ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
53 外注先の検査結果の確認は受入検査として不適
 <36-01-53>
1. 外注検査帳票の確認による受入検査
   日本で多くの組織で、その製品に組み込むために外注先から受入れる部品の受入検査を外注先の検査記録又は検査員の印など検査帳票の確認で済ませている。認証審査でもこれが受入検査(7.4.3項)として許容される。しかし、これは規格の意図の「受入検査」ではない。規格の『検査』とは「必要に応じた測定、試験又は計測の結果に関する見解と判断に基づいて行われる適合性判定の活動」である*1。これでは組織が行うべきと規格が規定する『購買製品が規定した購買要求事項を満たしていることを確実にするため』の「検査」を供給者が行っていることになる。規格は組織の品質保証に係わる業務実行の必要条件を規定しているのであるが、『製品の検証』も『購買製品の検証』も組織が行うものと規定しており(7.2.3、8.2.4項)、これを供給者に代行させてよいとは書かれていない。実際にもこのような受入検査では外注部品の不良に起因する組織の製品不良の発生は避けられず、結果として不良製品が顧客に流出してしまうことになる。
 
2. 検査の重要性と信頼性
 不良品を顧客に引渡さないことを確実にする品質保証活動における最後の、かつ、最も重要な砦は製品の最終検査である。素材やそれに近い加工製品の外観品質や寸法のように原理的には不良が検査で完全に摘出できるような品質に関しても、完全な検査は技術的経済的に困難であり、また、検査ミスをあり、いわゆる検査の不具合が原因となって不良品が顧客に流出し、苦情を申し立てられている事例には事欠かない。製品品質への顧客の評価の高い組織でもほとんどは潜在的に検査の信頼性の強化という課題を抱えている。多くの組織では不良品の流出の絶滅を図る検査の信頼性向上のため日常的に、検査の方法、検査指示と記録帳票の改善だけでなく、検査員の訓練、限界見本の整備、計測器の校正や日常点検、不良品の隔離など様々な管理に工夫を凝らしている。その究極が品質保証関連業務をISO9001の規格要求事項に適合させるという厄介な管理体制と業務の導入である。
 
  その一方で、外注先に検査をさせればその製品たる部品に不良品は混じっていないと信じるのが、検査帳票確認という方式の受入検査である。外注先に検査をやらせば不良品が漏れ出ることがないのなら、組織の最終検査も外注化すればよいのであり、ISO9001を導入する必要などさらさら存在しない。組織の仕様の製品を組織の仕様の方法で供給者がつくるという外注加工の枠組みでは、一般に供給者の製品をつくる能力は組織に劣る。組織の検査では様々な工夫と努力によっても不良品の流出が完全には防止できないでいるのに、能力の劣る外注先の検査の結果は信用できるというのは論理的ではない。実際、このような受入検査をしている組織で不良部品が原因の顧客の苦情がない訳ではない。
 
3. 受入検査の在り方
 94年版では『受入検査・試験』の規定(4.10.2項)があり、供給者がその製品の検査をしない場合のみに受入検査が必要とは書かれていなかったし、実際にも供給者が検査をしても組織が受入検査をしなければならないと受け止められていた。ただし、『受入検査の量と内容を決めるに当たっては、下請負契約者(00年版表現では『供給者』)先での管理の程度及び提供された適合の証拠を示す記録を考慮すること』と規定(4.10.2.1項)されていたから、『適合の証拠を示す記録』を引き合いにして今日と同様の検査帳票確認方式の受入検査が認証審査で許容されていた。
 
  しかし、規格の意図は『適合の証拠』の信頼性に応じた受入検査の程度(抜取り量と検査内容)ということであり、一介の外注先の検査記録が『受入検査の量』をゼロにできる、つまり、受入検査をしない程に信頼性があるとは書かれていない。従って、94年版では検査帳票確認方式の受入検査が許容されていたと解釈することは適切ではない。組織が検査不具合による不良品流出に頭を痛め、この組織の検査の信頼性より外注先の検査の信頼性の方が一般に低いという本質は、時代を超えて変わらない。94年版の当時は現在と違って、検査帳票確認方式の受入検査で不良部品起因の不良製品の顧客への流出を防止できたとも考えられない。
 
