ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
56 8.2.1項   顧客満足 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-56
8.2.1  顧客満足
[第1節] 組織は、品質マネジメントシステム の成果を含む実施状況の測定の一つとして、顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視しなければならない。
[第2節] 組織はこの情報の入手及び使用の方法を定めなければならない。
 
 
1.要旨
  本項では、品質マネジメントの実績の尺度としての狙いの顧客満足の達成度を評価し、必要な改善に結びつけるための情報の収集の必要と、その要件を規定している。
 
  組織は、顧客満足に関する業績目標として定めた組織の品質目標(5.4.1項)を確実に達成するように、その実績を管理しなければならない。管理のために必要な情報の収集と、それに基づく組織の品質目標の達成度の評価の手はずを整え、それに則って狙いの顧客満足の確実な達成を管理しなければならない。
 
 
2. 背景 及び 関連事項
2-1. 経営管理の枠組み
(1) マネジメント サイクル
 経営管理(マネジメント)は、組織の存立の目的に沿って事業を維持発展させる活動である。経営論では「組織の有する能力(資源)を状況のニーズに適応させながら組織目的を達成していく活動」と、方法論からの定義もある45a)。規格では「組織を方向づけ制御する統制された活動」であり#19、事業の維持発展の管理活動であることに焦点を当てた定義となっている。
 
  経営論では経営管理活動は、組織のあるべき姿とそこに到達するための道筋或いは方策を経営戦略として明確にし、その実現を図るべく組織の業務を方向づけ、実行を管理する活動である。時代の変化によって組織を取り巻く状況のニーズも組織の業務能力も変化するから、組織が無限持続体として存続発展するにはこれに合わせて経営戦略を見直し変更することが必要である。従って、経営管理活動は経営戦略を適宜見直し変更し、そのための業務の手はずを整え、それらの業務実行を管理することによってその戦略を遂行し、意図する業績の達成を通じて組織目的を継続的に果たすという形の循環的活動の繰り返しとみなすことができる。
 
  経営論では、このような経営戦略の実現を図る循環的活動の形の経営管理活動の方法論は、 マネジメントサイクルとして捉えられる。研究者により様々な表現があるが、例えば、計画‐リード‐統合という繰り返し活動 (45a)では、「計画」は戦略の策定と目標、方針、計画としての明確化、「リード」は目標、方針、計画の達成の手はずを整える管理、「統合」は達成に向けての業務の実行管理にそれぞれ関係する。この繰り返し活動には、統合と次のサイクルの計画との間にそのサイクルの経営管理活動の成果としての目的達成度の評価と次のサイクルへの反映という経営の意思決定が含まれる。このマネジメントサイクルに基づいて、経営管理活動が計画から始まり、指揮(及び組織化、調整、動機づけ等)を経て統制に至り、統制結果がフィードバックされて再び計画が始まるという循環的過程であるという説明 (54)がなされることもある。この説明ではリードが指揮、統合は統制とそれぞれ表現されている。
 
  規格では、このマネジメントサイクルをプロセスアプローチ/PDCAサイクルの計画/P‐履行/D‐管理/C‐継続的改善/Aの形で表現している。計画/Pは品質方針、目標の策定(5.3項)と品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)であり、履行/Dは整えた手はずに則って各業務が実行され、定められた通りの業務結果が出るように管理する活動であり、7章(製品実現)はこの管理基準を示している。管理/Cは顧客満足の監視測定(8.2.1項)とデータ分析(8.4 a)項)であり、継続的改善/Aはマネジメントレビュー(5.6項)による業績評価と品質方針、目標の見直し変更である。
 
  すなわち、経営論では、経営戦略は組織が置かれた環境と組織の有している能力を勘案して、実現の可能性と実現により得られる利益や効用の大きさとが釣り合う最適解として決められ、経営方針、経営目標として明確にされる。この経営方針、経営目標の一部としてのどのような顧客満足の姿、状態や程度を目指し、実現を図るのかを示す方針、目標が規格の品質方針、品質目標((5.3項)である。
 
