ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
55 8.1項  測定, 分析及び改善   一般 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-55
8.1 測定, 分析及び改善  一般  
[第1節] 組織は、次の事項のために必要となる監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施しなければならない。
a) 製品要求事項への適合を実証する。
b) 品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。
c) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
[第2節] これには、統計的手法を含め、適用可能な方法、及びその使用の程度を決定することを含めなければならない。
 
 
1.要旨

  規格の各章各条項のどの業務も狙いの結果を確実に出すように効果的に行われるためには、規定に明示されているか否かを問わず業務実行を管理する必要がある。 8章は、品質マネジメントに必要な管理業務をその目的や機能で8種類の管理業務として類型化し、それぞれが効果的であるための基本的な要件を定めている。規格のどの業務も本章の類型のいずれか又は複数の管理業務の要件を満たして実行管理しなければならない。
 
  本項は、狙いの顧客満足を確実に実現させる効果的な品質マネジメントであるために必要な業務実行管理の視点を示し、それらの管理業務の手はずを整え、手はずに則ってそれぞれの管理業務を行うべきことを一般的表現で規定している。
 
  効果的な品質マネジメントでは、a)〜c)の観点から経営活動及び日常業務の実行を管理しなければならない。このための管理業務の手順には、必要な統計的手法など科学的な分析手法の適用を含めておかなければならない。
 
 
2.背景 及び 関連事項
2-1. 8章について
(1) 管理業務
  00年版では、各条項の標題は品質マネジメントシステムを構成する業務(process)を意味し、それら各業務のそれぞれとそれらの全体としての品質マネジメントの活動に プロセスアプローチ/PDCAサイクルを適用することによって、各業務で必要な狙いの結果を確実に出し、その総合結果として品質マネジメントの活動の狙いの顧客満足を確実に実現させるという論理で規格は書かれている。
 
  プロセスアプロチーチによる品質マネジメントの概念を規格は序文で、図1の『プロセスを基礎とした品質マネジメントシステムのモデル』において、経営者の責任→資源マネジメント→製品実現→測定・分析・改善というサイクルとして表わしている。このサイクルは図の標題にもあるように品質マネジメントのサイクルであり、狙いの顧客満足の確実な実現を図る概念としての品質マネジメントのサイクルである。このサイクルの各段階は4章と5章、6章、7章、及び8章に対応しており、このことから8章の各条項がプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理/Cと継続的改善/Aに相当する活動であり、実務では決められた通りの結果を出すように業務実行を管理する業務、つまり、管理業務のことを指す。
 
  規格では、各業務の狙いの結果は『品質目標』(5.4.1項)であり、その総合結果としての品質マネジメンの狙いの結果も『品質目標』であり、その指標が『顧客満足』(5.2項)である。実務では前者は業務目標であり、後者は組織の業績目標である。これら両品質目標を確実に達成するように業務実行を管理する活動は、規格では『監視、測定、分析、改善』の活動と表現される。実務では各業務目標の達成のために決められた通りに業務が行われ決められた通りの結果がでるようにする活動は日常業務管理であり、方針、目標を指針として管理者が行う業務である。組織の業績目標の達成を管理する活動は日常業務管理とは異なる周期の経営活動におけるトップマネジメント主導の業績管理の業務である。
 
  規格は、これら品質マネジメントの実行に必要な管理業務を8種類に類型化し、それぞれが効果的であるための要件を明らかにしている。すなわち、品質マネジメントの実行に必要な管理業務とは、管理/Cに相当する管理業務を『監視及び測定』と一括し、『顧客満足の監視及び測定』(8.2.1項)、『内部監査』(8.2.2項)、『プロセスの監視及び測定』(8.2.3項)、『製品の監視及び測定』(8.2.4項)、継続的改善/Aに相当する『不適合製品の管理』(8.3項)、『データ分析』(8.4項)、『是正処置』(8.5.2項)、『予防処置』(8.5.3項)に類型化できる。なお、規格はこの8類型とは別に、業績管理の効果的な実行と以降の業績目標の効果的な決定の方法論として『マネジメントレビュー』(5.6項)を5章に規定している。
 
