ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
62 8.5.1項   継続的改善 実務の視点による
ISO9001:2000の解説(新版) 
35-02-62
8.5.1 継続的改善
組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データ の分析、是正処置、予防処置、及び、マネジメント レビュー を通じて、品質マネジメントシステム の有効性を継続的に改善しなければならない。
 
 
1.要旨
  本項は、品質マネジメントの業績を継続して向上させていくための方法論を規定している。
  
 組織が顧客満足の追求を基礎として永続的に存続し発展し続けるには、あるべき顧客満足の状態を品質方針に明確にし、その確実な実現を図るプロセスアプローチ/PDCAサイクルに則った品質マネジメントの活動を繰り返すことが必要であり、これを通じて品質マネジメントシステムを改善し、必要な顧客満足を確実に実現させる品質マネジメントの業務能力を継続的に強化していかなければならない。
 
 
2. 継続的改善 (背景及び関連事項)  
(1) 改善
  規格は、各業務が決められた通りに行なわれ、決められた通りの結果が出ることを確実にする業務実行管理の活動を、情報の検知の意味の『監視及び測定』と情報の評価と適否又は合否の判定の意味の『分析』と、業務実行又は業務結果が決められた通りではないとして見出された問題に係わる業務実行の手はずを正すことを意味する『改善』の3つの段階に分割している(8.1項)。プロセスアプローチ/PDCAサイクルでは、前二者は管理/Cであり、最後の『改善』は継続的改善/Aである。すなわち、規格の『改善』とは基本的に業務実行管理活動で検出された決められた通りでない業務実行又は業務結果に関してそのような問題を起こさないように業務実行の手はずを変更することを意味する。
 
  規格は、問題を起こさないように業務実行の手はずを変更に係わる処置を、問題が起きてからその再発のないように正す『是正処置』と問題を予見して起こさないようにする『予防処置』の2種類に分けている。また、規格は見出された問題の状態を正す処置を『修正』と呼んでいるが、これは改善の処置には当たらない。規格では、「処置をとる、処置を決める」等の規定が随所にあるが、これら内の問題を起こさないためことを意図して記述された処置は『是正処置』と『予防処置』のいずれかである。これら処理によって当該の決められた通りではない業務実行又は結果が以降は見出されることはなくなるから、その処置は改善の処置であり、従って規格ではその処置をとることを『改善』の活動とみなす。
 
  また、指針規格(132q)では継続的改善の実行の方式として、日常業務の中でそれぞれの問題対応に責任を有する者によって行なわれる改善活動と、特定の現状を上回る目標を達成するために特別な実行計画の下に行なわれる改善活動との2種類の方式があるとしている。 前者は日常業務管理の中で発生した決められた通りでない業務実行や業務と結果を正す『改善』の活動であり、後者はマネジメントレビューの結果(5.6.3項)で見直し変更された品質方針或いは決められた年度品質方針や決められた経営施策としての処置に、特別な要員と体制で取り組まれる活動や、責任者や日程等を実行計画書に明確して取り組まれる活動である。通常、改善活動と言われるのは後者の活動であるが、規格では日常業務管理も改善の活動である。
 
(2) 品質マネジメントシステムの有効性の改善
  規格の『継続的改善』は「必要を満たす能力を高める反復的活動」と定義される#38。この『必要を満たす能力』が決められた通りに業務を行い決められた通りの結果を出す能力であるとすれば、『継続的改善』とは上記(1)の『改善』を繰り返し行なうことを意味し、この「繰り返し」は、種々の改善が日々に行なわれるというような意味になる。
 
  しかし、規格の規定では継続的改善が必要なのは品質マネジメントシステムの有効性である。規格では『有効性』とは「活動が計画通りに実行されて、計画した結果が達成された程度」である#4。ここに『計画』とは業務実行の手はずを整えることを意味する$28。品質マネジメントシステムは、組織の発展に必要な顧客満足を一貫して実現させることを狙いとする品質マネジメントの業務の体系、或いは、品質マネジメントの実行体制であるから、その有効性とは品質マネジメントのすべての業務が整えられた手はずの通りに実行されて、それらの総合的結果として狙いの顧客満足がどの程度実現したかということである。『品質マネジメントシステムの有効性』とは、それに基づく品質マネジメントによって必要な狙いの顧客満足を実現できるかどうかであり、品質マネジメントシステムの質の高さ或いはその結果としての品質マネジメントの業務能力の高さを意味する。
 