4. 外注先の業務実行の管理
  しかし、外注先から受取った部品を組織が検査するということには経済的合理性のない場合も多い。しかしこの場合でも組織は受取る部品に不良品が混入していることは避けなければならない。組織が検査をせずに、しかし、外注先からの不良部品による製品不良を効果的に避ける実務的で合理的な方法が、外注先の検査の信頼性を組織が行う検査と同程度に高いものであるようにすることである。簡単にはこれは、検査業務を初め品質に関連する各業務を外注先に組織と同じ方法で行わせることで実現する。このために組織は、少なくとも合否判定基準を明確にし、必要に応じて検査のやり方、計測器の使用と管理の方法、記録のとり方、検査員として必要な職務能力、更には、関連する管理業務、加工方法や条件等々、外注先に要求すべき事項を明らかにし、その履行を求め、かつ、履行を監視し、必要により指導や指示を行うことが必要である。
 
   規格は、組織が必要とする仕様と品質の部品を確実に受け取るのに必要なすべての事項を明らかににして外注先に伝えるべきこと規定している(7.4.2項)。規格ではこれを『購買情報』と呼び、それには製品の仕様と品質のみならず、業務の方法や使用すべき設備、要員に必要な職務能力、更には、品質保証業務の枠組みに関する必要条件までを含めている(同 a)〜c)項)。つまり、外注先の検査の信頼性を組織並みにするために外注先に履行を求める業務実行の条件は、規格が明確にすべきとしている『購買情報』の一環である。
 
  さらに規格が『供給者が組織の要求事項に従って製品を供給する能力を判断の根拠として』供給者を定期的に『評価』する必要を規定(7.4.1項)しているのは、この場合は外注先に求めた業務実行条件が履行されていることを監視することが目的である。
 
5. 外注プロセスの妥当性確認
  こうした状況の下にある外注先であれば、個々の納入部品に関して外注先が提示する検査記録や検査員印は、外注先がその部品に関して組織の定めたことを遵守したので不良品は含まれていないという外注先の品質保証の宣言を意味する。そして、組織並みの信頼性のある検査が実際に行われたのであるから、その検査記録や検査員印には、組織の検査員の検査合格の印と同等の信頼性があると考えることができる。94年版の表現に従うなら、そのような検査記録や検査員印であれば『適合の証拠を示す記録』としては、受入検査の量をゼロに、つまり、受入検査を行わないで済む程に信頼性が高いということができる。すなわち、組織は、検査帳票の確認によってその部品を安心して受入れることが出来る。この受入検証(7.4.3項)の方式は00年版では「受入検査」ではなく、『検査又はその他の活動』の『その他の活動』のひとつである。
 
  一方、このような受入検証を行うことによって組織が受入検査を行わないでも受取る部品に不良品が混入しないことを確実にできる品質保証方式は、工程保証と呼ばれることの多い品質保証の方式である。これを規格(7.5.2項)では『プロセスの妥当性確認』と呼んでいる。組織が検査できなくても、外注先のプロセス(業務)が決められた通りに実行されたことを確認する『妥当性確認』方式で、組織は不良部品を受け取ることがないことを確実にすることができる。ここに、検査記録又は帳票の検査員印がa)項の趣旨の部品受入れの合否判定基準であり、その他の外注先に履行を求めた事項がb)〜d)項である。『プロセスの妥当性確認』を必要とするプロセスを『特殊工程』と呼ぶことがあるが、検査帳票の確認で部品の合格を判断する品質保証方式は、外注先の加工プロセスを『特殊工程』として管理しているということになる。
 
 なお、TC176の指針文書*2には「ある状況では、アウトソースしたプロセスのアウトプットが以降の監視測定で検証できないことがある。この場合は、組織は、アウトソースしたプロセスの管理がISO9001の 7.5.2項に従ったプロセス妥当性確認を含んでいることを確実にする必要がある」との説明がある。この文章の主語はいずれも「組織」であるから、これは外注加工の結果の部品を受入検査できない場合は、この外注加工のプロセス(業務)を『特殊工程』として管理しなければならないということを述べている。
 
 
引用文献( *印及び英語文献は筆者の和訳) 
*1: ISO9000, 3.8.2
conformity evaluation by observation and judgement accompanied as appropriate by measurement, testing or gauging
*2:ISO/TC176/SC2/N 630R3; October 2008: アウトソースしたプロセスについての指針
H24.1.27 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所