  しかし、その必要が明示的に規定されていなくてもすべての業務には管理業務が必要であることは、品質マネジメントの手はずを整える活動ではどの業務の手はずもその狙いの業務目標を達成するものであることはもちろん、規格のプロセスアプローチを表す4.1 a)〜f)項をも満たすのでなければならないという規定(4.5.2項)から明らかである。従って、上記のように規格が標題や条文で管理業務について触れていなくても、管理業務が必要なのである。
 
(2) 8章の意義
  規格は品質マネジメントの各業務が効果的であるための要件を規定するものであり、すべての業務はプロセスアプローチ /PDCA サイクルに則って実行管理するように書かれている。
 
  8章以外でも管理業務そのものを扱った条項もある。例えば、文書の管理(4.2.2項)、記録の管理(7.2.4項)、製造及びサービス提供の管理(7.5.1項)、監視及び測定機器の管理(7.6項)は管理業務を規定していることを標題で明確にしており、マネジメント レビュー(5.6項)、購買製品の検証(7.4.3項)は必要な具体的管理業務を標題に掲げている。
 
  さらに、各条項の中で必要な具体的な管理業務を条文として明らかにしたものは少なくない。例えば、品質方針と品質目標のレビュー(5.3項)、品質マネジメントシステムの有効性に関する情報交換(5.5.3項)、教育・訓練又他の処置の有効性の評価(6.2.2項)、インフラストラクチャーの維持(6.3項)、作業環境の運営管理(6.4項)、製品のための検証、妥当性確認、監視、測定、検査及び試験活動並びに製品の合否判定基準 (7.1 c)項)、製品関連要求事項のレビュー(7.2.2項)、苦情を含む顧客からのフィードバック(7.2.3項)、設計・開発のレビュー、検証、妥当性確認(7.3項)、供給者及び購買製品に対する管理(7.4項)、製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認(7.5.2項)、製品についての一意の識別の管理(7.5.3項)、顧客所有物の識別、検証及び保護・防護(7.5.4項)、製品の要求事項への適合の維持(7.5.5項)がある。
 
  しかし、8章の『監視、測定、分析、改善』の活動として表される管理業務は、4〜7章の各条項に規定又は示唆されるこれらの管理業務とは別の新たな管理業務であるということではない。4〜7章の各条項のどの品質マネジメントの業務も狙いの顧客満足を確実に実現するように効果的であるためにはプロセスアプローチ/PDCAサイクルに則って管理業務が必要であり、4〜7章では各条項の業務の実行管理のために特有の管理業務なり、管理の要件のみが規定されている。特定の規定がないのは、その業務の実行管理が不要ということではなく、8章にその管理業務の要件が規定されているということである。規格の意図では、4〜7章の各条項の業務については、管理業務の要件が規定或いは触れられているかどうかによらず、8章の類型化された8種の内のいずれか又は複数の管理業務を適用しなければならないということである。
 
  各条項で規定され又は示唆されている管理業務が効果的であるためには、その手はずは8章の8種類の管理業務のひとつ以上のどれかに相当するはずである。それらについて規定されている要件を満たすことが必要である。例えば、製造及びサービス提供の管理(7.5.1項)の手順には、『プロセスの監視及び測定』(8.2.3項)、『製品の監視及び測定』(8.2.4項)、『不適合製品の管理』(8.3項)、『データ分析』(8.4項)、『是正処置』(8.5.2項)、『予防処置』(8.5.3項)の各管理業務が含まれていなければならない。或いは、インフラストラクチャーの維持(6.3項)の手順には『プロセスの監視及び測定』『データ分析』『是正処置』『予防処置』の手順が、教育・訓練又他の処置の有効性の評価(6.2.2項)の手順にはとりわけ『データ分析』の手順が、文書の管理(4.2.2項)の手順にはとりわけ『プロセスの監視及び測定』の手順が含まれなければならない。
 
(3) 8章の実体
  8.2〜8.5項に取上げられている8類型の管理業務はいずれも、組織の実務で広く実行されている管理業務である。00年版では、品質保証の概念を顧客満足向上にまで拡大し、すべての業種業態を対象とするように表現が改められたものであり、内容的には94年版の品質システムの各条項に相当する業務を『品質システム構成要素』から『品質マネジメントシステムの業務(プロセス)』へと呼び方を変えて、プロセスアプローチ/PDCAサイクル に沿って条項を整理し直し、表現を変えたものである。 これに伴い、94年版にあったそれぞれの管理業務は、条項標題もそのまま、又は、概念が拡げられたか汎用表現化されて、『測定、 分析及び改善』業務として 8章にまとめられた。 両版の管理業務を比較、整理すると次のようになる。
 
