7.4.1項)と検査(7.4.3項)とを組み合わせた形で種々の方式と程度のものがあり得ることが示唆されている。 実務的にはどの合否判定の方式も供給者が最終検査により合否判定を行うことを前提とするのが合理的である。合否判定の各方式と程度の間の違いは、供給者と検査項目をどう分担するか、供給者の合否判定結果をどの程度信頼するかの違いに基づく。そして供給者の合否判定結果の信頼度は、供給者と組織との業務実行能力に関する力関係、または、供給者の業務管理能力の組織による管理の方式と程度によって判断される。
 
(2) 組織又はその顧客が、供給者先で検証を実施することにした場合には、組織は、その検証の要領及び購買製品の リリース の方法を購買情報の中で明確にしなければならない。    [第2節]
  この規定は機械産業でよくある製作中の製品の顧客による検査という契約上の顧客の権利の実行に関する規定として初版(4.6.4)にあり、 94年版(4.6.4)で組織による業務委託現場(供給者)での合否判定の権利の規定が追加されたものが、全業種業態を対象とする00年版で表現が簡易化されて残ったものである。
 
  このような状況にある契約又は取引で、その製品実現業務の一部又は全体を外部委託する場合は、組織や顧客による業務委託現場(供給者)での合否判定のために必要な手はずを購買条件に含めて購買情報(7.4.2項)に明確にしなければならない。
 
 
 
H25.3.14
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サニーヒルズ コンサルタント事務所