ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
50  品質目標と環境目標が同じ  −形骸化の果てに
 <36-01-50>
   日本でISO9001とISO14001の両方の規格で認証取得している組織が少なくない。近年は、このような組織で、品質目標と環境目標とが同じであるということが珍しくなくなったといわれる。例えば、組織内での製品不良を減らすことが品質目標であり、環境目標でもあるという場合である。日本では、ISO9001は品質、ISO14001は環境を対象とした、「マネジメントシステム」という方式の現場中心で全員参加の改善運動と受けとめられている。品質改善は半ば永遠のテーマであっても、環境改善となると紙・ゴミ・電気で一応の改善を達成すると目標がなくなってしまう。この結果が、製品不良の減少を、廃棄物やエネルギー使用量の減少になるという理屈で環境目標に掲げるという状況をもたらしている。これは両規格の意図ではなく、規格と認証制度の価値の低下を加速する以外の何ものでもない。
 
  ISO9001は顧客満足ないし品質保証の規格である。規格は、不良品はもちろん顧客のニーズと期待に沿わない製品を顧客に引き渡さないための業務実行の要件を規定している。従って、規格の品質目標は品質改善の目標ではなく、品質保証上の改善の目標でなければならない。早い話、苦情の低減は品質目標となり得るが、組織内の製品不良率の低減は顧客満足や品質保証と関係のないことであるから、品質目標とはなり得ない。組織内での不良の低減が製品全体の品質向上の結果であるなら顧客満足向上にも繋がるという理屈もあるが、検査基準を緩和すれば組織内の製品不良率を簡単に減らすことができるのが現実である。コスト低減に責任をもつ製造部門と顧客満足に責任をもつ品質保証部門との検査基準を巡るせめぎ合いはほとんどの組織の日常である。しかし、この種の品質改善目標が品質保証目標たる品質目標として認められているのが、認証審査の現実である。
 
  一方、ISO14001は地球環境保全のために組織が事業活動に起因して発生させる環境影響をどこまで抑制する責任があるかの考え方を示す世界標準である。この環境影響には、大気汚染等の公害型の環境影響だけでなく、森林破壊や天然資源の枯渇、エネルギー使用などの観点が含まれる。規格は、組織に起因する環境影響の中から利害関係者のニーズと期待の大きいものから優先して改善の対象とし、それら環境影響を組織が技術的、経済的に実行可能な程度に低減し続けることを組織に求めている。環境方針は、どの環境影響をどのように改善するかを内外に明確にするものであり、目指す環境改善は「組織の活動、製品及びサービスの、性質、規模、及び、環境影響に対して適切」でなければならない(4.2 a)項)。つまり、利害関係者のニーズと期待に沿う環境改善でなければならない。品質目標と同じ環境目標の上記事例の場合の問題は、製品不良率の減少がもたらす廃棄物やエネルギー使用量の減少が、この環境方針に合致するような内容と程度であるかどうかである。品質目標で実現する環境影響改善代が利害関係者のニーズと期待に沿うのか、とりわけ、温暖化ガスを大量に発生させる組織であればこの環境目標が環境方針に適うのかどうか、一般には怪しい。
 
  ISO9001、14001の両規格とも、組織の事業発展を図るために事業を支える顧客やその他の利害関係者のニーズと期待をどのように満たす必要があるかを教えてくれるものであり、このことに経営管理(マネジメント)上どのように取り組むべきかを規格要求事項として規定している。日本の規格理解では、利害関係者や経営管理(マネジメント)の視点が希薄で、組織内の自主的な改善活動としての受けとめられているために、組織の都合で、或いは、認証審査が認めるかどうかの判断から、品質目標、環境目標が決められている。これが、どちらの規格のマネジメントシステムに関しても形骸化の出発点であるが、その果てに品質目標と環境目標が同じという状況にまで至った。
H22.10.28 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所