@ 94年版をそのまま継承
* 内部監査(8.2.2項) ← 内部品質管理(4.17項)
* 不適合製品の管理(8.3項) ← 不適合品の管理(4.13項)
* 是正処置(8.5.2項) ← 是正処置(4.14.2項)
* 予防処置(8.5.3項) ← 予防処置(4.14.3項: 条文では業務管理上の予防処置の色彩が強かった)
 
A 94年版から概念が拡大
* プロセスの監視及び測定(8.2.3項)
  94年版では『工程パラメーターと製品特性の監視と管理』(4.9 d)項)として製造工程の管理に限定されていた。
* 製品の監視及び測定(8.2.4項)
  94年版の製造業中心の『検査・試験』(4.10項)という表現となっていた。
* データ分析(8.4項)
  94年版の『統計的手法』の規定(4.20項)が、その意図を表す『データ分析』に改められた。
 
B 2000年版で追加 (経営管理活動としての品質保証活動を明確にした00年版の必要に応じて追加された)
* 顧客満足の監視及び測定(8.2.1項)
* 継続的改善(8.5.1項)
 
 
2-2. 測定、 分析及び改善
  規格では、決められた通りに業務を行い決められた結果を確実に出すための業務実行管理の活動を、『監視及び測定』『分析』『改善』の3つの段階の活動に分割している。すなわち、『監視及び測定』は物事の状態、程度に関する情報を検知する活動であり、『分析』はこの情報を基準に照らして評価し、適否又は合否を判定する活動であり、『改善』は評価判定の結果に基づいて必要な処置をとる活動のことである。
 
(1) 監視及び測定
  JIS和訳『監視』の英文は“monitoring”であり、「必要な変更が出来るように、ある物事の進展を一定の期間にわたって見張りし、調査すること」であり、 『測定』は“measurement”であり、物事の量や大きさ、程度を決めることを意味する(101)。
 
  規格には『監視』の定義はなく、『測定』を『ある量の値を決めること』と定義している#39。しかし、 “measurable”が『品質目標はその達成度が判定可能(measurable)でなければならない』(5.4.1項)と使われているから、『測定』も物理量の測定だけでなく、出来ばえ、感覚、感情など無形の物事の程度を決めることも含まれると考えられる。つまり、規格でも英語の意味そのままに、『監視』は物事の状態がどういうものかを調査することで、『測定』はその状態の程度を決めることであり、どちらも物事の状態に関する情報を検知することを意味している。
 
  規格では一般に『監視及び測定』と両者を合わせた表現で情報検知活動を表しているが、この場合の監視と測定の違いについては明確ではなく、種々の解釈がある。
 
  規格執筆者らは、どのような業務や製品にも『監視』は可能だが『測定』は必ずしも可能でない(22s)とか、監視の方が測定より得られる情報が一般に少なく監視結果がより詳細な情報の収集の必要を示すものであることがある(21ag)と説明している。この説明では『監視』と『測定』の違いは、検知する情報の性格ないし検知方法にあり、情報を人が感覚的に検知するしかない場合を『監視』、情報を何らかの指標、尺度で検知できる場合を『測定』と見做しているように推定される。
 
  TC176の定義(6)では、『測定』を『物事の大きさや量を確定又は決定すること』としながら#35、『監視』を「見張ること、監督すること、監視下におくこと」とする一方で、「とりわけ規制や管理の目的で、一定の間隔で測定又は試験すること」という意味も含ませている#34。物事の量や程度を決める『測定』の結果を用いて物事の状態を『監視』することがあるということであるから、『監視』に物事の状態の程度を継続的に調査することであり、『測定』はある時点の状態を決めることと受け止めることができる。
 