  この戦略の実現を図るよう業務実行の手順を決め、資源を用意して経営管理体制を確立することを、戦略の決定と合わせて、経営管理を計画すると表現される。規格では、経営管理体制をマネジメントシステムと呼び、計画は、品質目標を達成できるように関連する業務の手はずを整えるという意味での品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)と呼ぶ。プロセスアプローチ/PDCAサイクルではここまでが計画/Pである。
 
  管理者の担う日常的管理業務は、各業務が計画に則って行われ、計画で定められた通りの業務結果が出るよう管理することである。これは、経営論ではリード・統合(45a)、或いは、執行(指揮)・統制(54)である。規格ではこの管理の基準が、製品実現(7章)に規定される手はずである。これはプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは履行/Dである。
 
  経営管理活動の成果とは、マネジメントサイクルでは組織目的の達成度であり、実務的には実現した業績を経営目標として定められた業績目標と比較して評価した結果の目標達成度で表される。規格の品質マネジメントの業績とは、実現した顧客満足の状態又は程度のことであり、その評価方法が顧客満足の監視測定(8.2.1項)とデータ分析(8.4 a)項)として規定される。この実現した顧客満足を品質方針、目標に表す業績目標としての狙いの顧客満足と比較することにより、品質マネジメントの業績評価を行なう。これはプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは管理/Cである。
 
  この業績は変化する事業環境と組織の能力の評価に基づく経営戦略の見直しの基準となる。規格では、この経営戦略の見直し変更は品質方針、目標の見直し変更であり、これを行なう活動としてマネジメントレビュー(5.6項)を規定している。これはプロセスアプローチ/PDCAサイクルでは継続的改善/Aである。
 
(2) 業績評価
  経営管理活動の成果を組織目的の達成度で評価するという考え方は、組織がある目的達成のために誕生し、その目的を達成するために存続しているからである。実際の経営管理活動では、組織目的に合致すると考えられる特定期間又は時点での組織のあるべき姿を具体的な業績目標に展開して表し、日常業務の実行、管理を通じてそれらの達成を図る。このような業績評価とは、必要と考えた組織のあるべき姿が実現したかどうかの評価であり、厳密には組織目的が達成したかどうかという組織目的の達成度評価ではない。
 
 例えば収益マネジメントでは、目標の収益があがったとしてもそれが投資家や株式市場の評価に耐えなければ、組織目的に沿っての存続発展が危ぶまれることにもなる。品質マネジメントでは、狙いの通り供給者評価で首位になったとしても、顧客の期待はそんなところにはなかったとすると取引量が減らされることにもなりかねない。
 
  すなわち、組織の存続発展のためには組織目的と合致する業績目標の達成が必要であり、組織目的の達成に繋がる経営戦略を策定しなければならない。規格は、このことを「トップマネジメントは品質方針が組織の目的に対して適切であることを確実にしなければならない」として明確にしている(5.3 a)項)。
 
(3) 組織の業績
  事業組織の実務では事業活動の最終的業績は収益で表される。近年、組織の活動を収益という財務業績だけで評価するのではなく、その経済的側面、社会的側面、環境的側面の3つの側面で評価するという トリプリボトムライン の考え方が拡がっているが、この場合でも経済的側面たる収益あっての他の2つの側面の業績というのが現実である。
 
  組織が存続発展を続けるには資源の投入が必要であり、その原資となる収益を得ることが不可欠である。一般に組織は収益体質としての長期的な収益目標と共に、年度毎に必要な収益目標を設定し、収益実績動向を監視し、年度末に決算を行って組織の最終的業績としての収益実績をとりまとめる。
 
