ISO9001/ISO14001 コンサルティング・研修
欧州3国のISO取組みは 規格論理重視の米国流
−日本だけ例外?−
ISO9001:2000 解説書
日本と欧米比較 
55-01-02
 
1.はじめに
  先に、日米両国で発売のISO9001の解説書について、その標題から中身を推定して両国のISOへの取組みの実態を推察、比較したところ、規格の論理への適合重視の米国と審査合格の形式重視の日本と、明確な差異が見出された。 この度は、同様の手法で、英、独、仏の欧州3国におけるISO取組みを調査した。
2.調査方法
   対象とした解説書は、ウェブ書店の最大手である米国のアマゾンドットコム社が欧州に設けている英、独、仏3国のウエブサイト(英国=http://www.amazon.c.uk、ドイツ=http://www.amazon.de、フランス=http://www.amazon.fr)で、"ISO"及び"ISO9001"で検索した書籍の内、発行月日が2000.11月〜2003.7月のものである。なお、英国のウェブサイトの解説書はほとんど全部が米国と同じであったので、収録を省略した。ドイツ語書籍33件、フランス語書籍15件が対象となった。
   独仏両語は、無料翻訳ウェブサイトを利用して英語に翻訳して意味を解釈した。
3.調査結果
(1) 書籍の主題
(表1)(図1)
 独仏両国のウェブサイトには書籍の抄録を掲載しておらず、標題の意味を確認する手段がなかったので、純粋に標題の表現から解説書の性格を推定するしかなかった。
  ドイツでは、規格の説明を主題とする書籍とシステム構築を主題とする書籍の割合が、37%、42%と拮抗している。また、規格をベースにしてTQMへの発展を謳う書籍が15%と多い。
 フランスでは、書籍数そのものが少ないが、規格の説明の解説書が47%と半数を占め、システム構築は26%で、他に内部監査 13%、TQMへの展開 7%である。
  規格説明の解説書の多さを規格の論理重視の指標とすると、前報より米国は45%、英国は米国と同じ書籍を使っているので同じく45%、今回のドイツは37%、フランスは、47%であり、日本は23%である。図1より、欧米4国は日本よりはるかに規格の論理重視と推定できる。
表1.  解説書の主題
主題を窺わせる標題中の表現 推定される
主題
ドイツの解説書 フランスの解説書
規格名のみ(2)、品質マネジメントシステム(7)、
手引き、羅針盤、改定      計12
規格名のみ、品質マネジメントシステム、解説、
理解、解釈、要求事項、エクセレンスへ   計7
規格の説明
構築(3)、開発、移行(weiterentwicklung)、プロジェクト、認証、特定産業向け(3)、文書作成、マニュアル見本(2)、バランスドスコアカード              計14 移行、プロセスマップ、文書化、の道具 計4  システム構築
品質監査、特定会社のシステム   計2 内部品質監査、品質・環境監査    計2            システム運用
購買管理への活用、TQMへ(4)    計5 ISOプラス                       計1 システム活用
受審
認証取得制度の説明
                         コンサルティング手法             計1   その他
33 件 15 件 合計
 