  一方、『監視』は継続的な活動であり、『測定』はそれ自身に時間を要しても一過性の活動であるとして両者の違いをはっきり述べる解説書もある(23ae)。その上で『監視』は問題が起きる前に気付いて必要な処置をとるための活動であり、『測定』は合否判定基準に照らして評価判断するために実績がどの程度かを決定することであると、その目的に違いがあると説明している。
 
  また、00年版の「監視及び測定用具の管理」の規定(7.64項)では、『測定機器(measuring equipment)』は存在しても、『監視機器(monitoring equipment)』は存在しないから、不審者の監視のためのカメラと表示装置や炉温度の連続測定記録を表示する画像装置は『測定装置』と扱われる。これは、『監視』が判断を伴う人による調査の活動であることを示唆している。
 
  規格が『監視』と『測定』が厳密に区別して意味づけているかは、規格の実際の記述においても疑問が感じられる。例えば、本項では『監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施しなければならない』と規定しながら8章の標題には『測定』だけで『監視』が含まれていない。08年版では追加されたが00年版の製品実現に関連する管理活動の規定(7.1 c)項)では『検証、妥当性確認、監視、検査及び試験活動』(7.1 c)項)と『測定』がなかった。一方、『プロセスの監視及び測定』(8.2.3項)では「プロセスの監視、及び可能なら測定のために適当な方法を適用しなければならない」と、両者を厳密に区別していることがうかがわれる。さらに、管理の手段は「監視及び測定用具」であり(7.6項)と表現され、顧客満足の情報は『監視』する(8.2.1項)だけだが製品の特性は『監視し測定しなければならない』(8.2.4項)。規格が両者を厳密に区分して意味づけしているとするなら、いい加減な条文表現が多いということになる。
 
  実務においては普通、「監視」は物事の状態の程度を継続的に見張ることであり、「測定」は物事の状態の程度を明らかにすることを意味するから、基本的に規格の用法と同じである。しかし規格とは違って「監視」は所定の通りでない状態を検出する活動であり、「監視」には物事の程度の「測定」の結果の基準に照らしての適否又は合否の評価と判定が含まれると認識されている。また、「監視」と「測定」の違いについては一般に、前者は人が主体で定性的・感覚的、また、状態の変化の継続的調査であり、後者は機器が主体で定量的、また、ある時点の状態の調査というような違いとして認識されている。
 
  しかし実務でも両用語を常に厳密に区別された意味でもって使用しているとは言えないし、実務でも規格でもその必要もないから、『監視及び測定』は特定の意図を持って情報を評価することを前提にした情報検知活動の意味の「監視測定」と捉えるのがよい。『監視』『測定』と書かれている場合は、「監視測定」「監視」「測定」のいずれかに適当に解釈するのがよい。
 
(2) 分析
  管理業務の実務では『分析』は、複雑に絡み合った物事をその成分、要素、側面に分解し、相互関係を明らかにしたり、問題の本質を明らかにすることであり、しばしば『解析』と呼ばれる。規格では、『監視』『測定』は物事の状態の程度を調査して決めることであり、これを基準に照らしてその物事の状態の適否や合否を評価し判断することが『分析』である。規格では『監視』や『測定』が情報検知の活動であり、『分析』がその情報に基づく評価、判断の活動であり、両者は引き続き行われる一体的な活動である。
 
  規格では『分析』は、実務の用語としての分析や解析とは異なる「評価と適否又は合否の判定」の意味で用いられているが、評価と判定の活動に用語『分析』が当てられているのは、評価と判定を統計的手法の使用含み、科学的な真実に基づいて科学的に行うべきことを示唆していると考えるとよい。このことは、効果的な品質マネジメントのための『品質マネジメントの原則』のひとつである『意思決定への事実に基づくアプローチ(効果的な意思決定は、データ及び情報の分析に基づいていること)』からも窺うことができる(131b)。
 
(3) 改 善
  物事が所定の通りのものであることを確実にする管理業務では、検出した情報に基づく物事の状態の適否又は合否判定によって、所定の通りであることを間違いないものとする。所定の通りでなかった場合には、所定の通りとなるような処置をとり、加えて問題の再発防止の処置をとる。規格の『改善』は、管理業務でこのような処置をとることを意味する。
 