  しかし、収益というものが直接手に入るというのではなく、組織の様々な活動の成果の総合的な成果が収益となる。単純には収益は売上と費用の差であり、売上と費用にも様々な事業活動の要素が関係している。例えば製造業では、売上は顧客の組織と製品に対する信頼感の醸成を図る活動、必要な生産能力を維持開発する活動、売上目標の達成を図る活動、受注製品を納期通りにつくり顧客に引き渡す活動等々の活動の総合的な成果であり、費用も様々な経費のそれぞれに関係する活動の総合的な合計額として算出される。
 
  従って、組織の経営管理活動は種々の観点、多くは主要な機能別の観点に細分して、それぞれに業績目標を設定し達成を図るという機能別或いは分野別経営管理の総合的な結果として最終的な業績としての必要な収益目標を達成するという体制がとられている。品質マネジメントは、品質保証・顧客満足を追求し或いは必要な顧客満足の状態を実現維持するという観点の経営管理活動であり、組織が必要な売上をあげることの前提となる組織と製品に対する顧客の信頼感や満足感の醸成維持を図ることが目的であり、この実現を通じて組織の最終業績たる収益の達成に貢献する。
 
  因みにISOマネジメントシステム規格のひとつとして標準化されている環境マネジメント、情報セキュリティマネジメントはそれぞれ、組織の環境責任を果たすこと、情報漏洩を防止することにより必要な売上の達成の基盤を整え、不祥事による不要な費用の発生を防止して費用目標の達成に寄与することが目的の分野別経営管理の活動である。
 
2-2. 顧客満足
(1) 顧客要求事項
  JIS和訳『要求事項』の英文の“requirement”は、必要とする又は望むもの、或いは、必要とされる又は望まれるものの意味であり、事業用語としては必要事項、必要条件、要件、条件である$1。『顧客要求事項』は“customer requirement”であり、一方、規格の定義では“requirement”は『ニーズ若しくは期待』である#18から、『顧客要求事項』は供給者としての組織が満たすべき『顧客のニーズや期待』という意味になる。また、指針規格(131a)は『顧客要求事項』について、「顧客はそのニーズと期待を満たす特性の製品を必要としている。これらニーズと期待は、製品仕様の形で表わされ、まとめて顧客要求事項 と呼ばれる」と説明している。従って、規格の意図の『顧客要求事項』は、顧客の製品の機能や性能に対する想いである『顧客のニーズや期待』を組織が満たすべき製品に関する必要条件として表したものである。規格では、『製品要求事項』が製品の仕様や品質に関する必要条件を意味し、『顧客要求事項』はその元となるべき製品に関する『顧客のニーズと期待』と考えるのがよい。
 
(2) 顧客満足の意義
  規格の『顧客満足』とは、不良品を出さないことを含み、顧客に製品及びサービスを買ってもらう又は取引を続けてもらうために顧客に抱いてもらう必要がある組織と製品に対する好感、満足感、安心感、信頼感の状態や程度のことである。組織の事業の存続発展は、製品を顧客が買い続け又は取引を続けてくれるかどうかにかかっている。買ってくれるかどうかは顧客が組織と製品を気に入ってくれるかどうかで決まり、この気に入ってくれる程度が顧客満足度であり、規格の『顧客満足』である。
 
  気に入るかどうかは、製品の機能や性能やその品質が自分の想いのニーズや期待にどの程度合致したと顧客が感じたかで決まり、製品が自分の想いに合致したかどうかの顧客の判断は一般に科学的、論理的というより多分に感覚的、情緒的である。これがマーケティング論における顧客満足の概念である。規格は、このような概念の顧客満足度である『顧客満足』を『顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方』と定義している#17。 ここに『顧客の要求事項$1-2-3』は『顧客要求事項$1-2-2』と実質的に同じ意味で、組織の製品に対する『顧客のニーズと期待』を指す。規格の意図の『顧客満足』とは、組織の製品がどのような顧客の想いのニーズや期待をどのようにどの程度まで満たすものであったかであり、これを顧客がどう感じたかである。
 
