ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
47   改善活動の結果、著しい環境側面が無くなった!  <36-01-47>
  日本ではISO14001の環境マネジメントシステムは、組織の自主的な環境改善運動の仕組みである。この運動では、組織に起因する環境影響を独自の評価、判断基準によって『著しい』環境影響を発生させる『著しい』環境側面を決定し、その『著しい』環境影響の改善の目標を環境目的・目標として設定し、実施計画によって達成に取り組む。『著しい』環境影響とは、発生する環境影響が重大とか深刻であるという意味に受けとめられており、『著しい』かどうかは一般には、環境影響の発生の可能性と発生した場合の結果の重大性の観点から評価、判断されている。
 
  このような環境改善運動を着実に進める組織では、ISO14001認証取得後しばらく経つと、改善に取り組むべき『著しい環境影響』がなくなってしまうことが多い。環境改善運動の種切れというような言い方がされることもある。こんな場合は審査員から、『著しい』環境影響の評価判断基準を厳しくなるように見直し、新たな『著しい』環境影響、『著しい』環境側面を取り上げて、その改善に取組むよう指導される。紙・ゴミ・電気の改善運動だからこうなるのであり、とりわけ円熟した環境マネジメントシステムでは本業の環境影響に取り組む必要があり、まだまだ『著しい』環境影響はあるし、種切れなんてとんでもないと説教もされる。
 
  しかし、『著しい』はJISの誤訳であり、原文は“significant”であり、「重要な」という意味である。『著しい』環境影響とは、組織が経営(マネジメント)の課題として取組まなければならないという意味で「重要な」環境影響のことである。重要であるのは、一般にはその環境影響が重大とか深刻であるからであろうが、なぜ重大、深刻と判断するかと言えば、何も対策をうたずに放置した場合に組織の事業の維持発展に支障を来す可能性があるからというのが本質である。規格の手引きではこれを、環境問題、法規制と利害関係者の関心の観点から判断すべきと説明している(A.3.1項)。『著しい』環境影響とは、組織の事業と製品に固有の環境影響であり、『著しい』かどうかの判断はひと言で言えば、各環境影響の重大、深刻さの水準に関する利害関係者の必要と期待の強さに基づき、経営がこれに適切に取組まなければ事業の維持発展に支障を来す恐れがある環境影響のことである。
 
  経営上重要であるから『著しい』環境側面なのであり、今の時点で現実に重大、深刻な環境影響を発生させている場合を『著しい』環境側面と呼ぶのではない。そんな重大な深刻な『著しい』環境影響を発生させていたのでは、利害関係者の不興を買って、事業に悪影響が出ているはずである。例えば、公害訴訟を起こされ、法規制違反で摘発され、製品の売れ行きが落ち、株の値段が下がり、銀行も融資を渋り兼ねない。そうでないのは、こうなってはいけないから、こうならない程度に重要な環境影響の重大、深刻さを抑止、管理しているからである。即ち、例えば、排ガス集塵、廃水浄化、廃棄物処理、省電力、防音等諸設備を稼動させ、環境にやさしい技術や作業方法を適用し、製品のエコ化を進め、法規制を順守し、防災対策をとっている。ISO14001は基本的に、組織起因の環境影響を利害関係者にとって重大或いは深刻なものとならないよう管理することが狙いである。
 
改善活動で環境影響が軽減しても『著しい』環境影響であることには変わりはない。例え環境改善が最新の技術で高額の投資で大規模に行なわれ、検知できない程度にまで環境影響が軽減したとしても、その環境影響の本質的原因が除去されない限りは『著しい』環境影響が存在することに変わりはない。組織は以降も投資結果を維持し管理すること続けなければならない。ISO14001ではこれは4.4.6項の問題である。活動や製品の種類や性格が変化しない限りは、『著しい』環境影響が『著しくない』ことに変化することはないのである。
 
  環境改善が進むと利害関係者の期待もまた強まるから、これまでの程度の環境影響では満足できなくなり、これまでは問題にしていなかった程度の環境影響にも関心を持つようになる。組織は、このような変化を的確に察知して、管理する環境影響の幅を拡げ、程度を上げていかなければならない。これは規格の論理では、『著しい』環境影響の評価判断基準を厳しくしたり、『著しくなかった』環境影響が『著しい』環境影響に変わったということではない。その環境影響が組織に固有の環境影響である限りは、そして、利害関係者の関心があるという限りは、規格の論理では元々『著しい』環境影響であったのである。年月を経たからといって事業や製品に固有の環境影響が重大、深刻になることはない。変わるのは利害関係者の必要と期待の程度である。組織はその『著しい』環境影響の低減や管理を一層強めなければならなくなったということである。規格では、これは4.3.3項の問題である。
 
  規格が、組織の環境影響や環境側面に関する情報を最新のものにしておくよう規定している(4.3.1項)のは、事業活動の進展に伴って、事業に起因する環境影響や環境側面に変化が生じる可能性があるからである。特定の事業所の設置や廃止、特定の設備や技術の全面的、本質的な変更、特定の製品分野への進出や撤退などの場合である。このような変化を規格では「組織の活動、製品及びサービスの性質、規模及び環境影響」の変化と定義している(4.2 a)項)。このような変化によって『著しい』環境影響に変化があれば、どのような環境影響にどのように対応するのかの経営の戦略ないし基本的考え方を記述する環境方針を見直す必要がある。『著しい』環境影響に変化が起きるのは、このような事業活動の本質的な変化の場合である。日常的に変化するのは『著しい』環境影響の実際の発生状況、つまり、環境影響の現実の重大さ、深刻さであり、規格ではこれは『環境パフォーマンス』である(4.5.1項)。
H22.8.3 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所