  規格の論理では、品質マネジメントシステムの継続的改善は『品質方針、品質目標、監査結果、データ の分析、是正処置、予防処置、及び、マネジメント レビュー』のプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しによって行なわれる(8.5.1項)である。品質マネジメント のプロセスアプローチ/PDCAサイクルを表したのが図1 (0.2項)であるが、これによるとプロセスアプローチ/PDCAサイクルの繰り返しによって品質マネジメントシステムの継続的改善がもたらされる。すなわち、品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善は、品質マネジメントを規格の規定する要件(要求事項)に従い、PDCA/プロセスアプローチ のサイクルに則って行なうことそのものでもある。
 
  トップマネジメントが決めた事業維持発展に必要な顧客満足の在り方は品質方針に定められる。 品質マネジメントの諸業務はこの実現を図るように実行される。品質方針が適切であれば、品質マネジメントシステムの有効性とは、品質マネジメント の諸業務が、どの程度に品質マネジメントシステムの計画(5.4.2項)の通り実行されたか、それによってどの程度に狙いの顧客満足を実現できたかである。 品質方針が真の顧客のニーズと期待に対応するものでなければ、所定の通りに業務が実行されて狙いの顧客満足を実現したとしても、製品は顧客に受け入れられず、従って、事業目標を達成できない。 顧客のニーズと期待を読み取る業務能力の良否も品質マネジメントシステムの有効性の要素である。 品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善の活動によって組織は、「顧客要求事項や適用される規制要求事項を満足させる製品を一貫して提供する能力」を確保し続けることができる(22u)
 
  品質マネジメントシステム は、必要な顧客満足の実現に「適当、十分、有効」でなければならない (5.6.1項)のに、「継続的改善」は有効性だけについて必要であるかの表現がとられている。 この違いは基本的には規格の条文表記の不統一の問題と受けとめるのがよい。 また、「適当」「十分」という観点が、つまるところは結果が有効かどうかで評価されるものであり、3つの観点が「有効性」に集約されると考えてもよい。
 
  また、組織の事業の維持発展のための経営管理(マネジメント)の一環としての品質マネジメントであるから、効率性も無視できない。 しかし、規格は、狙いの顧客満足の実現に必要な業務要件だけを示すものであり、組織がそれら要件を満たすに当たっては、業務の効率性を含む費用対効果の観点が織り込まれることが当然であるとする考えで書かれている。 継続的改善に関して効率性が触れられていないのはこれが理由であり、実務において効率を考慮しないことは規格の意図に反する。
 
 
3.規格要求事項の真意  
組織は、品質方針、品質目標、監査結果、データ の分析、是正処置、予防処置、及び、マネジメント レビュー を通じて、品質マネジメントシステム の有効性を継続的に改善しなければならない。
   組織は、事業維持発展のために必要な顧客満足を一貫して実現するために、品質マネジメント の業務能力を継続的に向上させること、すなわち、品質マネジメントシステム の有効性を継続的に改善することが必要である(4.1項)。 この継続的改善は、品質マネジメント の諸業務を規格要求事項に則って行なうことによって、とりわけ、品質方針、品質目標、内部監査、データ の分析、是正処置、予防処置、及び、マネジメント レビュー の各業務を相互に関連をもたせて実行することによって、達成を図らなければならない。
 
  規格は、各章に規定されるプロセス 間の繋がりを表すものとして、「プロセス を基礎とした品質マネジメントシステムのモデル」という図1(0.2項)を掲示している。 ここでは「経営者の責任(5章)-資源マネジメント*(6章)-製品実現(7章)-測定、分析及び改善(8章)」という マネジメント の サイクル を表示し、この サイクル から飛び出す「品質マネジメントシステムの継続的改善」を描いている。 これを プロセスアプローチ では、計画-実施-管理-継続的改善のサイクル に準えている。 規格の要求事項に従って品質マネジメント の業務の手はずを整え、効果的に実行するということは、とりもなおさず、この継続的改善のマネジメントのサイクルを廻すことである。
   
  ここに、品質方針(5.3項)、品質目標(5.4..1項)の確立は、品質マネジメントの諸業務を改善の必要を含んで方向づけ、狙いを定めることを意味する。 内部監査(8.2.2項)はそれら諸業務が定められた通りに効果的な実行されていることを確認することを意味し、データ 分析(8.4項)は内部監査の結果を含む種々の情報から問題を抽出し、問題解決のための改善策を見出すことであり、その改善策が是正処置(8.5.2項)と予防処置(8.5.3項)である。 そして、業務実行の結果と問題点と変化する事業環境に鑑みて、事業維持発展に必要な業務実行と用いる資源、及び、製品の改善について決定を行なうことが マネジメント レビュー(5.6項)の役割である。 品質マネジメント は、この マネジメント レビュー を経て、新たな サイクル に入る。 このマネジメントのサイクルを廻すことが「有効性の継続的改善」である。 規格において改善の具体的な対象は、業務手順、製品仕様、資源である(5.6.3項)。
 
 
 
H27.3.29
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サニーヒルズ コンサルタント事務所