 組織の製品が自分の想いに合致し、或いは、超えたと顧客が感じるほど顧客の満足感が高く、その反対では顧客の満足感は低く、或いは、不満を抱く。顧客が一定の満足感を感じることができなければ次回には製品を買ってもらえない、あるいは、供給者の地位を失う。組織が、所要の販売量を達成し、又は、供給者として所要の地歩を固めることができているのは、その製品が、或いは、供給者としての組織の仕事振りが顧客に一定以上の評価を受けていること、つまり、顧客を引き止めるために必要な程度の顧客満足の状態や程度が実現しているからである。
 
  顧客満足とは本質的に顧客が製品を買い続ける或いは取引を継続するかどうかの顧客の判断に係わる状況のことであり、それは製品が顧客想いのニーズと期待を満たしているかどうかの顧客の判断による。顧客に買い続けてもらい或いは顧客との取引を継続し発展させるためには、顧客の想いの製品に係わるニーズと期待たる『顧客要求事項』を正しく推定、把握して (7.2.1項)、これを満たす製品仕様と品質の製品(7.1 a)項)を確実に顧客に引渡すことが必要である。
 
(3) 品質マネジメントの業績としての顧客満足
  品質マネジメントは組織の経営管理活動のひとつの側面或いは一部として、組織の維持発展に必要な顧客満足を追求する活動である。特定期間の収益目標として表される組織の業績目標を達成するのに必要な特定期間で実現を図るべき狙いの顧客満足は、規格では品質方針、品質目標(5.3項)に表される。この特定期間の品質マネジメント活動の成果たる品質マネジメントの業績は、実際に実現した顧客満足の状態や程度のことである。業績評価とは、この実現した顧客満足を業績目標として品質方針、品質目標(5.3項)に定めた狙い顧客満足と比較して、その達成度を評価し、判定することである。規格はこのことを顧客満足の監視、測定、分析と呼ぶ。
 
  実務の経営管理活動の成果としての業績の評価は、特定期間又は時点での業績目標を確実に実現させるための業績管理の手段として行い、また、特定期間又は時点の業績を確定するために行う。実務的には、前者は日常業務管理の一環としての業績目標達成状況の推定、或いは、達成度予測のためであり、問題があれば正す処置をとる。後者は定められた特定期間での業績目標の達成度の確定のための評価であり、この結果とそれに伴う業務実行能力の評価は次の特定期間の業績目標の決定の際の基礎となる。
 
  規格の品質マネジメントでは、前者の日常業務管理は組織の品質方針、品質目標(5.3項)の達成を図るための核となる業務とその狙いの結果を業務目標としての品質目標(5.4.1項)として決めて、それらの達成を図る活動であり、後者の業績目標を確定し次の特定期間の業績目標の決定に反映する活動は、マネジメントレビュー(5.6項)である。
 
(4) 顧客満足の管理
  経営戦略を基礎として組織の永続的な存続発展を図る経営管理(マネジメント)活動は、その方法論から経営戦略策定の管理と経営戦略遂行の管理の2種類の循環的活動から成ると考えることができる。前者は戦略を策定し、時代の変化に応じて見直しを行って、戦略を常に組織の存続発展に必要で十分な適切な状態に維持する経営戦略の管理であり、後者は戦略の遂行のために必要な資源を投入し、業務を方向づけ、決められた通りに業務が実行され決められた通りの結果が出されることを確実にする日常業務管理を通じて、品質方針、目標(5.3項)に表した狙いの顧客満足の実現を図る業績管理である。
 
  規格の品質マネジメントは、組織の存続発展のために必要な顧客満足の実現を図る活動である。品質マネジメントにおける顧客満足の管理には、組織の存続発展に必要な顧客満足の状態や程度を正しく決める管理と、その顧客満足を日常業務の実行を通じて確実に実現する管理とがある。規格では前者は、品質方針、目標の策定(5.3項)と品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)、顧客満足の監視測定(8.2.1項)とデータ分析(8.4 a)項)、マネジメントレビュー(5.6項)の品質マネジメントの循環的活動であり、後者は、品質方針、目標(5.3項)を反映した製品に関連する必要条件の明確化(7.2.1項)、製品実現の計画(7.1項)に始まる7章の一連の業務、プロセスの監視及び測定(8.2.3項)、製品の監視及び測定(8.2.4項)、データ分析(8.4項)、不適合製品の管理(8.3項)、是正・予防処置(8.5.2, 8.5.3項)という日常管理業務の循環的活動である。後者の狙いの顧客満足の実現を図る業績管理は、品質方針、品質目標(5.3項)の達成管理の活動であるということもできる。
 
