ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
55 監査目標と結論のない内部監査  −内部監査が役に立たない訳
 <36-01-55>
(1) 内部監査の実態
  大抵の組織の内部監査計画書には監査目標が何であるかが書かれておらず、内部監査報告書に結論欄のあるのも稀である。ほとんどの組織の内部監査では、監査員には多くの不適合を摘出することが期待され、被監査側は不適合指摘には是正処置が必要なので不適合指摘を避けることに努める。内部監査の審査員と被監査側との議論は、見つけた不適合候補のどれを不適合とし、どれを是正処置を求めない観察事項と格付けするかとなっている。
 
(2) 内部監査員の責任
  しかしながら、監査の論理では内部監査員に期待されるのは、監査基準に対する適合性を評価することを通じて監査結論を導くことである。ここに、適合性評価とは、規格や組織の業務手順で決められた業務が決められた通りに行われ、決められた結果を出しているかどうかを判断することであり、この判断は規格では監査所見である。この所見が通常、不適合だ、いや観察事項だと監査員と被監査側がもめる点である。大抵の内部監査はこれで終わっている。
 
  しかし、監査員はそのような不適合や観察事項があるから、どうなのだという結論を下さなければ、責任を果たしたことにはならない。内部監査とは一般に、監査員が経営目標の効果的な達成に関して意見を表明し、可能なら達成のための助言や勧告を行う活動である。つまり、監査で調査した業務実行の実態や状況がそのまま推移したとした場合に、経営目標が達成され、或いは、それに反する事故や問題が起きることがないと考えられるかどうかが、内部監査の結論であり、これには経営目標の確実な達成のために発見した不適合をどのように処理する必要があるかの監査員の助言や勧告が含まれる。
 
(3) 監査の目標と結論
  この経営目標とは、ISO9001では事業の維持発展のために達成する必要のある品質保証・顧客満足の目標であり、ISO14001では同じく達成の必要のある環境保全の目標である。短時間の内部監査でこのような一般的な目標の達成の評価、判断を行うことは無理であるから、効果的な内部監査のためには監査活動毎に経営目標の内の対象部門に特に期待する、或いは、その間違いない達成が必要な具体的な業務結果を、監査目標として明確にすることが大切である。
 
  例えばISO9001の内部監査では、苦情低減が最も重要な競争力という市場の状況においての品質部門の監査目標は、苦情発生を従前水準に留めることができるか、又は、顧客の支持を一挙に失う重大苦情の発生の危険性はないかどうかの判断である。或いは、大規模新設備稼働直後の製造部門の監査目標は、計画通りの初期不良以上の品質不良の発生、或いは、顧客での重大な品質事故の発生の危険性はないかどうかである。ISO14001の内部監査では、新聞沙汰になるような環境事故が発生することはないかどうかの判断が製造部門の監査目標である。或いは、同業他社が引き起こした法規制違反事件に鑑みて、管理の枠組みの中に同様の事件の芽がないかどうかの判断が環境管理部門の監査目標である。
 
  内部監査の結論とは、このような監査目標に対する監査員の判断である。内部監査における監査員と被監査側にとって大切なことは、ある事実が適合か不適合かではなく、その事実が組織の経営目標の達成の足を引っ張るかどうかの評価と判断である。問題ないという結論ならトップマネジメントは安心であり、問題ありという結論ならトップマネジメントは是正処置要求などの監査員の助言や勧告を基にして経営目標の確実な達成、又は、事業活動を危うくするような事態の発生の阻止のための経営としての判断と処置をとる。
 
(4) 規格の意図の内部監査
  監査の指針規格ISO19011*では、監査プログラムとそれぞれの監査活動に対して目標(objective:JIS和訳は『目的』)を明確にすべきことを規定し (5.2.1, 6.2.2)、個々の監査の目標は『その監査で何を達成するのかを明確にするのもの』であると規定している。そして、監査活動における監査員の業務を順に『情報の収集及び検証』『監査所見の作成』『監査結論の作成』としている(6.1)。『監査所見』は前記のように『収集された監査証拠を監査基準に対して評価した結果』であり(3.4)、『監査結論』とは『監査目標とすべての監査所見を考慮したうえで、監査チームが出した監査の結果』である(3.5)。監査報告書には、監査目標、監査対象、監査基準、監査所見、監査結論が含まれていなければならない(6.6.1)。
 
  規格のJIS和訳では監査は『監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス』と定義されているが、これは監査という活動を定義した表現である。何のために監査を行うのかという監査活動の意義の観点からの定義なら、「監査証拠を収集し、それを客観的に評価して、監査基準が満たされている程度を判定する体系的で、独立し、文書化されたプロセス」と表現されるべきである。すべての規格要求事項が満たされておれば経営目標は達成されると考えてよいが、満たされていない場合はその程度によって経営目標が達成できない程度とか、経営目標に反する事件、事故、問題の起きる可能性の程度が異なる。定義の『監査基準が満たされている程度を判定する』ということは、経営目標の達成、或いは、これに反する事態の発生の可能性を判断することを指している。
 
(5) 普通の内部監査
  内部監査が不適合候補の検出と分類の活動に堕して、いるのは、トップマネジメントが監査員に監査目標を明確にせず、結論のない監査報告書にめくら判を押しているという、組織全体としての内部監査に対する無理解が背景にある。規格の内部監査は規格に特有の活動ではなく、社会一般の概念の内部監査のことであり、この内部監査を品質保証・顧客満足、又は、環境保全の経営管理(マネジメント)に関して実行しなければならないというのが、規格の規定(8.2.2/4.5.5)の趣旨である。
 
 
*印:ISO19011:2002を使用。 
H24.7.26 
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サニーヒルズ コンサルタント事務所