 
3.規格要求事項の真意  #2f5efe
  プロセスアプローチを基礎として書かれている規格では、その品質マネジメントシステムは各条項の標題として表されている業務(プロセス)で構成されると考えることができる。プロセスアプローチの考え方では、これらそれぞれの各業務と品質マネジメントシステム全体にPDCAサイクルを模した、計画、履行、管理、継続的改善というサイクルを回すことにより、それぞれの業務でそれぞれの狙いの結果を確実に出し、それらの総合的な結果として組織の存続や発展に必要な顧客満足の実現という品質マネジメントの業績目標を確実に達成することができる。
 
  8章は、このプロセスアプローチ/PDCAサイクルの管理・改善/C・Aに相当する経営活動の業績管理と日常業務の業務実行の管理に必要な業務を取り上げて、それらが効果的であるための要件を規定している。これらの管理業務は、規格の他の章で規定又示唆される様々な管理業務をその目的や機能に基づいて8種類の管理業務として類型化したものである。これらの多くは94年版で特定の業務との関連で規定されていた管理業務であるが、00年版ではすべての業務に関係し得ることを明確にするような形で8章にまとめられている。8.2〜8.5項では、これら類型化された8種類の管理業務が効果的に行われるための共通で基本的な要件が規定されている。
 
  規格の各条項に関連して必要な管理業務の手はずを整え、或いは、管理業務を実行する場合には、それら管理業務によって狙いの結果を確実に出すためには、それぞれの管理業務には対応する8.2〜8.5項のいずれかの管理業務を含め、それらに関して規定されている要件を満たして手はずを整え、或いは、実行することが必要である。
 
  業務実行の管理は、決められた通りに業務が行われ決められた結果が確実に出でるようにする活動であるが、8章ではこれを『監視及び測定』『分析』『改善』の3つの段階の活動に分割している。すなわち、『監視及び測定』は物事の状態、程度に関する情報を検知する活動であり、『分析』はこの情報を基準に照らして評価し、適否又は合否を判定する活動であり、『改善』は評価判定の結果に基づいて必要な処置をとる活動のことである。
 
  顧客満足(8.2.1項)、プロセスの監視及び測定(8.2.3項)、製品の監視及び測定(8.2.4項)は『監視及び測定』の活動であり、データ分析(8.4項)は『分析』の活動であり、継続的改善(8.5.1項)、是正処置(8.5.2項)、予防処置(8.5.3項)、不適合製品の管理(8.3項)の『改善』の活動であり、また、内部監査(8.2.2項)は3つの段階すべてにわたる活動として規定されている。
 
(1) 次の事項に必要な監視、測定、分析及び改善のプロセスを計画し、実施しなければならない [第1節]
  この場合の『監視、測定、分析及び改善』とは管理業務のことを指す。組織が事業の存続発展に必要な顧客満足を確実に実現させるためには、経営活動及び日常業務の実行を管理しなければならない。組織は、品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)の一環として、これらの効果的な品質マネジメントに必要な業務実行管理の手はずを整え、それに則って業務実行を管理しなければならない。
 
  必要な業務実行管理活動とその要件は、4〜7章の各条項毎でも規定され、或いは、示唆されている。そのような規定の有無にかかわらず、品質マネジメントのどのような業務実行の手はずにも、業務が決められた通りに実行され決められた結果を出すことを確実にする業務実行管理の手はずが含まれていなければならない。このことを明確にしているのが品質マネジメントシステムの計画を行なう際の要件の規定(5.2.4 a)項)である。
 
  このような業務実行管理の手はずは、監視、測定、分析、改善の各要素業務を含んでいなければならず、これらに対応する類型の8.2〜8.5項の各管理業務のいずれかを含み、また、それらに関する基本的要件を満たした手はずでなければならない。
ただし、4〜7章の各条項の業務の手はずのすべてにそれぞれ8章の管理業務の手はずを含めなければならないということでも、8章の各条項の管理業務の手はずのすべてを独立した品質マネジメントの業務として手はずを整え、実行する必要があるということでもない。8章各条項の各規定は、独立した管理業務の要件として、又は、4〜7章の各条項の業務に関する実行管理の要件として、必要に応じて適用すればよい。
 