 
3.規格要求事項の真意  
  『顧客要求事項』は、用語の意味$1-2-2や指針規格の説明(131a)から、顧客の製品の機能や性能に対する想いである「顧客のニーズや期待」を組織が満たすべき製品に関する必要条件として表したものであり、簡単には製品に関する顧客のニーズと期待のことである。『顧客満足』とは定義#17から、組織の製品がどの程度まで顧客のニーズと期待を満たすものであるかであり、それを顧客がどう感じたかである。実務的には、顧客が組織から製品を買い続けるのか或いは取引を継続するのかどうかの判断に関係する組織と製品に対する好感、満足感、安心感、信頼感に係わる顧客の想いのことである。
 
  規格の品質マネジメントでは、組織の存続発展のために必要な顧客満足のあり方を品質方針、品質目標(5.3項) に明確にし、受注又は契約した個々の製品の顧客のニーズと期待を引き出し推定し把握し、品質目標の狙いの顧客満足の実現に資するように製品としての必要条件を明らかにし (7.2.1項)、これを反映して具体的な製品仕様と品質及び付帯仕様を決め(7.1 a)項)、この通りの製品をつくり、顧客に引渡すよう日常業務の実行を管理し、この日常管理業務を基礎として品質目標に定めた狙いの顧客満足の状態や程度が確実に実現するように管理する。 狙いの顧客満足を表す品質方針、品質目標(5.3項)は品質マネジメントの業績目標であり、品質方針、品質目標(5.3項)の達成を図る活動は品質マネジメントの業績管理の活動である。
 
  本項と業績管理及び経営戦略の管理、組織の狙いの顧客満足が実現したかどうかを評価し判定する活動に関する規定である。規格はこの評価判定の活動を、実現した顧客満足の状態や程度を表す情報の収集と評価(本項)と、狙いの顧客満足を達成したかどうかの分析と判断(8.4 a)項)の2種類の活動に分けて、それぞれが効果的であるための要件を規定している。について規定されている。
 
 規格は8.4項で データ分析の目的を、『品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証する』ことと『品質マネジメントの有効性の継続的な改善の可能性を評価する』ことと明確にしている。このデータ分析ための情報の取得と評価の規定が本項であるから、取得及び評価すべき情報もこの2種類であると考えなければならない。すなわち本項の意図の狙いの顧客満足を実現したかどうかに関係する情報について言えば、前者は業績目標の確実な達成を図る業績管理のための情報であり、後者は変化しつつある事業環境に応じた業績目標の変更という経営戦略の見直し(5.6.1項)のための情報である。
 
  組織は、品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)の一環として、品質マネジメントの業績管理及び経営戦略の管理のために必要な組織が必要な顧客満足を実現したかに関する情報に関する下記(1)〜(2) 手はずを整えなければならない。この手はずとデータ分析(8.4項)の手はずに則って業績管理を行い、また、分析結果の情報を経営戦略の管理のためのマネジメント レビュー(5.6.2項)に供しなければならない。これら手はずにはトップマネジメント自身の管理が含まれていなければならない(5.2項)。
 