(2) システム構築(図2、図3)
  ドイツのシステム構築の解説書 14件の内、「認証」を標題にもつものは 1件(7%)のみである。フランスでは 3件の内 1件(25%)が「認証取得のための文書化」として認証審査合格を目的としている。これは先の調査で米国で6%、そして英国も同じと考えられ、日本は56%であった。図2から、日本だけが突出した認証審査重視のシステム構築となっていることになる。 また、ドイツのシステム構築の解説書の内で、構築の手法を標題にするものが4件(29%)、フランスでは3件(75%)である。この数値は、米英では12%、日本では62%と、ドイツは米国に、フランスは日本に近い数値となっている(図3)。 認証審査合格のための方法を説明するという解説書が多数を占めるという状況は、欧米4国にはほとんど見られない日本独特のものである。
  更に、 日本では「システム構築」と呼ぶのが普通であり、解説書では「構築」「つくる」が31%と、「認証取得」の38%と並んで用いられている。 ドイツで「構築(umzetzen,aufbau)」「開発(entwicklung)」という表現をとっている書籍は4件(29%)であり、フランスでは「構築」に相当する言葉は標題に使われていない。英米では「構築」は designの1件(6%)のみである。 規格が求めているのは「システムを確立(establish)し、実施(implement)する」ことであるから、何かをつくりあげる「構築」とはちがう。 implement は「決められた通りに行うこと」であり、米国では「システム構築」の概念にこの語が「適合化(compliance)」と共に、標題に用いられている。この点でも、審査合格の形をつくり整えるという日本の「システム構築」の概念が独特のもであることがうかがわれる。
(3) 著作の意図(図4)
  日本では規格の説明を主体とする解説書でも、その50%が規格をわかり易く説明することに焦点が当てられている。英米では4%、ドイツでは「心配無用」の1件(8%)、フランスではゼロである。一方、先の調査で米国の規格説明の40%、日本の書籍では10%が、内容の充実ぶりを強調するような標題を有していたが、独仏両国の解説書には殊更内容の豊富さを強調するものはなかった。 しかし、ドイツの解説書には「プロセスアプローチ」「顧客満足」、フランスの解説書には「エクサレンスへの道」「経営の武器」と規格の論理に焦点を当てたことを強調する語を標題に含むものが、それぞれ、21%、13% あった。これは、米国は「プロセスアプローチ」の 2%、日本は 0% であった。
 図4のように、認証審査合格を目的としたシステム構築の手法をわかり易く説明するという解説書を主体とする日本の現状は、欧米4国には見られない独特のものであることが明確である。欧米4国では審査合格にはほとんど触れずに規格の論理を詳しく説明しようとする解説書が中心である。
         
(4) 規格取組み 日本と欧米4国の違い(図5)
  日本のISO取組みの特徴を表す、システム構築の解説書が多い、認証審査合格を重視する、システム構築の手法の説明書が多い、内容の平易さを強調する という特徴と、 欧米の、規格説明の解説書が多い、内容の充実を強調する、規格の論理に焦点を当てる、との特徴を明確にするために、これらに関係する解説書の数(%)を加えて指数化した。これを図5 に示すが、両者の取り組みの大きな違いを明確にうかがわせる結果となった。
4.まとめ
  各国で発売されている解説書の内容が現実のISOへの取組みの実態を反映するというのが本調査の立場である。本調査では、解説書の中身を実際に吟味するのでなく、標題から推定する方法をとった。各国には独自の文化があり、書籍の標題のつけ方にも各々の特徴があると思われるので、この方法の適切性に疑念を挟む余地はあり得る。しかしながら、調査結果は日本と欧米4国の解説書に、簡単に見逃すことのできないほどに大きく、明瞭な標題の違いを見出した。
  前回の調査で、米国では規格とその論理を大切にし、組織の業務を規格の論理に適合させ、適合させた業務を文書に記述することが規格の適用を意味するのに対して、 日本では規格を認証取得の条件とみなして、組織に審査合格のための形をつくり、整えるというシステム構築作業が規格の適用を意味すると、両国の取組みの大きな違いを見出した。今回の調査では、英独仏3国のISOへの取組みが、米国流の取組みと同じかそれと近いことが推察できた。つまり、日本のISOへの取組みは独特であって,規格制定を推進した欧米の本流からはずれているということが明確になった。
  欧米には認証取得を目的化した安易な形式的取組みを推奨する解説書はほとんど見当たらない。認証登録制度は、組織が規格に沿って業務を行っていることを顧客に保証するためにあるのであって、認証登録をシステム構築の目的、目標視することは制度の理念を逸脱する。また、規格は組織が繁栄に向かうことを可能とする歩み方を示すものであり、規格は成功を保証する旅装や道筋を規定しているわけではない。誰にもわかる容易な形式的、画一的な業務が規格の意図する繁栄をもたらすとは思えない。 各国の事情によってISO取組みにも多少の特徴があってもよいが、日本で今日主流の取組みは、規格制定と審査登録制度の理念から逸脱しており、規格を組織の利益に資するという視点にも欠けていると思われる。
H15.4.29 
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