(2-1) 製品要求事項への適合を実証する。 [ a)項]
(2-2) 品質マネジメントシステムの適合性を確実にする。
[ b)項]
(2-3) 品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
[ c)項]
  品質マネジメントは組織の存続発展に必要な顧客満足を追求する経営管理活動であり、その実行の拠り所となるように整えられた手はずが品質マネジメントシステムである。規格の規定の品質マネジメントの実行体制では、品質マネジメントの各業務が決められた通りに実行され決められた通りの結果が出された総合的結果として、品質マネジメントの業績目標の狙いの顧客満足が実現できる。8章の業務実行管理の業務の目的は、それによって狙いの顧客満足の実現を図ることであり、品質マネジメントの業績目標の達成を管理することである。
 
  (2-1)(2-2)(2-3)の規定は、組織の存続発展に必要な顧客満足を追求する効果的な品質マネジメント活動であるためにはその業務実行管理業務に3つの観点を含めることが必要であるとしたものであると受け止めるとよい。
 
  3つの観点について規格執筆者のひとり(22v)はそれぞれの規定が、製品が決められた通りであることを示す、組織の品質マネジメントシステムが規格及び契約の品質マネジメントシステムの要件を満たしていることを確実にする、組織の品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善が行なわれるようにするということであると説明している。また、もうひとり(21al)は製品実現、顧客満足、継続的改善について述べる場合の必須の要件であると説明している。
 
  すなわち(2-1)の『製品要求事項への適合を実証する』は、組織が顧客のニーズと期待を満たすものとして定めた製品仕様たる『製品要求事項』(7.2.1項)を満たす製品であることを確実にするという意味である。組織は製品が決められた通りであることを確実にする観点からの業務実行管理の手はずを整えなければならない。実務的には品質マネジメントの日常管理業務のことである。
 
  次に『適合性』は何かの規則に則っているという意味であり、(2-2)の『品質マネジメントシステムの適合性』とは品質マネジメントの業務が狙いの顧客満足の実現を図るような何かの規則に則って実行されているかどうかと言うことである。規格の文脈から、組織の品質マネジメント実行の手はずが狙いの顧客満足の実現を確実にするためのISO9001規格に定める規則たる要件に則ったものかどうかということに受け止めることが出来る。規格に則って品質マネジメントの業務を行なうことによって必要な顧客満足を確実に実現できるから、(2-2)は狙いの顧客満足実現を確実にする管理であり、実務的には品質マネジメントの業績管理の観点からの業務実行管理のことである。管理者による日常業務管理とは異なるPDCAサイクルによりトップマネジメント主導で行われる業績管理の活動である。
 
  (2-3)の『品質マネジメントシステムの有効性』であるが、規格の定義#4で『有効性』とは「活動が計画通りに実行されて、計画した結果が達成された程度」である。品質マネジメントシステムは、組織の発展に必要な顧客満足を実現することを狙いとする品質マネジメントの実行体制であるから、「計画した結果」とは狙いの顧客満足のことである。その有効性とは品質マネジメントシステムに従って品質マネジメント活動を行なうことで狙いの顧客満足を実現できる程度のことである。
 
  規格の論理では、『品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善』は『品質方針、品質目標、監査結果、データ の分析、是正処置、予防処置、及び、マネジメント レビュー』のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しによって行なわれる(8.5.1項)である。従って(2-3)は、品質マネジメントのプロセスアプローチ/PDCAサイクルが十分に回っているかどうかの観点からの業務実行管理を指す。
 
(3)  これには、統計的手法を含め、適用可能な方法、及びその使用の程度を決定することを含めなければならない。[第2節]
日管理業務には、正しい判断や判定ができるために必要なら、統計的解析手法など科学的な手法を用いることが望ましい。この規定は、効果的な品質マネジメントのための『品質マネジメントの原則』のひとつである『意思決定への事実に基づくアプローチ(効果的な意思決定は、データ及び情報の分析に基づいていること)』(131b)を反映したものである。しかし、実態的には94年版(4.20)で効果的な品質マネジメントの要件のひとつであった統計的品質管理手法の使用が、必要性を和らげた表現で本項に残留したものである。

 
 
 
H27.2.13(改3.29:  要求事項(2-2)(2-3)解釈変更)
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サニーヒルズ コンサルタント事務所