(1) 品質マネジメントシステム の成果を含む実施状況の測定の一つとして、顧客要求事項を満足しているかどうかに関して 顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視しなければならない   [第1節]
  英文では『成果を含む実施状況』は“performance”、『測定』は“measurement”であり、この場合の規格の意図を表す適切な日本語はそれぞれ「実績」「尺度」である。JIS和訳の『品質マネジメントシステム の成果を含む実施状況の測定の一つとして』は「品質マネジメントシステムの実績の尺度のひとつとして」と和訳されるべきである$31-2。なお、この「品質マネジメントシステムの実績」とは実務的には「品質マネジメントの業績」のことである。
 
  『顧客要求事項を満足しているかどうかに関して 顧客がどのように受けとめているか』は、英文はもっと簡素で「組織が顧客要求事項$1-2-2を満たしたかどうかに関する顧客の受けとめ方」である$62。 これは『顧客満足』の定義#17の「顧客の顧客要求事$1-2-3が満たされた程度に関する顧客の受けとめ」に照らすと、組織が顧客から見ての顧客満足を実現したかどうかということである。
 
  『監視する』は、8.2項標題の情報検知と評価を意味する『監視及び測定』と同じことであるが、「監視する」の一般的な意味での「物事の状態の程度を継続的に見張る」という点を重視して受け止めるのが良い。『情報を監視する』とは必要な情報を定期的或いは継続的に取得し、内容を評価することである。『についての情報』は英文では「に関係する情報」である。
 
  従って、条文は「品質マネジメントの業績の尺度のひとつとして、組織が顧客から見ての顧客満足を実現したかどうかに関係する情報を取得し評価しなければならない」という意味である。
 
  「品質マネジメントの業績の尺度のひとつとして」ということから、本項の意図の顧客満足が個々の製品が顧客に気に入られたかどうかではなく、品質マネジメントの業績としての顧客満足の実現の状態、程度であり、これが品質方針、品質目標(5.3項)に定めた狙いの顧客満足と比較してどうかという意味の顧客満足であることが明白である。
 
  組織は、品質マネジメントの計画(5.4.2項)の一環として、効果的な業績管理のために狙いの顧客満足を実現したかどうかに関係する情報を取得し評価する手はずを整え、それに則って情報を取得し評価しなければならない。評価に基づいて業績目標が確実に達成するよう日常業務の実行を管理し、また、組織の存続発展のために狙いの顧客満足を見直し、適切に変更する経営判断を行わなければならない(5.6項)。
 
(2) この情報の入手及び使用の方法を定めなければならない。   [第2節]
  『この情報』は、狙いの顧客満足が実現したかどうかに関係する情報を指す。とりわけ経営基本方針、目標としての品質方針、目標(5.3項)に表される狙いの顧客満足は概念的、抽象的であることが多いが、実際の業績管理ではこれらの顧客満足に関連する指標、例えば、苦情発生率、補償要求受付実績、顧客発表の月間供給者品質成績、製品の性能水準実績、逸注実績分析、納期達成実績、新商品売上実績などのデータが用いられている。
 
  上記(1)の情報を取得し評価する手はずには、どのような情報をどのように入手し又は収集し、どのように評価するのかの手順が含まれていなければならない。どのように『使用』するかとは、毎日/毎週/毎月、集計/分析、一覧/図示、処置/報告など情報をどのようにして管理に使用するのかという意味と考えてよい。
 
  これには、販売店や代理店からの定期情報入手、或いは、定期的会合を持つこと、輸送や点検作業など顧客との接点業務を外注している場合は、それら供給者との間で顧客満足関連情報の入手と報告の手順を合意しておくこと(7.4.2項)も含む。随時の市場調査、顧客満足度調査、或いは、製品使用状況調査、定期点検活動があり、この他、業界団体や学会への参画、セミナー参加などの各種情報収集活動などがある。
 
  また、製品の顧客満足の実績に加えて、一般には次のような観点での事業環境の変化を注視することが大切である。
@ 製品のニーズや期待に関係する顧客の動向
A 競合組織や市場、社会の動向
B 製品に関連する技術開発の動向
C 製品や製品実現業務に関係する法規制、規格化の動向
 
 
 
H27.2.13
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サニーヒルズ コンサルタント事務所